ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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59話 クリリン登場! 大魔王、衝撃の真実を知る

 ゲロがピッコロ大魔王の封印されている電子ジャーを確かめに行っている頃、悟空とチチ、サタンはカメハウスに向かっていた。

 

「それで、行くのはカメハウスで良いんか?」

「はいっ! 修行中は陸の家で暮らしていますが、待ち合わせの場所はカメハウスになってます!」

 以前は俗世から物理的にも離れた小島にあるカメハウスに定住していた亀仙人だが、約十年前から新たな弟子を探して旅をしたり、とった弟子の修行に適した土地に引っ越したりして、空ける事が多くなっていた。

 

 しかし、亀仙人にとってカメハウスは愛着ある我が家であると同時に、俗世間から離れてのんびり暮らすには丁度いい場所なのだろう。不死鳥に留守を任せつつ、自分自身も数か月ごとに帰ってきては手入れをして維持管理をしている。

 おそらく、弟子の育成が落ち着いたらまたここに住むつもりなのだろう。

 

 ……少々工事をして小島の近くの海上に重力トレーニング室を設置すればカメハウスでも修行できるが、牛乳配達や畑仕事等の修行が亀仙流……今は鶴仙流と合流して鶴亀仙流だが……の修行に不可欠だと考えているのだろう。

 

「ところでっ、もう少しゆっくり、そして低く飛んでもらえないでしょうか!?」

「なんでだ? そう言えばおめぇ、初めて会った時も叫んでたな」

「サタンさん、速いのは苦手だべか?」

「そうではなくて……私はあなた達に捕まっていないと、筋斗雲から落ちてしまうんですよ!?」

 

 筋斗雲に乗れないサタンは、悟空の肩に掴まってなんとか落下を免れていた。

 

「そっか、サタンはまだ飛べねぇんだったな」

「なら仕方ねぇべ。落ちたら怪我しちまうべ」

「け、怪我で済みますかね? いや、済むのか」

「おっ、見えてきたぞ!」

 

 見えてきたカメハウスに近づくと、三人の気を感じて亀仙人が浜辺に出てきたところだった。

「おお、よう来た。昨日は何かあったようじゃな。しばらくの間気を感じなくなったが……ん? チチ、サタン、その尻尾は悟空の真似か?」

「へへ、色々あってさ」

「実は……」

 

 かくかくしかじかとサタンが説明すると、亀仙人はカクンと顎を落とした。

「サ、サイヤ人とのハーフに……若者の考える事は破天荒じゃな。……まあ、世界征服よりはずっとマシか。一応聞くが、体調に変化はないな?」

 

「はい! むしろ体の調子が良いぐらいです。大食いにはなりましたが。あと、尻尾の弱点もそのままです」

「それは一大事じゃな。尻尾の方は修行して鍛えるとして……冷蔵庫を増やした方が良いかもしれん」

 亀仙人は悟空がどれほど大食いか知っていたので、彼を本格的に弟子に取るにあたって食料の購入や貯蔵に関して備えてきた。しかし、それが三倍になるなら話は別だ。恐れるべきはサイヤ人の胃袋である。

 

「では、一息入れたら陸地の家に行くとするか。……ん? 誰か近づいて来たようじゃな?」

「お、結構大きい気だな」

 亀仙人達は、ふと島に近づく気に気が付いた。地球人の平均よりもずっと大きい気の持ち主が、悟空達が来たのとは別の方向から近づいてきている。

 

 そちらに目を凝らしてみると、海に浮かぶ小さな小舟が見えた。

「ん~、誰だべ? あ、飛んだ!」

 小舟に乗っている何者かは、そのまま小舟を島に着けようとはせず立ち上がると、なんとカメハウスがある小島に向かって跳躍した。

 

 足場が不安定な小舟から跳躍したとは思えない高さと距離を、くるくると体を回転させながら海を飛び越えた彼は、そのまま砂浜に……頭から突っ込んで上半身が埋まった。

「~っ!?」

「目測を、誤ったんですかね?」

「くるくる回りながら飛んでたせいだべ、きっと」

 

 バタバタと苦しそうに足を動かす謎の人物に、珍獣を見るような視線を向けるサタンとチチ。

「悟空、起こしてやれ」

「よっとっ」

 見かねた亀仙人が悟空に助けるよう言い、彼が砂浜から引き抜くと、現れたのは悟空達と同じくらいの年頃の少年だった。

 

「ぷはっ! し、死ぬかと思った。武天老師様、お初にお目にかかります! 私はクリリンと申します。どうか私を弟子にしてください!」

 そして、すぐに亀仙人に弟子入りを願い出る少年……クリリン。

 

「なに? 儂の弟子に? ふ~む……確かに、儂はやる気と熱意、そして素質のある弟子を求めているが……」

 原作と違い、この世界の亀仙人は自ら旅に出てまでチャパ王やヤムチャ、そしてサタンといった才ある者達を探し、弟子に取ってきた。

 そろそろ新たに弟子をとるのは止めようかなと思っているが、まだ決めてはいない。

 

 それに対してクリリンは、どうやってカメハウスの場所を知ったのかはともかく海を小舟で渡ってくる程熱意があり、気と先ほどの跳躍を見れば鍛えているのは確実。弟子に取るには悪くない少年だと言える。

(しかし、一度に弟子が四人か。一度に四人も教えた事はないからな……いやまあ、サタンはもう半年以上教えているし、悟空とチチは既にかなりの腕前じゃ。このクリリンも、全くの初心者ではない。なら、出来るか?)

 

 そう考え込む亀仙人に、クリリンはもっていた包みを差し出した。

「武天老師様、これはつまらないものですが……」

「ほう、手土産か。こ、これは中々……!」

 亀仙人はクリリンから受け取った包みを、後ろを向いてから解いて中身を確認して、感嘆の声をあげる。

 

 いったい何を受け取ったのかと、好奇心を覚えた悟空達が覗き込むと……エロ本だった。セクシーな女性の写真と刺激的な煽り文句で表紙を飾っている、誤魔化しようのないエロ本である。

「悟空さっ! 見ちゃなんねぇ!」

「ど、どうしたチチ? なんも見えねぇぞ」

「そう言えば、俺が初めて武天老師様と出会ったのも本屋の前だったな……」

 

「良いじゃろう。クリリン、お主を弟子として認めよう。ただ、儂の弟子に成るには二つの試練を潜り抜けねばならん」

 クリリンが何らかの方法で集めたエロ本の質の高さに機嫌を良くした亀仙人は、彼を弟子に取る事に決めた。しかし、その後は彼次第だ。

 

「まず、儂の修行はめちゃんこキツイ。今話題のGCGの採用試験よりもずっときついと評判じゃ。それに耐えられなければ、我が鶴亀仙流で一人前にはなれん!

 そして、儂の弟子に成るにはピチピチギャルを連れて来なければならんが……それはしばらく修行を受けてからでよい。儂に心当たりがあるし」

 

「はいっ! 必ずやり遂げて見せます! 後半は不安ですけど……エッチな本だけじゃダメだったか」

 弟子入りが認められたクリリンは、ほっと安堵した。そして、ようやく亀仙人以外の人物にも注意を向け始めた。

 

「ところで、君達はなんだ? 俺と同じで武天老師様に弟子入りに来たのか? とても武道をやるようには――」

「いや、私は武天老師様の五番弟子のサタンだが」

「すっごく見えます! よろしくお願いします、先輩!」

 最初にクリリンが視線を向けたサタンは、兄弟子だった。

 

 多林寺で兄弟子からいじめられていたクリリンは、即座に掌を返した。もっとも、武道の世界で兄弟子は敬うべき存在なのでそれが普通なのだが。

「せ、先輩……おう、よろしく頼むぞ、クリリン!」

 そしてサタンも初めて後輩が出来た嬉しさから。口調を偉そうなものに変えてクリリンと握手を交わした。なお、彼にとって悟空とチチは、武天老師の一番弟子の孫と二番弟子の娘で、幼い頃から武道を嗜んでいるため、「後輩」とは認識していない。

 

「それで、君達は? き、君のような可愛い女の子が武道をするなんて、と、とても見えないよ」

「可愛いって、オラの事け?」

 次にクリリンが目を向けたのは悟空……を、通り越してチチだった。そして、彼の言葉から分かるように、彼はチチと悟空の事を知らなかった。

 

 映画に出演しているだけではなく、テレビ放映されている天下一武道会本戦に出場している悟空や、五位決定戦まで進んだチチはそれなりの有名人だ。

 しかし、残念なことに多林寺にはテレビは無かった。正確にはあるにはあるが、クリリン達のような門下生が自由に見る事は出来なかった。

 

 そのため、「女の子にモテたいから」武道を始めたクリリンは、悟空より先にチチに声をかけたのだ。

「やんだもう~っ!」

 そして、照れたチチが何気なく突き出した手にぶつかったクリリンは、「うわぁぁぁ!?」と悲鳴をあげながら自分が乗って来た小舟の方へ吹っ飛んでいった。

 

「そんな、初めて会ったのにいきなり可愛いなんて言われたら、オラ困るだよ~。はっ、これがナンパだべか? でも悟空さの前でそんな――」

「チチ、クリリンって奴、海に帰っちまったぞ?」

「やれやれ、女の子だと思って油断しおって。悟空、拾ってきてやれ」

「おうっ!」

 

 その後、悟空は舞空術で海面近くを飛んで溺れかけていたクリリンを拾った。

「はぁ、はぁ、助かった。お、女の子って強いんだな」

「チチは強ぇからな。オラは悟空、よろしくな、クリリン!」

「ああ、それにしても、どうやって飛んでるんだ?」

 

「舞空術ってやつだ。クリリンも修行すればそのうち飛べるようになるさ」

「って、いう事はお前も先輩なのか?」

「ん~? 修業は前からやってるぞ。でも、亀仙人のじっちゃんの所で修行するのは今日からだから、細かい事は気にすんな」

 

 砂浜までに戻る間に交わした言葉で、クリリンは思った。こいつ、実は良い奴なんじゃないか? っと。

「じゃ、じゃあ悟空、あの女の子……チチって言うらしいけど、前から知ってるのか?」

「おう、昔から知ってるぞ!」

 

「も、もしかして付き合ってるのか!?」

「付き合うって、結婚するって事か? だったらそうだな。お嫁に貰うって約束したし」

 クリリンは思った。こいつは嫌いだ、と。

 

「離せーっ! 俺は泳いで戻る! お前に借りなんか作ってたまるかっ!」

「ど、どうした? 暴れんなって」

「うるせえっ! お前なんて嫌いだ!」

「えぇ~? いきなりなんだよ? 妙な奴だな~」

 

 何とかクリリンを砂浜に降ろした悟空は、何故彼に嫌われたのか分からず首を傾げていた。

「さっそく仲良くなったようじゃな。感心。感心……むっ! 儂はちょっとゲロと話があるから、クリリンの服でも乾かして待っておれ」

 

 その時、ゲロから「ピッコロ大魔王の封印を何者かに奪われた」という知らせがもたらされた。そして話し合った結果。地球の神様でもその所在は分からず、占い婆の占いでも映らなかったため、犯人は歴史改変者に操られたコーチンであると推測された。

 

 コーチンやピッコロ大魔王の所在を探す方法として、ナメック星のドラゴンボールを使う事が検討されたが、歴史改変者の力はナメック星の神龍の力も超えているだろう事から中止となった。

 そしてもう一つ検討されたのは、等しい知識を持つズノー様に尋ねる方法だった。ズノー様なら、本来なら知り得るはずがない事も知っている。コーチンが何処に潜伏し、ピッコロ大魔王がどんな状態なのか分かるだろうと。

 

 しかし、そのズノー様がいる惑星が何処にあるかゲロは未だに発見できていなかった。ナメック星に比べれば近いとはいえ、地球のある星系とは別の星系にあるのは確実。ニオン達地獄にいるサイヤ人達も知らなかったので、人工衛星で広い宇宙を地道に探している。

 

 だが、ここで占い婆がある事に気が付いた。

『そう言えばゲロよ、お主の妻とサイヤ人達に頼んで、それぞれ天国と地獄でそのズノー様とかいう奴が何処に居るのか知っている者を探してもらったらどうじゃ?』

『そっ、その発想はなかった!』

 

 天国と地獄は、この第七宇宙全ての知的生命体が死後に向かう場所だ。その知的生命体には、ズノー様に過去に質問をした人々も含まれている。ズノー様が一日で何人の質問に答えるのかは定かではないが、原作によっては何年も予約待ちするほどなのだから、膨大な数の客がいたはずだ。

 

 あの世がどれほど広大でも、探せば見つかる可能性が高い。

『では、天国では妻とマロンに、地獄ではサイヤ人達にそれぞれ手紙を供えて探すよう頼んでみましょう。ついでに、出来れば魔術師も探してもらえるよう頼んでみます』

『魔術師を? 何故じゃ?』

 

『魔力を計測可能な機器を開発するために、データが欲しいのです』

『魔力を、科学で……?』

 とにかく、ズノー様の捜索は大きく進む望みが出てきた。ただ、質問するのに予約が必要な場合は質問するまで何年も待たないといけないため、結局ピッコロ大魔王の復活に間に合わない可能性もある。

 

 そのため、やはり歴史改変者とコーチンがピッコロ大魔王を使って何を企んでいても負けないよう、各々が備えるという事で落ち着いた。

 具体的には、強くなるための修行に、もしもの時のためにドラゴンボールを確保しておくこと、そして無駄かもしれないが地道に捜索し続ける事になった。

 

「よし、とりあえず話は終わったのでそろそろ出発するぞい。次にここに戻ってくるのは夏じゃから、忘れ物はせんようにな」

「夏に何かあるんだべか?」

「私の友達が遊びに来るんですよ」

 

「サタンの友達かぁ~、ジャガーみてぇに強いかな?」

「いや、ミゲルちゃんは武道をしてない普通の女の子なので、稽古とか組手はしないでくださいね!?」

 

「サ、サタン先輩も……!? お、俺も強くなってガールフレンドを作るぞー!」

「これ、武道は強くなってモテモテになるためにするものではない!」

 そう話しながら、亀仙人達はホイポイカプセルで出した飛行機に乗って陸地にある家へ向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 その頃、レッドリボン軍では情報部が掴んだ妙な情報によって上層部が集まっていた。

 会議が開かれたのは、夜の砂漠で起きた謎の発光現象、そして世界中で謎の光る飛行物体が観測されたためだ。ピラフ大王が呼び出した神龍と世界中に飛び散ったドラゴンボールは、都市部で真昼間に起きるよりはマシだったが、やはり目立っていた。

 

「情報部の分析ではただの自然現象や、ドクターゲロやブリーフ博士が開発した新兵器や宇宙船、そして鶴亀仙流関係者が放ったエネルギー光線のどれかではないかとされているが、根拠はない」

 トレーニングマシンで大腿四頭筋やハムストリング……下半身の筋肉を念入りに鍛えながら、レッド総帥は話を続ける。

 

「だが、儂は昨日起きたのはそのどれでもないと考えている。おそらく、ドラゴンボールだ」

「ドラゴンボール!? まさか、おとぎ話が真実だったと総帥はお考えなので?」

「そうだ、ホワイト。ドラゴンボールの伝説は、真実だ」

 集まったホワイト将軍やイエロー大佐達はレッド総帥が断言しても、半信半疑と言った様子だった。そんな部下達の様子を咎めず、レッド総帥はトレーニングマシンから降りる。

 

「総帥」

 そして、ブラックが差し出したタオルとドリンクを受け取る。

「うむ、ご苦労。トレーニングの後に飲むプロテインは最高だな」

 身長、それも脚を伸ばして理想の体型を手に入れたレッド総帥は、ボディビルディングに嵌っていた。「総帥が運動不足では兵に示しがつかんからな」等と言っているが、鏡の前でポージングする姿を見れば彼の本音は明らかだろう。

 

「総帥、今日も素晴らしい肉体美ですわ。でも、お話の続きをしてくださいませんか?」

「うむ、オレンジ、説明を」

「はっ! 皆さんご存じの通り、俺は去年までグルメス王国軍に潜入していましてね」

 

 うっとりとレッド総帥を見つめていたブルー将軍が、オレガノと名乗ってボンゴとパスタの下についていたオレンジ大佐には冷たい視線を向ける。それを無視して、オレンジは続けた。

「その時、ドラゴンボールの捜索を命じられ、様々な伝説や伝承を調べました。それと照らし合わせると、間違いないでしょう。

 それ以上に重要なのが、GCコーポレーションの会長や社長の令息や令嬢……グルメス王国軍を壊滅させた連中が、最近ドラゴンボール集めの旅行をしていたという情報を情報部が掴んでいます」

 

 レッドリボン軍にとって去年グルメス王国軍を壊滅させた悟空達の動向は、ヒーローである桃白白と同じで無視できないものだった。彼らがレッドリボン軍の縄張りに入って世直しを始めたら、そのままの勢いで本部に殴り込みに来るかもしれない。レッド総帥達にとって、悟空達は生きた自然災害に等しいのだ。

 

 そのため、出来る限り情報を集めていた。とはいえ、ゲロのスパイロボットのような便利な小型機器があるわけではない。彼らがタイツ達の旅について知ったのは、彼女達がフライパン山の麓にある牛魔王の町に泊まったその日だった。姫様の婿殿が来たと、ちょっとしたお祭り騒ぎになった為に彼らの情報網に引っかかったのだ。

 

「では、ドラゴンボールの伝説は真実だったと……なら、昨夜何らかの願いが叶えられたはず。奴らはどんな願いを叶えたんだ?」

「そこまでは。伝説では、遥か昔にドラゴンボールを集めた男は王様になったらしいが、俺が知る限り国王は代わっちゃいない。多分、個人的な事でも願ったんじゃないですかね?」

 

「個人的な事? 金はあるだろうから、不老不死とかか?」

「そんなところでしょうよ」

 後日、テレビや雑誌の芸能ニュースでタイツに尻尾が生えた事が判明し、「ああ、タイミング的に考えてこれか」と彼女達が神龍に何を願ったのか判明するのだが、今の時点では推測しかできない。

 

「奴らが何を願ったのかは重要ではない。重要なのは、我々にもドラゴンボールを集める手段があるという事だ。そうだな、ドクター?」

「もちろんだッペ」

 いつの間にかレッドリボン軍の協力者から上層部の一人になったフラッペは、資料を提示しながら説明を始めた。

 

「ドラゴンボールのデータは、去年の段階で手に入っているッペ。これを元に、ドラゴンボールが発する特殊な電波を探知するレーダーを、今日から開発するッペ」

 フラッペ……ゲロは、ドラゴンボールについてレッドリボン軍に隠すつもりはなかった。このまま、約一年後に悟空達にぶつけて、レッドリボン軍をどうにかするつもりなのである。

 

 原作と比べると別人レベルで人が丸くなったレッド総帥だが、それでも性格的に交渉だけで世界征服の野望を諦めるとは思えない。そのため、悟空達をぶつけて「世界征服は不可能だ」と思い知らせて断念させようとゲロは考えたのだ。

 ……タイツ達がサイヤ人ハーフになって、胃が痛い思いをしているはずの時の界王神にとっても優しい選択のはずだ。

 

 もちろん、桃白白が味方である事と悟空達が原作よりも強い事、何よりゲロ自身がレッドリボン軍内部に潜入しているからこそ取れる選択だ。

 

「では、ドラゴンボールにいったい何を願うのですか!?」

「やはり、我らがレッドリボン軍による世界征服ですか!?」

 沸き立つ部下達にレッド総帥は太い笑みを浮かべて応えた。

 

「いや、ドラゴンボールをすべて集めても神龍は呼び出さん」

 だが、なんとここでゲロにとっても計算外の事態が起きる。レッド総帥は神龍に世界征服の野望を叶えてもらう考えはないようだ。それだけなら原作通りと言えるが……。

 

「神龍を呼び出さない!? では、何のためにドラゴンボールを集めるのです?」

「フラッペがこれから開発するレーダーや、オレンジが利用した占い婆の占い……伝説にある王様になった男とは違い、現代ではドラゴンボールを確実に探し出す方法がある。やろうと思えば一年ごとにドラゴンボールを集める事が出来る時代だ。

 我々がドラゴンボールを集めて世界征服の野望を叶えたとしても、一年後には他の誰かにその座を奪われてしまうかもしれん。それでは意味が無いと思わんか?」

 

 たしかにと、ホワイト将軍達だけではなくフラッペに変装しているゲロもレッド総帥の言葉に納得した。

 伝説にある王様になった男は、ドラゴンレーダーどころか飛行機や自動車も無い時代に、世界中に飛び散っているドラゴンボールを何年もかけて苦労に苦労を重ねて探し集めたはずだ。

 

 しかし、今は金さえあれば占い婆に占いを依頼してドラゴンボールがある場所を占い、飛行機で現地に駆けつけ集める事が出来る。そして、天才科学者ならドラゴンボール専用のレーダーも作る事が出来る。

 一般人が集めるのは難しいが、例えばGCコーポレーション会長のゲロのような、天才科学者兼武道家のような人物なら楽々集めるだろう。実際、彼の子供達は旅行気分で集めただろう。

 

「では、イタチごっこになると? ならばなぜドラゴンボールを集めるのですか?」

「決まっている。ドラゴンボールを集めて国王に交渉を持ち掛けるのだ。七つのドラゴンボールの半分……四つを渡す代わりに、我がレッドリボン軍を王立国防軍のトップに据えろとな」

 なんと、レッド総帥がドラゴンボールを使って交渉に臨もうと考えていた。

 

「国王はそれで自らの王位を危うくするドラゴンボールを使われずに済み、我々レッドリボン軍は傭兵団から地球の軍隊を指揮する表の権力を手に入れる! そして地球の軍事を牛耳り、機を待って電撃作戦によるクーデターを起こして王位を簒奪! 世界を手に入れるのだ!」

 

 レッド総帥の描く計画は、原作の彼を知るゲロからすれば彼が考えるとは思えない長期的かつ現実的な世界征服作戦だった。指揮下に入れてしまえば、GCGが人員を派遣して兵士を鍛えている王立国防軍と直接戦わずにすむ。また、軍事を牛耳れば地球国の警備体制は丸わかり、ブルー将軍等の超人的な強さを誇る部下による電撃作戦で王位を簒奪すれば、GCGが動く間もなく地球はレッドリボン軍の物だ。

 

(もちろん、そう上手くはいかんだろうし、国王側もそうなる事を予想しない訳がないだろうが……そうした困難を乗り越えて実現させるという強い意志と、部下を引っ張るカリスマ性が今のレッド総帥にはある)

 実際、レッド総帥の思惑を聞いた将軍達の誰からも反対意見は出なかった。

 

「では、ドラゴンボールが石から戻る一年後に備えて活動を開始する。ドラゴンボールは今頃ただの石になっているだろうが、あれだけ光りながら夜空を飛んだのだ。落下地点の大まかな位置くらいは分かるだろう。フラッペが開発するレーダーの精度を確かめるためにも、目星はつけておきたい。

 オレンジ、貴様を大佐から将軍へ昇格する。情報部を上手く使って割り出しにかかれ」

 

「はっ!」

 そして、ドラゴンボール探しを名目にオレンジを大佐から将軍にする約束も果たしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 大佐以上の軍上層部のみが招集された、レッドリボン軍にとって重要な話し合いから帰ってきた上司を、ボンゴは薄気味悪そうに眺めていた。

 上司と言っても、彼はボンゴの直属の上司ではない。しかし、直属の上司であるオレンジは古巣らしい情報部に出入りしており、最近あまり接点が無い。そのため、オレンジにスカウトされた(拾われた)から、彼の部下という事になっているだけのボンゴは、レッドリボン軍に入ってから他の大佐や将軍との接点の方が多くなった。

 

 その内、部下として一定以上信頼できると判断されれば、オレンジの下から他の大佐や将軍の所へ配置換えになるだろう。それまでボンゴがレッドリボン軍にいればだが。

 

 そして、「上司」とはレッド総帥から命じられた将兵を鍛える教官としての仕事で、最も実力を高めた男の事だ。

 彼は強く、冷酷で、容赦のない男だった。貪欲に自らの実力を高め続けている。

「今日のレッド総帥も素敵だったわ! あの逞しい肉体美に、肉食獣のような笑み! 鋭い瞳に見つめられただけで、ゾクゾクしちゃう!」

 今は、頬を染めながら小娘のようにはしゃいでいるが。

 

「……会議の内容を俺の前で話して良いのか、ブルー将軍?」

 できれば他所でやってくれという願いを込めて、ボンゴはブルー将軍に尋ねた。なお、彼と同じ教官のはずの彼の相棒であるパスタがここに居ないのは、ブルー将軍が女嫌いだからである。

 

 彼女はバイオレット大佐等、レッドリボン軍の数少ない女性士官や他の男性兵士の教官をしている。……いや、気が付くとボンゴがブルー将軍とその部下専任の教官になっていたというのが正しい。

 レッドリボン軍のエースであるブルーに気に入られるのは、悪い事ではないはずだが……誰か代わってくれと願わずにはいられない。

 

「細かい事は気にしないでいいわ。それに、あんたは書類上オレンジの直属でしょ? 実は知ってるんじゃないの?」

「いいや。細かい情報のやり取りは俺の得意分野じゃない」

 できないわけではないが、そうした事はパスタの方が得意だった。

 

「そう? まあいいわ。これで私にもチャンスが巡って来た。レッド総帥に近づく余所者……フラッペをぎゃふんと言わせるチャンスがね!」

 突然レッドリボン軍に入って来てレッド総帥に気に入られ、怪しげな研究を続ける正体不明なフラッペを疎ましく思う者はまだ存在する、その筆頭がブルー将軍だった。

 

 最近はレッド総帥から信頼されている事に対する嫉妬まで向けている。……そのレッド総帥が、ショタコンの気があるブルー将軍すら魅了するほどダンディな良い男になったのは、フラッペ(ゲロ)のお陰なのだが、感謝する気はないらしい。

 

「奴がサイボーグ2号のテストとして行う、魔神城の眠り姫の調査を失敗させる……いいえ、わたしが眠り姫を手に入れて鼻を明かすつもりだったけれど、さらにドラゴンボールを集めれば……このわたしこそがレッド総帥の寵愛を受けるのよ!

 ボンゴ、あんたは情報部からしっかり情報を集めて来るのよ!」

 

 そしてブルー将軍は、魔神城の眠り姫を手に入れる事を目論んでいた。フラッペが独自の研究から伝説の眠り姫は人間ではなく兵器であるという目星をつけたため、女嫌いの彼は「自分が手に入れれば、手柄になる」と考えたのだ。

 

「へいへい、一応まだ書類上はオレンジの部下だからな。やってやるよ」

 レッドリボン軍に逆らう訳ではないし、情報をブルー将軍に流せば彼が魔神城に行っている間彼から解放される。何より、彼が軍のエースである事に変わりはない。

 ボンゴに逆らう理由はなかったので、言われるままに従ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 その頃、復活して自由の身となったはずのピッコロ大魔王は、不自由な思いを強いられていた。

(儂が予想していたのと、何か違う気がする)

 コーチンの研究室で、コードに繋がれ謎の液体に満たされた容器に浮かびながら、ピッコロ大魔王は時を過ごしていた。

 

 ただ、疑問はあるが不満があるわけではない。何故なら、既にピッコロ大魔王の肉体は封印が解けたばかりの頃の老いた物ではなく、武泰斗に封印される前の若々しく逞しい全盛期の肉体に戻っていたからだ。

「クックック、経過は順調だぞ、ピッコロ大魔王よ」

 そこに、コーチンがやって来た。

 

「既にお前の肉体は全盛期の状態に戻っている」

『たしかにな。こうして生け簀で飼われる魚のような気分を味わった甲斐があるというものだ。これでようやく――』

 外に出て世界征服へ邁進する事が出来る。

 

「うむ、これでようやく本格的な改造手術を始められるというものだ」

『馬鹿な!? まだ準備段階だったというのか!?』

「何を言っている、ピッコロ大魔王? 今のお前では現代の武道家のトップ層の足元にも及ばんぞ」

『な、なんだと!? 儂が封印されていた数百年で、武道家はそれほどの進歩を遂げていたのか!?』

 

「その通りだ、ピッコロ大魔王よ。今のお前のパワーは、儂が作った狂暴戦士に遠く及ばん。このまま地上に出れば、世界を征服するどころか、そこらの警備員にやられるのがオチだ」

『け、警備員に!? このピッコロ大魔王が!?』

 

 そんな馬鹿なと目を見開くピッコロ大魔王だったが、全盛期の若さを取り戻した彼の戦闘力は230。なんと、この世界のヤムチャより5高いだけだ。流石にそこら辺の警備員には負けないが。

 ただ、今の状態で地上に出ても、騒ぎを起こせば駆けつけたゲロや4号によって、すぐに鎮圧されてしまうのは確実だ。

 

「しかし、言葉で説明しても伝える事は出来んじゃろう。今日は現在の地球の状況を知る助けになればと思い、地球で開催されているもっともレベルの高い武道大会……憎きドクターゲロが運営する会社がスポンサーをしている天下一武道会の記録映像を持って来た。

 見てみると良いだろう」

 

『いいだろう。退屈しのぎにはなる』

 そしてカプセルの前にモニターを設置し、コーチンは前々回の、4号が優勝した天下一武道会の映像から流し始めた。

 

『……確かに、現在の武道家の一部は儂が封印される前の時代より強くなったようだな』

 テレビ放送では一部しか放送されなかった予選の様子や、本戦の映像を見たピッコロ大魔王はそう武道家の進歩を認めた。予選で敗退した武道家はたいした事ない連中ばかりのようだが、本戦はかなりの強者ばかり……ランファンやギランという選手は最初大したことがなさそうだったが、途中から急に強くなった。亀仙人や鶴仙人という、見覚えがある気がする爺達は、自分を超えた強さを持っているようだ。

 

 いや、自分を超える強さを持っていない者の方が少ないのではないか? そうピッコロ大魔王は思った。テレビ映像だから気の大きさは分からないが、ピッコロ大魔王の目でも追いきれない動きをする選手が何人もいる。

 もし直接観戦していたら、これほど落ち着いて見ている事は出来なかっただろう。

 

 正直、こんなものは幻の類だと怒鳴り散らして否定したいところだったが、この映像を用意したコーチンは老いた自分の体を若返らせた技術の持ち主。何より、モニターに映ったゲロ達を見る憎々し気な様子は本物だ。

 彼がくだらない嘘をつくとは、ピッコロ大魔王には思えなかった。

 

 そして、鑑賞を続けたピッコロ大魔王に驚きの瞬間が訪れる。

『わ、儂は宇宙人だったのか!?』

 ピッコロ大魔王は、ついに自分のルーツを知ったのだった。

 




〇クリリン

 「強くなって女の子にモテたい」という理由で多林寺に入門し、先輩達からの苛めに耐えられず逃げ出し、亀仙人に弟子入りした、根性が無いようである少年。……単純な辛さでは、絶対亀仙人の修行の方が先輩からの苛めより厳しい。それでも、彼がズルをしようとした描写は修行を始めた当初だけで、その後は牛乳配達も畑仕事も悟空と一緒にやっていた。

 やはり、厳しくてもしっかりした指導と、自分を馬鹿にする兄弟子達からの苛めでは、辛さの種類や感じるストレスの大きさが違うのかだと思われる。

 また、亀仙人に弟子入りする前から身体能力は高かった。手漕ぎの小舟で海を渡り、着地には失敗したがその小舟から離れた砂浜に向かってジャンプし、修行を始める当日には亀仙人や悟空には負けたがかなりの速さで走って見せた。

 劇場版『魔神城の眠り姫』では、弟子入りするための条件として「眠り姫」を助けて連れて来る事を亀仙人に命じられ、悟空と競い合って魔神城に向かい、魔族達と戦っている。……強敵は倒していないが、銃器で武装した魔族相手に悟空と協力して戦って大きな怪我をすることなく勝利しているので、並みの兵士や武道家よりも強いのは確実。

 そのため、弟子入り初日のクリリンの戦闘力は7から8だと思われる。

 また、この作品での多林寺ではGCG式の修行が取り入れられており、原作より修行がきつくなっているため、この作品の弟子入り初日のクリリンの戦闘力は10。地球人から見た超人の入り口に達している。



〇ドラゴンボールを集めても、神龍は呼び出さない予定のレッド総帥

 毎年ドラゴンボールを集められる時代になったら、神龍に世界征服の願いを叶えてもらっても、一年後にはひっくり返されるかもしれないと考え、神龍に願うのではなく交渉の材料にする事を思いついた。

 身長が伸び、理想の体型を手に入れたため、最近はボディビルディングに嵌っている。ブラックが作ってくれるプロテインドリンクが美味い。
 なお、部下の一人の好感度が限界突破しそう。



〇オレンジ大佐→将軍

 この度、将軍への出世が確実になった。レッドリボン軍情報部の出世頭。一応トレーニングは続けている。
 スカウトしたボンゴとパスタを放任しているが、それは二人なら放っておいても上手くやるだろうと思っているから。後々移動した時二人が上手くやれるようにと考えての事でもある。
 レッド総帥に関しては、もう深く考えない事にした。



〇ブルー将軍

 レッドリボン軍のエース。某ペンギン村のオボッチャマン君にデレデレになる等ショタコンの気があるが、レッド総帥の大人の魅力にやられた。忠誠心が愛で限界の向こうは無限大になりそう。
 その分フラッペを恋敵として認識しているが、彼の肉体を素体的な意味で狙っているゲロが知れば「勘弁してくれ」と懇願する。

 ボンゴを直属の部下兼サンドバックとして扱い、メキメキと実力を伸ばしている。おそらく原作よりずっと強い。



〇ボンゴ

 ブルーの直属の部下扱いにややげんなりしている。給料は良いし、ブルー将軍はレッドリボン軍のエースなので、気に入られておいて損はないはずだから我慢している。
 ブルー将軍との組手などにとり、一年前より腕をあげている。



〇ピッコロ大魔王

 コーチンによって謎の培養液につけられ、全盛期の若々しい肉体を取り戻したが、現代の武道家達の強さに目が遠くなった。
 そしてコーチンが用意した映像によって、自分が……正確には地球の神がナメック星人という宇宙人だった事を知る。



 匿名鬼謀様、車椅子ニート(レモン)様、車道様、カド=フックベルグ様、クウヤ様、サボテン7h様、タイガージョー様、太陽のガリ茶様、kiyo0084様、Paradisaea様、にしやまな様、都庵様、藍戸優紀様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。

牛魔王夫妻の第二子は?

  • モウ(男の子)
  • スイ(女の子)
  • まさかの双子!
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