ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
60話 修行編開始! クリリンとファーストコンタクト
陸地の家に行った初日は既に時間が昼過ぎになっていた事と、クリリンにとっては鶴亀仙流の修行初日であるため、軽い運動力テストと明日からの修行の説明を行う事になった。
まず、約百メートルをどれくらい速く走れるか確かめた。クリリンは自身のベストではなかったが、九秒台の記録を出し、亀仙人から「なかなか速い」と評されて満足げだった。
しかし、次には走ったサタンはなんと六秒台の記録を出し、その次のチチは四秒台。悟空は走るというより飛ぶと評すべきスピードで走りぬけ、四秒ジャストだった。
「お、お前らどんな鍛え方したんだ!?」
「驚いてはいかんぞ、クリリン。お前もあれぐらい速く走れるようにならねばならんのだからな。それに、サタンはもちろん悟空とチチもまだまだじゃ。
どれ、儂が手本を見せてやろう」
そして走り出した亀仙人だったが、その速さはクリリンだけではなく悟空の目にも見えない超スピードであり、「亀仙人の姿がスタートラインから消えたと思ったら、ゴールに突風と共に現れていた」としか評せなかった。当然、正確なタイムなど測れない。
「ひゃー、相変わらず凄いな、亀仙人のじっちゃん」
「まったくだべ」
「さ、流石武術の神様……」
なお、チチの母親である人造人間5号サンや、悟空の母親である人造人間6号ギネの方が速いし強いのだが……戦闘力にしてまだ千にも達していない悟空達には、「どっちもすごい」としか分からない領域である。
その後は、分かり易い修行の目標として三階建てのビルより高い大岩をクリリンに見せた。
「クリリンよ、この岩を押して動かせるようになるのが第一の目標じゃ」
「こ、こんな大きな岩を動かせるようになるんですか?」
「ほっほっほ、弟子入りしたばかりの頃のサタンも同じことを言っていたぞ。サタン、ちょっと試してみろ」
「は、はい!」
言われるままにサタンが大岩を渾身の力を込めて押すと、なんと数メートル程大岩が動いた。クリリンだけではなくサタン本人も驚いていたが、修行すれば大岩を動かせるという証拠であった。
そして武道への熱意を新たにしたクリリンと共に家に帰る事になったが、彼にとって驚くべきことが起きた。
「その尻尾、マジで生えてたのか!? てっきり、町かどこかで流行っているアクセサリーだと思ってたのに!」
「なんだ、今気がついたんか?」
「まあ、話せば長いような短いような話なんだが」
自分以外の亀仙人の弟子に尻尾が生えている事を知って、驚くクリリンだった。
「も、もしかして俺が知らないだけで、地球には尻尾が生えている人が沢山いるのか? そ、そうだよな、獣人の人だっているんだし、尻尾が生えてるくらい珍しくないよな」
「いや、この尻尾が生えてるのはオラ達サイヤ人だけだぞ」
「さ、サイヤ人!? サイヤ人ってなんだ!?」
「宇宙人だ。オラは地球育ちだし、チチとサタンは昨日なったばっかりだけどな」
「宇宙人!? 宇宙人ってなれるもんなのか!?」
「悟空さん、一から説明しないと分からないですよ。いいか、クリリン。説明するから最後まで聞け。聞きたい事は、説明が終わってから質問しろ」
こうしてクリリンの弟子入り初日の夜は、サタンによるサイヤ人講座を受けたのだった。
そして次の日、本格的な修行が始まった。
「ではまず、サタンはずいぶん腕を上げたようじゃから、今日からこの四十キロの甲羅を背負うように」
「はいっ!」
「よ、四十キロ!?」
亀仙人が口にした甲羅の重さと、その甲羅を直ぐに背負うサタンにクリリンは目を丸くした。
「悟空とチチはトレーニングスーツを着ておるな?」
「おうっ!」
「はいだよ」
二人は亀仙流の道着の下に、ブリーフ博士がサイヤ人の戦闘服から作ったトレーニングスーツを着ていた。
「では、チチはサタンと同じ四十キロ、悟空はこの八十キロの甲羅じゃ」
「亀仙人のじっちゃん、この甲羅何か入ってんぞ?」
「うむ、内側にゲロが作った特殊な金属の重しが張られておる特製じゃ。盾にもなるぞ」
「ういろう合金っちゅう奴かな?」
「多分それじゃ」
年々弟子の質が上がるため、修行に使う甲羅の重さが足りなくなって困っていた亀仙人に、ゲロはウィロー合金と名付けた合金の重しを内蔵した甲羅を提供していた。……カッチン鋼だと重くなりすぎるのと、加工が難しくて面倒だったから、当時はまだ正式な名称が無かったウィロー合金を採用したらしい。
「心配せんでもクリリンにはこの二十キロの甲羅を用意してある。今日は初日じゃからいいが、明日からはこれを背負って修行じゃ」
もう言葉もないクリリンだったが、亀仙人がそう言いながら甲羅を見せた事で「俺、耐えられるかな?」と思わずつぶやいた。
しかし、クリリンは甲羅を背負って行う牛乳配達や畑仕事を耐え抜いたのだった。
タイツ達のドラゴンボール探しの旅から約一か月後。この儂、天才科学者のゲロはこの世でもズノー様を探しながら、ドクター・コーチンの行方をスパイロボットに探らせ、人造人間8号の完成度を高め、人造人間10号マロンの改造を進め、ブルーツ波遮断薬噴霧装置の改良を行い、ランチと連絡を取り合って魔神城への調査を進めていた。
人造人間8号は既に動力を動かせば起動できるが、目覚めさせてはいない。彼にレッドリボン軍の兵器として今から活動させるのは酷だからな。それに、万が一染まったら困る。
8号を目覚めさせるのは、レッドリボン軍のドラゴンボール集めが本格始動する寸前ぐらいがちょうどいいだろう。
マロンの改造も順調に進んでいる。ランチからいいデータが取れたので、このまま進めば無事に完全な永久エネルギー炉型に出来る。
ブルーツ波遮断薬噴霧装置の改良は完成した。装甲だけではなく外部に面している個所を全てカッチン鋼製にして、動力は小型永久エネルギー炉。内部には七回分のブルーツ波遮断薬を充填する事が可能になっている。
耐久力テストを頼んだネイルが二十倍界王拳を使っても破壊できず、その後正常に機能する事が確認されている。おそらく、歴史改変者が攻撃してもちょっとやそっとの衝撃では壊れないだろう。
そしてランチは「フラッペに記憶を操作され、自分が死んだ事やサイボーグ2号に改造された事は知らないまま、与えられた命令通り行動している」という設定で、魔神城と眠り姫について調査してもらっている。
『って、言うかよ、このまま俺が押し入ってぶん盗ってくるだけじゃダメなのかよ?』
しかし、実際はこうしてテレパシーで連絡を取り合っている。さらに言えば、それほど熱心に動いてもらっている訳でもない。
『たしかに、今のお前さんなら魔神城の魔族は軽く蹴散らせるだろうが……あまり早くかたづけてしまうと、次の仕事を予定より早く振らなければならなくなって面倒じゃからな。
それに、『眠り姫』を壊してため込んだエネルギーが暴発して地球が木っ端みじんになったら困る』
『地球が木っ端みじん!? 『眠り姫』ってそんなにヤバいもんなのかよ!?』
『そりゃあまあ、太陽を破壊するのに使う程じゃからな。もっとも、実物を検証した事はないから、そうなるかもしれない、というだけだが』
原作劇場版『魔神城の眠り姫』では、魔神城の主である魔族ルシフェルが自分達魔族の繁栄を阻む太陽を破壊する事を企み、準備を進めていた。眠り姫の正体とは、その太陽を破壊するための太陽破壊光線の動力なのである。
なんでも、気が遠くなるほどの年月をかけてエネルギーを蓄積していたらしい。
もし太陽が破壊されれば、地球の人類を含めたありとあらゆる生物……ルシフェル達魔族は平気らしいが……は絶滅する。……っと、いうかこの地球は太陽を中心に回っているので、その太陽が消えたら他の惑星と一緒に宇宙の彼方に吹っ飛ぶのではないだろうか? その結果他の隕石や小惑星と衝突したら魔族も滅びそうだが、構わないのか? もしかしたら、何らかの方法で地球に近づいてくる彼らの故郷の魔凶星を太陽に変わる星系の中心にするつもりかもしれん。
まあ、ルシフェル達の思惑や算段はともかく、問題は眠り姫を動力源に使った兵器、太陽破壊光線砲が本当に太陽を消す事が出来るのか否かだ。
これについては、儂は若干疑問がある。何せ、太陽だ。地球や他の惑星ではなく。
太陽は、スーパーサイヤ人になった悟空がかめはめ波で、クウラを押し付けても壊れなかった。
さらに、その後同じくスーパーサイヤ人になった悟空、悟飯、悟天の三人のかめはめ波でブロリーを突っ込んでも壊れなかった。
原作で戦闘力百数十の亀仙人に破壊された月や、戦闘力1万8千のベジータや3万8千のウィローに破壊されそうになった地球を含めた他の惑星と比べると、圧倒的な耐久力だ。
そんな太陽を太陽破壊光線砲は破壊可能なのか? あの兵器にスーパーサイヤ人三人が協力して放ったかめはめ波を上回る破壊力があるのか、甚だ疑問ではある。
しかし、この世界には我々地球人の科学力では解き明かせない未知のエネルギーや物質が山ほどある。
エネルギーでは歴史改変者が集めているキリ、バビディやモロが使う魔力、ハーツが宇宙の種を育てるために集めていたダメージエネルギー、界王神等が持つ神としての力を表す神力。対象になった生物をお菓子に変える魔人ブウのお菓子光線。
物質では、メカフリーザやヒルデガーン相手に攻撃しても折れない、未来トランクスやココナツ星の勇者タピオンが持っていた剣。スーパーサイヤ人との戦闘にも耐える、メタルクウラのボディ素材。触れた対象を石にするダーブラの唾。
眠り姫もそうした未知の一つなのだろう。もしかしたら、太陽に特別に効果のあるアンチ太陽エネルギーと評せる性質の光線を放つことができるのかもしれない。
『そういう訳で、放置するのも怖いので確保しておきたい、というのが本音だ。何らかの形で研究に利用できるかもしれんから欲しい、という理由もある』
眠り姫そのものは使えなくても、解析すれば新しいエネルギー蓄積システムを構築できるかもしれん。上手くすれば永久エネルギー炉を量産するよりも安上がりな、超小型で超高性能なエネルギー電池の開発も夢ではない。
半永久的にスパイカメラが動かせるようになれば、捜索がはかどる。
また、永久エネルギー炉式より弱いという理由で開発していない、エネルギー吸収型の機械ベースの人造人間の開発を見直すきっかけになるかもしれん。
つまり、眠り姫は儂にとって利用価値の高い素材なのだ。
『そうかよ。オレには分からねぇが、やってやるよ。だけど、ボーナスは弾んでもらうぜ』
『うむ、期待していてくれ。
ついでに、ブルー将軍が何か企んでいるようだ。眠り姫に関して横槍を入れようとしているようなので、何か分かったら連絡する』
原作と違い高身長になってボディビルに嵌ったレッド総帥に、ブルー将軍は心酔しているらしい。そのため、彼に信頼されているフラッペ(儂)の手柄を横取りしたくて仕方ないようだ。
直属の部下同然に使っているボンゴを利用して、レッドリボン軍の情報部から、眠り姫やドラゴンボールに関する情報を手に入れようと躍起になっているのが、スパイロボットによって確認された。
『ん? ああ、分かった』
とはいえ、人造人間9号であるランチにとって彼は脅威にならない。そのため、彼女も特別警戒する対象だとは思わなかったようだ。
そして、恒例となった占い婆の宮殿で開かれるあの世とこの世の交流戦。一日目にベジータ王の部下五名、二日目にリークとタロとベジータ王の部下三名、そして三日目にベジータ王とバーダックチーム四人と儂等は戦う事になった。
「武天老師様、なんだか凄そうですね」
「うむ、クリリンも前座で試合をするから気を引き締めてな」
「ええっ!? まだ組手も教わってないのに!?」
そして今回も子供達と占い婆の戦士との前座試合も行われる。今回儂個人が注目するのは、原作では地球人最強の男になったクリリンじゃな。
「悟空、久しぶり。そこのハゲ誰?」
「オッス、チャオズ! こいつはクリリン、オラ達と一緒に亀仙人のじっちゃんに弟子入りした良い奴だぞ!」
「誰がハゲだ! これは武道に進む者の嗜みとして剃ってるだけだ!」
「え、そうだったんか!?」
「初耳だべ。オラてっきり……」
「なんでお前らが驚くんだよ!?」
早速旧交を温めているようだ。クリリンも輪の中に入れているようで何よりだ。
「一か月ぶりね、孫君。チチちゃんも元気?」
「オッス、ブルマ! 尻尾はもう平気になったか?」
「あたしも姉さんも、まだ全然。チチちゃんとサタンは?」
「オラもサタンさんも、まだまだだべ」
そしてドラゴンボール集めを行ったメンバーが揃った。
クリリンは悟空そっくりなターレスや兄弟子のヤムチャと挨拶を交わした。
「おまえが、亀仙人の爺さんの新しい弟子か?」
「は、はいっ! クリリンって言います」
そして、ラズリと出会った。原作を知る儂からすると運命の瞬間だ。しかし、儂も二人の事ばかり気にしてはいられない。
「宰相閣下! ベジータ王からよくやったとの伝言を預かっております!」
「まさか地球人をサイヤ人とのハーフに変化させる事が出来るとは……これでサイヤ人が繁栄を取り戻す日がぐんと近づいたぜ!」
「宰相閣下万歳! サイヤ人万歳!」
何故なら、ベジータ王の部下五名に囲まれていたからである。
ズノー様の居場所を知る者を探すのを依頼する際に、タイツ達がサイヤ人とのハーフになった事を墓に供える手紙に書き加えたのだが……。
「いや、儂は特に何もしていないのだが……」
儂が想像していたよりもずっとベジータ王達は喜んだようだ。
もっとも、よく考えてみればそれも当然か。ベジータ王の思惑では、悟空とターレスに加えて儂が人造人間として蘇生させたギネとセリパ、トーマ。そしてサイヤ人の細胞を移植した人造人間達を息子のベジータ四世が率いる事を想定していたはずだ。
そして、彼らの子孫がサイヤ人の血筋を地球で徐々に広げていく事を期待していた。
それが、ドラゴンボールによって一気に六人も……それもGCコーポレーションの社長令嬢に亀仙人の弟子、牛魔王の娘とある意味地球のトップ層の子供達がサイヤ人とのハーフになった。しかも、ベジータ王が企んだわけでもなく、自主的に。
うむ、儂がベジータ王だったら笑いが止まらんだろうな。
そして始まった一日目では、孫悟飯、牛魔王、チューボ、チャパ王、そして天津飯がサイヤ人達と戦った。
「くっ、やはりサイヤ人は強い!」
「クソっ、本当に十六のガキか!?」
天津飯はヤードラット星での修行で、戦闘力を1030まで高める事に成功した。なんとサイヤ人襲来編でラディッツと戦った原作悟空やピッコロのフルパワー時に匹敵する実力だ。
サイヤ人の戦士でも、ベジータ王が下級戦士の中から選んだ弱い者相手なら、多才な技を活かすことで勝利をもぎ取る事も不可能ではない。
さらに続くチューボは1930、牛魔王は2050、チャパ王は2800、孫悟飯は2450と、フリーザ軍の兵士はもちろんサイヤ人の下級戦士と互角以上に戦える強さになっていた。
「来年の天下一武道会は楽しみだな!」
なお、前座試合ではクリリンがドラキュラマンに勝った。原作通り頭を噛まれて出血したが、悟空が「毛が生えたぞ」と言わなかったので試合に集中できたのが勝因だろうか。ただ、まだ気の感知を習得していなかったため、透明人間のスケさんには負けてしまった。
続くジャガーとサタンの試合は、どどん波とかめはめ波を打ち合い、見た目は派手な試合となった。
「う、撃てた! 俺にもかめはめ波が撃てたぞ! フハハハハ!」
「やかましいぞ、サタン! 気功波なら俺の方が先に撃てるようになったんだ! アップル的に強くなった俺の力を思い知らせてやる!」
「り、リンゴ? いや、もしかして圧倒的と言いたかったのか!?」
掛け合いのせいで、漫才のようになってしまうが。
「会長よ、もう少し頭も鍛えさせるべきではないか?」
「ううむ、勉強の時間を増やすか」
そして二人の試合は、ベジータ王の部下達の注目も集めていた。
「あれが地球人から俺達サイヤ人のハーフになった奴か。十三にしてはデカいな」
「十三歳の地球人から、急にサイヤ人とのハーフになったからだろう。でも強さはまだまだだな」
「いや、あいつらは本格的なトレーニングを始めて一年経つかどうからしいぜ? 他の地球人と比べれば十分強いんじゃないか?」
「俺達が生きていた頃なら非戦闘タイプ扱いだが、これからの成長に期待って奴だな」
っと、微笑ましい、もしくは物珍しいものを眺めるように、地球人目線では激しい攻防を続ける二人を眺めていた。
二日目は、去年も参加したバーダックの知り合いのサイヤ人、リークとタロ、そしてベジータ王の部下のエリートサイヤ人が三名だ。
「一年ぶりだな! それにしてもあんた、そんなにサイヤ人が好きなのか? 王子よりサイヤ人の再興に熱心だって、地獄じゃ評判だぜ!」
「いや、昨日も言ったがタイツ達がサイヤ人とのハーフになった事は、儂の指示ではないのだ」
「本当ですか? トーマさん達が気にしてましたよ。まさかベジータ王に感化されたんじゃないかって。それと、地球人にサイヤ人の事はまだ公にしてないんでしょ? 大丈夫ですか?」
「心配をかけたようですまんな。感化されているつもりはないが、気をつけよう。あと、サイヤ人の事に関しては大丈夫だ」
タロに笑いながら言われ、リークにはトーマ達が心配していたと伝えられる。
なお、タイツ達のサイヤ人化の事だが、儂やタイツが考えていた以上にあっさりと解決した。GCコーポレーションの者はもちろんだが、西の都の人々も、地球国政府も、タイツのファンも誰も彼女に尻尾が生えた事を深くは気にしなかったのだ。
この世界の地球には獣人型やモンスター型等様々な姿の人類が存在しているから、最初から尻尾が生えているぐらいなら「珍しい地球人だ」と思う程度で済む。儂はそう昔ターレスに言った。しかし、タイツ達の場合は「尻尾が生えていた」ではなく「急に尻尾が生えた」だ。
タイツの水着姿のグラビアや、チチに至っては天下一武道会に原作と同じビキニアーマー姿で出場している映像が残っているので、以前は尻尾が生えていなかった証拠は山ほどある。
騒がれて当然だと考えていたので、以前に買収してGCコーポレーション傘下にしたテレビ局や新聞社を使って世論を誘導する事を儂は考えていた。
しかし、儂やタイツが思うより、世間の尻尾に対するイメージは良くなっていたのだ。
前回の天下一武道会で優勝したギネと、五位入賞のターレスの姿がテレビで放映され、桃白白主演映画にも出演していたことで、世間からプラスのイメージで認知された。また、グルメス王国では悟空を含めた少年達が英雄として称賛されている。
そのため、タイツやチチに尻尾が生えても、「ドクター・ゲロに生やしてもらったのだろう」と思い込んだのか、どうやって生やしたのか深く追求したり、尻尾を生やした事を非難する者は幸いなことに殆どいなかった。
おそらく、多くの者にとって「タイツ達が尻尾を生やした」は、「年頃の娘が耳にピアスを開けた」のと同じぐらいの感覚なのだろう。
なお、サタンの両親も儂を訴える事無く、息子に起きた変化を受け入れてくれた。彼等にはサイヤ人が宇宙人である事や詳しい体質も説明したが、心配したのはサタンの食費の事ぐらいだった。度量の深い両親で助かった。
そして始まった試合では、この世チームは亀仙人、鶴仙人、ターレス、タイツ、そしてサン(分身)だ。
「一年で随分腕を上げたな! もう並みのフリーザ軍の兵士……いや、サイヤ人と比べても強いぜ!」
「オッサン達は一年経ってんのにあんまり強くなってねぇな。地獄じゃトレーニングする暇もねぇのかよ?」
「仕方ねぇだろ! こっちは一日八時間刑罰受けた後でトレーニングしてんだ。武道大会もねえしよ!」
タロの戦闘力は7000、リークは5000。以前と比べて、劇的と評せるほど高くなっていない。ただ、いずれ地獄に落ちて来るフリーザに負けない事を目標にしているベジータ王や、バーダックと共にいくつもの戦場を勝ち抜いたバーダックチームの面々と比べればの話で、普通のサイヤ人の戦士を基準に考えれば十分以上に強くなっている。
「そもそも、あんた達が凄いんであって俺達が怠けてるわけじゃないんだよ!」
リークの叫んだことが的を射ているだろう。
「なんじゃ、地獄の刑罰は修行にならんのか?」
「残念ながらな。それに、修行に成っちまったら悪い罪人程強くなっちまうじゃないか」
「言われてみればそうじゃのう」
亀仙人は5000で、そして鶴仙人は4000に、サンは7万2千……だが、大事をとって試合は十分の一の戦闘力7200の分身で試合に参加した。
そしてタイツとターレスは試合の結果重傷を負ったが4号の治療で回復し、それぞれ4200と6100にまで戦闘力を引き上げる事に成功した。
試合の合間には桃白白対アックマン、そしてミイラ君がパンプット、ラズリ、ラピスの三人とそれぞれ試合を行った。
「天下一武道会では試合で決着をつける前に負ける事が多いからな! ここで神の修行を受けた悪魔の力を見せてやろう!」
「ふんっ、凍り付いて凍えていたにしては威勢がいいな!」
「フハハハっ、今日は貴様がこの俺の強さに震え上がるのだ!」
アックマンは地球の神の神殿での修行で去年、『この世で一番強いヤツ』事件の時より倍以上実力を伸ばしていた。しかし、桃白白もまた強くなっていた。
アックマンが尻尾の先端からアックショットを放つ奇襲に出たが、桃白白はギリギリで回避して逆にどどん波でアックマンを倒して勝利した。
「子供達の中でも、俺が勝てない奴が増えたな。そろそろアックマンに帰って来てもらうか、占い婆様に新しい戦士を見繕ってもらわないと占われ放題になっちまう」
「いや、あんたに勝てるようになるまでにあたし達が何年修業したと思ってるのさ」
一方、ミイラ君は善戦したが三連敗して落ち込んでいたが、戦闘力自体はラズリ達より彼の方がやや大きい。それでも彼が三連敗したのは、彼女達が舞空術と気功波を習得していたからだ。
空を飛び、離れたところから射撃できるアドバンテージは大きいようだ。
そして三日目、地獄からやって来たベジータ王は予想通り……いや、予想以上に上機嫌だった。
「フハハハハ! 実にめでたい! まさか我々が辺境の星に過ぎないと思い込んでいたここにドラゴンボールという願いを叶える秘宝があり、それでサイヤ人の血を引く者が増えるとはな!
だが、それだけではない!」
高笑いをあげていたベジータ王は、唐突にサンと牛魔王に向き直った。彼女の中には新たな命が、それも男女の双子が宿っている。
「男女の双子が生まれるそうだな。実に喜ばしい事だ。祝いの品の一つも送りたいところだが、地獄からは持ち出せないのでな。許せ」
「は、はあ」
「初めてまともな事を言われた気がするべ」
なんと男女の双子を身籠っていたサンの、大きく膨らんだ腹を見つめるベジータ王。生前はともかく、母星と一族の大半を滅ぼされた王として、一族の末裔が新たに生まれる事に感じ入るものがあるようだ。
「そして、カカロット……悟空とチチだったな。お前達の婚約も実に喜ばしいものだ! 将来はサンと牛魔王を見習って励むがいい!」
「おう、ありがとな、王様のおっちゃん!」
「はい、悟空さの嫁として頑張るべ」
ベジータ王が言った「励む」の意味を正しく理解していないようだが、元気よく頷く二人。
「うむ、よろしい。貴様もこの二人を見習うのだぞ、ターレス」
「ケッ、余計なお世話だぜ」
なお、タイツ達の事を説明する過程でベジータ王達にはドラゴンボールの存在を明かしている。ただ、同時に地球のドラゴンボールは、「死後一年以上の時間が過ぎている死者は生き返せない」等の限界も慰霊碑に供えた手紙に書いておいたので、自分達を生き返せと言い出す様子はない。
また、地球のドラゴンボールを使って地球人全てをサイヤ人、もしくはそのハーフにするよう願うよう儂に要求する事や、その企みを息子への手紙に書くつもりもないようだ。
どうやらベジータ王は、全地球人類をサイヤ人やそのハーフに変えたら地球が滅茶苦茶になると考えているらしい。
タイツ達は「良い所取り」という願いの内容と、元々の彼女達の性格が善性であるからサイヤ人の血が混じって戦闘意欲が増しても問題なかった。
しかし、地球人の中の悪人が好戦的になったら手に負えなくなる可能性が高い。さらに、百年に一度しか満月が夜空に登らない惑星ベジータと違い、地球では満月が毎月夜空に登る。
地球人から変化したサイヤ人のハーフは弱くても、一斉に大猿化すれば町は壊れ滅茶苦茶になる。
地球を第二の惑星ベジータにしようと企むベジータ王としては、それは面白くない。
また、非戦闘タイプよりずっとか弱いサイヤ人を大勢増やすよりも、今の地球の環境を保った方が望ましいと考えたようだ。
「あいつ、死んでからの方が王様らしくなってないか?」
「バーダックとギネの息子が婚約ねぇ。随分早いじゃないか、きっかけは何だっけ?」
「あははは、それがさ、悟空に助けられたチチちゃんが、嫁に貰ってって言いだしてね――」
「へえ、ギネがバーダックに惚れた理由とほぼ同じだな」
そして、その様子を眺めているバーダックチームの面々は、ベジータ王を眺めるか、悟空とチチの馴れ初めをギネから聞き出している。
「ベジータ王の変化は、生前のしがらみから解き放たれた事で心境の変化があったのだろう。それで、頼んでおいた調査の方だが……」
「ああ、ズノーって情報屋の客と魔術師だったね。情報屋の客の方は、残念ながらまだ見つかっちゃいないよ」
儂が世間話のついでに調査の成果について尋ねたが、セリパ達がいる周囲にはズノー様の客はいなかったようだ。
「魔術師の方は地獄の鬼に聞いたら何人かいるようだが、連れ出すのは厳禁だとさ。俺達サイヤ人と違って、魔術で何をするか分かったもんじゃないから、って理由らしいぜ」
そして、魔術師の方は地獄に囚われている罪人の中に何人か発見したが、この世に連れて来るのはNGのようだ。まあ、確かに魔術師の魔術は謎に満ちているので動かしたくないのだろう。
サイヤ人達と違って、儂等が強ければ抑えられるというものでもなかろうし。僅かな隙を突いて魔術で何かするかもしれん。
「どうしても会いたければ地獄に来いってさ。それか、モロコ達に調べさせて、来年にでもデータを送ってもらったらどうだ?」
「そうじゃな、明日モロコ達に頼んでみるか。しかし、彼らもベジータ王からの仕事で何かと忙しいのではないかね?」
「いや、去年爺さん達が殺したウィローって言う科学者が自分からベジータ王の傘下に入ったから、そうでもないぜ」
なんと、去年儂等が倒したドクター・ウィローは、狂暴戦士と共にベジータ王の傘下に加わっていた。いったいどんな思惑があってかは不明だが、働きぶりは良いらしい。
「ウィローが、ベジータ王の傘下……絶対に何か企んでおるから、油断せんようにな」
「それはベジータ王本人に言ってやれ、宰相閣下の忠言なら、聞く耳はもつだろ」
「まあ、俺達も注意しとくよ。爺さんの話では、ウィローって奴は誰かの下に進んで着くような奴じゃなさそうだしな」
何か良からぬことを考えている事は確実なので、注意するよう頼んでおいた。
これも修行じゃと亀仙人に連れて来られたクリリンは、占い婆の宮殿で次から次に起きる出来事に圧倒されていた。
今の彼では何が起きているのかさっぱり分からない、次元の違う戦いの連続に頭がついて来ない。
「良いかクリリン、上には上がいる。お前はその上を目指し、もうダメだという自分に負けずに修行をし続けなければならん。武道とは、自分に負けないためにするものじゃ」
「む、武天老師様もそうして強くなったんですか?」
「うむ、まあな。とはいっても、儂がここまで強くなったのはここ十数年の事じゃがな!」
ハハハと笑う武天老師を、クリリンは改めて凄い人だと思った。
彼も試合でドラキュラマンという相手と戦い、怪我をしたものの勝つことが出来た。しかし、それでも自分が亀仙人だけでなく、悟空やチチ、ヤムチャと互角以上に強くなれるとは思えなかった。
「いや、お前は一か月前の時点で弟子入りした時の俺より強いぞ。自信を持て」
そうサタンは弟弟子を励ますが、クリリンの顔は晴れなかった。
「でも、俺、何年も多林寺で修行してこれですよ。俺って、やっぱり才能無いんじゃ……」
「弟子が強くなれるかは、弟子の力だけじゃなくて師匠の力も関係しているって、会長が言ってた」
その時、いつの間にかクリリンの近くにいたジャガーがそう話しかけた。
「そのプリン寺ってとこの師匠がどんな奴だかは知らねぇけど、今のおめぇの師匠はあの武天老師様だ。くよくよしてる暇があるなら、師匠を信じて修行しろ」
「あんた……目つきが悪いのに良い人だな」
「一言余計だ! これだからサタンの弟弟子は気に喰わねぇ!」
「そうだよな、まだ弟子入りして一か月だもんな! 今は武天老師様を信じて修行するのが一番だよな! 俺、根性だけは褒められた事あるんだから!」
「誉められたって、誰にだ? 武天老師様?」
「いえ、あの金髪の……ラズリって女の子に!」
占い婆の宮殿に来た時、クリリンは短い間だがラズリ達と話す機会があった。その時、何故亀仙人に弟子入りしたのか彼女に尋ねられた。
年上の美少女に「強くなってモテたいから」という動機を言えなかったクリリンは気が動転し、早く答えなければならないという焦りから、多林寺でいじめにあって逃げ出して亀仙人に弟子入りしたと動機ではなく経緯を話してしまった。
口にした後、情けない事を言ってしまったと落ち込みかけたが、ラズリの一言で救われた。
「へえ、根性あるじゃん」
「えっ!? そ、そうかな?」
「だってそうだろ、その兄弟子って奴らを見返すために、亀仙人の爺さんに弟子入りしたんだ。お前、見た目より根性あるよ」
ラズリがそう思ったのは、単純な理由だ。具体的にどんないじめかをクリリンは語らなかったが、亀仙人の修行より厳しいはずがないからだ。
いじめが辛かったから脱走して、ずっと厳しい修行を課す師匠に弟子入りして修行を続けている。根性なしにできる事ではない。
「よしっ! 頑張って俺も強くなるぞー!」
「お、クリリン、盛り上がってんな。いっちょオラと手合わせすっか?」
「うるせーっ! 悟空、お前なんかすぐに追いついてやるからな!」
「何怒ってんだ、クリリン? 腹でも空いたんか?」
原作よりずっと早くラズリと出会ったクリリンだが、可愛い女の子と婚約している悟空とは、まだ原作より仲が悪いままだった。
〇大岩
原作で悟空とクリリンが動かした大岩。押して動かすだけで、割る必要はない。
〇太陽
クウラや旧ブロリーなど、強敵を押し付けられてきた恒星。地球を含めた惑星とは次元が異なる耐久力を誇る。
〇劇場版『魔神城の眠り姫』
ドラゴンボールの劇場版第二弾。ブルマ達とのドラゴンボール集めを終えた悟空が、亀仙人に弟子入りするためにカメハウスに向かったところから始まる。
そこにクリリンが原作コミック通り登場し、亀仙人が弟子入りの試練として魔神城に囚われているという、伝説の眠り姫を連れて来るよう言い渡す。この時点で、悟空達は眠り姫の事を文字通り眠らされた姫だと思っていた。
悟空が出発した後、悟空を尋ねにやって来たブルマ達に亀仙人が「悟空達はテーマパークに遊びに行った」と嘘を言ったため、彼女達も巻き込まれる事になる。
その後、魔神城で魔族との戦いで悟空に何度も助けられたクリリンが彼に心を開いて背中を預けるようになったり、ブルマが捕まったり、ランチが登場したりする。
そして魔神城の主、ルシフェルの真の目的が太陽の破壊であり、眠り姫はそのために必要なエネルギーを蓄えるための兵器である事が判明する。
最終的にランチを連れ帰った悟空とクリリンは、彼女を眠り姫だと勘違いした亀仙人に弟子入りを認められ、めでたしめでたしとなった。
前作『神龍の伝説』はドラゴンボール集め(実質的に集めたのはボンゴ達グルメス軍だったが)と、グルメス王国での戦いが主な舞台だったのに対して、魔族達が支配する人跡未踏の地が舞台なので、個人的にはアドベンチャー感が強いと感じます。
おすすめの作品。
原作コミックやアニメとは全く別の世界線だがこの作品単体では、チチが登場しない『神龍の伝説』やチャオズが皇帝で鶴仙人が宰相をしている『摩訶不思議アドベンチャー』よりは原作に対する矛盾点は少なめ。
〇戦闘力
・交流戦一日目のベジータ王配下の下級戦士五人:1500から3000ぐらい。
・天津飯:640→1030 ヤードラット星での修行で、サイヤ人襲来編でラディッツと戦った悟空のフルパワー時と互角くらい強くなった。
・チューボ:1200→1930 サイバイマンと互角からだいぶ強くなったが、フリーザ軍ではまだギリギリ下級兵相当だと思われる。
・牛魔王:1400→2050 サイヤ人襲来編のヤムチャと互角から+650。フリーザ軍でも中級兵士に相当する?
・孫悟飯1680→2450 『たった一人の反逆者』時のセリパとほぼ互角。
・チャパ王:1590→2800 ヤードラット星での修行で、大幅パワーアップ。ナメック星編でドドリアに殺された三人のナメック星人の若者(ツムーリやマイーマ)に匹敵する実力。
・ターレス:4000→6100 生前のトーマを超えた。下級戦士出身でしかも十四歳という年齢でこの戦闘力は、ナッパが4000で名門出のエリートだった事を考えると驚異的な強さ。
・鶴仙人:3000→4300 原作ナッパを超えた。
・タイツ:2900→4200 修行で原作ナッパを超えた地球最強の社長令嬢兼女性芸能人。
・桃白白:3500→5600 原作トーマを超えた、殺し屋に成らなかったヒーロー。
・アックマン:1400→3600 カリン塔を登り、カリン様→地球の神(Mr・ポポ)の順で修行を受けた正義の悪魔。
・パンプット:100→120 原作鶴仙人と同じくらいの強さ。どどん波が撃てる。
・クリリン:10→25 ドラキュラマンに勝利。ラズリに褒めてもらったのと、サタンとジャガーの励ましで、折れかけた心が復活した。
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