ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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あの世で一番強いヤツ!
68話 反逆の悪魔の科学者、ウィロー!


 バーダックの生存と、彼が歴史改変者に洗脳され都合のいい戦力として使われている事を伝えた時、ギネは「さすがあたしの旦那だ」と言った。

「歴史改変者って、フリーザよりも強いんだろう? そんな連中に目をつけられるなんてすごいじゃないか。

 でも、他の女の掌の上でいいように転がされるなんて、あの人らしくないよ。洗脳ってのは、よっぽど強力なのかい?」

 

「ああ、魔術で作ったらしい仮面を被せて洗脳しているようだが、自力で解く事はほぼ不可能だ。これまで二度、タイムパトロールが仮面を破壊しているが、救出には至っていない。二回目の方は、儂が足を引っ張ったからだが」

「やっぱり、ドラゴンボールでも解けないのかな?」

 ギネとしてはバーダックが生きていた事は喜ばしいが、洗脳されているのは悔しいのだろう。彼を何とか解放できないかとそう尋ねて来るが、儂は彼女に否と答えるしかない。

 

「不可能じゃろうな。歴史改変者……トワの魔術には、神として地球の神様の遥か上位に位置する時の界王神様でも手を焼いているそうだ」

「だよね。ドラゴンボールでどうにかなるなら、今頃爺さんはナメック星に行っているだろうし。……それで、タイムパトロールは、バーダックを助けようとしてくれているって思っていいのかい? 洗脳が解けた後、捕まえたりしない?」

 

 ギネがそう続けたことで、タイムパトロールの隊員が他の歴史の自分の息子やベジータ王子である事を知らない彼女としては、バーダックの処遇について不安に思うのは当然だと気が付いた。

 しかし、彼らが別の歴史の悟空やベジータ王子だというのはまだ早い。できれば、この歴史でベジータ王子が仲間になり、トランクスが生まれるか否かがはっきりするまでは、秘密にしておいた方が良いだろう。

 

「その点は安心していい。時の界王神様とタイムパトロールは、歴史改変以外の事柄については関わらないようにしている……というか、界王神様はフリーザ程度の悪には手を出さない」

 実際、界王神ならスラッグや、コルド大王やクウラ、そしてゴールデンになる前のフリーザなら退治できるはずだがしていない。しかし、魔人ブウや星喰いのモロには命を賭して立ち向かっている。

 

 これは界王神様達にとって、自分達が直接介入するか否かの線引きがある事を意味する。フリーザ軍の手先だったバーダックをその基準に当てはめれば、歴史改変者から解放されさえすれば退治される事はないだろう。隊員に別の歴史とは言え悟空もいる事だし。

 もっとも、トワ達が破壊神であるビルス様と相対してしまったらどうなるか分からんが。

 

 ちなみに、儂が見たバーダックが儂等の歴史のバーダックであるという根拠は、時の界王神様が調べてくれた。

 約十年前、フリーザが惑星ベジータに向かって放った気弾に飲み込まれる寸前で、バーダックが偶然開いた時の穴に落ちて過去へタイムスリップし、その後トワによって連れ去られているのが確認されたのだ。

 

 お陰で、助けてみたらバーダックはバーダックでも他の歴史のバーダックだった、という事はほぼなくなった。

 

「それに、タイムパトロールの隊員達は気のいい……気難しいのも一人いるが、悪い連中ではない。助けようとしてくれるはずだ」

 戦いだからもしもの事態もあり得るが、その時こそドラゴンボールの出番だ。

 

「そっか。爺さんがそこまで言うなら大丈夫だね。それに、爺さん自身も何か企んでいるんでしょ? 態々戦っている所に忍び込んだぐらいだし」

「うむ、まだ成果も確証も無いので、鋭意研究中としか言えんが」

「なら安心だ!」

 

 言葉通り安心している訳ではないだろうが、生みの親としては答えるだけの成果を出したいところだ。

 

 

 

 

 

 

 魔神城での冒険からしばらく後の七月下旬、カメハウスにミゲルと彼女の友達が遊びに来た。美少女コンクールの常連で、ジュニアタレントとしても活躍するようになったミゲルの友達は皆美少女ばかりだったそうで、ジャガーについて遊びに行ったウーロンが帰ってきた後鼻の下を伸ばしながら語っていた。

 

 あと、ターレスとタイツも遊びに行っており、魔神城での冒険をブルマ達から聞いていた二人は自分達を呼べばすぐ解決したのにと文句を言っていたが、悟空は「だってよ、ターレス兄ちゃんとタイツが来たら、オラ達が戦う相手がいなくなっちまうだろ」と言っていたそうだ。

 

 そして八月、チチの母親であるサンが出産の日を迎えた。念のため、仙豆とナメック星のドラゴンボールを用意して兎人参化にも待機させていたが、彼女は双子の出産を母子ともにやり遂げた。

 産後の経過も順調で、生まれた双子の姉をスイ、弟をモウと名付けた。

 

 儂は牛魔王と人造人間のサンの間に生まれた双子をざっと検査したが……まず外見は二人とも普通の地球人と同じで尻尾や角は生えていない。

 しかし、それ以外の特性……脳と心臓、どちらかの核が無事なら再生可能な再生力、サイヤ人の強靭な体力、フリーザ一族の生命力と宇宙空間でも生存可能な生態、そして生体部品で作られた永久エネルギー炉もしっかり遺伝しているようだった。

 

 戦闘力も平均的な地球人の赤子よりも圧倒的に高い、10という数字を叩き出した。生まれたばかりの頃の悟空の戦闘力が2だった事、そして地球人の一般的な成人女性の平均が4、成人男性の平均が5である事を考えると驚愕の数字である。またベジータ王が喜びそうだ。

 

 何とも将来が楽しみだ。また、これで悟飯(少年)に原作にはいなかった叔父と叔母が生まれた事になる。……将来悟空が牛魔王の財産を頼りに生活するのは難しくなったので、是非とも彼には収入を得て経済的に自立してもらいたいところだ。

 

 もちろん、悟空をサラリーマンにしようなどとは考えていない。原作で行っていたようなパオズ山での農業とGCGでの警備や武道指南等々の仕事で稼いでもらえればと、今のところは期待している。

 

 話を戻すが……サンが退院するまで実家に帰っていたチチが修行に戻って数日後、グルメス王国が公国に変わって一年経ったことを記念した式典が行われる事になった。

 予想通り悟空は式典と聞いて面倒そうにしたが、亀仙人が「美味い飯を食って、パンジ達懐かしい顔に会い、ちょっとした格闘技大会に出るだけだ」と説明すると、一も二もなく出席を決めた。

 

 地球の神様の神殿で修行をしていたヤムチャも、神様から「自分が行った善行の結果を見るのもいい経験となるだろう」と言われ、出席を許された。天津飯は、ランチが来ると知ってかなり迷っていたが結局行く事にしたらしい。

 

 なお、事件解決に関わっていないギネや4号、ターレスとタイツ、さらに当時はまだ亀仙人や儂の弟子ではなかったサタンとジャガー、クリリンも出席している。

 

 式典当日は、悟空達はパンジと旧交を温め、午前中にグルメス公国武道大会が開かれた。王から公爵になったグルメス公爵の挨拶は試合開始前に済まされ、大会ではパンジの父や元ボンゴ四天王や元グルメス王国軍兵が出場し、招待選手のクリリンの良い対戦相手になっていた。

 なお、優勝したのは天津飯だった。悟空やチチ、ブルマも強くなったのだが、やはり天津飯は頭一つ抜きんでている。

 

 その後のエキシビジョンマッチでは、悪の宇宙人によって力を増幅された(という事になっている)グルメス公爵を鎮めた四人、孫悟飯、牛魔王、鶴仙人、そして亀仙人の試合が行われ観客席を盛り上げていた。

 

 そして午後は立食パーティーとなり、その席でドキュメンタリー映画『グルメス王国最後の日』が上映された。

 この映画は、儂が悟空達につけていたスパイロボットが撮影した映像と、撮影出来ていなかった部分は証言を基にした再現映像を繋ぎ合わせた映画だ。なお、ボンゴとパスタ、そして当時オレガノと名乗っていたオレンジ将軍以外の人物には事前に了解を得ている。悟空は了解した事をすっかり忘れていたようだが。

 

 スパイロボットが撮影していなかったシーンは、元グルメス王国軍の面々やパンジ、パンジの父、そしてウーロンに変化してもらって撮影している。

 ドキュメンタリー映画とは思えない派手なバトルアクションが売りの映画だ。

 

 なお、ウーロンのギャラは彼が恐喝を行っていた村々に寄付し、彼が書いた謝罪の手紙と一緒に届けている。

 今年に行われたあの世との交流戦でサイヤ人達から地獄でどんな罰を受けるのか聞いてから、謝っておいた方が良いと考えたそうだ。

 

 謝られた村の方はボンゴとパスタに退治されたはずのウーロンが生きていた事と、英雄だと思っていたボンゴ達が実は悪人だった事を知って驚いていた。しかし、「あのドクターゲロの所で更生したなら、過去の事は水に流しましょう」と許してくれたそうだ。

 この辺りの経緯は、兎人参化が許された経緯と似ている。

 

 こうして映画の効果もあり、グルメス公国の式典は大成功に終わった。

 天津飯は金髪ランチとの和解に成功したようで。今度は戦いではなく組手をしようと約束したようだ。

 

 次の日、サタンはカリン塔へ旅立ったそうだ。一方、ジャガーはカリン塔へは行かず、儂が設計した大気の濃度を調整できる重力トレーニング室で修行を行っている。

 ライバルと同じ場所で修行するのもいいだろうが、ジャガーとサタンだと毎日言い合いになってカリン様が大変だろうと儂が思ったのと、ジャガー自身の希望によりこの形になった。

 

 一方、レッドリボン軍ではブルー将軍が更に過酷なトレーニングを行うようになった。悟空やヤムチャ、そして魔凶星の影響でパワーアップした魔族と戦って、今のままの自分ではレッドリボン軍一の戦士としてレッド総帥に期待される働きが出来ないと痛感したそうだ。

 

 ボンゴとパスタはブルー将軍と人類を守った功績で大尉に昇進して給料も上がったので、やややる気を出してトレーニングに付き合っている。

 他に、サイボーグ2号から得た情報(という事にしている)を元にした亀仙流の修行を受けたのは、シルバー大佐とバイオレット大佐、イエロー大佐、それにムラサキ曹長ズに、オレンジ将軍、サイボーグ1号(ランファン)だ。

 

 他にも何人かいたのだが……トレーニングに耐えられずリタイアするか、任務を理由に参加を取りやめていた。

 

 こうして原作が始まった年の夏から冬までの時間は過ぎていった。地球は太陽が破壊される危機だったとは思えない程平和な時間が過ぎていたが……儂の目が及ばないあの世では、恐るべき事件が起きていた。

 

 

 

 

 

 

 地獄では呵責された罪人の悲鳴が毎日響き渡るが、それも刑罰が行われる時間だけ。それが終われば罪人達はそれなりに自由に過ごす事が許されている。

 研究活動や創作、トレーニング、お供え物を食べて飲むのも自由だ。地獄でも比較的平和な地区の一丁目では、元祖針饅頭が売られ、カップルが針山でデートをしている。

 

 交際だけではなく、囚人同士の小競り合いも見逃される。……あまりにも規模が大きくなった場合や、殺し合いに発展しそうな場合は獄卒が止めに来るが。

 

 課される刑罰が血の池や針山である事以外は、自由度の高い刑務所と変わらない。

 

「ん? なんだ、あいつら?」

「ああ、あれはサイバイマンだオニ。お前、知らないのかオニ?」

「いや、知ってるオニ。知っているオニが……」

 仕事終わりに家に戻ろうとしていた二人組の鬼が目にしたのは、サイバイマンだった。

 

 大人の胸ぐらいまでの小柄な背に、緑色の肌、鋭い爪が生えた三本指の手足と、特徴的な彼らは主にサイヤ人に、そして今では一部のフリーザ軍の兵士にも都合の良い兵器として使われている存在だ。

 命令を聞く程度の知能はあるが、高い狂暴性を持ち、自分より弱いと見れば主人にも牙を剥く。そして種を増やすのが難しい等欠点はある。しかし、種の状態だと持ち運びが簡単で、戦闘力も最大で1200と平均的な惑星で最も強いとされる戦士をやや上回るので、利点も大きい。

 

 そのため、小型の宇宙船で飛び回って他の惑星を侵略しに向かったサイヤ人が現地で植えて、そのまま使い捨てる事が多く地獄にはかなりのサイバイマンが落ちていた。

 兵器として利用される境遇を考慮して、サイバイマンが犯した罪の多くは彼らを使用したサイヤ人やフリーザ軍の兵士のものとされる。だから、誰かを殺す前に返り討ちにされた個体や、害した人数が少ない個体は微罪扱いで、死後は僅かな間を置いて生まれ変わっている。

 

 しかし、いくら命令されたからと言って大勢を殺害した個体は地獄に落とすしかない。そんなサイバイマンが地獄にはかなりおり、獄卒達は長年手を焼かされてきた。

 しかし、去年地獄に落ちてサイヤ人の元に身を寄せたドクター・ウィローがサイバイマンを大人しくさせる制御装置を発明した事で、問題は解決したはずだった。

 

 昨日までは黙々と刑罰を受け、自由時間も自分達が使う小屋作りや、小石を駒にしたゲームに興じるなど、平和に過ごしていた。

 それは鬼達も知っているのだが……。

 

「なんで、こいつらこんな所に大勢で立ってるオニ? こいつらが普段いるのは、別の場所だったはずオニ」

「そう言われてみれば……この奥は閻魔大王様の宮殿や俺達の宿舎しかないオニ」

 ぞろりと、数十どころか千を超える程のサイバイマンがじっと無言で立ち尽くしている。その異様な光景に、鬼達も違和感を覚え始めた。

 

 急いで誰かを、制御装置を作ったウィローを呼んで来るべきか?

 

「ギ……ギギィー!」

 しかし、鬼達が行動を起こすよりも早くサイバイマン達が動き出した。獣のように叫びながら、閻魔大王の宮殿に向かって殺到しようとしたのだ。

 

「う、うわぁぁぁ!?」

「た、助けてくれオニ~!」

 慌てて逃げ出そうとする鬼達だが、彼らの戦闘力は高くないし、舞空術を使って空を飛ぶ事も出来ない。

 

「そうだ! 制御装置のリモコンを持ってたオニ! これで……止まるオニ!」

 片方の鬼が、ハッとして懐から古風な四角いデザインのリモコンを取り出した。そして急いで操作してボタンを押す。

 しかし、サイバイマン達が大人しくなる様子はない。

 

「な、なんで止まらないオニ~!?」

「もうダメだオニ~!」

 津波のように押し寄せるサイバイマンの群れに、悲鳴をあげる鬼達が飲み込まれるのは避けられないかに見えた。

 

「こいつはなんだ? サイバイマンが暴走してやがるぜ!」

「よくわからねぇが、面白い事になってんじゃねぇか!」

「オラオラ! 調子に乗ってんじゃねぇぞ! サイバイマン共が!」

 なんと、偶然近くにいたサイヤ人達が騒ぎに気が付いてサイバイマン達の行く手に立ちはだかり、戦い始めたのだ。

 

「おう、お前らは邪魔だから下がってな!」

 その様子は鬼達を助けに来たというより、戦いを楽しみに来ただけに見えたが、助けられた事に変わりはない。

「わ、分かったオニ! 恩に着るオニ!」

「ありがとうオニ!」

 走りながら礼を言った鬼達が、そのまま閻魔大王の宮殿へ向かっていく。この緊急事態を報告しに行ったのだろう。

 

 それに構わず、十数人のサイヤ人達はサイバイマン達を次々に殴り飛ばし、蹴散らし、気弾で吹き飛ばしていく。

「タロさん、ベジータ王やウィローさんに報告した方が良いんじゃないでしょうか!?」

「ならリーク、お前がいけ! 俺達はここで遊んでくからよ!」

「なあ、誰が一番多くサイバイマンを倒すか競争しようぜ! 負けた奴は勝った奴に今度の供え物を譲るってのはどうだ!?」

「はっ! 負けて泣いても知らねぇぞ!」

 

 リークとタロを含めてサイヤ人達は十数人、サイバイマン達の百分の一の数しかいないが、その力は圧倒的だった。

 サイバイマンの戦闘力1200は侵略された平均的な惑星の住人にとっては圧倒的な強さだが、サイヤ人は彼らを兵器として利用した側である。そして、彼らにとって1200という数値は、惑星を侵略するのが仕事の戦士なら最低でも上回っている数値だ。

 

 さらに言えば、彼らはゲロと交流するようになってから重力トレーニング室やトレーニングスーツ等修行が出来る環境と器具を提供され、この世との交流戦で戦闘経験も積んでいる。その戦闘力はリークが6100、タロが9900。他のサイヤ人達も4000以上と、生前の倍以上強くなっている。

「ギィー!」

「うるせえんだよ!」

 そのため、いくらいても物の数ではない。

 

 サイバイマンの奥の手である自爆攻撃を受けたとしても、それほど戦闘力に差があればダメージはほぼ受けない。

 そのため、タロ達にとってサイバイマンはどれだけ数がいても危機感を覚えるには程遠い程度の相手に過ぎないのだ。

 

「はぁ……仕方ないな。じゃあ、俺が行ってきます」

「おう、さっさと行ってこい!」

 だから、リーク一人事態を伝えるために離脱しても何の支障もないはずだった。だが、その時サイバイマンの群れの中の一体が、彼に向かって気功波を放った。

 

「なっ!? う、うわぁぁぁっ!?」

 油断していたリークは避けられず、爆発に飲み込まれた。

「リーク!? 無事か!?」

「なんだっ!? あの気功波は!?」

「タロと同じくらいの気だったぞ!」

 

 撃ち落とされて意識がない様子のリークを、タロ達は地面に落下する前に慌てて助け、既に半数ほどになっているサイバイマン達から距離をとった。

 彼らは気を感知し、操作する技術を習得している。その感覚が正しければ、サイバイマンの中に自分達の脅威となる気の持ち主はいなかったはずだ。

 

 しかし、今はタロとほぼ同じ大きさの気の持ち主がいる。油断なくその個体を睨みつけるタロ達だったが、その表情には驚きが浮かんでいた。

「黒い……サイバイマンだと?」

「いや、あれはたしかウィローって奴が作ったって言う……」

「ああ、確かバイオマンって名前の人工生命体だ。だが、おかしいぜ。あいつらはサイバイマンより弱いはずだ」

 

 サイヤ人達とにらみ合うサイバイマンに似た姿のバイオマンは、お互いに確認するためか言葉を発した。

『閻魔大王の拘束、および抹殺の障害を発見』

『障害物は排除だ』

『排除だ、排除だ、排除だ!』

 そして、その言葉に応えるようにサイバイマン達の中に紛れていたバイオマン達がその姿と気を露わにする。その数、十数体。

 

「なっ!? お、多すぎる!」

 顔を引きつらせるタロ達に、バイオマン達が襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 同じ頃、地獄の各地でサイバイマンが一斉に暴れ出して、制御装置のリモコンが効かない事に気が付いた鬼や弱い罪人達が逃げ惑っていた。

「なんだ、これは!? 新しい刑罰か!?」

「馬鹿っ、そんなんじゃねぇよ! 刑罰の時間は終わっただろ! きっとまたサイヤ人共が反乱を起こしたんだ!」

 罪人達にとって、約十年前に起きたベジータ王の反乱は記憶に新しかった。

 

「クソったれが! もう我慢ならん! サル共が調子に乗りやがって!」

 そう叫んだのは、弱い罪人ではなかった。コルド大王がフリーザに代替わりする前の時代、コルド軍と呼ばれていた時代の兵士だ。

 

「目にもの見せてやる!」

「俺だって死ぬ前は宇宙を荒らした宇宙海賊だったんだ! サイバイマンなんかに負けるか!」

「ふざけやがって! 宇宙の支配者は俺達フリーザ軍だと教えてやる!」

「違うな! 宇宙の真の支配者はスラッグ様だ!」

 そして、最初の一人に触発されたのか次々に腕自慢の罪人達がサイバイマンに立ち向かっていく。

 

 宇宙海賊、フリーザ軍の兵士、そして何百年も前から星を荒らしまわるスラッグ配下の魔族の中には数千もの戦闘力の持ち主がそれなりの数いる。……スラッグの配下は、魔族であるスラッグ自身に粛清された場合魂があの世に行けないため、ここにいるのはコルド軍やフリーザ軍等の敵対勢力との戦いに敗れて死んだ者だけだが。

 

「た、助かったオニ!」

「今の内に避難誘導するオニ! さあ、こっちだオニ!」

 そして強い罪人がサイバイマンと戦っている間に、鬼達は弱い罪人達を避難させる。鬼達も罪人同士の小競り合いや喧嘩程度なら、助けようとは思わない。

 

 しかし、流石に魂が消滅しかねない場合は止めなければならない。それが地獄の支配者である閻魔大王、そしてその部下である鬼達の仕事だ。

 そして、それは難儀な事にサイバイマン達に対しても言える事だ。

 

「あんた達も、やり過ぎないようにしてほしいオニー!」

「どうしろってんだ!? 一匹一匹、優しく気絶させろってか!?」

 凶悪そうな顔つきの元フリーザ軍兵士に怒鳴り返されたオニだったが、怯まずに怒鳴り返した。

 

「胴体に穴を空けるとか、真っ二つにするぐらいなら大丈夫オニ! でも塵も残さず消し飛ばすような事はしないでほしいオニ!」

 死後、魂だけとなった存在が再び死ぬと魂は消滅し、ドラゴンボールでも(スーパードラゴンボールならともかく)復活させることは出来なくなる。

 

 しかし、死者に与えられる仮初の肉体は、彼らが生きていた時持っていた本物の肉体に比べるとかなりでたらめだ。

 刑罰で煮え立つ巨釜で煮られたり、針山の針で胴体の真ん中に穴を空けられたり、鋸で首や四肢を切断されたり、地獄のモンスターに食われたりしても、死ぬ事はない。刑罰が終わると元通りに再生する。

 

 だが、戦闘不能になった後も徹底的に攻撃した場合や、圧倒的な力で消し飛ばした場合は消滅してしまう。

 

「なるほど! つまり普通にぶっ殺す分には問題ねぇ訳だな!」

「それで、俺達に何か得があるのか?」

 強い罪人達は義憤や弱い罪人達を守るために立ち上がったのではなく、サイバイマンが襲ってきたから、そしてそれが気に食わなかったから迎え撃っているに過ぎない。しかし、それは鬼達も分かっている。

 

「閻魔様に頼んで、活躍した分刑期を短くしてもらうオニ! 後、刑罰を受けなくて済む『休日』を貰えるよう頼んでみるオニ!」

 しかし、メリットを提示すれは動く。

 

「マジかよ!?」

「だったら話は早い! 言う事を聞いてやるよ!」

 罪人達は嬉々として鬼の要望を受け入れた。もし、サイバイマンを操る黒幕が「閻魔大王を倒して共に現世に舞い戻って暴れよう」と勧誘するタイプの反逆者だったら、罪人達は手の平を返していただろうが……鬼達にとって幸いな事に、そうはならなかった。

 

 しかし、罪人達の快進撃も長くは続かなかった。

「うおっ、こいつら、離れ――」

「しまったっ! 助け……ぐわあああああ!」

 サイバイマン達が罪人達に組み付いて自爆し始めたのだ。タロ達のように何千もの戦闘力を持つ者なら十匹以上のサイバイマンに組み付かれて自爆されても死にはしないが、戦闘力が1500以下だと重傷を負うし、2000でも無傷とはいかない。

 

 自爆したサイバイマンも生前と違って死にはしないが戦闘不能になるので、一方的にやられる訳ではない。しかし、元々サイバイマンの数の方が多いので被害は罪人側の方が大きい。

 

「油断しやがったな、間抜けが!」

「いい気味だ、ザコめ。粋がるから痛い目を見るんだよ!」

 しかし、流石は雑多な罪人達。元々仲間同士でもないので、生き残っている者は倒れた者達をあざ笑いながらサイバイマン達を倒していく。

 

「そらっ、おねんねしなぁ! ……な、なにっ!?」

 だが、そんな強い罪人の拳を受け止める者が居た。

『障害を排除!』

 戦闘力が1万程に上がったバイオマンだ。

 

「がはっ!?」

「な、なんだこいつら!? 強いぞ!」

 強い罪人達はサイヤ人達と違って気の感知を習得しておらず、また生前と違いスカウターを装備していないため、バイオマン達の強さに気が付けず、動揺している間に次々と倒されていく。

 

 生前コルド軍やフリーザ軍の兵士やスラッグの部下だった者の中には戦闘力1万以上の者も存在するが、そうした特に強い者達の数はとても少ない。

『障害を排除! 排除! 排除!』

 それに対して戦闘力1万のバイオマンは十数人もいる。

 

 そのため、罪人達は徐々に押されつつあったが、そこに援軍が現れた。

『ギャッ!?』

 無造作にはなった気弾でバイオマンを一人戦闘不能にしたベジータ王は、精鋭を引き連れて辺りを見回した。

 

「やはりウィローか。ゲロに言われていたのにこの様とはな……」

「どうします? ウィローを探しますか?」

 顔をしかめているベジータ王に指示を促す側近の一人。彼らに他の罪人や鬼達を助ける義務はない。何故なら、彼らも立場は同じ罪人に過ぎないからだ。

 

「ふん、閻魔大王に貸しを作るのも悪くない。それに、地獄がこうも荒らされては落ち着いてトレーニングも出来んからな。

 我がサイヤ人の戦士達よ! 久々の実戦を楽しんで来るがいい!」

 

「喜んで!」

 しかし、そこはベジータ王と戦闘民族サイヤ人。ベジータ王は自ら動く事で、配下のウィローの裏切りを防げなかった負い目を、閻魔大王への貸しに変えるために配下の精鋭達に命じた。そして、配下の精鋭達はこの世との交流試合以外での久々の実戦に、嬉々として加わった。

 

 その勢いはすさまじく、バイオマン達を一気に押し返す事に成功した。ベジータ王が引き連れて来た精鋭達は、生前からサイヤ人のエリート層であり、高い戦闘能力を誇っていた。それが死後、重力トレーニング室等で修行できる環境を与えられたため、その戦闘力は低くても1万前後、高ければ2万近くにまで至っている。

 しかも、全員気の感知を習得しているため、バイオマンをサイバイマンと間違えて不意を突かれる事も無い。

 

 だが……。

「おかしい。バイオマンの数が多すぎる」

 バイオマンが自身の引き連れて来た十数人の精鋭の倍以上の数がいるのに気が付いたベジータ王は、そう言ってスカウターを操作した。

 

 たちまちここ以外の場所で戦っている部下のサイヤ人達の報告が表示され、そこでも十数人のバイオマンが暴れている事が判明する。

 しかし、それはおかしい。バイオマンはドクター・ウィローとコーチンが創り上げた、量産型の狂暴戦士だ。この歴史ではコーチンが研究所のセキュリティを向上させるために原作よりも数を増やしたとはいえ、総数は百体には遠く及ばないはずだ。

 

「いや、数だけではなく戦闘力が十倍になっている点からしておかしいか。

 トーマ、貴様はチームを率いてタロ達を救援に行け。閻魔大王を抑えられたら面倒だ。シトウ、調査の結果はどうなっている?」

 ウィローの裏切りを確信しているベジータ王は、バーダックチームに指示を出した後、彼について調査させていた部下による報告を求めてスカウターで呼びかけた。

 

『べ、ベジータ王!』

 しかし、帰ってきたのはシトウやモロコではなく、二人のアシスタントのニオンの切羽詰まった声だった。

『ウィ、ウィローが、旧型の重力トレーニング室の……キャアアアアア!』

 

「チッ! ウィローめ、研究施設を先に狙ったか! この場はお前達に任せる! バイオマンとサイバイマンを一掃しろ!」

 ベジータ王は部下達に指示を出しつつ、ニオンがいるはずの研究施設に飛行して向かうのだった。

 




〇サイバイマン

 異なる設定が存在するため、この作品では「サイヤ人が兵器として利用している生物。扱いが難しく、種を取るのも簡単ではない」とします。また、フリーザ軍でベジータチーム以外が使っているかは原作では不明ですが、ベジータ達が独自にサイバイマンの栽培と種の収穫を行っているとは考えにくいため、フリーザ軍で組織的に栽培を行っているのではないかなと思います。

 他の設定では、人工生命体やバイオ戦士である場合があります。また、あるゲームでは「サイヤ人襲来編」でナッパが植えたサイバイマンの一人が突然変異で正義の心に目覚め、悟飯達と共闘するIFストーリーを遊ぶことが出来るそうです。

 この作品の地獄では、ウィローがサイバイマン用制御装置を開発して狂暴性を抑える事に成功した。そのリモコンは何人かの鬼達が持っており、制御されていたのだが……。



〇地獄の悪人の魂

 何かしら、世界を維持するための仕組みとして魂を消滅させてはならない理由があるのだと思われます。……そうでないなら、地獄に落ちた罪人の内、スピリッツロンダリング装置で悪の心を洗浄して生まれ変わらせる以上の重罪を犯した者(フリーザとか)の魂は、罰を受けさせて反省させるよりちゃっちゃと消滅させた方が反乱を起こされる恐れも無くなるでしょうし。

 原作アニメでセルやフリーザ親子が実際に反乱を起こした時も、パイクーハンに退治されたセルたちを牢屋に閉じ込めるだけで消滅させようとはしていない。
 単にセルたちが強すぎるから魂を消滅させる事が出来ないのだとしたら、ドラゴンボールGTや劇場版『復活のフュージョン!!悟空とベジータ』でこの世に出てきたレッドリボン軍やチョビ髭の独裁者等弱い地球人の悪党の魂は消滅させられるはず。

 そうなっていないので、悪人の魂でも安易に消滅させることはできない理由があるのだと思われます。



〇地獄の一丁目

 原作アニメ『ドラゴンボールZ』で登場した地獄の一地区。針饅頭が売られていたり、人魂のカップルがデートしていたり、地獄とは思えない程平和な場所。



〇強い罪人達

 生前フリーザ軍やその前身のコルド軍の兵士だった悪人や、強い宇宙海賊だった悪人、そしてスラッグ一味の幹部など。スラッグ一味の幹部は、他の勢力との戦闘よりも、失言や失態が原因で魔族であるスラッグに粛清されたため死んでも地獄に落ちる事が出来なかった者が多いと思います。

 なので、この時点の地獄にいる数はフリーザ軍やコルド軍の兵士の数が多いが、その多くは戦闘力1千から数千ほどで、1万を超える者は滅多にいない。
 一方、スラッグ一味の幹部は戦闘力数万(4万ぐらい?)程ありますが、数が極小であると設定しております。



〇戦闘力推移

・バイオマン:1000→1万 おそらくウィローによって強化改造された事で驚異的なパワーアップを遂げた。

・リーク:5600→6100 交流試合から約半年で若干強くなった。

・タロ:9000→9900 交流試合から約半年で若干強くなり、1万の大台間近。


〇ラディッツ

 孫悟飯の伯父。父である孫悟空の兄なので、叔父(父または母の弟)ではなく伯父。……決して忘れていたわけではないのです。




 gsころりん様、サボテン7h様、佐藤東沙様、kubiwatuki様、たむろん001様、Veno様、(。・・)旦お茶どうぞ様、辻井真夏様、太陽のガリ茶様、gsころりん様、みえる様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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