ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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63話 クリリン、初めての実戦。未来のZ戦士VS魔神城の魔族

「これは……」

 なんだ? そうランチが聞き返す前に、ルシフェルが答えを口にした。

「そう、我らが故郷、魔凶星の欠片だ。先日隕石となって我々の元へもたらされた物を半分に割り、更に加工して作った」

 

 魔凶星の欠片のお陰で、悪魔の指の周囲に巣くう魔族の力は以前よりも遥かに増大した。しかし、ルシフェルはそれに満足せず、隕石を装身具にして身に付ける事を思いついた。それによって自身やガステル等の直属の部下の権威を高め、力が増大した下級魔族達が増長して逆らう事を防げると考えたのだ。

 魔凶星の欠片を直接身に付ける事で、力もより強くなったがそれは副産物に過ぎなかった。……侵入者が現れたとの報告を受けるまでは。

 

「貴様も魔族なら力がより高まるだろう?」

「あ、ああっ! 全身に力が漲るのを感じるぜ! うおお!」

 しかし、ランチは本物の魔族ではないので魔凶星の欠片もただの小石に過ぎない。だから、慌ててルシフェルに話を合わせて僅かだが気を解放し、全身に力を漲らせて体を一回り以上巨大化させる。

 

 彼女は宇宙人の細胞の中でもナメック星人の細胞を多く移植した人造人間であるため、ナメック星人と同じ力を短い修行で使いこなす事が出来た。テレパシーや腕の伸縮だけではなく、体の巨大化も同様だった。

 それを利用して、体を巨大化させてみせたのだ。なお、ナメック星人の能力で巨大化したため、服も同時に大きくなっている。

 

「な、なんだと!? これほどの力を目覚めさせるとは……やはり、ただ者ではない!」

 だが、ほんの少しやり過ぎたらしい。ルシフェルは自分と同じくらいの背になったランチの迫力に目を剥き、思わず後退りしていた。

 

 ヤバイ、ばれたか。そう思ったランチだったが、杞憂だった。

「ランチ、貴様に部下百人をつけ、ガステルと共に魔神城の警備を任せる!」

 なんと、ルシフェルはランチを大幹部に抜擢したのだった。

 

「えっ? お、おう」

「侵入者を捕まえれば褒美を与える。励むがいい。おい、彼女を手下達の所へ案内してやれ」

「はい。此方です、ランチ様」

 いつの間にか控えていた執事が、ランチをルシフェルが彼女の下につけた魔族達の所に案内する。

 

『ルシフェルって野郎、中々良い奴なんじゃねえか?』

『魔族にとっては、な。奴の野望が魔族以外の人類の絶滅である事を忘れんでくれよ』

『へいへい、分かってるよ』

 そうゲロとテレパシーで会話しながら、ランチは堂々と警備責任者となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 それからしばらく後、悟空達が悪魔の指に到着した。

「本当にでっかい指みてぇだ」

「なんだか薄暗くて、気味が悪い所だべ」

 原作では筋斗雲以外の移動手段……列車や牛を使っていたので、原作よりも早く到着した。

 

「な、なんだか怖そうだな。魔族って強いのか?」

「分かんねぇ。オラ、魔族を見た事ねぇからな」

「あのピラフって奴は違うのけ?」

 

 そんな事を話しながら、悪魔の指の一つにある魔神城に向かって近づいていく。すると、それまで穏やかだった空気に緊迫感が満ちた。

「でけぇ気が集まって来てる」

 そう悟空が言った途端、地上からいくつものミサイルや気弾が悟空達目掛けて放たれた。

 

「侵入者だ!」

「撃ち落とせ!」

 魔族を警戒せず、光る尾を空に残す筋斗雲でやって来た悟空達は、ブルー将軍達やヤムチャによって警戒を高めていた魔族達にあっさり発見されてしまったのだ。

 

 それでも普段なら下級魔族達が放つ気弾程度なら、筋斗雲の機動力があれば容易く掻い潜って逃げおおせる事が可能だった。

「うわーっ!?」

 しかし、今の筋斗雲は悟空も含めて四人が乗っており、そのうち二人は悟空とチチに捕まっていないと落ちてしまうという状態だ。

 

「み、身動きが取れねぇ!」

 さすがの悟空も、この状態で機敏な操縦は不可能だった。

「皆、降りるぞ!」

 そのため、悟空は筋斗雲から降りて魔族と戦う事を選んだ。チチとサタンは即座に「分かっただ!」、「おう!」と頷くが、クリリンは「マジかよ!?」と悲鳴をあげた。

 

「でりゃーっ!」

 悟空は背中に背負っていた如意棒を抜くと、向かってくるミサイルや気弾を叩き落としながら地面に降り立った。

「なんだ!? ガキだぞ。さっきの奴じゃない!」

「構うな! 侵入者は皆殺しだ!」

 悟空の姿を見て、ヤムチャとは別人である事を認識しつつも、躊躇わず襲い掛かる魔族達。

 

「へへっ、行くぞ! 伸びろっ、如意棒!」

 しかし、魔族達に怯える悟空ではない。悪戯小僧のように笑うと、如意棒を伸ばして横なぎに振り回す。

「「「ぐわあああっ!?」」」

 それだけで何人もの魔族が吹っ飛ばされ、蹴散らされていく。

 

 今の悟空の戦闘力は約300で、ヤムチャと互角。それほど強い悟空が、普段の約五倍になった程度の下級魔族達相手に後れを取るはずがなかった。

 

 その悟空以上に魔族達の注目を集めたのがチチだ。

「こっちは女のガキだ!」

「美味そうだっ! 俺が食ってやる!」

「ケケケっ! 血を搾り取ってルシフェル様に献上して、褒美をもらった方が良いに決まってるだろ!」

 

 一行の紅一点であるチチは、魔族達の食欲を大いに刺激していたからだ。ミサイルや気弾で吹っ飛ばすのは勿体ないと、涎を垂らした大勢の魔族が彼女に襲い掛かる。

 しかし、チチは危機に瀕してただ悲鳴をあげるか弱い少女ではない。

 

「こっちに、来ねぇでけろ!」

 チチが両手の指を鋭角の形で額にかざすと、そこからレーザーのような気功波が放たれて下級魔族達を薙ぎ払う。

 彼女は以前被っていた兜の力で放っていた光線を、技として開発していたのだ。その威力は、兜に頼っていた頃の倍以上。

 

「ち、近づけばこっちのごへっ!?」

 運良く気功波を掻い潜ってチチに接近しても、今度は拳や蹴りが飛んでくる。彼女の四肢の速さと込められた力は凄まじく、彼女の何倍もの体重の魔族達が毬のように吹っ飛んで行く。

 

 チチの戦闘力は255。下級魔族達が隕石の力で五倍にパワーアップした今でも、彼女の力は約十倍に相当する。勝負の世界は数値だけで結果を判断する事は出来ないが、流石にこれほどの差があれば離れていても近づいても魔族達に勝ち目はないだろう。

 

「ダイナマイトアターック!」

 二人に比べて下級魔族達の注目が薄かったサタンだが、彼も順調に敵を蹴散らしていた。落下の勢いを利用して放ったダイナマイトアタックからの連続攻撃で、落下地点で待ち構えていた下級魔族を撃退する。

 

「死ねぇ!」

 そのサタンの背後から、下級魔族が口から気弾を吐く。その不意打ちは成功するかに見えたが、気弾が当たる寸前でなんとサタンの姿が透けるように消えてしまった。

 

「な、なにっ!?」

「フッ、トリックだよ」

 残像拳に引っかかって狼狽える下級魔族の目の前に現れたサタンは、彼に拳を叩きこんで意識を刈り取った。

 

 亀仙人の下で一年近く修行を続け、更にサイヤ人ハーフになったサタンの実力は戦闘力にして約120。悟空やチチと比べるとまだ弱いが、彼もまた平均的な地球人を大きく超えた力を持つ超人の仲間入りを果たしている。

 

 そして一行の最後の一人、クリリンは……。

「うわっ! ひえぇぇぇ!?」

 悲鳴をあげて魔族から逃げ惑っていった。

 

「ちょこまかと逃げ回りやがって!」

「こいつ、弱いくせに妙にすばしっこいぞ!」

 飛んでくるミサイルや気弾を駆けまわって回避し、苛立って接近戦を挑んで来る魔族が殴りかかってきたら、小柄な体を活かしてその拳を掻い潜るクリリン。

 

「クリリン、なんで逃げ回ってんだ?」

 そんな彼に悟空は魔族を殴り倒しながら駆け寄って声をかけた。

「だ、だって俺はお前らと違ってまだ弱いんだから仕方ないだろ! 早くやっつけてくれよ!」

「そんな事ねぇさ。こいつらよりクリリンの方がずっと強ぇ。さっきから一度も攻撃に当たってねぇだろ?」

 

「そんな事言ったって、俺は武天老師様に弟子入りしてから、まだ三か月なんだぞ!」

「占い婆の所の試合で、ドラキュラマンを倒しただろ?」

「試合とこれは違うだろ!」

「このガキ共、魔族を舐めてんのか!?」

 

 逃げ回るクリリンについていく悟空。二人は、会話を続けながら魔族達の攻撃を回避し続けていた。

「仕方ねぇなぁ」

 正面から殴りかかってくる魔族の攻撃を避けようとしたクリリンだったが、なんと足首に悟空の尻尾が巻き付いて動きを止められてしまった。

 

「な、なにすんだ、悟空!?」

「ギャハハ! 仲間割れか!?」

「クリリン、守りを固めろ!」

 驚くクリリンに、笑う魔族の拳が迫る。

 

 避けられないクリリンは、「言われなくても!」と両腕を交差させて魔族の拳を受け止めた。肉体と肉体が衝突する鈍い音が響く。

「どうだ、俺の拳は!?」

「……あれ? 全然痛くないぞ?」

「えっ?」

 

 なんと、クリリンは自分の倍以上体の大きな魔族の拳を軽々と受け止めていた。

「クリリン、思いっきり拳を突き出せ!」

「お、おうっ!」

 そして、悟空に言われるままにクリリンが付き出した拳は、魔族の胴体に突き刺さる。

 

「ぐ、ぐわぁぁ!?」

 そして、その魔族をそのまま何メートルも吹っ飛ばした。

 

 それまで逃げ回るだけの雑魚だと思っていた敵が見せた反撃の威力に唖然とする魔族達と、自分が思っていた以上に頑丈で、しかも強くなっていた事に気が付いてぽかんとするクリリン。

「な? ビビる必要なんてねぇだろ?」

 悟空はこの三か月、修行に打ち込むクリリンを見て来た。悟空はクリリン本人よりも彼の強さを知っていたのだ。

 

「あ、ああ。悟空。お前こうなるって分かってたのか?」

「おう、クリリンの気の方がデカいし、あいつらの攻撃はクリリンに掠りもしなかったからな。

 行くぞっ、クリリン!」

「分かったっ!」

 

 悟空とクリリンは背中を合わせて、お互いの背後を守りながらまだ驚愕から立ち直っていない魔族の群れに突っ込んだ。

 過剰な怯えと狼狽の代わりに自信が宿ったクリリンの拳や蹴りは、まるで吸い込まれるように魔族達に当たり、反撃どころか回避すら許さない。

 

 さっきまでのクリリンは試合しか経験していなかったため、本物の殺気を……ぶっ殺して食ってやるという生々しい殺意の籠った魔族達の攻撃に震え上がり、逃げる事しか頭になかった。

 それを悟空がきっかけで自分と相手の力量の差を正しく把握し、殺気に負けない気合と自信を手に入れた。

 クリリンが武道家として一皮むけた瞬間である。

 

 クリリンの戦闘力は数値にして50で下級魔族達の倍近い。しかも、力任せな喧嘩殺法に頼る下級魔族達に対して、彼には多林寺で何年も修行して身につけた拳法の技がある。多数相手でも負けるはずがない。

 

 しかし――。

「悟空っ、ちょっと数が多すぎないか?」

 やはり圧倒的な数の差は大きい。悟空達が倒した魔族の数は既に百を超えており、周囲には倒れた魔族が無数に転がっているが、彼らに襲い掛かる魔族の数は一向に減る様子を見せない。

 

 クリリンは若干息が上がりつつあるが、悟空達はまだまだ体力に余裕はあるので戦い続ける事は出来る。しかし、彼らの目的は魔神城に囚われている眠り姫の救出だ。さすがに人助けを放り出して暴れ続ける訳にはいかない。

 

「そうだな、このままだと日が暮れちまう。でも、筋斗雲は危ねぇしな」

「よし、適当な丸太を投げて……いや、それも危ないか」

 魔族の数が全く減らないのに、再び筋斗雲で飛んでいくわけにはいかない。サタンが自分の投げた丸太に乗って飛ぶ事を提案しようとするが、空に有翼の魔族が飛んでいるのに気が付いて取り消す。

 

 舞空術はサタンも習得したが、クリリンはまだだし魔神城まではまだ距離がある。

「こうなったら走って突っ切るしかねぇ! かめはめ波―っ!」

 魔神城がある方向に向かって悟空がかめはめ波を放ち、魔族達の包囲網に大穴を空ける。チチ達はその穴を走り抜けようとした。

 

 しかし、チチ達の正面から他の個体と比べると細身の魔族が駆け込んでくる。サタンとクリリンは咄嗟に走りながら迎撃しようとしたが――。

「その人に構うでねぇ! 走り続けるだ!」

 チチがそう言って止めた時には、その魔族は既にサタンとクリリンの前を走り抜けていた。

 

「あ、あの動きはまさか……!」

 言われた通り走り続けながらも、細身魔族の速さに驚愕するサタン。それは後方にいる、かめはめ波を撃った後周りの下級魔族を如意棒で蹴散らし彼らの後を追おうとしていた悟空も同じだった。

 

「お前、なんでここにいんだ?」

「話は後だ! 後ろを振り向くなよ!」

「おう!」

 しかし、悟空と細身魔族が対峙したのは一瞬で、悟空はすぐに細身魔族の後ろに走り抜けた。悟空を追おうとした下級魔族達がそれに対してリアクションを起こすよりも前に、細身魔族の顔が取れ、その下から不敵な笑みを浮かべた長髪の男の顔が現れる。

 

「太陽拳!」

 なんと、細身魔族は下級魔族の顔を模したマスクに化けたプーアルを被ったヤムチャだったのだ!

 

「ぎやああああ!?」

「目がっ、目がぁぁぁ!?」

 光に弱い魔族達は上空にいた有翼の個体も含めて、太陽拳によって放たれた閃光によって目を焼かれて悲鳴をあげた。当然悟空達を追跡するどころではなくなり、彼らが立ち直った時には悟空達の姿は影も形もなかった。

 

 

 

 

 

 

「やっぱりヤムチャか! 助かったぞっ!」

「まあな。悟空達の気が近づいて来たと思ったら大騒ぎをしていたから、何事かと思ったぜ」

「でも、こんなところで何してるんだべ?」

「それはですね――」

 

 ヤムチャと合流した悟空達は、魔族達から逃げた後悪魔の指の麓に隠れて小休止をとりながら情報交換をしていた。

 ヤムチャはブルー将軍達に逃げられた後、魔族に追われて一時は逃げ出したが、ジェットモモンガをカプセルにして隠れて一旦追っ手を撒く事に成功。そしてプーアルと協力して魔族に変装して紛れ込み、調査を行っていたのだ。

 

「それで、地球の神様から調べるよう頼まれた隕石は、魔凶星という魔族の生まれ故郷の星の欠片だった事は分かったが、現物は魔神城にあるらしい。神様に報告したら、見つけ出して破壊するよう改めて頼まれたから、俺達は魔神城へ行くつもりだ。

 悟空達はどうする?」

 

「オラ達も魔神城へ用があるんだ。眠り姫っちゅう奴を助けて、亀仙人のじっちゃんの所に連れて帰らないとならねぇんだ」

「俺の試練なんです」

 

「武天老師様の試練か。待て、たしか眠り姫の事を話している魔族がいたな、プーアル?」

「はい、ヤムチャ様! 今夜眠り姫を使って、重要な儀式か何かをするみたいです!」

 下級魔族達が交わす会話に聞き耳を立てて情報を収集したヤムチャ達だが、時間も短かったので眠り姫の正体まではつかめていなかった。

 

「儀式って……もしかして生贄の儀式だべか!?」

 そして、眠り姫の事を伝説通り囚われの姫君だと思ったまま、人食いの魔族達が行う重要な儀式について想像した結果、悟空達は今夜眠り姫が生贄にされてしまうと誤解したのだった。

 

「は、早く助けないと!」

「落ち着け、クリリン! この辺りは厚い雲に空が覆われているから分かりにくいが、まだ昼だ。時間はある。

 奴らは気を感知できないようだが、警備は厳重だ。まずは魔神城に忍び込むぞ。まずは――」

 

 その時、複数の腹の虫が鳴いた。

 

「腹ごしらえをしてからにしよう」

「おう!」

「皆、本当によく食べるよな」

 クリリンに呆れられながらも、腹減っては戦が出来ぬと悟空達はホイポイカプセルから弁当を取り出して、腹ごしらえを済ませるのだった。

 

「ん? この声、ブルマか?」

 その最中に、ブルマのテレパシーが悟空に届いた。

 

 

 

 

 

 

 その頃、ブルー将軍達は既に魔神城のすぐ近くまでたどり着いていた。

「あのハンサムが外の魔族共を引き付けてくれたおかげで、楽にここまで来られたわね」

 それは魔族達が気の感知能力を持っていなかったのと、ヤムチャや悟空達が魔族の注目を集めている隙に乗じる事に成功したためだ。

 

「だが、これ以上先に進むのは難しいぞ」

「どうする? あの武天老師の弟子がまた騒ぎを起こすまで待つのかい?」

 しかし、魔神城の周りは有翼の魔族が何百人も目を光らせており、透明人間にでもならなければ入り込むのは難しそうだ。

 

「そうね、フラッペのお人形ちゃんを見つけたら利用してやるつもりだったけど、見かけないしどうしようかしら」

 岩の陰に隠れたまま、サイボーグ2号……ランチの姿を探すブルー将軍。魔神城の周りには、頭が二つある有翼の魔族や、巨大な翼竜、ひらひらした薄布を纏った大柄な魔族等、人外ばかり。この中にランチがいればすぐに目に付くはずだが……。

 

「いたわっ! あいつ、あんなところで何をしてるのよ!?」

 ブルー将軍が指さした先には、有翼の魔族を引き連れたランチの姿があった。

 

「おい、なんかでかくなってないか?」

「ボンゴ程じゃないけど、あんたよりは確実に背が高くなってるね」

「それに、変装したとしても魔族と違和感なく打ち解けすぎだろ」

 口々にそう言うボンゴとパスタに、ブルー将軍は鼻を鳴らして言い放った。

 

「元々角が生えてたもの、ちょっとでかくなるくらいできても不思議はないわ。それにフラッペもあの女を改造する時には、1号とは別の生物の細胞を移植したって言っていた。きっと、魔族の細胞を移植したのよ。

 まったく、これだからマッドサイエンティストは」

 

 ランチには一部の魔族の祖であるピッコロ大魔王と同族であるナメック星人の細胞を移植したため、ブルー将軍の推測は正解と言える。

 

「つまり、俺達はフラッペに出遅れている訳か。どうする、あの様子じゃ利用するのは難しそうだぞ」

「そうね。魔族をあの女に誘導して襲わせて、その間に潜入する作戦は諦めないと」

「将軍、あんたの超能力でどうにか出来ないの?」

「あの数じゃ無理よ。十匹止められても、他の百匹が襲い掛かってくるわ。並みの魔族が相手なら、百匹相手でも敵じゃないけど……ここの魔族って妙に強そうなのよね。流石は魔神城って事かしら」

 

 気を読んで相手の力量を測る事が出来ないブルー将軍達だが、通常時の魔族と、魔凶星の欠片によって強さが通常の五倍や六倍になっている魔族が違う事は多少観察すれば察せられた。

 雑兵でそれほどなのだから、上位の魔族はより強いはずだ。正面から戦うべきではないし、その間にランチに眠り姫を奪取されてしまったら何の意味もない。

 

「仕方ないわね。忍び込めるところを探すわよ。運が良ければ、その間にあのハンサムがまた何か騒ぎを起こしてくれるかもしれないし」

 そうブルー将軍達は慎重に動き出した。

 

 なお、そのブルー将軍達の位置は気を感知できるランチにとっては丸見え同然だった。

『どうする、あいつら? やっちまっても良いんじゃねぇか?』

『悩ましい所じゃな。君に襲い掛かってくるか、ヤムチャを殺そうとしたとか、そうなれば返り討ちにして良しと決断できるのじゃが』

 

 テレパシーで意見を交わし、ブルー将軍達をどうするか会話を交わすランチとゲロ。

『まあ、面倒だから放っておくか。あれぐらいなら、あいつらがやられる事もないだろ』

『そうじゃな。儂は魔凶星の欠片の解析に集中しよう』

 結局二人はあいつら……ヤムチャや悟空にブルー将軍達の事は任せる事にしたのだった。

 

「ランチの姉御! 俺達はこのまま待機ですかい!?」

 そして、不意にルシフェルに部下としてつけられた魔族に話しかけられたランチはゲロとのテレパシーを打ち切った。

 

「あ゛ぁ? 五分前に見張ってろって俺が言ったのを忘れたのか、テメェ!?」

「ヒィッ!? いや、俺達も出撃して手柄を狙った方が良いんじゃないかと……」

「三下が詰まらねぇこと考えるんじゃねぇ! そもそも警備が出撃してどうすんだよ!?」

 眠り姫がある魔神城から離れたくないランチは、逸る手下を怒鳴りつけた。

 

「へへへっ、全くだぜ。新入りは大人しく見張り番に徹するんだな」

「侵入者の相手は、おら達に任せるだべ」

 そんな彼女に絡むのは、新入りが気に喰わない古参……双頭獣の長と上級魔族のガステルだった。彼らの首にも魔凶星の欠片から作ったペンダントが下がっている。

 

「はいはい、好きにしてくれよ」

 ランチとしては魔族の権力闘争に興味がないため――今夜には眠り姫を奪取する予定だから、これ以上取り入る時間も無い――彼らの相手をする気はなかった。

 

「なんだと!?」

 その態度を馬鹿にされたと解釈したのか、双頭獣の長が二つの顔で怒り出す。彼は古参と言っても、昔から魔神城にいただけで、元は幹部でも何でもない。

 

 ルシフェルから魔凶星の欠片を与えられる前は、ただの名も無い魔族に過ぎなかった。そしてルシフェルが彼を選んだのも、その時偶然彼が声をかけやすい位置にいたから……つまり、完全に運だけで力を手に入れたに過ぎない。

 そのため、双頭獣は実力を証明する機会を渇望していた。その矛先にランチを選びかけた彼だったが――。

 

「今度は空から侵入者です! 飛行機が近づいてきます!」

 その時、今日三度目の侵入者の存在が報告された。

 

「飛行機か? なら俺の領分だ! 野郎ども、ついてこい!」

 手柄をあげる機会が向こうからやってきたと、双頭獣は意気揚々と手下を引き連れて出撃する。舌打ちをして彼らを見送ったガステルは、ふとランチに目を向けた。

 

「おめぇ、何処へ行くつもりだ?」

「決まってるだろ。あいつが抜けた穴をふさぐんだよ」

 ランチは魔神城の魔族が減って動きやすくなったと、ニヤリと笑っていた。

 

 

 

 

 

 

「よし、準備はいいわね、皆!?」

 魔神城を目指す飛行機に搭乗しているブルマ達は、悪魔の指に近づく前に先に着いているはずの悟空達に連絡を取ろうとした。

 

 そして、悟空がヤムチャとプーアルもその場にいる事を聞き、テレパシーの相手をプーアルに切り替えた。そして彼らの知る情報を共有し、「今夜生贄にされる眠り姫を、魔族達から助ける」のに協力する事にしたのだ。

「まずこの飛行機で突っ込んで囮になって、魔族を適当に倒したらあたしとチャオズの瞬間移動で孫君達と合流! その後飛行機は自爆させるから、逃げ遅れないよう気をつけてね!」

 

『おうっ!』

「おうっ! じゃなーい! 俺を降ろしてくれっ! 何なら自力で飛んで逃げるから!」

 ブルマが口にした作戦の概要に、ウーロン以外の全員が頷く。

 

「何よ、眠り姫を見たくないの?」

「く、見たい……仕方ねぇな。お前らも強くなってるし、魔族くらいならなんとかなるか」

 臆病で自分が戦うつもりは全くないウーロンだが、自分以外の面々の強さは分かっている。そして、恐ろしいはずの魔族もGCGの隊員や、隊員より強いブルマ達にかかれば問題なく倒せる相手だというのも聞いて知っていた。

 

「それなんだけど、悪魔の指の周りの魔族ってヤムチャが調べてる隕石が降って来てから、数倍以上強くなっているみたいなのよね」

「ああ、それで妙に大きい気が多いのか」

「ブルマ、もうすぐ魔族が来る」

 

「さっきの無し! 俺は帰る!」

「もう囲まれてる。蝙蝠やロケットに変身しても、撃ち落とされるのがオチだぞ」

「そ、そんなぁ~!」

 

 しかし、ブルマ達は気の感知とプーアルからの情報で、並みの魔族……常人でも現代兵器で充分に武装していれば勝てる程度の魔族と比べて、悪魔の指とその中の一つにある魔神城の魔族は別格の存在である事に気がついていた。

 

「侵入者だ! 撃てっ、撃てぇーっ!」

 まずは悪魔の指周辺に巣くう有翼の魔族達が、ブルマ達が乗る飛行機に向かって口から気功波を放ち、構えたミサイルランチャーやバルカン砲の引き金を引いた。

 

 しかし、飛行機はそれらを全て避けてみせた。真横へのスライド等魔族にも不可能な動きを繰り返して。

「念動力で飛行機を操って回避するのって、中々難しいわね」

 それはブルマが飛行機を超能力によって動かしていたからだ。

 

「だったらエンジンを切ったらどうだ?」

「馬鹿ね、そんなことしたら全部あたしの念動力で動かさないといけないじゃない。流石に重量オーバーよ」

「それもそうか」

 

「ほれ、俺達もそろそろ働くぞ。どどん波―っ!」

「分かってるさ。はぁーっ!」

 既に飛行機の上に出ていたジャガーやラピス達が、どどん波や気弾を放って魔族達を撃ち落としていく。

 

「こうなったらやけだ! 弾があるだけ撃ってやる!」

 そしてウーロンは、飛行機の銃座で魔族目掛けて機銃を撃っていた。

「なあ、これって当たったら効くんだよな!?」

 しかし、ジャガー達が放つ気功波に撃たれた魔族達は白目を剥いて落ちていくが、ウーロンの機銃に撃たれた魔族達はその時は逃げるものの、再び飛行機を追跡しに戻る。

 

「まあ、効いてない訳じゃないんじゃないか? 当たったら痛がってるし。ただ、痛いだけなんだろ」

 ラピスが言った通り、飛行機に備え付けられている機銃は原作ブルマが悟空に向かって引き金を引いた小口径の拳銃や、彼女が扱える自動小銃と比べれば圧倒的に高い威力を誇る。

 

 しかし、流石に戦闘力28にまで上がった魔族達に致命傷を与える威力はない。目や翼に直撃すればともかく、それ以外の所では掠り傷程度にしかならないようだ。

「ええっ!? だったら意味ないのか、これ!?」

「一旦引かせてるんだから、十分意味はあるだろ。ミサイルに当たれば撃ち落とせるし。せいぜい頑張んな」

「いっそ意味は無いって言ってくれよ~っ! そしたら止められるのに!」

「頑張れ、ウーロン。ボクも頑張る」

 ウーロンの機銃を掻い潜って近づいてくる魔族やミサイルを、どどん波を連射して撃ち落としていくチャオズ。

 

 そして飛行機は魔族を撃退しながら魔神城に近づきつつあったが、その時魔族達に変化が起きた。

「こいつら、ちょっと強くなってないか」

「ああ、気が少し大きくなった」

 飛行機の周りを囲む魔族達の気が突然一段上がり、動きが良くなったのだ。

 

 それまでミサイルやバルカンを使っていた魔族はそれを投げ捨て、気弾を放ち始めた。また、連戦を想定して威力を抑えていたラピス達の気弾に当たっても耐える者が出始めたのだ。

「魔神城に近づいたからだ! 魔神城には、あいつらを強化している隕石がある!」

 そう、魔凶星の欠片がある魔神城に近づいたため、魔族が受けている強化が五倍の28から六倍の33.6に上がったのだ。

 

 数字としては僅かな差だが、無数の魔族が一斉に強くなったため囮を続けるのが若干きつくなってきた。

 

「じゃあ、そろそろ孫君達と合流しようかしら? って、孫君達まだ城の外じゃない!」

 ブルマが予定より早く作戦を切り上げる事を考え始めた頃、もう一段強い魔族達を率いた強力な魔族が現れた。

 

「女が二人も乗ってやがる! 女二人は生け捕りにしろ! ルシフェル様に献上だ! 残りは皆殺しにしてやる!」

 首から魔凶星を下げた幹部双頭獣が手勢を引き連れて現れたのだ。

 

 他の魔族と比べて倍ほども強い幹部の登場に、ブルマ達に緊張が走る。

「どどん波ーっ!」

「ギヤアアアアア!?」

 強敵が出現したので、早く倒さなければ。そう思ったジャガーの放った全力のどどん波の直撃を受けた幹部双頭獣は、悲鳴をあげながら墜落していく。

 

 魔凶星の欠片によって十五倍程に戦闘力が上がっていた双頭獣の長だが、数字にして84では、ジャガーが全力で放ったどどん波に耐える事は出来なかったのだ。

 魔凶星の欠片を装着した幹部双頭獣が墜落した事で、周囲の魔族の強さが一段下がった。

 

「これならまだ先に進めるわね」

 そうブルマが呟いた時、地上から不甲斐ない同僚が白目を剥いて地面に落下するのを見たガステルが、足元に火の玉を出現させ、彼女達の飛行機目掛けて飛び立った。

 




〇戦闘力推移

・ブルマ:148→244 サイヤ人ハーフになった事と修行で、原作ピッコロ大魔王を超える強さに到達。もしルシフェルに捕まっても自力で脱出しそう。それに、執事の巨大注射器の針が刺さらないかもしれない。

・ラズリ&ラピス:105→140 地球人のままだが、原作桃白白を超えた双子。

・チャオズ:75→140 「神龍の伝説」事件から約一年で倍ほどに戦闘力を伸ばした。原作桃白白並み。

・ジャガー・バッタ:80→110 ライバルのサタンに逆転されてしまったが、順調に強くなっている。



〇双頭獣

 頭が二つある有翼の魔族。片方の頭は一つ、もう片方は二つの目があり視野が広い。強さ自体は悪魔の指周辺の下級魔族と変わらず、5.6ぐらい。本来は気弾を放つことはできないが、何処かの歴史改変者によって魔凶星の欠片が隕石となって降って来た事で可能になった。

 隕石が落ちた後の悪魔の指周辺(×5):28 魔神城周辺(×6):33.6 魔凶星の欠片装着幹部の直属&魔神城内(×7):39.2 魔神城内部(×8):44.8



〇双頭獣の長(幹部)

 運良くルシフェルに魔凶星の欠片を与えられた、昨日までただの双頭獣だった魔族。戦闘力も欠片無しでは5.6だが、欠片のお陰で十五倍に高まっており、現在は84。亀仙人の修行をつけてもらった後の悟空より少し高い。

 ルシフェルが彼に魔凶星の欠片を与えたのは……自分、ガステル、執事、ランチの順に欠片を配っていたら最も小さな欠片が余ったから。しかし、他に目ぼしい魔族がいなかったため、適当に飛べる奴から選んだ、というもの。




 酒井悠人様、佐藤東沙様、kubiwatuki様、so-tak様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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