ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
諸君、ドクターゲロである。原作開始はまだまだ先だが、孫悟空が地球へ飛来するまで後十年を切った。
原作開始まであと約二十年あるが、今から準備して動けば、妻を最強の人造人間にして復活させるという儂の目的に繋がる、大きな成果が期待出来るだろう。
原作と言えばレッドリボン軍だが……原作に比べると大分弱体化している。その原因は、おそらく儂が加わっていない事だろう。
今頃になって思い出したが、儂ことドクターゲロは原作ではレッドリボン軍の創設メンバーの一人で、様々な武器を開発してレッドリボン軍の勢力増強に一役買っていたらしい。それが、どういう訳か憑依前からレッドリボン軍に夫婦そろって関わらなかった。
儂には憑依前の記憶もあるのだが……何故以前の儂が原作のルートから外れたのか、理由は不明だ。いや、逆に危険な武装集団に関わる理由がなかったから関わらなかった、それだけの事かもしれん。
それはともかく、儂が協力していない影響もあってレッドリボン軍は軍と名乗っているものの実態はやや大きな傭兵団程度の規模のようだ。
そして、儂が今からドクターゲロとしてレッドリボン軍に協力するのも難しい。
これは儂の自業自得なのだが、会社の経営が上手くいった結果、儂の顔と名前が世間に広く知られるようになった。それでならず者集団のレッドリボン軍に協力するとイメージダウンが避けられず、儂の会社の社員達や友人のブリーフ博士に多大な迷惑が掛かってしまう事に、遅ればせながら気が付いたからだ。
そのため、儂は「謎で悪の天才科学者、フラッペ博士」という架空の人物を作りあげる事にした。
架空の人物に変装してレッドリボン軍に接触し協力を申し出る作戦である。そしてホワイト将軍の元にメタリック軍曹や8号を送り込み、人造人間の素材として有望な人物の遺体を回収後、最終的には壊滅させるのだ。
このフラッペ博士とは、アニメ版で人造人間8号を作った人物だ。しかし、調べたところこの世界線には彼は……少なくともフラッペという科学者は存在していない。この世界線では生まれていないのか、それとも儂がレッドリボン軍に最初から協力していなかったのと同じように、生まれていても別の分野に進んだのかもしれない。
彼の存在の有無は不明だが、科学者でないのなら間違われる事もないだろうし、遠慮なく名前を使わせてもらう事にした。
今はバイオテクノロジーを応用した変装グッズを準備しながら、裏社会にフラッペ博士の噂を流しているだけだが、時が来たら動きだす予定だ。
今はそれよりも、惑星ベジータに行くための準備をしなくては。サイヤ人のS細胞を……そしてスカウターと戦闘服、さらにはサイヤ人の遺体そのものを手に入れるチャンスが迫っているのだ。
S細胞のサンプルは孫悟空に頼めば手に入るが、孫悟空を人造人間に改造するわけにはいかないので、サイヤ人の遺体が欲しい。スカウターと、戦闘服のサンプルも見逃せない。
とはいえ、サイヤ人は危険な存在だ。自分達の仲間や同じフリーザ軍に所属している者になら、機嫌を損ねなければ問題ないだろう。だが、そうでないなら特に理由もなく殺されかねない。……いや、これはサイヤ人ではなくフリーザ軍の多くの兵士も同様だったな。
どちらにせよ入念な準備が必要だ。
その入念な準備に、だいたい七年くらいかかった訳だが。
重力トレーニング室での訓練、改良した超神水、名付けて超神水改の開発、仙豆の栽培技術の確立、サイヤ人に変装するための変装道具に、スパイカメラの宇宙空間仕様への改造、宇宙船をステルス機能搭載に改造。
儂と4号は重力トレーニングに加えて、オリジナルよりも効果は落ちるが安全性を高めた超神水改を飲んでパワーアップ。
その甲斐あって、儂は十倍の重力下でもなんとか日常的な動作……戦闘は無理だが歩く程度なら普通にできるようになったので、惑星ベジータに行く事にした。もし身に危険を覚えたら、瞬間移動で即逃げる。万が一儂と4号が帰らなかったら、これを開けて中に書いてある事を実行してくれと、2号と3号に鍵付きの手帳も渡した。
手帳の中には、ドラゴンボールを集めて儂と4号を生き返すようにと書いた任務と、儂が作ったレーダーの場所が書いてある。……ドラゴンボールのある位置が変わり、原作が変化してしまうので死なないように生きて帰るつもりだが、万が一の事態に備えての事だ。
そして注意すべきは、惑星ベジータの周辺に展開しているだろうフリーザ軍や、近くにいる可能性があるクウラの宇宙船に儂の宇宙船を捕捉させない事だ。
行きはともかく、帰りはサンプルをもって4号と瞬間移動で地球へ戻り、宇宙船は自動航行モードで地球まで帰還させる予定なので、撃ち落とされるのは構わない。最悪なのは、フリーザとクウラに現時点で地球の存在を知られる事だ。
地球の存在を知られたとしても、ドラゴンボールの情報が伝わらない限り辺境の惑星にフリーザやクウラ本人がいきなり乗り込んでくるとは考え難い。しかし、配下の兵士を送り込んでくる可能性はある。そして、それらを撃退する事を繰り返していれば、いつか本人が乗り込んでくることになるだろう。
そうなったら、ナメック星からネイルを呼び、ネイルクローンを急速培養して融合してもらい、精神と時の部屋に二日ほど入ってもらうしかあるまい。もちろん超神水改も飲んでもらって。
なお、既にナメック星にも重力トレーニング室を設置しており、そこでネイルやツムーリ達が日々修行をしている。
儂が最長老に伝えた悪の帝王の存在を知り、まずネイルが「今の私では最長老様を守り切る事が出来ないというのなら、私は強くならねばならない。ゲロ、ブリーフ、力を貸してほしい」と言い出し、儂とブリーフは重力トレーニング室を新たに制作し、ホイポイカプセル化してナメック星に持っていき設置した。
次に、「ネイルには最長老様を守る役目がある。他の村を守るのは私達の役目だ」とツムーリ達が言い出したので、更に重力トレーニング室を設置した。
それが五年前の事だ。まだスカウターがないから確かなことは言えないが、ギニューと超能力使いのグルド以外の特戦隊メンバーならネイルだけで倒せるのではないだろうか?
ヤードラット星人の方はそうしたトレーニングは合わないからと、特に求められてはいない。もし将来ギニュー特戦隊が攻めてきたら、瞬間移動でナメック星か地球に一時避難し、その後星を奪還する事を考えているらしい。……本当にそうするかは分からないが。
もちろん、地球に一時避難する場合は儂のゲロコーポレーションとブリーフのカプセルコーポレーションが受け入れ先になる。
そういう訳で、とりあえず準備は終わった。
「きゃははは! お爺ちゃん、今日も高い高いが上手! もっと高くして!」
「ほぎゃあっ! ほぎゃあ!」
「タイツや、あまり高くすると危ないぞ。おお、よしよし、ブルマ、もうすぐミルクを飲ませてやるからな。4号、ミルクは温まったか」
「はい、ドクター」
やっと生まれたタイツは、すくすくと元気に育っておる。そしてブルマも無事生まれた。いや良かった。この世界線では彼女らは、主に儂が夫妻を宇宙へ連れ出したせいで産まれないのではないかと、ひやりとしたからの。
ブリーフからパンチー夫人の懐妊を聞いた時は、思わずガッツポーズをとって万歳三唱をしてしまったわい。
そして、タイツが無事生まれた後ブルマも無事誕生した。……まあ、生まれた年は原作とは異なるが。
タイツは原作ブルマが生まれる年に生まれ、ブルマが孫悟空の生まれる年に生まれた。
なお、今はブリーフ夫妻から子守を頼まれているところだ。
「グルグルしてよ、グルグル!」
「よしよし、ほれ、グルグルじゃ!」
儂はサイコキネシスでタイツを高い高いをして、空中をゆっくり飛ばしてやっている。先ほどまでミルクを飲ませていたブルマは、今は4号の腕の中で大人しく……せず、ぺしぺしと4号の頭を叩いとるな。緑色でツルツルしているのが、彼女の気を引いたらしい。
「代わるか、4号?」
そう尋ねると、4号は視線を一瞬儂の頭に向け、すぐに逸らして答えた。
「いえ、子供には様々な刺激を与え興味や関心を持たせると良いと本にあったので、大丈夫です」
「今、刺激を受けてるのはヨンお兄ちゃんじゃない」
「ははは、これは一本取られましたね」
なお、儂の生え際は運命との交戦に敗北し、頭頂を明け渡して後頭部に撤退しておる。何故このタイミングでそれを言うのかは、あえて伏せるとしよう。
ちなみに、「ヨン」と言うのは4号の名前じゃ。修行中に神様から「そう言えば、4号には名前は無いのか?」と尋ねられ、遅ればせながら気が付いたが、儂は4号に名前を付けていなかった。
ドラゴンボールでは人造人間達は8号以外番号で呼ばれていた。機械ベースの16号や19号はもちろん、17号と18号も同様だ。結婚した後も、夫のクリリンは18号を18号さんと呼んでいた。
そのため、4号に名前を付けるという発想がなかったのである。
しかし、改めて考えてみればこのままでは色々問題があるだろうと思い直し、4号に名前を付ける事にした。だが本人は……。
「4号のままで構いません、ドクター」
と言ってきかない。
もしかしたら儂のネーミングセンスが絶望的で、提示した名前の案が気に入らなかったからかもしれんが……ちゃんと吐しゃ物とは関連しない名前を提案したが、一通り拒否されてしまった。
そのため、以前天下一武闘会に出場した「ヨンゴー」をもじり、「ヨン・ゴー」とした。……そのままじゃが、本人が「これが良いです」と言っているので、良いのだろう。
その4号とタイツとブルマの仲は良好で、タイツは彼をヨン兄ちゃんと呼び、ブルマも良く懐いている。
妻が先立たず、息子が生まれていれば、彼も二人と仲良くなっただろうか? ……いや、考えても仕方があるまい。それは妻を復活させた後にしよう。
タイツは……原作コミックに登場しないため原作と言っていいか微妙だが、本来なら妹のブルマの十二歳年上の姉になるはずの人物だ。
それが原作ブルマと同じ年になると……ジャコ編で本来は十七歳のはずが五歳か。これは無理だな。
まあ、ジャコの存在はドラゴンボール超で必須というほどではない。重要な活躍を見せているが、ジャコにしか出来ない事はさほどない。ズノー様の事は儂でも教えられるし、フロストの不正やヒットの時飛ばしも同様だ。
いや、モロ編では危ういか? ……ブウを仲間に出来れば、そして妻を21号として復活させられれば魔力が回復する前のモロをお菓子光線でお菓子にして食べてもらうという手もあるから、何とかなるか?
……そこまで未来の事となると儂が既に原作にない動きをしているので、その頃には歴史が大きく変わった後のはず。今の時点で考えても仕方がないだろう。
それにジャコがタイツと出会わなくても、今の地球で宇宙船を修理できるのは儂かブリーフのどちらか。そして、儂とブリーフとパンチー夫人が宇宙に行って帰ってきたことは、それなりに世間に知られているはずだ。時間は多少ずれるかもしれないが、ジャコが儂かブリーフに接触してくる可能性は高いだろう。……ペンギン村の方に行ったら、もう知らん。
ちなみに、一応宇宙人であるジャコの細胞を手に入れるため、スパイロボットを彼が原作で滞在し、行く場所に放つ予定である。
(問題は、ジャコが孫悟空を……危険なサイヤ人を撃ち落とす事に成功してしまう可能性だが……後日パオズ山に行って孫悟空が孫悟飯に拾われていなかったら、ドラゴンボールを使って生き返すしかないか。これも原作の流れが変わり、孫悟空が未来の師である亀仙人や妻であるチチと遭遇出来なくなる可能性が高いため、出来れば避けたいが。
いや、そもそも……)
果たして原作は開始されるのか、そこが問題だ。
何せ、ドラゴンボールを最初に探す旅に出るはずのブルマが原作の開始する時期に十二歳。原作ブルマは高校の夏休みを利用して旅に出たが、これでは小学校の夏休みである。
……まあ、約十二年後の事を考えても仕方がない。もしかしたらタイツがブルマの立場でドラゴンボール探しの旅を始めるかもしれんし。
「そういう訳で、今回は危険な宇宙人がいる惑星に行くので、連れていく事は出来ない」
「そうか、それは残念だ。でも、瞬間移動で移動中も帰ってくるんだろう? タイツもブルマもお爺ちゃんに会えないと寂しがる」
「ブリーフ、儂は君の父親になった覚えはないのだがな」
儂が老けているせいか、それともブリーフとパンチー夫人が若々しいからか、タイツは儂を「お爺ちゃん」と呼ぶようになっている。ブルマも、言葉を話すようになったらそうなるじゃろう。儂、ブリーフとそんなに歳は変わらんのだがな。
まあ、家族同然の付き合いをしているし、口で言う程気にしている訳でもない。それに、悪い気もせんしな。
「確かに瞬間移動で宇宙船と地球の間を何度も行ったり来たりする予定だが……その間もやる事があって色々忙しいのだよ」
ドクターゲロとして地球から堂々と宇宙へ出発した後、瞬間移動で戻ってドクターフラッペとして活動する予定なのだ。フラッペが存在し、儂とは別人であるというアリバイ作りのために。
「君、本当に何をするつもりなんだね? 研究で困ってストレスでもため込んで変になるのなら、その前に言ってくれよ。力になるから」
「ありがとう、たまに相談させてもらおう。そう言えば、永久エネルギー炉の小型化に行き詰っているのだが」
「ああ、人造人間の動力源にしたいって言っていたあれかい? 今のままの大きさでも発電には十分そうだが、出力を維持したまま君の作る人造人間に内蔵させるとなると難しいな」
そうディスカッションをした後、儂は地球を離れるための最終準備に取り掛かった。
記者会見を開いて再び宇宙に行く事を世間に発表し、雑誌のインタビューに答え、テレビに出演し、宇宙船打ち上げの様子を生中継してもらって、これでもかと宣伝して儂は地球から旅立ったことを演出したのだ。
雑誌には、「天下一武闘会で優勝した天才科学者、宇宙へ!」と派手な見出しを付けてもらった。
これでドクターゲロは地球から旅立ったと、ブリーフ達以外の誰もが思い込んだはずだ。
「では頼んだぞ、4号」
「はい、前々から操縦してみたかったので任せてください」
宇宙船が大気圏を脱して安定した後、瞬間移動で地球に戻るわけだが儂か4号のどちらかは地球から宇宙船に瞬間移動するための目印として残らなければならない。
そのため、まずは地球でやる事がある儂が帰る事になった。その事を詫びてから帰ると、儂はさっそくドクターフラッペとして活動を開始した。
ちなみに、天下一武闘会の方はあれからいくつか大会が開かれ、桃白白が優勝した次の大会ではアックマンがチャパ王を決勝戦で下して二度目の優勝をもぎ取った。その次の大会では、前回準優勝だったチャパ王が儂の弟子を破って優勝した。
そう、いつの間にか儂に弟子が発生していたのだ。いやまあ、存在する事は前から知っているのだが。
以前儂が天下一武闘会で優勝した後、儂に対する挑戦者やら弟子入り志願者やらが度々会社を訪れるようになった。その都度挑戦者は2号がのして、弟子入り志願者は入社希望者として処理していた訳だが……弟子入り志願者の多くが社員としての能力が不足していた。
我が社はお茶くみやコピー取りなどの単純作業は全てロボットがこなすので、単純労働要員は採用していない。しかも、弟子入り志願者はサラリーマンではなく武闘家を目指しているので会社員として成長する気の無い者が過半数だった。
……儂の予想では、弟子入り志願者は面接の途中で諦めて帰ると思っていたのだが……甘かったようだ。
それに我が社の副社長が切れ、弟子入り志願者達に自主的に辞めてもらう為にきついトレーニングを課した。
その内容は儂がしていた基礎トレーニングを軽めにアレンジしたものだ。全身に二十キロの重りが付いたボディースーツに着替えた状態で、毎朝十キロのランニング。その後食事や休憩を挟みつつ、武術の型の練習、水泳、組手等を行う。
亀仙流をよりマイルド、もしくは簡略化したものだが、常人ならとても耐えられない。実際、弟子入り志願者の十人中九人が辞める。
だが、残った一人が小口径の拳銃ぐらいなら銃弾が直撃しても耐えられる強さを獲得するに至ってしまった。
これには副社長もびっくりしていた。
結果、今ではゲロコーポレーションは警備業界にも進出、地球人の中ではかなり強い方の儂の弟子達(という事になっている)が、日々犯罪と戦っているのだった。
ドクターフラッペのアジトとして使うのは、儂が既に世界中に設置した隠し研究所のうちいくつかだ。
どうやって造ったのかというと……修行で鍛えた力を活かして地面を掘り、後はホイポイカプセルで研究所を建設したのだ。
別の場所で作った天井や壁、床や柱をある程度組み立てた状態でホイポイカプセル化したコンテナに入れ、建設予定地で元の大きさに戻す。機材も同様にホイポイカプセルにして運び入れ、元に戻してから設置するから、時間はかからない。
建設や設置にはサイコキネシスも使うので、儂一人で充分だ。
この方法で儂は自社の社員にも知られず世界中に隠し研究所を作り上げたのだ。……これをホイポイカプセル工法と呼称しよう。
そしてドクターフラッペとしてやった悪事だが、たいした事はしていない。本来の儂の技術なら雑過ぎるロボットを使った、銀行強盗未遂やカージャック未遂にシージャック未遂。全て惜しいタイミングで失敗するよう演出した。
別に悪事に成功する必要はない。ドクターフラッペという悪のマッドサイエンティストが存在すると世間が、そしてレッドリボン軍が思い込めばそれでいい。
そしてドクターフラッペに扮した儂が頃合いを見て、レッドリボン軍に「あなた方が研究資金を提供してくれるなら、お望みの物を作り上げてみせます」と言って接触するのが目的なのだから。
もちろん未遂で失敗しているとはいえ、犯罪は犯罪。なので、出来るだけ派手に演出し、しかし実際には怪我人を出さず、警察の尽力で未然に防がれるように動いている。
しかしあまり失敗続きでも困るので、犯罪組織を襲撃して活動資金を奪い、犯罪組織同士の抗争に勝利したように見せかけたりもした。
何度か、うちの会社の警備部門の社員や、警察の捜査協力者になったらしい桃白白によって悪事が「未然に」防がれたが……もう少し、ロボットを強めにしても良いかもしれない。
そして一年後、ブルマが予想通り儂をお爺ちゃんと呼び、文字の読み書きと算数を理解出来るようになった頃、ついに目標である惑星に、しかも丁度いい時期に到着した。瞬間移動で4号のいる宇宙船に戻った儂は、窓越しに惑星を見て呟いた。
「これが惑星ミートか」
そう、惑星ベジータではない。ここは『たった一人の最終決戦』でバーダックチームが、治療中のバーダックを置いて侵略に来た惑星ミートである。
惑星ベジータから近いこの星では、バーダックチームのメンバーであるトーマ達四名が惑星を侵略後、フリーザの命を受けたドドリアによって殺されている。
バーダックは、まだかろうじて生きていたトーマの口からフリーザに裏切られた事を知り、惑星ベジータに取って返して最期の戦いに身を投じる事になる。
今、スパイロボットで観測したところによるとバーダックは既にここから惑星ベジータに戻った後のようだ。地上には、四人のサイヤ人の遺体が残っている。
「さて、遺体を回収するか」
そして儂がやるのは火事場泥棒だ。ここで目的の物が全て手に入れば、危険な惑星ベジータに行かなくても済むのだが……。
「ドクター、ドクターはサイヤ人達を助けるつもりなのですか?」
「残念だが4号、そのつもりはない」
サイヤ人は戦闘狂が多く、しかも他星の住人を皆殺しにするのに罪の意識を覚えない者達だ。命を助けても、それに恩義を感じて地球で大人しく暮らしてくれるとは思えない。
仲間の仇を討ち、自分の一族を救おうとするバーダックにしても、危険がないとは言えない。
全てのサイヤ人が悪とは言わないし、彼らも環境が違えば……地球に移住して家族を持ったベジータのように、善の心を持つようになるだろう。しかし、赤ん坊の時に地球に飛ばされ頭を打って刷り込まれた命令を忘れた孫悟空と違い、既に自我が確立した大人たちは変わるまで何年もの時間がかかるだろうし、彼らをその間大人しくさせていられる存在が今の地球には存在しない。
……ネイル達ナメック星人に任せるという手もあるが、儂が勝手に拾ったサイヤ人達の世話を頼み込むのは、彼らにとってもいい迷惑だろう。バーダックやベジータ王に大猿になられたら、ナメック星を乗っ取られかねんし。
それに、一人二人ならともかく、何十人何百人と連れ帰った場合、彼らは地球に馴染もうとしない可能性が高い。十分な数の仲間がいるのだから、仲間同士でコミュニティを維持しようとするのが普通だろう。それでは結局危険なままだ。
儂はサイヤ人が悪だから助けないのではない。危険だから助けないのだ。そう4号へ説明した。
「まあ、そういう訳だ。赤ん坊や子供にでも遭遇したら、別だがね。
では、ミートに降りるぞ」
無人の惑星と化したミートに降りると、既に割り出しておいたサイヤ人達の死体がある場所に向かう。
「ふむ、予想通り四人か」
血だらけで横たわるサイヤ人の遺体が四名分。外見の特徴も儂の記憶にあるトーマ、セリパ、トテッポ、パンブーキンと一致する。どうやら、原作通り事が進んだようだ。
しかし、ドラゴンボール超だと彼等は存在しない。
そうなると、この世界線はドラゴンボールZからのドラゴンボールGTなのだろうか? ……まあ、今考える事ではないだろう。
「さて、さっそく回収するか」
四人の遺体を機械でスキャンしたところトテッポとパンブーキンは脳に大きなダメージを受けており細胞再生剤でも戻るか分からない。逆に、トーマとセリパは内臓にこそダメージはあるが脳組織は比較的無事だった。
「この二人は人造人間に、残りの二人は脳を再生出来なかった場合はサンプルを採った後埋葬するとしよう」
四人とも戦闘服とそのインナーを着たままなので、地球では貴重なサンプルになる。冷凍保存用のカプセルをホイポイカプセルで出して、4号と協力して遺体を収納。回収する。ついでに、念のためにミート星人の細胞も頂いていく。
これでS細胞の元とサイヤ人の素体、そして戦闘服とそのインナーは手に入ったが、スカウターはドドリアに殺されるときに壊され砕け散ったのか、回収する事は出来なかった。
そのため、やはり惑星ベジータにも行く事にした。
サイヤ人用変装用キットを装着し、もしもの時のために仙豆を一つ口に仕込んで向かう事にする。
「ドクター、やはり私が行くべきでは?」
そう提案する4号は、十倍の重力でも普通に動き、サイヤ人を圧倒できる程ではないだろうが戦闘を行う事が出来る。そしてなにより、儂よりも数段以上強い。一方、儂はなんとか動ける程度で戦闘などとても無理だ。
「残念じゃが、この変装キットではお前をサイヤ人にするのは無理だ。4号はここで待っていてくれ」
しかし、儂が作った変装キットではナメック星人ベースの4号をサイヤ人に変装させることは不可能だった。
それに、フリーザ軍にもナメック星人はいないだろうから、彼が行けば目立ってしまうからな。
そのフリーザ軍のスカウターに感知されないよう気を消し、宇宙船は惑星ベジータの陰に隠して近づく……途中でこっそりとスパイロボットを満載した小型ポッドを出しておく。
フリーザ軍の兵士達、そして何よりフリーザの細胞を手に入れるチャンスだ。この時期、彼の細胞が手に入るのは大きい。宇宙空間でも生存可能で、上半身と下半身が泣き別れになっても生き続ける生命力は魅力的だ。
フリーザは惑星ベジータを破壊する時に宇宙船から出てくるので、細胞が手に入る可能性は僅かだがある。仕掛けておいて損はないだろう。
そして惑星ベジータでまだ生存しているサイヤ人達の気を探り……瞬間移動!
「ふがっ!? いきなりなんだ、おっさん!?」
「おお、すまん、すまん」
出来るだけ穏やかな気配をしたサイヤ人の気を選んで瞬間移動したら、昼間から酒を飲んで路上で眠っている男だった。
「なんだぁ、随分年寄りなのにまだ戦闘員をやってんのか?」
儂が瞬間転移した気配か何かで起きた酔っ払いは、幸い儂の変装を見抜けなかったようだ。
「ああ、儂みたいなのは貧乏暇なしじゃよ。起こしてすまんかったな」
そう言って男の前から立ち去り、スカウターを手に入れるために地球の十倍の重力に耐えながら歩き続ける。
後数時間も経たずにこの惑星はフリーザに破壊されるので急がなければ。しかし、いくら探してもスカウターが手に入る機会が出来ない。
後、ブロリーらしい気はないか探ってみたが、感知する事は出来なかった。ナイフで刺されたため弱っているからか、それとも既に小惑星バンパにいるのかもしれない。
スカウターの方は儂にもっと力があれば、その辺を歩いているサイヤ人の下級戦士から強奪出来るのだが……今の儂では一対一でも確実に返り討ちだ。
魔封波を使うにしても、通りにいるサイヤ人はほぼ全員が儂より格上で、そんな相手に魔封波を使えば体力を著しく消耗し、下手をすれば死んでしまう。他のサイヤ人に魔封波を邪魔される可能性も高い。
(さて、どうしたものか。さっきのような酔っ払いが眠っているところに出くわせば好都合なのだが……こうなったら、フリーザのエネルギー波が迫る刹那の瞬間を狙うか?)
そんな事を考えながら酒場らしい建物の入り口を通り過ぎようとしたその時、扉が内側から乱暴に開かれ、中から誰かが飛び出してきた。
儂が反応出来ない程、猛烈な勢いで。
「ぐぼあっ!?」
「チッ、悪いな、爺さん!」
儂にタックルをかまして吹っ飛ばしたサイヤ人は、そう言い捨てると儂の方を見もせずにどこかへ走り去っていった。
儂は口に仕込んでいた仙豆を咄嗟に飲み込んだが、そのまま壁に頭から激突した。
「ちょっとっ、バーダック! 大丈夫かい、爺さん?」
そして、若い女の声を聞きながら意識を失った。どうやら、儂はあのバーダックにタックルされたらしい。
・ゲロ
現在戦闘力七百くらいの、ドクターウィローを含めなければ地球人類最強の天才科学者。
戦闘力九千のバーダックのタックルを受け、胸骨と肋骨が全損し臓器が潰れるほどのダメージを受けハート(生命)をキャッチされかけるが、仙豆のお陰で復活した。しかし、衝撃を頭部に受けたため気を失っている。
着ている戦闘服が変装用の見た目だけの代物ではなく本物だったら、致命傷ではなく瀕死の重傷で済んだかもしれない。
サイヤ人を見捨てる事に罪悪感を覚えており、助けられない理由を「邪悪だからではなく、危険だから」として自分を納得させている。
地球では宇宙に二度目の冒険に出かけた、天才科学者兼社長として有名である。
・4号
現在戦闘力千二百。サイヤ人というより、サイヤ人に対するゲロの反応に興味を持って観察している。
サイヤ人に対しては個人的な知り合いもいないし、思い入れも無く、そしてゲロから彼らがして来た事について話を聞いているので、「いくつもの星を征服して種族を滅ぼしてきたのだから、自分達がより強い存在に滅ぼされても自業自得」と考えている。
サイヤ人を助けない事に罪悪感を覚えているゲロよりも、実はドライ。
タイツとブルマのベビーシッターを任せられることがあり、二人に良く懐かれている。
なお、「ヨン・ゴー」と名付けられた後、彼は社長の私設秘書兼ボディガードとしてゲロコーポレーションに登録されている。
・タイツとブルマ
タイツが原作ブルマの生まれる年に、ブルマが孫悟空の生まれたのと同じ年に生まれた。この話が終わった時点で二人の年齢は五歳と一歳。
両親がナメック星の最長老によって潜在能力解放を受けており、父親が超能力者だが、二人とも今のところは普通の天才少女である。
ゲロ達と家族ぐるみの付き合い。二人ともゲロをお爺ちゃんと呼んでいるが、実の祖父でない事には気が付いている。しかし、ゲロも両親も否定しないのでそのまま定着したようだ。
なお、二人とも4号やゲロが瞬間移動でナメック星に連れて行っているので、ナメック星人やヤードラット星人とも交流がある。
・ナメック星人
ゲロとブリーフが設置した重力トレーニング室を使って修行中。ネイルならギニュー特戦隊ぐらいまでなら、グルドの超能力に惑わされなければ、ギニュー以外のメンバーはどうにかなりそう。
ただ、フリーザはまだ無理。
・バーダックチーム
サイヤ人五名からなる地上げ(皆殺し)チーム。バーダック以外にはサブリーダーっぽいトーマ、紅一点のセリパ、オカッパ小太りのバンプーキン、頭頂のみ毛が無く常に何かを食べているトッテポがメンバー。
惑星ミートを地上げしていた際、フリーザの命でやってきたドドリアに四人とも殺されてしまった後、ゲロに遺体を回収される。
・バーダック
戦闘力九千。明らかにサイヤ人の中ではトップクラス(ベジータ王が一万二千)の戦士だが、生まれが最下級戦士だから最下級戦士にランクされているらしい。
惑星ミートから帰った後、酒場で仲間にフリーザの裏切りを訴えるが、誰にも信じてもらえなかったので苛立って飛び出し、通りがかりのゲロと衝突して彼を吹っ飛ばす。故意に彼のハート(生命)を狙い撃ちした訳ではない。
なお、惑星ミートの仲間たちの元へ行く前に下の息子を妻のギネと一緒に一人用のポッドで地球へ打ち出している。
・謎の女サイヤ人
バーダックと深い関係にあるがバーダックチームの一員ではない。
バーダックが吹っ飛ばした名前も知らない老サイヤ人(偽)を咄嗟に助けようとするいい人で、サイヤ人の中では変わり者。
いったい何ギネなんだ……。
・フラッペ博士
謎に包まれた悪の天才科学者。警察やその捜査協力者である桃白白、偶然居合わせたゲロコーポレーション警備部の尽力により、ほぼ未然に防がれているが恐ろしい犯罪計画を実行に移そうとしている極悪人。
その姿が目撃されたのは、ゲロコーポレーションの社長が宇宙に旅立ってからなので、ゲロとは別人だと思われている。
その正体は謎のヴェールに包まれている……はず。
・アックマン
桃白白とのリベンジマッチに燃えていたが、彼が出場していなかったので決勝戦でチャパ王との激闘を制し、原作通り二度の天下一武闘会優勝の経歴を手に入れた。
多分、原作より若干強くなっている。
・チャパ王
アックマンへのリベンジマッチに燃えて修行に打ち込み、二度目の天下一武闘大会に出場したが、肝心のアックマンが出場していなかった。代わりにアックマンよりも以前に優勝したドクターゲロの弟子で、ゲロコーポレーション警備部一の使い手と決勝戦で激突し、充実した試合内容で優勝した。
多分、原作よりも若干強くなっている。
・ゲロコーポレーション警備部
通称GCG(ゲロ・コーポレーション・ガードの略)
十五歳以上で既にある程度鍛えている者のみ入る事が出来るが、その時点ではまだ見習い。両手足と背に合計二十キロの重りを付けてランニングや駆け足、匍匐前進、ハードル走、武術の型の反復練習等の基礎トレーニングと、柔道をベースにした拘束術の修行を半年行い、それに耐えられた者が一人前として正社員に成れる、ゲロコーポレーションの中で最も就職が難しい部署。
十人中九人が見習いでリタイアするという。
ただ、正社員に成った者は小口径の拳銃から放たれた銃弾程度なら耐えられる強靭な肉体と、風のような速さと岩をも砕く力を手に入れるという。(戦闘力30から40ぐらい)
なお、正社員に成ると重りの重さが倍の四十キロになる。
鷺ノ宮様、ryon様、そばもやし様、米粉パン様、kitida様、酒井悠人様、ヨシユキ様、マーボカレー様、竜人機様、popfrom様、くるま様、お食事処様、ひょっとこ斎様、加賀川甲斐様、たまごん様、サキク様、鮭類アレルギー様、N2様、水上一佐様、電話秘書様、niyu0903様、変わり者様、ギルド 銀鈴様、路徳様、kuro様、カド=フックベルグ様、ちよ様、メイトリクス様、Paradisaea様、ゆーの助様、gsころりん様、オッサマー様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。