ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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55話 砂漠での再会と賑わうフライパン山

 事態は緊急を要していた。

「交通事故だ! 早く救急車を!」

「ダメだっ、とても病院に運ぶまでもたない!」

 逃亡中の銀行強盗犯が運転する車に、罪もない親子が撥ねられてしまったのだ。

 

「お父さん、お母さんっ! お願い、お父さん達を助けてっ!」

 子供は咄嗟に父親が庇ったお陰で軽傷だが、父親と母親は見るからに危険な状態だ。気が付いた子供の、悲痛な声が響く。

「私に任せてください!」

 そこに兎が駆けつけた。そう、サングラスをかけ服を着た兎が。

 

 彼は血まみれで意識のない父親と母親にその手で触れると、二人を人参に変身させた。

「に、人参?」

 思わず泣き止んだ子供だが、何度見ても人参だ。着ていた服も何も残さず、父親と母親はそれぞれ人参になってしまった。

 

「さあ、この人参を丁寧に運ぶのです! 人参ですから出血も心臓停止もありません! 病院まで間に合いますよ!」

 人参には血液はもちろん、心臓を含めた内臓も無いので、この状態では死ぬことは無い。そのまま人参を病院に運んでから人間に戻し、すぐメディカルポッドに入れれば二人は助かる。

 

「あ、ありがとう、兎さん!」

「いえいえ、人として当然の事をしたまでです。まさかこんな生き方があるとは……人生とは分からないものですね」

 現在社会奉仕中の兎人参化は、今日も人命救助で社会に貢献している。

 

 なお、人参を食べるのを嫌がる子供が増えたが……まあ、人命には代えられないだろう。

 

 

 

 

 

 

 海水浴と海辺でのバーベキューを楽しんだタイツ達は、砂漠に到着した。車からウーロンのキャビンカーに乗り換えて、奇妙な岩が立ち並ぶ砂の海を進む。

「懐かしいな。昔を……って程前じゃないが、色々思い出すぜ」

 愛車のジェットモモンガでキャビンカーに並走しながら、ヤムチャは亀仙人に弟子入りする前、この辺りで暮らしていた当時に思いを馳せていた。

 

「お前らって、こんなところで暮らしてたのか?」

 キャビンカーの運転をしているウーロンは、ふと気になってヤムチャに話しかけた。ラピスが運転したがったが、「これは俺の車だから」と主張してハンドルを離さなかったのだ。

 

「まあな。武天老師様に弟子入りする前は、ここでツアーガイドの仕事をしてたのさ」

「ツアーガイド!? こんな砂漠しかない所でか!?」

「ああ、奇岩の絶景スポットへご案内ってな」

 最初は山賊をしようとしていた事をすっかり忘れたらしいヤムチャは、当時の事を語った。

 

「それが何で亀仙人の爺さんに弟子入りなんてことになったんだ?」

「ああ、実は……ヒットした映画にあやかろうと思って、偽のピッコロ大魔王を封印した祠を作って、そこに案内したんだよ」

「ボクが映画で見たピッコロ大魔王に変化して、お客さんを脅かす算段でした」

 

「なるほど、それは亀仙人の爺さんに通じるはずないよな。本物のピッコロ大魔王にも、ヨン・ゴーにも会ってるんだから。

 それで懲らしめられて弟子入りしたのか」

 

 そう言いながら、ウーロンはヤムチャとプーアルも自分と同じように悪い事もやってるんだなと思ったが、口に出すと「お前と一緒にするな!」と言われそうだったし、実際少々インチキがあっても商売をしていたヤムチャ達に対して、恐喝と誘拐という完全な犯罪をしていた自分とは違うと思い直したので、黙っていた。

 

 なお、まだキャビンカーの中に在る眠り薬に関しては、ウーロンは使うつもりはなかった。何故なら、原作では悟空とブルマの二人にだけ飲ませればよかったのに対して、この歴史では眠らせなければならない対象が十人もいるからだ。

 それに、原作と違い知り会ってから一年以上過ぎているため悟空達に対する仲間意識や情が、ウーロンにも芽生えていた。

 

(そう言えば、二階にまだバニー服があったな。でも、あいつら着替えぐらい持って来てるだろうし……着せる機会はなさそうだな。サイズが合うの、タイツかラズリぐらいだし)

「そろそろ、ゲロの爺さんとの待ち合わせ場所だぞ」

「あれじゃないか? 近くに、それなりに大きな気が二つある」

 

 奇岩の向こうに、砂漠に不似合いなドーム状の建造物が見えてきた。

 そこで止まると、ドームからゲロと4号、戦闘服を着た二人の少年と人型のロボットが現れた。

「ようこそ、ここがドラゴンボール二つ分の試練、名付けてダークドームじゃ」

「お爺ちゃん、どういう事?」

「うむ、気の感知や五感を研ぎ澄ませて戦う訓練を行おうと思ってな」

 

 ダークドームの内部は光が無く、そこで太陽拳禁止のルールで悟空達が戦って勝てばドラゴンボールを一つ手に入れる事が出来る。

「もう一つは、ターレスとタイツ対儂と4号の分身とロボット数機での試合で儂と4号の分身に勝てば手に入る。場所は、儂が見つけた無人の惑星じゃ」

 そして、タイツとターレスは悟空達と実力が離れ過ぎているので、分かれて試合を行う。こちらは太陽拳禁止などのルールはない。

 

「なるほど。去年はボンゴ達が使ったロボットに一杯食わされたものね」

「気を感知できないロボットと戦う経験は必要かもな。でも、そんなに強いロボットが居るのか?」

 納得するブルマに対して首を傾げるヤムチャ。この差は、去年ロボットを使った作戦で出し抜かれた経験のあるなしによるものだろう。

 

 それに、ヤムチャは強いロボットを見た経験が無い。彼に取ってロボットは、桃白白主演映画のやられ役というイメージが強い。

「うちにいる人造人間3号は強いわよ。今の孫君でも勝てるかどうか分からないくらい」

「他の人造人間も、永久エネルギー炉が完成したら気を発さなくなるんだって」

 

「ええっ!? そ、そうなのか……確かに、経験しておいた方がよさそうだな」

 しかし、ブルマとタイツの話を聞いて驚き、納得した様子で頷いた。

 

「ゲロのじっちゃん! 太陽拳以外の技は使っていいんか?」

「構わんよ。ドームの内側は特殊合金で守ってあるから、お前達が全力で気功波を放ったとしてもドームが破れることは無い」

 

「特殊合金って、カーチャン鋼ってやつか?」

「カッチン鋼の事じゃな? いや、それよりもだいぶ弱いが、タイツやターレスが全力を出しても凹みもしない合金を使っている。名前は……ウィロー合金とでも名付けようか」

 

 ダークドームの内側や骨組みは、ドクターウィローのサイボーグボディに使われていた金属を参考に、ゲロが大量生産可能な合金として開発したものだ。

 ウィローがキリで強化される前でも、戦闘力にして3万ぐらいの攻撃には余裕で耐えられる、従来の鋼鉄の硬度を遥かに上回る超合金である。もちろん、カッチン鋼には遠く及ばないが。

 

「ちなみに、ターレスとタイツが戦うロボットはそのウィロー合金製ですよ」

「なにっ!? それじゃあ大猿にでもならないと勝てないぞ!」

「ちょっ、止めてよっ! ターレスが大猿になったらあたしが止めないといけないじゃない!」

 4号の言葉に、ぎょっとするターレスに、ターレスの言った言葉に更にぎょっとするタイツ。

 

「安心してください。装甲がウィロー合金製なだけで、パワーは二人に合わせてドクターが調整しましたから。ただ、遠隔操作で3号が動かしているので、きっと手ごわいですよ」

「全く安心できねぇ……」

「急にドラゴンボール集めの難易度が上がった気がするわ……仕方ない、やるわよ!」

 

 ターレスが苦笑いを浮かべ、タイツが気合を入れる一方で、悟空やサタンは戦闘服姿の少年二人の方に注目していた。

 

「皆さん、お久しぶりです! 今日はよろしくお願いします!」

「ん? オラ、おめぇと会った事あったかな? 見覚えはあるんだけどな。チャパ王のおっちゃんの知り合いか?」

「あ、君とは初対面だね! 僕はパンプット! 未来のアクションスターさ」

 二人のうち一人はアフロヘアのような癖の強い髪に浅黒い肌をした美形の少年、パンプットだった。彼は桃白白のようなアクションスターになるべく、俳優業の傍らGCGで訓練を受けている。

 

「まあ、ターレスにそっくりだから初めて会った気がしないけれど」

 そのため、都で暮らすターレス達や映画の撮影で顔を合わせたヤムチャとは面識があった。

 

「お、お前はマークっ! なんでこんな所に!?」

「げ、げえぇっ!? ジャガーっ、お前こそなんで!?」

 一方、もう一人の少年、ジャガー・バッタは幼馴染のライバルと再会していた。

 

「お、俺はゲロ会長の弟子に成ったんだ! 才能を見込まれてな!」

「どうせ父親の金とコネだろう! 俺は武天老師様の弟子に成ったんだ!」

「マークが武天老師様の弟子ぃっ!? まさかミゲルちゃんに時計仕掛けさせたんじゃないだろうな!?」

 

「時計仕掛けってなんだ!? それを言うなら色仕掛けだろう! それと俺は頼んでないからな! ……今度の夏、遊びに来てくれるけど」

「なんだと~っ!?」

 

 近況を連絡していなかった二人は、怒鳴り合いながら互いの事情を把握する。

「あの二人、知り合いだったのか」

「世間は狭いもんだな。それにしても、マークって……?」

 そして、ジャガーとサタンが知り合いだった事を初めて知ったラピスやターレスは、彼らのやり取りを聞いて首を傾げた。

 

「ちょ、ちょっとこっちへ来い!」

 それに気が付いたサタンがジャガーを引っ張ってダークドームの陰に連れて行く。

「なんだ、マーク? 俺はお前とミツマメする事なんて何にもないぞ」

「それを言うなら密談だっ! いいか、俺の事はマークではなくてサタンと呼べ!」

 そう器用に小声で怒鳴るサタンに、ジャガーは首を傾げた。

 

「あ? なんでだ? サタンってジムの名前でねえか?」

「いいからっ! もし俺の話に合わせてくれるなら、ミゲルちゃんが遊びに来るときに、お前も呼んでやるから!」

「何っ!? 本当か!? 約束だぞっ」

 そして、口止めに成功してから悟空達の元に戻り、マークというのは仇名だと嘘を言ってターレス達を誤魔化していた。

 

「そう言えばラズリさん、あのジャガーって金持ちの家の子らしいけど、どうなんだべ?」

「無し。話してみたけど、口を開けばミゲルって女か、マークって奴の話しかしない」

 サタンがジャガーを口止めしている間に、チチがラズリに彼の印象を聞いていたが、彼の印象は悪かったようだ。

 

「なあ、爺さん。今回はヤムチャのあがり症を直すための試練はないのか? 俺、喜んで見学するぜ!」

「ん? いや、特にはないが……」

 ウーロンに問われたゲロは、(ランファンとはまだ会わせられないからな。サンやギネに頼むのは論外、ランチは激怒するじゃろうし……いくらヤムチャでも2号には反応しないだろうしな)と思いながら首を横に振った。

 

「そう言わずに頼むよ、ヤムチャのためにさ!」

「ウーロンっ! ヤムチャ様を出汁にするな!」

「じゃあ、ママにでも頼んでみる? きっと喜んで協力してくれると思うけど」

「ブルマの母親ってあのパンチーさんか!? か、勘弁してくれ!」

「……そうじゃな。ちょっと頼んでみてくれるか?」

 

 そして始まった試練では、ダークドームに挑んだ悟空達は予想通り苦戦を強いられた。パンプットとジャガーは暗視機能付きヘルメットで、戦闘用ロボットはセンサーで闇を真昼のように見渡すのに対し、悟空達は視覚が完全に封じられている。

 

 また、パンプットとジャガーはブリーフ博士が本気で作った戦闘服を着ているため、悟空やヤムチャの一撃でも戦闘服に守られた胴体にダメージを与える事が出来ない。

 しかも、暗闇のせいで何度か同士討ちになりそうになった。しかし、互いの気を常に感知する事で仲間の位置を把握する事に成功。

 

 そしてサタンがジャガーを引き付けている間に、ラピスがパンプットに関節技をかけて動きを封じ、それ以外の面々がロボットを破壊する事で勝利した。

 

 ターレスとタイツはゲロと4号の分身、そしてウィロー合金製ボディの3号にやはり苦戦した。気の探知が得意なゲロに、地球人よりも五感が鋭いナメック星人ベースの4号、そして様々なセンサーを搭載した3号は、暗闇で視覚を封じられた二人に対して圧倒的に有利だったからだ。

 

 しかし、タイツが四身の拳で二人に増え、本体がスピリットブーストを使用して気を倍増、分身が気を隠して潜むという方法で分身の存在を隠してゲロや4号の不意を突く戦法が成功。更に、ターレスが3号の機動音を頼りに反撃に転じて抑え込み、弱い関節部を破壊する事で勝利した。

 

 こうしてタイツ達はゲロから二つのドラゴンボールを手に入れ、残りは二つとなったのだった。

 しかし、ヤムチャの本当の試練はここから始まった。スケジュールが空いていたパンチー夫人が、彼のあがり症克服のために快く協力してくれたからだ。

 

 彼は車の助手席にパンチー夫人を乗せ、元ツアーガイドの経験を活かして砂漠のドライブをする羽目になったのだった。なお、後部座席にはヤムチャが運転を誤った時にパンチー夫人を脱出させるためにゲロが、そしてウーロンが乗っていた。

 

 しかし、ヤムチャを出汁に目の保養をしようと企んだウーロンだったが、パンチー夫人がヤムチャにしなだれかかった事で彼の運転が乱れに乱れ、それどころではなかったそうだ。

「し、死ぬかと思った。蝙蝠に化けて逃げ出そうとしたけど、この爺さんが掴んで来るし」

「儂だけ置いて行くのは薄情だと思わんのか?」

 

「じゃあね~、ヤムチャちゃん。西の都に遊びに来た時は家に遊びに来てね~」

「は、はい……」

 そしてパンチー夫人は艶々してブルマの瞬間移動で西の都に帰ったのだった。

 

 なお、パンプットは明日ドラマの撮影があるため、そしてジャガーは「サタンと仲良く旅行なんて出来るか!」と言う理由で旅には加わらなかった。

 

 

 

 

 

 

 その頃、ピラフ城ではドラゴンレーダーの反応を見ていたマイが不安に瞳を揺らしていた。

「ピラフ様、例の奴等がドラゴンボールを更に手に入れたようです。残りは我々が持っているボールと、フライパン山のボールの二つです」

 

 最初のドラゴンボールを手に入れた後、ピラフ大王はその日の内にこのドラゴンレーダーを完成させた。

「例の奴等……GCコーポレーションの関係者か」

 それは、ピラフが去年の『神龍の伝説』事件を含めた様々な情報を収集していたからだ。

 

 ドラゴンボールを探す手段として、ボンゴ達が使った占い婆の占いは、彼女が亀仙人こと武天老師の姉であり、お得意様にゲロがいる時点で使えない。そのため、ピラフは必要に迫られてドラゴンボールを大急ぎで解析し、携帯性皆無の巨大さで精度もいまいちだがドラゴンレーダーを開発させた。

 

 だが情報収集の結果、七つあるドラゴンボールの内三つ……グルメス王国軍が手に入れたボールは、GCコーポレーションが回収した事は分かっていた。

「当初の作戦では、奴らの手にある三つと我々が手に入れた一つ以外の、残り三つのドラゴンボールを先に手に入れる予定でしたが……」

「どうしましょう、ピラフ様? ピラフ様が作ったピラフマシンでも、きっと勝てませんよ」

 

 しかし、蓋を開けると自分達が持っているボール以外の六つ全てがGCコーポレーション関係者の手にあるという、凄まじく不利な状況だった。その上、集めているらしいのは子供とは言え、天下一武道会本戦に出場するほど強い連中で、去年には小国とはいえ一国の軍に喧嘩を売って勝っている。

 

 ピラフ大王も世界征服のための兵器としてピラフマシンを開発しているが……シュウに言われるまでもなく、それで悟空達に勝てるとは彼も考えてはいなかった。

 これ以上ないほどの逆境。シュウとマイが不安に思うのも仕方ないだろう。

 

「狼狽えるな! この程度の事は想定内だ。そのために、偽ドラゴンボール作戦を準備したのだろうが!」

 しかし、ピラフ大王はその天才的な頭脳でもって、その逆境を覆す策を用意していた。

「いいか! 我々には奴らと戦って勝つ必要はない! 神龍を呼び出し、願いを言って叶えてもらえばそれで勝ちなのだ!」

 

「た、確かに本物そっくりな偽ドラゴンボールも、罠に使う仕掛けも出来ましたけど……」

「でも、本当に大丈夫でしょうか? あいつらが光線を撃ちながらドラゴンボールを寄越せって押し入ってきたらと思うと……」

「さ、流石にそれは無いだろう。相手はその、仮にも会長や社長の令嬢や令息だしな。ワシのように上品なはずだ。野蛮人じゃあるまいし」

 

「それに、奴らがドラゴンボールを求めてここに来るという事は……奴らもドラゴンボールの位置が分かるレーダーを持っているのではないでしょうか?」

「何っ!? たしかに、その可能性はあるな」

 

 ドラゴンレーダーを開発したピラフ大王だったが、タイツ達もレーダーを持っているとはまだ考えていなかった。

 タイツ達がドラゴンボールの位置を把握しているのはボンゴ達と同じように占い婆の占いによるものだと、それまでは考えていた。しかし、GCコーポレーションの会長はあのドクターゲロで、社長はあのブリーフ博士だ。

 

「ドクターゲロとブリーフ博士は、天才的な頭脳を持つこのワシに並ぶと謳われた連中だ。しかも、奴らはずっと前からドラゴンボールを持っていた。

 ドラゴンレーダーを開発していてもおかしくない」

 

「ねえ、ドクターゲロとブリーフ博士がピラフ様と並ぶって謳われているって知ってた?」

「ううん、初耳。きっとピラフ様が言っているだけだよ」

「何か言ったか!?」

「「いいえっ!」」

 

 背後で内緒話をしていたマイとシュウを叱責すると、ピラフ大王はさっそく作戦に修正を加える事にした。

「奴らが持っているのがワシの開発したのと同じようなドラゴンレーダーだとすれば……よしっ! 偽ドラゴンボール作戦を練り直すぞ!」

 

「「ええっ!? 今からですか!?」」

 三人は急いで作戦の改良に取り掛かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 ダークドームをクリアしたタイツ達は、フライパン山の麓に広がる牛魔王の農園都市に到着した。

「相変わらず賑わってるわね~」

「あ、あれがフライパン山……生で見ると迫力が違いますね」

 ブルマやサタンが、立ち並ぶアジッサの並木道や広大な農場、立派なホテルやレストラン、土産物店等が立ち並ぶ街と、その奥に聳える炎の山を見て口々に感想を言う。

 

 原作では荒廃した廃墟だけだったフライパン山周辺だが、この歴史では牛魔王が原作開始の約十年前に悪事から足を洗い、ブリーフ博士が品種改良したアジッサの木を植林して農業を始めていた。

 天下一武道会優勝経験者で武天老師の二番弟子が経営する農場という事で注目を集め、また山の至る所が燃えている炎の山が観光名所として話題となり、農業と観光に支えられた一大都市へと発展していた。

 

 フライパン山の炎で焼いた焼き芋や蒸し野菜、煎餅やケーキが露店で売られ、ホテルではフライパン山の炎で沸かした湯を使った露天風呂が人気である。

 

「おっとう、おっかーっ!」

「チチっ、皆よく来ただなっ!」

「待ってただよ」

 

 城から飛んで来た牛魔王とサンが、チチ達を歓迎する。

「牛魔王のおっちゃんにサンのおばさんも久しぶりだな~。あれ? あっちにも気がある?」

「悟空ちゃん、オラは分身だべ。城にいるのは本体だよ」

「なるほど、それでお腹が大きくなってないんだ」

 

 去年の十月に妊娠が判明してから約半年、サンは妊娠七か月になっていた。母子ともに経過は順調だが、まだ赤ん坊の性別は聞いていない。

 しかし名前は決めていて、男の子だったらモウ、女の子だったらスイと命名する予定らしい。

 

「お、お久しぶりです!」

「ヤムチャ君、やっとオラの顔見て話せるようになっただか。良かったべ、これで一安心だ」

 以前はサンの顔をまともに見られなかったヤムチャだが、チチ達との水着乱取り稽古やパンチー夫人のお陰であがり症がある程度改善していた。

 

「え、ええ、お嬢さん達のお陰で、なんとか」

 それでも顔は赤いし声は上ずっているし、動きも硬いが。

「でもまだ硬いだな。じゃあ、オラと後で組手するべ!」

「や、やっぱりこうなったか」

 

「は、初めまして! 武天老師様の五番弟子のサタンです!」

「おめぇが武天老師様の新しい弟子だべか。なら、おらの兄弟同然だべ。武天老師様の修行は厳しいけんど、頑張るだぞ!」

「はいっ!」

 

 一方、サタンは感動した様子で牛魔王と握手している。桃白白に憧れている彼だが、天下一武道会で優勝した事がある兄弟子の牛魔王も尊敬していたのだ。

 

「それで、ドラゴンボールだべな? 思い出してみたけんど、たしか集めたお宝の中に在ったような気がするべ」

「集めたお宝って事は……やっぱり火の中?」

「ああ、フライパン山にあるオラ達が前に住んでいた城の中に在るはずだべ」

 

 今この瞬間も燃え盛っているフライパン山を見上げる一同。今はまだ昼だが、夜になれば業火によって妖しげに照らされた山にピッコロ大魔王が封印されていたのは、フィクション。桃白白主演映画の中でだけの話だ。しかし、本当だったとしてもおかしくない魔性を感じさせた。……実際は、八卦炉の炎が漏れているのだが、この頃それを知っているのはゲロと4号だけだ。

 

「確かに、ドラゴンボールの反応も山の中ね」

「どうするんだよ? 俺はあんな山に登るのはごめんだぞ。チャーシューになっちまう」

「防火服に変化したらどうだ?」

「だから、俺が化けられるのは見た目だけなの!」

 

「ボクが防火服に変化すれば大丈夫ですけど、どうします?」

「プーアルが変化できるのは一人分だけだからな、もう少し手が欲しい」

「山を吹っ飛ばす……のは拙いな」

「ああ、観光名所になっているし、ドラゴンボールまで消し飛んだら元も子もねぇ。……地球の神様に怒られちまうし」

 

 原作ではフライパン山の火を消すために亀仙人から芭蕉扇を借りようと試み、最終的にかめはめ波で吹っ飛ばしてもらった訳だが、この歴史では事情が異なる。

 フライパン山の炎は貴重な観光資源なので消すわけにはいかないし、亀仙人はもちろん悟空達が原作より強くなっているため、かめはめ波で山を吹っ飛ばすとドラゴンボールまで消し飛んでしまう可能性がある。

 

「フォトンシールドで全身を守りながら探したらどうだ? 服を着るように纏えば、動けると思うぜ」

 ならどうしようと考える一同の中で、ターレスが妙案を思いついた。

「ターレス兄ちゃん、そんな事出来るのか?」

「一分程度ならな。動きやすさを確保するために強度は落ちるが、ただの炎なら問題無ぇ。お前らは無理か?」

「オラ、あの技は苦手だ。すぐ疲れちまう」

「オラもだべ」

 

 フォトンシールドは盾程度の大きさならともかく、球形にして全身を覆うと気の消費量が激しくなるという欠点がある技だ。それを更に防護服のようにして細かい作業も出来る状態をキープするとなると、高い気の制御力を必要とする。

 

「戦うなら十分も持たないけど、炎の熱を防ぐだけでいいなら大丈夫」

「あたしも!」

「俺も数分ならいけそうだ」

 しかし、気の制御や感知が得意なタイツやブルマ、そしてフォトンシールドが得意なラピスはターレスよりもずっと長く耐えられそうだ。

 

「じゃあ、それで行きましょう。プーアルにも手伝ってもらって……誰が着る? やっぱりヤムチャ?」

「いや、ここは悟空がいいんじゃないか。なあ、悟空?」

「え、オラか?」

 この後サンとの組手があるため体力を温存しておきたいヤムチャに促された悟空は、目を瞬かせて戸惑った様子を見せたが頷いた。

 

「そうだな、オラなら筋斗雲ですぐ飛べるしな。頼むぞ、プーアル!」

「はい、任せてください!」

「じゃあ、ついでに、余裕があったら牛魔王さんのお宝も持ってくるって事で」

 そして、フォトンシールドを纏ったタイツ達四人と、防火服に変化したプーアルを着た悟空でフライパン山に向かった。

 

 ドラゴンボールはブルマのドラゴンレーダーの精度が高いおかげですぐに見つかり、残りの時間で牛魔王のお宝……絵画等は燃えてしまったが、貴金属や壺や皿などの陶器類をいくつも回収する事に成功した。

 

 その後、ヤムチャはサンの分身と天下一武道会と同じ試合形式の組手を行い、悟空達も牛魔王と組手をして技を高め合ったのだった。

 

 そしてその日は牛魔王の城に泊まり、街の人々から悟空が「姫様の婿殿だ」と祝われたり、露天風呂を満喫中にウーロンが女湯を蠅に変化して覗きを試みて、虫取り網に化けたプーアルに捕まったり、楽しく過ごしたのだった。

 

 そして翌日、タイツ達はついに最後のドラゴンボールを求めて、ピラフ大王が待ち受ける砂漠へと足を踏み入れた。

 




〇兎人参化

 現在社会奉仕活動中。人を救いながら、人参が食べられない子供を増やしている。後、人前で人参(未調理)を齧る事を禁止されている。
 順調に善堕ち中。



〇パンプット

 桃白白に憧れる元子役。映画で共演したのをきっかけに、GCGの訓練を受けて未来のアクションスターになる事を目指している。
 悟空とは初対面だったが、実力は知っていた。また、武道家としては先輩であるため一定の敬意を払っている。試合で当たっても「悪いけど三十秒で勝たせてもらうよ」とは言わない。

 現在戦闘力にして90。丸太飛行や舞空術、どどん波、太陽拳などの技が使える。



〇ジャガー・バッタ

 サタン(マーク)のライバル。無事、父親のコネと彼に武道家として立ち直ってもらいたいゲロの思惑により、ゲロの弟子として過酷な訓練を受けている。
 金持ちのバッタ男爵の一人息子なので、ラズリの守備範囲に入るが……本人が修行に夢中なのと、話していると頻繁にミゲルという他の女の名前が出るので、流石にこれはないと思われている。

 最新の科学を利用したトレーニングの効果で、現在の強さは戦闘力にして80。原作で悟空が亀仙人に弟子入りして、天下一武道会に出場した頃と同じ強さ。



〇ウィロー合金

 ドクターウィローのサイボーグボディに使われていた特殊合金をゲロが解析し、大量生産できるよう改良した合金。戦闘力1万程度の強さの戦士では、凹ませることもできない。
 カッチン鋼と比べると飴細工並みの硬さだが、鋼鉄に比べれば圧倒的に硬い。

 装甲やフレームがこのウィロー合金製の3号ボディは、タイツとターレスの特訓用だったため故意に関節に弱点を残した設計だった。



〇ピラフ城

 城の上層部に世界中の通信を傍受できる設備があり、それで情報収集をしているらしい。他に、悟空達が閉じ込められていた壁が鋼鉄で天井が特殊ガラスの監禁部屋や、ゲーム部屋等がある。



〇牛魔王夫妻の第二子

 名前の由来は猛牛と水牛から。……サンの時に思いついていれば彼女の名前がスイだったかもしれません。
 闘牛からトウだとトワと被るのと、暴牛からボウだと黒くなったり「限界を超えろ」とか言い出しそうなので却下。
 なお、アンケートを実施します。期間は次章が始まるまでです。もし宜しければご協力ください。



 佐藤東沙様、ユウれい様、クロスオーバー大好き侍様、尾羽太様、ヨシユキ様、 Paradisaea様、にしやまな様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。

牛魔王夫妻の第二子は?

  • モウ(男の子)
  • スイ(女の子)
  • まさかの双子!
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