ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

65 / 143
65話 ルシフェルVS未来のZ戦士+α

 時間はやや巻き戻り、魔神城の外に一人残った天津飯は、ランチと彼女が率いる下級魔族達と戦っていた。

「くっ、気が大きくなっている。貴様、実力を隠していたのか!?」

「別にそのつもりはねぇんだけどな!」

 元々はガステル以下に気を抑えていたランチだが、彼女を本物の魔族だと思い込んでいる天津飯が容赦せず攻撃を仕掛けて来るので、それに合わせて気を徐々に解放していた。

 

(勝つつもりはねぇけど、こいつ女相手にもエグイ攻撃しかしねぇな! あのままだったらオレの体がハチの巣にされてたぜ)

 マシンガンのような天津飯の突きに耐えるために気を解放し、次に天津飯が繰り出した鋭い蹴りに耐えるため気を解放し、より本気を出した天津飯が放ったどどん波を受けても耐えられるよう気を解放し……。

 それを繰り返したランチの気は、天津飯に匹敵しつつあった。

 

 そうしなければ胴体に穴が空いたり、背骨をへし折られて内臓が破裂したり、気功波の爆発で全身がちょっと焦げたりしていただろう。

 ナメック星人の再生力を持つランチなら、その状態からでも一分とかからず復活する事が可能だ。彼女はゲロの改造によって作られた二つの核、頭部と心臓を同時に破壊されない限り死にはしない。

 

 それは分かっているが、流石のランチも自分からそれを試したいとは思わなかった。青髪の方ならあっさり実行してしまいそうだが。

「す、すげえっ、流石ランチ様だ」

「何をしているのか、速すぎて見えねぇ!」

 幸い、下級魔族は気が感知できないのでその不自然さに気が付かなかった。

 

「くっ! これほどの強敵が潜んでいたとは……」

 そして天津飯は不自然さに思考を回す余裕がない。すぐに倒してチャオズ達と合流できると思っていた相手が、戦っている内にどんどん強くなり、戦闘力で1000を超える自分に匹敵しつつあるのだから焦って当然だろう。

 

「テメェ! ちっとは容赦しやがれ! 女の扱いがなってねぇな!」

 故意に受けてやられた演技をしたいから、もっと普通の攻撃をして欲しい。そんなランチの思いは天津飯には全く届いていなかった。

 

「俺は敵には容赦はしない! 貴様が女だったとしてもだ!」

 ランチを魔族だと思い込んでいる天津飯は、彼女を鋭い眼光で睨みつける。

(くっ、いい目つきをしやがるじゃねぇか。って、そうじゃねぇ!)

 そうランチが集中を乱したのを、チャンスと見たのか天津飯が攻めに出た。

 

「どどん波!」

 足の指からランチの上半身に向かってどどん波を放ったのだ。彼女はそれを見て、逆にチャンスだと思った。

(よしっ、これに当たって死んだふりをしてやり過ごしてやるぜ!)

「ぐあ!」

 ランチは自分に迫るどどん波をわざと見逃し、まともに受けた。

 

「スーパー……どどん波ーっ!」

 そして上体を大げさに揺るがしたランチに向かって、天津飯は必殺のスーパーどどん波を放つ。やっぱり容赦ねえなと思いながらも、ランチは瞬間的に気を上昇させて耐えながらも、自分から後方に吹っ飛んだ。

 

 背中で魔神城の外壁を壊して倒れ込んだランチは、もうもうと土埃が舞うなか天井を見上げた。

(あとは気を消してじっとしていれば、あいつもオレが死んだと思い込むだろ)

「へっ……」

 その時、彼女の鼻を埃が刺激した。ヤバイっと思った時には、もう遅い。

 

「へっくしゅんっ! えっ、あれっ?」

 ぱっと髪が金髪から青へ変わり、人格も入れ替わるランチ。いつもならここでスカウターが交代前の情報を補完してくれるのだが、あいにくチャオズに奪われてしまったのでそれも無い。

 

 それまで維持していた巨大化が瞬間的に解け、呆然として周囲を見回す。

「わ、わたしは今まで何をしていたんでしょう? ここはいったい……スカウターも無いですし。あ、そうだ、もしもの時はゲロさんにテレパシーで連絡を取るんでしたね」

 青髪ランチは若干不安そうな様子を見せつつも、マイペースさを崩さずのんびりとしていた。

 

 それは彼女が元々そうした性格である事だけではなく、周囲に存在する気の持ち主が彼女より圧倒的に弱い事が関係していた。

 永久エネルギー炉のみを原動力としている彼女には気が無い。そのため、いわゆる「気を抑える」必要がない。だから、気を抑えていた金髪ランチだった時と違って天津飯達の攻撃が当たってもダメージを受ける事はないのだ。

 

「気はこの辺りで消えたが……誰だ!?」

 そこに、ランチを本当に倒したのか確認しに来た天津飯が現れた。自分に匹敵する実力の魔族にしては、スーパーどどん波がまともに入ったとしてもあっさりやられ過ぎだと怪しんだのだろう。

 そこで青髪ランチの姿を見て思わず驚きの声をあげた。

 

「えっ!? わ、わたしですか?」

 城の壁に空いた穴から現れ、自分を睨みながら大声を出す天津飯に、やはりどこかのんびりとした様子で応じる青髪ランチ。

 そんな彼女を見て、天津飯は困惑して思わず硬直した。

 

 額に角が生えているし、着ている服も魔族達と似たようなデザイン……と、いうか、服だけではなく顔立ちもあの金髪の魔族と似ている。

(しかし、別人だ)

 天津飯はそう確信していた。何故なら、青髪ランチからは気がほとんど(実際にはまったく)感じられず、体の大きさも平均的な女性並みだったからだ。

 

 気が無い事に気が付けば、「もしかして気を制御して消しているのか?」と怪しんでいただろうが、天津飯もそこまで咄嗟に気が回らなかったようだ。

 

(あら? そう言えばこの人、ゲロさんに見せてもらった資料に写真があったような?)

 一方、青髪ランチは天津飯の顔を見ている内に、彼の事を思い出しつつあった。

「今だ!」

「やっちまえっ!」

 その時、穴の外側からそんな叫びと共に下級魔族達が気弾やミサイルを放った。

 

 ランチを倒した(と、彼らは思っている)天津飯の不意を突いて倒そうと企てたのだ。穴の奥に、見覚えのない女魔族(青髪ランチ)がいるのが見えたが、彼らは巻き添えにするのを躊躇わなかった。

「いかんっ!」

 逆に、天津飯は咄嗟に青髪ランチを庇おうとした。敵なら女でも容赦はしない彼だが、青髪ランチからは気が感じられず、攻撃的な雰囲気も無かったため、反射的に守るべきだと判断したのだ。

 

「止めてください! えいっ!」

 そしてランチもとっさに動いていた。自分を庇うために抱き着いて来た天津飯を庇い返したのだ。抱きしめられたまま、彼の背後に回した手から気功波を放ったのだ。

 

「「「ぎ、ギヤアアアアアアア!?」

 溜めも無しに放った気功波だったが、青髪ランチの戦闘力は十万を超える。魔凶星の欠片の力でパワーアップしていても戦闘力が数十でしかない下級魔族達は、為す術もなく光に飲み込まれて消えていく。さらに、その後方に聳えていた悪魔の指を構成する山を一つ吹き飛ばした。

 

「い、今のは……?」

「あ、あの~、放してもらってもいいでしょうか?」

「っ! し、失礼!」

「いえっ! 助けてくれてありがとうございます!」

「そ、そんな、大したことはしていません」

 

 背後で起きた出来事に唖然としていた天津飯だったが、頬を赤く染めた青髪ランチに気がつくと慌てて彼女から離れた。思わず自分も頬を赤らめ、浮足立ってしまう。

 師である鶴仙人と弟弟子のチャオズと共に南の都に居を移し、都会で生活してきた天津飯だったが、異性に対する免疫はまだあまり育っていなかった。

 

 ……金髪ランチと戦っている間は戦闘中であるという緊張感と、今のような甘い空気が入り込む余地がない状況だったため、気にならなかったが。

 

「天津飯、無事か!? って、お前も隅に置けないな」

「あの真面目な天津飯さんが……」

「ヤムチャ、プーアル!? いや、そう言う訳では……! それより、悟空達と合流するぞ!」

 魔神城の一角から強力な気功波が離れたのに気が付いたヤムチャが来て声をかけ、天津飯も我に返った。

 

「あなたは安全なところに避難してください。俺は、行かなくてはならないので」

 いや、青髪ランチにそう言っているのでまだ我に返り切っていないかもしれない。

「いえ、わたしも一緒に行きます。行かせてください」

 

「しかし……」

「天津飯、この辺りに安全な場所はないぜ。プーアル、この人をジェットモモンガに乗せてくれ。もしもの時は頼んだぞ」

「はいっ!」

 

 なお、ヤムチャも青髪ランチを金髪ランチと同一人物だとは気が付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 再び時間は遡り、悟空達が天津飯と別れて魔神城の内部に攻め込んだ直後。

「うおおおっ! 侵入者を殺せ! これ以上先へ進ませるな!」

 城の内部を守る魔族達は、死に物狂いで悟空達の前に立ちはだかった。

 

「こいつら、ますます強くなったなぁ!」

「ほんと、魔凶星の欠片って厄介ね!」

「眠り姫を探す前に、まずそいつを壊すべきじゃないのか?」

 

 魔神城にはルシフェルが装飾品に使わなかった、隕石の残り半分がある。そのため、下級魔族達の戦闘力は八倍の約44.8に上昇していた。

 それでも悟空やブルマ、チチにとっては誤差の範囲だ。

 

「そうだな。急がば回れって言うしな」

「それを言うなら……ん? ジャガーが正しい言葉を言っただと!?」

「サタン、集中する!」

 そしてジャガーやサタン、チャオズにとってもよほどの数で攻められなければ強敵とは言えない。

 

「おいっ、大丈夫なのか!?」

「こいつら、もう俺とほとんど変わらないんじゃないか!?」

 しかし、戦闘力が50しかないクリリンにとっては、下級魔族一体一体が強敵になり得る。

 

 下級魔族が振り回す拳を掻い潜り、拳をみぞおちに叩き込む。しかし、それだけでは倒せず、呻きながら体勢を立て直そうとする下級魔族の頭部に蹴りを叩きこんでやっと倒せる。

 力量の差はかなり小さく、クリリンにとって魔族との連戦はかなり厳しかった。

 

「まずは貴様から死ねぇ!」

 それなのに一度に二人の下級魔族が左右から同時に襲い掛かって来た。

「うわっ!」

 左右から迫る緑と灰色の拳に、避け切れないと思ったクリリンは咄嗟に防御を固めて耐えようとした。

 

「それは悪手だろ」

 しかし、そう言いながらラピスが右側の、ラズリは無言で左側の下級魔族を蹴り飛ばした。

「あ、ありがとう」

「おい、クリリンだったよな? お前は敵を倒すのに拘るな。避ける事に集中した方がいい」

 

「っ! わ、分かった」

 ラピスの助言にクリリンは若干の悔しさやショックを覚えたが、それが正しいと理解していたので直ぐに頷いた。

「今は気に入らないだろうけど、お前ならその内こいつら程度はすぐ倒せるようになるさ。今は我慢するんだね」

「え、本当?」

 だが、ラズリにそう言われて、思春期の少年のプライドや、力不足だと指摘されたショックは頭の中から飛んでいった。

 

「ああ。自分で気が付いてないのか? こいつらは、お前がこの前占い婆の所で勝ったドラキュラマンより強い。たった二か月でこいつら相手に戦えるぐらい強くなったんだから、お前、才能あるよ。……そもそも、強くなれない奴は亀仙人の爺さんの修行についていけないだろ」

 

「分かった! 俺、頑張るよ! おーいっ、お前らっ! 俺に攻撃を当ててみろー!」

 ラズリが声をかければかけるほどクリリンは顔を輝かせ、意気揚々と魔族に向かっていき彼らを挑発しに行ってしまった。

 

「おいっ、調子に乗り過ぎるんじゃない!」

「良いじゃないか。言った通り回避に集中しているようだし、もし当たってもそう酷い事にはならない」

 実際、クリリンはラズリの心配をよそに下級魔族達の攻撃を楽々と避けている。下級魔族が力任せの喧嘩殺法に頼っているだけではなく、彼らとクリリンでは体格が違い過ぎて攻撃を当てにくいのだ。

 

 その上、数値にして一割程度とはいえクリリンの方が身体能力は上なのだから、彼が回避に集中すれば攻撃が当たるはずがない。

 そしてクリリンに攻撃を回避されて隙を作った下級魔族は、ジャガーやサタンがすかさず倒してていく。

 

「それにしても励ましてやるなんて随分優しいじゃないか。やっぱり気になるのか?」

「お前がきつい事ばかり言うからだ。それとも妬いてるのか?」

 そう双子の弟に返しながらも、声をかけただけであれほど喜ばれて悪い気はしなかったのは事実である。

 それに、贔屓目無しでクリリンには才能があるとラズリは思っていた。

 

 彼女が暮らす西の都では、亀仙人の修行よりだいぶ難易度が低いはずのGCGの入隊試験に耐えられず、脱落する者が毎月出ている。脱落せずGCGに入隊した者達と比べても、約三か月でクリリン程強くなった者は殆どいない。

 

「誰も妬いてなんかないさ」

 それはラピスも分かっているので、「ウーロンと一緒に下がっていろ」ではなく「回避に専念しろ」と言ったのだ。

 

「貴様! これ以上進むことは許さん!」

 そう双子が話している時に一行の前に立ちはだかったのは、下級魔族を引き連れた執事だった。首から下げた魔凶星の欠片の効果で全身の筋肉が膨張し、以前は身の丈サイズだった巨大注射器を短槍のように構えている。

 

「強そうなのが出てきたな。おめぇっ、眠り姫はどこだ!?」

「やはり眠り姫を狙って……ルシフェル様の邪魔はさせんぞ! かかれ!」

 執事は悟空の質問に答えず、配下の下級魔族達をけしかける。下級魔族達は笛を吹いて指令を全体に伝え、一斉に悟空達に襲い掛かった。

 

「うひゃーっ、多いな!」

 かめはめ波で吹っ飛ばすことは出来るが、それだと城のどこかにいる眠り姫まで吹っ飛んでしまうかもしれない。

「太陽拳!」

 なので、悟空は皆の前に出ると太陽拳を使った。下級魔族達は目を封じられて悲鳴をあげて顔を抑えて転倒し、後ろの魔族達も倒れた同族に足をとられてバタバタと倒れてく。

 

 それでも三分の一ほどは転倒を免れ、悟空達に挑みかかるが……。

「おりゃーっ!」

「はっ! とうっ!」

 しかし、下級魔族達の突撃も数と勢いが半減しては悟空達の脅威ではない。拳や蹴りで吹っ飛ばされていく。

 

「お前達の血を、今宵の飲み物にしてやる! まずはお前だ!」

 それを見かねた執事が、巨大注射器を構えて自ら前に出て来る。その強さはチチやブルマには遠く及ばないが、下級魔族よりも圧倒的に上だ。

 

「えい!」

 しかし、執事が突き出した巨大注射器の針は、チャオズの頭に当たった瞬間儚く折れてしまった。原作で、天下一武道会の舞台を割ってもタンコブ一つできなかった彼の石頭は健在だった。

 

「はっ?」

「どどん波!」

「ぐ、ぐわーっ!?」

 そして、チャオズが放ったどどん波によって倒されたのだった。

 

「よし、このまま先に進むぞ!」

「そう言えば、前に進むだけで良いんだべか?」

「分かんないけど、あたし達が進むのを邪魔するって事は、この先にあたし達に見せたくないものがあるって事よ!」

 

 そのまま下級魔族を蹴散らしながら進むと、悟空達は魔神城のホールにたどり着いた。そこには祭壇らしきものと、場違いにも天蓋付きのベッドが放置されていた。

 

「あそこに眠り姫が!?」

「よっしゃーっ、俺が見て来る!」

 それまで皆の後ろに隠れていたウーロンが、すかさず変化して蝙蝠になり、ベッドの天蓋の内側に飛び込んでいく。

 

「あれ? 誰もいないぞ?」

 しかし、ベッドには誰も眠っていなかった。

「じゃあ、眠り姫はどこに?」

「さっきボクがやっつけた奴が言ってた、ルシフェル様って奴が知ってるかも」

 一同が困惑するなか、チャオズが執事が口にしていた名前を思い出してそう提案した。もっとも、今度はその「ルシフェル様」が何処にいるのが問題になるが……。

 

「じゃあ、一番強い敵の所だな! よし、行こうぜ。皆!」

「ええーっ!」

 悟空が嬉しそうに見当をつけたので、すぐにみんな動き出した。ウーロンは嫌そうな顔をしたが、ここまで来て眠り姫を見ずに逃げるのは嫌だったため、結局付いて行く事にしたのだった。

 

 その頃ルシフェルは、今夜の月の光を眠り姫に浴びせないまま太陽破壊砲を使用する事を決断していた。

 魔神城の主である自らが出陣して悟空達を倒し、その後ゆっくり儀式に取り掛かる事も考えた。魔凶星の欠片によって強化された今なら、悟空達を倒す自信はある。

 

 しかし、侵入者は複数いる。ルシフェルが悟空達と戦っている間に眠り姫を奪われ、破壊されれば彼の野望は永遠に潰える。

 それならばいっそ、不完全でも眠り姫に溜めこんだエネルギーを太陽に撃ち込む事を彼は選んだのだ。

(既に何千年もエネルギーを溜めこんだのだ。今夜月の光を浴びせなくても十分かもしれない。もし太陽を破壊しつくせなかったとしても、その光は月や星よりも小さく儚い物になるはず。そうなれば、地球は我々魔族の物だ!)

 そう自身を鼓舞しながら、空いている右手で太陽破壊砲を操作し、眠り姫を組み込もうとする。

 

 まだ太陽は西の空に残っている。もし沈んでいたら朝日が昇るまで時間を稼がなければならなかったので、ルシフェルは人生で初めて太陽が空にある事を感謝した。

 

「いたぞ! おめぇがルシフェルだな!?」

「眠り姫を渡せ!」

 そこに、ルシフェルの気を目印に追ってきた悟空達が現れる。彼は残してきた執事と部下が早々に敗れた事を悟り、顔を歪めた。

 

「その通り。私こそがこの魔神城の主、ルシフェル! しかし遅かったな、眠り姫はたった今、この太陽破壊砲に組み込んだ!」

 紳士然とした態度を捨て、悪鬼のように悟空達へ牙を剥くルシフェル。

 

「組み込んだって……あの大きな宝石が眠り姫の正体!?」

「美女じゃなかったのかよ!?」

「太陽破壊砲ってなんだ? まさか、太陽を破壊するつもりか、あの魔族?」

 

 同時に明かされた真実に、驚いたりショックを受けたりと忙しい悟空一行。

「き、貴様等! そんな事も知らないまま部下達を倒し、ここまで私を追い詰めたのか!? ゆ、許さん!」

 激高したルシフェルは黒い禍々しい気を右手に集中させると、悟空達に向かって放った。

 

「うわっ! どうする? 眠り姫はピチピチギャルじゃなかったけど!」

「でも、とりあえずやっつけた方が良いべ! あいつが持っている石、ヤムチャさんが探してる隕石に違いねえべ!」

「太陽破壊砲ってのも、明らかにヤバそうだしな!」

 

 眠り姫が亀仙人の語ったような姫君ではないと判明したが、チチとクリリンの指摘によりこのまま戦う事が決定した。

 左右に散開してルシフェルが放った気弾を避け、身構える悟空達。

 

「太陽を破壊するより先に貴様らを皆殺しにしてやる!」

 そう怒りを滾らせるルシフェルだったが、太陽破壊砲と悟空達の間に立ったまま動かない。何故なら、眠り姫を設置しても太陽破壊砲を撃つまでに予定よりも時間がかかるだからだ。

 

 元々の計画では朝日を撃つはずだったが、夕日を撃たなければならなくなったので照準を東から西に大きく変えなければならない。

 それまで、ルシフェルはたった一人で太陽破壊砲と眠り姫を守らなければならなくなってしまったのだ。

 

 しかし、多勢に無勢だというのにルシフェルには怯んだ様子はなかった。

「この魔凶星の欠片がある限り、私は無敵だ!」

 何故なら彼は、ホールの祭壇で祀られていた魔凶星の欠片を左手に持っていたからだ。握りこぶしの半分ほどの大きさのそれは、ペンダントよりも強く彼の力を増大してくれている。

 

 ルシフェルの素の力は、戦闘力にして25。しかし、魔凶星の欠片を左手に持っている今の戦闘力は五十倍の1250。

 悟空達とは圧倒的な差がある。先ほどルシフェルが放った気弾に誰かが当たっていたら、命を落としていただろう。

 

 だが、それは悟空達も分かっている。それなのに、『神龍の伝説』事件の時のようにテレパシーやスカウターで助けを呼ばずに来たのは、勝算があるからだ。

 ルシフェルを包囲するように、半円形に散った悟空達は一斉に技を放った。

 

『太陽拳!』

「なにっ!? こ、小癪な!」

 クリリンとウーロン以外の全員、総勢八人の太陽拳によってルシフェルの周囲は閃光に包まれた。正面の光はサングラスが遮るが、真横からの輝きは視界に入ってしまう。

 

「おのれ!」

 目を瞑ったルシフェルは、数秒前に見た悟空達の位置を頼りに右手から気弾を放つが、悟空達は太陽拳を放ちながら移動しているので当たらない。

 

「その石を寄越しなさい!」

「後ろの大砲を壊せ!」

 その隙に、悟空達はルシフェルが持つ魔凶星の欠片を奪いにかかる。

 

 助けを呼ぶしかなかったグルメス王と、ルシフェルの違い。それは強化を解く方法の有無だ。キリによる強化は倒す以外の方法で解けなかったが、ルシフェルは左手にある魔凶星の欠片を奪えば強化が解ける。

「き、貴様らぁ! 卑怯な、正々堂々と戦えないのか!?」

 思わずそう叫びながら腕を振り回し、気弾を見当違いの方向へ乱射するルシフェル。悟空は正攻法で戦いたい気持ちもあったが……。

 

「うっるさいわね! 自分達だけ妙な石でパワーアップしておいて、何が正々堂々よ!」

「んだ! 太陽破壊砲なんて物騒な名前のもん、悪ぃ事以外に使うはずがねぇべ!」

 しかし、ブルマとチチの剣幕が凄まじく、とても異を唱えられる状況ではなかった。

 

「まあ、試合じゃねぇし、仕方ねぇか」

 悟空も正々堂々闘いたかったがそう諦めるしかない。しかし、強化されたルシフェルはそれでも強敵だった。

「ええいっ、寄るな!」

 気弾を当てる事を諦めた彼は、近づいてくる気配に対して腕を振り回す事で応戦した。狙いも何もない攻撃だが、込められた力は凄まじい。

 

「かめはめ波!」

「てやーっ!」

 悟空達もルシフェルの胴体目掛けて攻撃を繰り出すが、戦闘力1250のルシフェルに、最大でも300の悟空達の攻撃では碌なダメージを与える事が出来ない。

 

「ならこうだ!」

「何のつもりだ!?」

 大声を発して近づいてくる悟空の気配に向かって、ルシフェルは左腕を振るった。しかし、手ごたえはなく、代わりに腕に重さがかかっている。

 

(今だ!)

 なんと、悟空はルシフェルの左腕に尻尾を引っかけてぶら下がったのだ。そのまま彼の左手が握ったままの魔凶星の欠片を如意棒で突いて砕こうとする。

 

「あがっ!?」

 しかし、腕にかかった重さで悟空の位置に気が付いたルシフェルは、とっさに右手で彼を薙ぎ払った。

「悟空さっ!?」

 弾丸のように吹っ飛ばされた悟空の姿にチチが悲鳴をあげるが、丁度その先にいたクリリンが彼を受け止めた。

 

「ぐえっ……悟空は俺に任せろ! 仙豆を食べれば元気になるんだよな? 死んでないよな?」

 不安と焦燥にかられながら、ぐったりして動かない悟空の口に仙豆をねじ込んで飲み込ませようとするクリリン。

 

 しかし、その間にも時間は経っている。サタンとジャガーが連続して太陽拳を使って時間稼ぎをしているが、ルシフェルが視力を取り戻したら彼の反撃が始まる。

 そう焦った時、意外な援軍が現れた。

 

「キエエエエ!」

 気合の籠った声と同時に、ルシフェルのサングラスが吹っ飛んだのだ。

「今よ! 叩き込みなさい!」

 なんと、フライングソーサーに乗ったブルー将軍が、念動力でルシフェルのサングラスを操作したのだ。

 

「おうっ!」

 さらにボンゴとパスタもそれに続く。

「あんた達、なんで!?」

「つべこべ言うな! あいつの目的は太陽の破壊だぞ!」

「地球が魔族の王国に成ったら困るからね。今だけは助け合っていこうじゃないか」

 

 驚くブルマ達に構わず、ボンゴとパスタは特殊合金の棒で魔凶星の欠片を狙う。

 彼らは潜入に成功した魔神城で、下級魔族達をこっそり締め上げて悟空達より早くルシフェルの目的を知る事が出来た。

 

 それによって、ブルー将軍はフラッペへの嫌がらせをしている場合ではないと悟り、ボンゴとパスタもそれに同意した。

(太陽が破壊されたら日光浴が出来ないじゃない! 日焼けしないで済むけど、お肌が不健康になっちゃう! 何より、レッド総帥が手に入れる地球を魔族なんかに渡してなるものですか!)

 

(地球が滅亡したら、金がいくらあっても意味がねぇ! 俺達が生きている間は地球に滅びてもらっちゃ困るんだよ!)

(遊んで暮らす前に死んじゃ堪らないからね)

 

 ブルー将軍は悪人側だし、ボンゴとパスタは間違いなく悪人だが、それでもさすがに地球滅亡が差し迫った時まで争い続けるつもりはなかった。

 共通の敵が出現すれば、争いはなくならないが人は団結するのだ。

 

「しかたねぇだな!」

 そして、チチ達もボンゴ達との共闘を容認した。実際、目の前の強敵を倒せるかどうかの瀬戸際だ。争っている場合ではない。

 

「に、人間共め~っ!」

 サングラスを奪われたため、太陽拳はもちろんまだ沈んでいない太陽の方を向く事も出来なくなったルシフェルの怒りと苛立ちは頂点に達しつつあった。

 

「纏めて消し飛べぇ!」

 苛立ちのままルシフェルは、気を収束させる事無く広範囲に向かって放射状に放った。

「うわあぁ!?」

「きゃあああっ!?」

 回避不能な攻撃を受けて、接近していたチチやブルマ、ボンゴやパスタも床に転がされる。

 

「危ねぇ! 波ーっ!」

 幸いクリリンとウーロンは、仙豆で回復した悟空が咄嗟に放った気功波と彼自身が盾になったおかげで助かったが、彼等三人ともう一人以外は意識を失っているのか倒れたまま動けない。

 

「そんな、皆が……」

「落ち着けクリリン、皆まだ生きてる」

 ルシフェルが気を放射状に広い範囲にはなったため、威力が拡散されており魔凶星の欠片を奪うために近づいていたブルマ達の命を奪えるほどの威力は無かった。

 

「生きてるったって……どうすんのよ? あのピカピカ光る技、もう使えるのはあんただけなんでしょ? それに敵はピンピンしてるわよ」

 元々ルシフェルから距離があったお陰で無事だったブルー将軍が、悟空の横に降り立って言う。

 

「そうでもねぇさ、ほれ」

 悟空が目で指した先では、ルシフェルが左手の平を見つめて愕然としていた。

「魔凶星の欠片が……!」

 その手の中に在ったはずの魔凶星の欠片が割れていた。ブルマのどどん波か、チチの光線か、それともボンゴの棒の一突きかは不明だが、欠片に命中していたのだ。

 

 精神的なショックか、それともパワーダウンによって肉体的な疲労感でも覚えているのか、ルシフェルの動きが止まっている。

 仕掛けるなら今かと、ブルー将軍とクリリンは思い、動こうとしたが……。

 

「いや、まだあいつの方が強ぇ」

「そっか、首から下げてる方の欠片を忘れてた!」

 ルシフェルが左腕に持っていた欠片は砕け散ったが、彼が首から下げているペンダントの欠片は健在だった。しかし、それでもルシフェルの戦闘力は五十倍の1250から三十倍の750に下がっている。

 

 そして悟空は仙豆によって瀕死の状態から回復する事で、戦闘力が375まで上がっていた。その差は倍だが、力押しで倒すのは無理でも、作戦次第では戦えなくもない。

 と、思っていたが……。

 

「うっ……ウオオオオオオ!」

 ルシフェルは牙を剥きだしにして咆哮をあげると、なんとその肉体が膨張し巨大化した。魔凶星にルーツを持つ魔族の一部が習得している、フルパワーモードだ。ルシフェルは本来ならまだ習得していなかったのだが、魔凶星の欠片によって肉体が強化されているため体力を削って発動する事が出来た。

 

 これによって、750に下がった彼の戦闘力は1000にまで戻った。

 

「こ、こりゃまいったな。クリリン、スカウターは……」

「持ってるのはサタン先輩だよ、悟空」

「本格的にやべぇかも」

 そう思わず弱音が出る悟空だったが、構えは解かない。その諦めない意志に感化されたのか、珍しく彼が動き出した。

 

「おいっ、さっき言ってた太陽を破壊するってマジなんだよな?」

「なによ? 疑うの? あいつだって太陽破壊砲がどうのこうのって言ってたじゃない」

 急に話しかけてきたウーロンに、ブルー将軍はルシフェルへ視線を向けたまま答えた。

 

「太陽が無くなったら、夏のビーチで可愛い子ちゃんが水着になってキャッキャウフフとか見れなくなるんだよな……。ちくしょうっ、やってやる、やってやるぞ! おい、オカマ! あの太陽破壊砲って奴をどうにかしてやるから、俺をちょっと上まで運んでくれ!」

 

「オカマですってこの豚! あんたから先にぶっ殺すわよ!?」

「だ、だってあんたの名前、知らないんだぞ! なんて呼べってんだよ!?」

「ウーロン、運ぶのは俺がやるよ! おい、あんたの仲間の借りるぞ!」

 

「好きにしなさい。あの魔族が見逃してくれたらね」

 ブルー将軍がそう言い終わる頃には、ルシフェルは彼らに向き直っていた。眩しそうに紅くそまった夕日に背を向けてではあるが。

 

「くっくっく、地球最後の夕日を目に焼き付けて死ぬがいい!」

 

「そうはさせるか!」

「悟空、無事か!?」

 だが、その前にヤムチャ、そして天津飯が援軍に駆けつけた。

 

「大変だ! 皆に仙豆を食べさせるのを手伝ってください!」

「はいっ!」

 プーアルとランチが倒れている仲間達を救助するのを守るように、ルシフェルに向かって身構える二人。

 

 魔神城での最後の戦いが始まろうとしていた。

 




〇執事

 名前不明の魔神城の執事。顔つきは某RPGの腐った死体に似ている。
 元々は戦士ではなく、悪魔の指周辺に迷い込んだ人間を捉えてルシフェルのような上位の魔族に供するか否かの判断や、日々の世話等が役目だったと思われる。

 原作劇場版で捉えたブルマをヤムチャに取り返されそうになった時、斧を持って襲い掛かるが簡単に蹴り飛ばされているため、下級魔族とそう変わらない強さだと思われる。

 この作品では素の戦闘力を5とし、魔凶星の欠片の力で強化されても十六倍の80とする。
 ルシフェルが彼に欠片を与えたのは、自分に忠実だったため。



〇悟空

 瀕死から回復した事で、戦闘力が300から375へ上がっている。



〇ブルー将軍

 この時点で、悟空達は一度戦った事のあるヤムチャも含めて、誰も彼の名前と身分を知らない。
 そのため、「ボンゴとパスタの新しい仲間」で「謎の超能力オカマ」として認識されている。



〇ルシフェルのパワーアップ

 魔凶星にルーツを持つ魔族の一部が使える……っと、この作品では設定します。

 元ネタは、劇場版『おらの悟飯を返せ!』のガーリック三人衆が、「ショウガヤキー」や「ノドアメー」と叫んでパワーアップしていたシーン。

 元々できたのではなく、魔凶性の欠片(大)を失った事で追いつめられて、どうにか出来ないかと考えた末に可能になった技。




 よんて様、うはおkww様、車椅子ニート(レモン)様、にぼし蔵様、佐藤東沙様、酒井悠人様、サボテン7h様、ユウれい様、太陽のガリ茶様、phodra様、勇(気無い)者様、JtR0000様、gsころりん様、みえる様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。