ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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56話 偽ドラゴンボール作戦発動! 願いはいったい誰の手に!?

 フライパン山の麓にある牛魔王の城を出発したタイツ達は、最後のドラゴンボールを目指して旅を続けていた。

「それで、最後のドラゴンボールは何処にあるんですか?」

「確か、これまでと違ってまだ誰も手に入れてなかったはずだよな?」

 プーアルとヤムチャがそう尋ねると、ブルマはドラゴンレーダーを見ながら答えた。

 

「それなんだけどね、去年とは位置が大きく動いているから、誰かが見つけて持ち出したみたいなのよ」

「え? 誰かって、誰だ?」

「あたし達の知らないどこかの誰かよ。お爺ちゃん達じゃないのだけは確実」

 

 去年起きた『神龍の伝説』の時に、ゲロが発明したドラゴンレーダーを参考に自分用の携帯型レーダーを開発したブルマは、今回の旅のためにより高精度なレーダーを開発した。

 その性能を確かめるためにドラゴンボールの位置を何度か測っていたのだが、その反応の一つが短期間で大きく位置を変えていたのだ。

 

「地図で確認したら、森の中からいきなり砂漠に移動していたから、川に流されたとか風に攫われたとかじゃなくて、確実に誰かが動かしたはずよ」

 

「へぇ、それは面白そうだな。最後の最後でようやく冒険らしくなってきたじゃないか」

「その誰かって、強えのかな? オラ、強い奴だといいなぁ」

 ブルマの説明を聞いて、ラピスはニヤリと不敵に笑い、悟空はワクワクした様子で強敵が現れる事を期待しだした。ヤムチャ、そしてターレスも口には出さなかったが顔つきを見れば似たような事を考えている事は分かる。

 

「男ってこれだから……確かに、このままあっさり集まっちゃうと物足りないとは思ってたけど」

「確かに、今までは冒険じゃなくて稽古付きの旅行だったね」

 しかし、ブルマやラズリもせっかくの冒険なのでもう少し刺激が欲しいとは思っていた。

 

「おいおいっ、それでその誰かが滅茶苦茶悪い奴だったらどうするんだよ!? ドクターフラッペとか、魔族とか!」

「その時は決まってるだろ。……ぶっ潰してドラゴンボールを頂くのさ」

 悲鳴のような声をあげるウーロンに、ターレスが滅茶苦茶悪そうな顔で答えた。なお、彼らはドクターフラッペの正体がゲロだとはまだ知らない。

 

「う、腕がなりますね」

「サタン君、ターレス達に無理に合わせなくていいわよ。ドラゴンボールを持っているのが悪い奴とは、まだ決まってないんだから」

 

 そしてドラゴンレーダーの反応を頼りに進んだタイツ達は、砂漠を入ってすぐの場所に建っている屋敷を見つけた。窓の少ない台形の屋敷の中に、ドラゴンボールの反応と平均的な大きさの気が三つ。

「これは……悪い奴のアジトには見えないわね」

「とりあえず、話を聞いてみましょう。すみませーん」

 

 タイツが家のドアを叩くと、中から「は~い」と返事が聞こえ、すぐに扉を開けて黒い髪の美女が現れた。

「旅の方ですか? ここは考古学者のシュウ博士の住まい兼研究所で、私は博士の助手をしているマイと申します」

「考古学者?」

 期待していた強敵や予想していた悪人とはかけ離れた人物の登場に、戸惑うブルマ達。

 

「ええっと、私達、実はドラゴンボールを集めて旅をしている者なんですが……」

「まあっ! ドラゴンボールを! 実は私達もドラゴンボールを考古学的に研究しているんです! 是非話をお聞かせください! 博士っ、シュウ博士! お客様ですよ!」

 

 助手を名乗ったマイは、屋敷の中にタイツ達を招き入れながらシュウ博士とやらに呼びかける。その様子をタイツとターレスは何処か胡乱気な様子で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

「私がドラゴンボールを研究している考古学者のシュウです。此方が使用人のピラフです」

「よろしくお願いします」

 白衣にグルグル眼鏡をかけた犬のシュウ博士に、悟空と同じくらいの背の青い肌に尖った耳をしてピラフが自己紹介をする。

 

「シュウ博士って……」

「知ってるだか、ブルマさん!?」

「ううん、聞いた事も無いわ」

 意味ありげにシュウ博士の名前を呟いたブルマに聞き返したチチだったが、彼女の答えに思わず肩を落とした。

 

「そもそも、専門が違うもの。有名な博士や教授だったら、名前ぐらい聞いたことがあるはずだけど」

「お爺ちゃんやパパの口からも聞いたことが無いわね」

 天才科学者の娘であるタイツとブルマ。特にブルマは自身も天才科学者の一人でもあるが、科学には詳しくても科学者に詳しい訳ではなかった。

 

「まあ、仕方ないでしょう。私は研究が学会に認められず、科学雑誌でも相手にされていませんから」

 シュウ博士はそうため息交じりに言うが、気を悪くした様子はなかった。むしろ、何故かほっとした様子だった。

 

「それで、皆さんはドラゴンボールを集めているとか。条件次第では私が発見したドラゴンボールと、情報を提供しても構いませんぞ」

「いえ、あたし達、もうドラゴンボールを六つ手に入れていて、あなたの持っているボールで最後なんです」

 

「「「な、なんだってー!?」」」

 タイツの言葉に、何処かわざとらしく驚くシュウ博士達。

「我々の所にあなた達が来た目的は、てっきりドラゴンボール集めに協力してほしいからだと思っていましたが、まさかもう集め終わっていたとは思いませんでした!」

「シュウ博士、是非見せてもらってはどうでしょうか!?」

 

「そ、そうだな。皆さん、どうか皆さんが集めたドラゴンボールを見せてもらえませんか?」

「その前に……何故ドラゴンボールの研究をしているのか、説明して。納得したら、ドラゴンボールを見せてあげる」

 タイツが油断なくそう言うと、シュウ博士達は数秒制止してから語りだした。

 

「それは……ロマンです。七つ全てを集めると龍の神が現れ、どんな願いもかなえてくれる。そんなロマンあふれる伝説の秘宝が存在するのか、確かめたかったからです」

 シュウの説明に、なるほどと頷くサタンやラピス。彼らはロマンという言葉に共感を覚えたらしい。

 

 だが、当然全員がそれを信じたわけではない。ブルマは黙っているが、タイツは質問を続けた。

「じゃあ、ドラゴンボールを使って叶えたい願いは無いの?」

「ええ、まあ。しいて言えば、神の龍をこの目で見たいですね。もちろん撮影もして……それと、ドラゴンボール自体の記録も取りたいです!」

 

「お金とか、名声とか、世界を征服したい、とか思ってない?」

「お、思ってません!」

「そ、そうですよ! 世界征服なんて考えた事もありません!」

「まったくだ! そ、それに金や名声はドラゴンボールの伝説が真実だと証明できれば、手に入る! そうですよね、博士!?」

「そ、そうです! ピラフさ……んの言う通り!」

 

 世界征服という言葉に過剰反応するシュウ博士達の様子に、タイツは彼らに対する疑いを強くした。

 しかし、疑わしいからと言って証拠も無く殴ってはいけないし、ドラゴンボールを奪うなんてことは論外だ。

 

(ブルマ、お爺ちゃんはなんて?)

(シュウ博士、って考古学者は聞いたことが無いって。少なくとも、ここ数十年は)

(なら偽者ね)

 

 ブルマが黙っていたのは、テレパシーでゲロにシュウ博士なる考古学者の事を知っているか聞くためだった。

 彼女達が実の祖父同然に思っているゲロは、実は数々の古文書を解読するなどして考古学にも詳しい。……本当は、「古文書に記されていた」と様々な事を誤魔化す口実に使ってきたので、「嘘だとばれないよう辻褄を合わせるため」に学んでいる内に詳しくなったのだが。

 

 詳しくなった経緯はともかく、ゲロの知識量は確かだ。その彼が知らないなら、シュウという考古学者は本当に存在しないだろう。

 

(凄い怪しいけど、どうする? 問い詰める?)

(もうちょっと様子を見ましょ。ブルマはドラゴンボールの反応を確認していて。気の感知はターレスやラズリに頼むから)

(分かった)

 

「あの、それであなた達がドラゴンボールを集める目的が、一刻も早く願わなければならない、という訳でなければその前にドラゴンボールを見せてほしいのですが。

 ドラゴンボールは願いを叶えると、世界中に飛び散り、一年後までただの石になってしまうそうですから」

 

「そっか、願いを叶えたら一年経つまで見られないもんな」

 悟空がそう相槌を打つ。この歴史では孫悟飯が生きているため、彼にとって四星球は祖父の形見ではない。そのため、使った後飛んで行ってしまう事にあまり頓着していなかった。

 ただ物心ついた時から家にあったので、一年後に拾いに行きたいとは思っているが。

 

「あ、後、色々調べていたら日が暮れてしまうので、出来れば神龍を呼ぶのは明日の昼になってからお願いしたいなと」

「なんで昼なんだ? 夜でも神龍は呼べるだろ?」

「古文書には『神龍を呼び出すと辺りが夜のように暗くなった』とあるので、それが本当かどうかも確かめたいと思いまして。昼の方が、検証しやすいな~っと、思う次第です」

 

「も、もちろん、皆さんが泊まる部屋はご用意します!」

「それに食事も精いっぱいご用意しますから、どうでしょうか!?」

 シュウ博士達の主張は彼が本当に考古学者でドラゴンボールについて研究しているなら、納得できるものだった。

 

 タイツは「そうね、ちょっと考えさせて」と考え込む様子を見せながら、テレパシーでブルマ達と相談を始めた。

(どうする? 今のところは怪しいだけで、悪い事をしている確証は無いけど)

(シュウ博士って考古学者はいなかったんだろ? それが俺達を騙そうとしている証拠じゃないのか?)

(ヤムチャ先輩、それはあのシュウって人が大学で博士号を持っていない、自称学者なだけで、悪気はない可能性も……)

「オラは信じてもいいと思うな。そう悪い奴には見えねえし、飯を用意してくれるって言ってるし」

(悟空さっ! 口に出てるべ!)

 

 相談するが、結局シュウ博士達が怪しいけれど悪人である証拠が無いので、倒すなどしてドラゴンボールを奪う事は出来ない、という意見でまとまった。

 タイツ達には、シュウ博士が何か企んでいたとしても対処して乗り越える自信があった。彼女達から力づくでドラゴンボールを奪う事が出来る悪党は、現時点で地球上には存在しない。それを知っているからだ。

 

 原作のように、部屋に閉じ込められて睡眠効果のある毒ガスを噴射されても、タイツとブルマが瞬間移動で皆を外に連れ出せば回避できる。

 さらに、去年ボンゴ達にドラゴンボールを盗まれた苦い経験から、思いつく盗難対策は講じている。ドラゴンレーダーに、各ドラゴンボール反応の距離が著しく変化した場合、アラームが鳴る盗難防止システムを搭載してあるのだ。

 

 これで万が一ドラゴンボールを盗まれても、すぐに気が付く事が出来る。

 

(とりあえず、ドラゴンボールを見せましょう)

(大丈夫か?)

(多分ね。それに、ドラゴンボールから神龍を呼び出したら絶対気が付くし)

 

 タイツ達はドラゴンボールを使うとどうなるのか知っていた。地球のではなく、ナメック星のドラゴンボールだが。

 それによって、神龍がどれほど派手に現れるか分かっている。シュウ博士がもしタイツ達の隙を突いて神龍を呼び出して願いを叶えようとしても、その前に止める自信があった。

 

(もちろん、食事は遠慮するけどね。泊まるなんてもってのほか。私達のドラゴンボールも持って、ホイポイカプセルの家で過ごすわ)

(でもよ、せっかくご馳走を食わせてくれるって言ってるんだし……)

(悟空さっ! 悟空さにはオラがもっと美味い物作ってやるべ!)

(ならいっか)

(もう胃袋を掴まれてやがる……)

 

「分かりました。ドラゴンボールを見せてあげる。でも、その後あなたが見つけたボールと願いを叶える権利を貰うのに、泊まらせてもらうのは悪いから遠慮するわ。ホイポイカプセルの家も持って来たし」

 相談(シュウ博士達から見ると、悟空以外は考え込んでいただけ)を終え、タイツが代表してそう答えるとシュウ博士は残念そうに肩を落とした。

 

「そうですか……では、さっそくこの台にドラゴンボールを置いて頂けますか? ピラフっ、私達が発見したドラゴンボールを持ってきなさい!」

「はい、ただいま!」

 

 部屋の中央にある台に、ピラフが持って来た一星玉を置く。それが本物である事をレーダーの反応で確かめてから、タイツ達も自分達のドラゴンボールを台に乗せた。

「おお、これがドラゴンボール!」

「七つ揃った事で共鳴し、光っている!? どうしましょうっ!?」

 

「どうもしないでいいわよ。どうにかしたら神龍が出ちゃうじゃない」

 他のドラゴンボールが近くにある時に何らかの刺激を受けると共鳴して光る事があるが、永遠にそれが続くわけではない。

 シュウ博士達はそれを知らなかったが、タイツ達からそれを説明されると「そうなんですか」と落ち着きを取り戻した。

 

「では、さっそく……二星球の重さは……直径は……」

「博士、撮影します」

 シュウ博士と助手のマイは、ドラゴンボールの重さや大きさを測って、写真撮影をして記録し始めた。

 

「なあ、ドラゴンボールって星の数以外同じだよな?」

「あれが考古学、なのか?」

「これは確かに、日が暮れそうだな」

 そうこうしている内に小さな窓から見える空は赤くなり、次第に暗くなっていく。そして、完全に闇に覆われた頃にある変化が起こった。

 

 突然明りが消えて、室内が暗闇に満たされたのだ。

「なんだ!?」

「発電機の故障でしょう。ピラフ、二階に行って様子を見てきなさい。」

「はいっ、ただいま!」

「きゃあっ! 私に触ったのは誰ですか!?」

「ウーロン! ダメじゃないか!」

「ええっ!? 俺じゃないぞ!?」

 

 視界が封じられた事で、騒ぐシュウ博士達。マイが悲鳴をあげて、プーアルがウーロンの仕業かと声をあげるが、彼以外は冷静さを保って行動していた。

 

 気を探ってシュウ博士を含めた全員の位置を確認し、ブルマは咄嗟にレーダーを確認してドラゴンボールが移動していないか確かめた。気を発しないロボットがいないか耳を澄ますのは、シュウ博士達が大声を出して物音を立てたために上手くいかなかったが。

 

 だが、すぐに電気が点いた。

「発電機が直ったようですね。ピラフ、お前はそのまま二階で発電機の様子を見ていなさい!」

「すみません、椅子が当たっていたのを勘違いしたみたいです。オホホホ」

 気の位置に不自然な点はなく、ドラゴンレーダーの反応も変わらなかった。

 

 

 

 

 

 

 シュウ博士という考古学者を知っているかとブルマにテレパシーで尋ねられ、知らないと答えた儂は4号とスパイロボットで現地の映像を眺めていた。

 シュウ博士、助手のマイ、そして使用人のピラフというのはピラフ一味の変装であるのは確実だが、ブルマにそれを教えるのは彼女達のためにならない。試練は自分達で乗り越えてこそ為になるのだ。

 

 ……それは建前で、儂が彼らの正体を知っている理由が説明できないから、というのが本音だが。

 

 もちろん、万が一の事態に備えて子供達をフォローできる体制は整え終わっている。もしピラフがドラゴンボールに何か願っても、その願いを打ち消すつもりだ。

 ナメック星のドラゴンボールを使って。

 

 ピラフの願いはおそらく世界……つまり地球の征服。願いが叶っても、その影響力は地球だけに留まるはずだ。ナメック星には何の影響も無いだろう。

「しかし、神龍に世界征服の願いを叶えてもらった場合、地球はどうなるのでしょう?」

 4号がふと思いついたようにそう言い、首を傾げた。

 

「たしかに、世界征服の願いを神龍がどんな形で叶えるのか気になるな」

 世界征服、つまり地球の支配者となる事だが、ドラゴンボールでもピラフ大王に忠実な兵士や官僚を無から生み出す事や、歴史を改変してピラフ大王が昔から地球の支配者だった事にする事は出来ないだろう。

 

 だから、考えられる可能性としては地球の人々を洗脳して記憶を改竄し、ピラフ大王を地球の支配者だと信じるようにする、という事だろうか?

 

 しかし、地球のドラゴンボールは地球の神様を超える力の持ち主に強引な干渉(殺す、封印する、人造人間を人間にする等)は出来ないはずだから、儂等の記憶を改竄や洗脳は出来ないはずだ。その場合……ピラフ大王は万が一タイツ達を出し抜いて願いを叶える事を成功しても、タイツ達に捕まる事になるな。

 

「原作とは違い、地球の神を超える力の持ち主がゴロゴロしておるからな。今の地球は」

「そう考えると、私達は世界征服を未然に防いできたと言えますね」

 そんな雑談をしながら画面を眺めていると、次第に日が沈んで夜になり……ふむ、ピラフ大王が動いたな。

 

「ほほう、ピラフ達も考えたものだな」

 屋敷の屋上が光ったかと思うと、神龍が出現したのだ。去年のボンゴ達といい、悟空達に対して力づくではなく策を練って出し抜こうとする者が続くな。

 

「原作と違い、戦っても悟空達に勝てない事を事前に理解しているため、頭を使って出し抜こうとする傾向が強まるのでは?」

「ふむ、確かに。原作では、ピラフ大王やボンゴ達は悟空達の強さを知らなかったが、この歴史では悟空達は天下一武道会に出場しているからな」

 

 原作と違い、悟空達の存在と強さが知れ渡っているために、ピラフ大王やボンゴ達が原作よりも策を練る傾向にある。納得できる推測だが、だとすると悟空にとってはかなり不本意な展開だろう。

 これはレッドリボン軍編も気をつけた方が良いかもしれんな。

 

 

 

 

 

 

 時間は僅かに遡り、照明が点いてから少し経った頃。まだシュウ博士は悟空達には何が楽しいのか理解不明なドラゴンボールの計測や撮影を続けていた。

 その時、ターレスが異変に気が付いた。

 

「おい、ちょっとそのドラゴンボールを寄越せ!」

「わっ!? ま、まだ撮影の途中ですよ!?」

 突然シュウ博士を押しのけ、台の上のドラゴンボールの内一つを奪うようにして掴み取る。

 

「クソっ、やられた! 偽物だ! ボールの星の並び方を見てみろ!」

 そして、そう吐き捨てるように言うと、タイツに偽物だというドラゴンボールを投げ渡した。

「本当だわ! これは偽物よ!」

 タイツが受け取ったのは、四星球。本物なら、星は四角形の頂点と同じ位置にある。しかし、今彼女の手にある四星球の星は、四つの星が直線状に並んでいた。

 

「本当だっ! 六星球も、七星球も、みんな星が一直線になっている!」

 慌てて他のドラゴンボールを確認したヤムチャだが、全て星の並び方が直線になっていた。

 

(ぴ、ピラフ様が作った偽ドラゴンボールがばれた!)

(偽ドラゴンボール作戦もここまでか!)

 偽ドラゴンボール作戦。それは、人畜無害で真っ当な考古学者とその助手に化けたシュウとマイが、ドラゴンボールを偽物にすり替え時間を稼ぎ、その間に使用人に化けたピラフが神龍を呼び出して願いを叶えるという作戦だ。

 

 短期間で本物と同じ大きさに重さ、感触の偽ドラゴンボールを作る事に成功したピラフだったが、彼がその参考にしたのは星が一つしかない一星球。そのため、二星球以上の星の並び方は予想するしかなかったのだ。

 

「そんな、レーダーの反応は動いてないのに! ……しまったっ! 本物のドラゴンボールは上よ!」

 ブルマのドラゴンレーダーは高精度だが、決定的な弱点があった。それは、レーダーの画面が二次元である事。つまり、ドラゴンボールの反応までの距離や方角は分かっても、ドラゴンボールが上下どちらにあるのか分からないのだ。

 

 戦ったら絶対に勝てないと確信していたピラフ大王は、天才的と自称する頭脳を捻ってレーダーの弱点に気が付いた。そして、ボールを乗せている台や真上の天井に細工を施し、照明を落としてシュウとマイが大騒ぎして、タイツ達に気づかれずに本物を屋敷の屋上に上げる事に成功したのだ。

 

「ピラフ様のところには行かせないぞ!」

「我々が相手だ!」

「こいつらは無視して上に行くぞ!」

「ああ、もう遠慮している場合じゃないな!」

 

 手裏剣や拳銃を構えるシュウとマイだったが、ターレスは二人を無視して屋敷の壁を気功波で吹き飛ばし、外に出た。

 上を見上げると、屋敷の屋上ではドラゴンボールが光り輝き、神龍が現れるところだった。

 

『さあ、ね――』

「このピラフ大王を、世界の支配者にしろー!」

「しまったっ、間に合わなかった!」

 

 そして、神龍が言い終わるのを待たずにピラフが願いを言った事で、止める事が出来なかった。

 原作ではピラフ大王がモジモジしてなかなか願いを言えなかったために、ウーロンが間に合った。しかし、この歴史のピラフ大王はタイツ達に止められる前に願いを言わなければならないと焦っていたため、恥ずかしがる余裕が無かったのだ。

 

「そんなっ、あんな奴が地球の支配者になってしまうのか!」

 そうヤムチャが嘆く声を聞きながら、ピラフ大王は自身の勝利と薔薇色の未来を確信した。

 

『その願いを叶える事は出来ない。他の願いにしろ』

 そう神龍に願いを拒否されるまでは。

 

「な、なんだと!? どんな願いでも叶えてくれるんじゃなかったのか!?」

 愕然とした様子で神龍に聞き返すピラフ。タイツ達も、驚きのあまり彼を止めるのを忘れている。

『私は地球の神によって作られた。そのため、神の力を大きく超える願いを叶える事は出来ないのだ』

 

「世界征服は神の力を超えた願いだというのか!? ドラゴンボールを集めて王様になった奴がいると、伝説にあるじゃないか!」

『昔と今では、状況が異なるのだ』

 そう答えた神龍は、何故ピラフを世界の支配者にできないのか詳しく説明し始めた。

 

 今現在世界で最も影響力を持ち、自身の手足となる組織を持つのはドクターゲロ。彼はただの金持ちや科学者ではなく、GCコーポレーションという世界的超企業の会長であり、天下一武道会優勝経験者。さらに、GCGという世界一の軍事力を誇る警備部を指揮下に置いている。

 また、ゲロは特別宇宙外交大使に就任し、グルメス公国の復興事業を主導するなど、国政に深く関与している。

 

 そのため、ゲロを従えずにピラフを世界の支配者にする事は出来ない。だが、ゲロは地球の神を大きく超える力の持ち主であるため、神龍ではどうにもできない。

 その説明をスパイロボットの中継によって聞いたゲロ本人は乾いた笑みを浮かべていた。

 

「まさか、世界征服の野望を本当に防いでいたとは気づかんかった」

「これなら、もしレッドリボン軍がドラゴンボールを集めて同じ事を願っても心配いりませんね」

「うむ。地球国の国王様の耳に入ったら、面倒だから後でタイツ達には口止めしておくか」

 

 そして、神龍の説明を聞き終わったピラフは乾いた笑みを浮かべる余裕もなかった。

『さあ、他の願いを言え。どんな……世界の支配者になる事以外なら、どんな願いも叶えてやろう』

 しかし、そんな彼に改めて願いを言うよう促す神龍。

 

「え、ええ……いや、世界の支配者になること以外の願いなんて……」

 世界征服が願いだったピラフは、すぐに他の願いを思いつく事が出来ない。

「ここに居るラズリとラピス以外の地球人の体を、地球人とサイヤ人の良い所取りにして!」

 だから、我に返ったタイツが願いを言う事が出来た。

 

「あっ! しまった、『女の子』って限定するのを忘れてた! ゴメン、ヤムチャ、サタン!」

 もっとも、急いでいたためやや言い間違えてしまったようだが。

 

『容易い願いだ』

 神龍の目が赤く光ったかと思うと、『地球人』という条件に合う者達に『サイヤ人』の、タイツの考える良いところの生態が混じった。

 

「なっ、俺も!?」

 やったとガッツポーズをするブルマとチチに混じって、ヤムチャとサタンが戸惑って声をあげる。

 

『願いは叶えてやった。さらばだ』

 混沌とした状況の中、願いを叶え終えた神龍は姿を消し、ドラゴンボールは空に舞い上がると世界中に飛び散ってしまった。

 ピラフは神龍の消えた夜空を呆然とした様子で眺めたまま、動く様子はない。

 

「それで、どういうことだ? まさか、まだ秘密だなんて言わないだろうな?」

 そのピラフを放置して、ターレスはとりあえず差し迫った問題は無くなってしまったからと、タイツに事情の説明を要求した。

「うん、実はね、きっかけはチチちゃんと悟空君の婚約だったんだけど……あんたやギネさんが教えてくれたじゃない、サイヤ人は若い頃……青年期が長い種族だって」

 

 戦闘民族であるサイヤ人は、寿命そのものはだいたい地球人と同じかやや長い程度だ。しかし、老化が始まる時期が地球人と比べて遅いため、青年期が長い。ギネによれば、八十歳近くまで若々しい肉体を維持できるらしい。

 

「若さの問題か? なら、亀仙人の爺さんのところの不死鳥に触れれば問題ないはずだろ」

 しかし、不死鳥に触れて不老長生を得れば若さの問題は解決するとターレスは思っていた。だが、タイツ達にとってはそうでもなかった。

 

「ダメよ。それだと、寿命は長くなっても年の取り方は変わらないじゃない」

「あ? どういうことだ?」

「ターレス兄さん、例えば孫君とチチちゃんが不老長生になった後、四十歳相当になったとするじゃない。その時孫君はサイヤ人だから若く見えるけど、チチちゃんは四十代に見えちゃうって事よ」

 

 不老長生は不老ではなく、ゆっくりと老化する。その時、元がサイヤ人の悟空は四十歳や五十歳相当になっても二十代の若い肉体を保っていられる。しかし、地球人のチチは四十歳相当の歳になれば肉体は四十歳、五十歳相当の歳になれば、肉体は五十歳相当に老けてしまう。

 

 それが嫌だったので、タイツ達はドラゴンボールを使ってサイヤ人の生態を得る事にしたのだ。

「『サイヤ人にして欲しい』じゃなくて、『地球人とサイヤ人の良い所取りにして欲しい』って願いにしたのは、性格が変わっちゃったら困るなって思ったからよ」

 

「お前らの性格は元々気が強くて好戦的だっただろ。イテ!?」

 余計な茶々を入れたウーロンをチョップしてから、ブルマ達は説明を続けた。

「多分、今のあたし達は地球人とサイヤ人のハーフのような状態だと思うわ」

「本当はあたし達三人だけのはずだったんだけど、急いでいたから『あたしとブルマとチチちゃん』って名前を言う余裕が無かったのよね」

「それでヤムチャさんとサタンさんまでサイヤ人とのハーフになっちまっただな。すまねぇ」

 

「おい、俺とラズリを除いたのは何でだ?」

「あたし達はパパが改造してくれるからだよ」

「それもそうか。チチ達みたいに尻尾が生えたら面白いかもと思ったんだがな」

 

「あっ! 本当だっ、チチ、おめぇ尻尾が生えてるぞ!」

「あんれまあっ!? 悟空さと同じ尻尾が生えてるだよ!」

 「良い所取り」という願いで尻尾が生える事まで考えていなかったチチは、腰から猿の尻尾が生えている事に気が付いて驚き声をあげた。

 

「悟空さとおそろいだべ!」

「へへっ、そうだな!」

 しかし、尻尾が生えた事はチチにとって良い事だったらしく、すぐに悟空と笑い合っている。

「そうだっ、ブルマやヤムチャは尻尾が生えてねえのか?」

 

「そう言えば、お尻の辺りが……生えてる!?」

「あたしも。うーん、次のグラビア撮影の時、なんて言って説明しようかしら?」

「うおっ、ほんとだっ、俺にも尻尾が……うぐ、力が抜ける……」

「ヤムチャ様―っ!?」

「み、ミゲルちゃん、尻尾がある男でも好きになってくれるかな……?」

 

「尻尾まで生えるとは思ってなかったんだけど……多分、尻尾があるのを『良い所』だとあたしが思ってたからって事よね」

「これからはお前もブルマの目薬の世話になるんだな。ところで、チチは分かった。だが、なんでお前とブルマまでサイヤ人と年の取り方を合わせようとしたんだ? 瀕死から回復する度にパワーアップする特性が欲しかったからか?」

「そ、それは――」

 

 タイツが頬を赤らめてターレスの質問に答えようとしたその時……。

 

「ええいっ! ワシを無視してイチャイチャしおって! もう許さん! ピラフマシン、発進!」

 いつの間にか正気を取り戻したピラフが、いざという時のために持っていたリモコンのスイッチを怒鳴りながら押していた。




〇考古学者シュウ博士の屋敷

 ピラフ達が「偽ドラゴンボール作戦」のために作った建物。そのため、玄関から応接間とその間の廊下、キッチンや寝室等はしっかり作ってあるが、それ以外は手抜き。
 もしタイツ達が歓待を受けていたら、睡眠薬入りの食事を出す予定だった。



〇偽ドラゴンボール作戦

 タイツ達に、『証拠が無ければ無茶はしない』という倫理観がある事が前提になっている作戦。相手がレッドリボン軍やボンゴ達なら絶対通じない。
 また、ブルマのドラゴンレーダーが、ボールの反応を距離だけではなく高低も判別できる三次元的な表示方法だった場合、一瞬で見抜かれていた。

 そのため、ピラフ達にとって分の良い賭けではなかった。ただ、ゲロと4号が推測した通り、戦ったら絶対勝てない相手を出し抜くために必死に考えて捻りだした作戦なので、「これに賭けるしかない!」と考えていた。



〇世界征服

 この作品の地球を神龍に願って支配するのは、作中にある通りの理由で不可能ではないかなと思いました。……感想でも予想されていましたが、その通りです。
 また、ゲロ以外にもフライパン山一帯を実質的に治めている牛魔王も地球の神様の力を超えています。

 ただ、ピラフ大王の願いが「自分を地球国国王にしてくれ!」だった場合は可能だったと思います。



〇タイツ達のサイヤ人化

 こちらは、タイツが地球の神様を超える力の持ち主だったとしても、彼女の力を直接上下させる願いではないので可能だと考えました。
 結果、タイツ、ブルマ、チチ、ヤムチャ、サタン、そして地球人一名がサイヤ人とのハーフになりました。プーアルとウーロンは地球人ではなく妖怪、シュウは犬、ピラフは魔凶星人か暗黒魔界人だと判断されたので、変化していません。



〇サイヤ人の歳の取り方。

 十五歳から十八歳になるまで背の低い子供の姿で、青年の姿になってから八十歳ごろまで老化しない。ただ、ナッパやパラガスなど、二十代には見えない外見の者も多い。

 地球人(現代日本人)の平均寿命に至ってから急速に老け始めるので、地球人が七十代で老衰によって死ぬ場合もある事を考えると、総合的にサイヤ人は地球人より長生きと言える。
 ただ、サイヤ人の場合は八十代になって老いるより早く戦闘で亡くなってしまう場合が多いため、平均寿命では地球人を下回る。




 PY様、佐藤東沙様、kubiwatuki様、Mr.ランターン様、シロハチ様、Veno様、空きっ腹に蜂様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。

牛魔王夫妻の第二子は?

  • モウ(男の子)
  • スイ(女の子)
  • まさかの双子!
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