ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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69話 バーダックチームVS凶暴戦士

 しばし時間は巻き戻り、サイバイマンとバイオマンが各地で暴れ出す前。シトウとモロコ、そしてニオンのサイヤ人の科学者達は早めに今日の刑罰を終え、研究所に集まっていた。

「やはり、旧型の重力トレーニング室や再生ポッドの永久エネルギー炉本体が抜かれていた」

 

「何故誰も気が付かなかったのだ? 旧型とはいえ毎日使用されているはずだぞ」

 ゲロが供えた事で、地球の二百倍まで重力を増やせる重力トレーニング室が設置されたが、百倍までしか重力を増やせない旧型の重力トレーニング室も、頻繁に使われている。……百一倍以上の重力に耐えられるのはベジータ王とバーダックチームの面々だけなので、他のサイヤ人には旧型で充分だからだ。

 

 昨日もエリートや下級戦士の区別なく、多くのサイヤ人が旧型の重力トレーニング室を使用していたはずだ。

「どうやら、永久エネルギー炉を持ち去るだけではなく、旧型の装置にエネルギーの供給路を設置していたようだ」

「永久エネルギー炉を盗んだ事が発覚しないようにか。しかし、それではエネルギー炉を盗んだ意味がないのでは?」

 

「我々は罪人だ。刑罰を受けている間は、誰もトレーニング室や再生ポッドを使えない。その間にエネルギー炉が発するエネルギーをバッテリーか何かに溜めておき、利用したのだろう」

「そんな事が出来るのは、やはり彼しか……」

 

 地獄にも優れた科学者は存在する。フリーザ軍やその前身のコルド軍の科学者や、スラッグ一味の科学者、それ以外にも滅んだ星や一族の技術者等がいる。

 しかし、サイヤ人達が利用している施設から動力を盗み出すだけではなく、その後もばれないよう細工する事が出来る人物となると、心当たりは一人しかない。

 

「ああ、ドクター・ウィローだけだろう」

「まさか、彼が我々を裏切っていたとは……ともあれ、ベジータ王に報告しなければ!」

「そろそろ王も本日の刑罰を終えているはずです。スカウターで連絡を――」

 

 サイヤ人達も過酷な刑罰の間はスカウターを外している。シトウが研究室に置いてある自分用のスカウターを装着しようと手に取ったのと同時に、轟音とともに研究室の壁が破壊され中に何かが飛び込んできた。

「な、なんだ!?」

「お、お前達……逃げろ……!」

 壁から飛び込んできたのは、シトウも見覚えのあるサイヤ人だった。彼は研究所をサイヤ人に対して恨みを持つ他の罪人から守るために、ベジータ王が配置した警備の一人だ。

 

 その戦闘力は1万以上で、フリーザ軍の幹部を相手にしてもベジータ王達が駆けつけるまでの時間を稼ぐことが可能な兵だったはずだ。それが為す術もなくやられているという事は……。

「いかんっ! スカウターを持って逃げろ!」

 ハッとして動き出すシトウ達だったが、襲撃者はあまりにも早かった。

 

『逃がすと思っているのか』

 天井を破って現れたロボットアームが、シトウ達をなぎ倒す。そう、裏切りを察知された事に気が付いたドクター・ウィローが動き出したのだ。

 

『できれば後半年ほど騙し続け、万全の体制で策を進めたかったが……残念だ』

 ゲロ達によって倒された悪魔の科学者ウィローは、地獄に堕ちた後はサイヤ人達の集団に身を寄せていた。その目的は、閻魔大王を倒してその力を封じ、現世に舞い戻って今度こそ最強の肉体を手に入れて生き返る事である。

 

 そのためにベジータ王へ表面上は忠誠を誓いつつも、情報を集め、地獄にあるゲロの発明品を利用して作戦に必要なエネルギーを得た。

 もちろん、一度敗れた自分達がそのまま現世に舞い戻ってもゲロやギネに勝てない事は分かっている。だからこそ、盗んだエネルギーを利用した配下の狂暴戦士達と自身のサイボーグボディを改造し、戦力の強化を図った。

 

 サイバイマンの制御装置を開発したのも、作戦の一環だ。地獄の鬼達を油断させるためであり、手足となって働く忠実な駒を増やすためだ。

 他の罪人……フリーザ軍やスラッグ一味の配下を利用する事も考えたが、サイバイマンの方が仲間に引き込む手間がかからず、裏切られる心配もなく、そしてバイオマンに改造できる。最高の道具だ。

 

 しかし、ウィローは本来なら作戦を開始するのは来年の五月まで待ちたかった。バイオマンへ改造したサイバイマン……サイバイオマンの数をもっと増やすつもりだったし、五月にはあの世とこの世の交流試合がある。他のサイヤ人はともかく、ベジータ王やバーダックチームがいなくなるタイミングこそ、絶好の機会だった。

 

『だが、仕方あるまい。研究施設は破壊した。エビフリャー達を閻魔大王の確保に向かわせ、私はベジータ王を……む?』

 ウィローはふと研究所だった瓦礫と一緒に地面に転がるサイヤ人達の数が、一人少ない事に気が付いた。センサーの出力を上げてスキャンすると、まだ一人無事だったようだ。

 

「ベジータ王、ウィローが……」

 ニオンがスカウターで連絡を取ろうとしていた。彼女がベジータ王を呼ぼうとしているのなら、それは好都合だ。

 研究所を破壊する事で、自身が行った改造をモロコ達に解析され、何らかの対抗策を練られる事は防いだ。残る不確定要因は、ウィローが知る限り地獄で最も強いベジータ王だけだ。彼を早期に倒し、作戦を進めたい。

 

 しかし、自身を倒した一人であり、研究を盗んだゲロを尊敬しているサイヤ人の科学者達に対して、ウィローは一年以上不快な思いをさせられてきた。

 憂さ晴らしのつもりで、ウィローはニオンに向かってハサミ状のロボットアームを向け、エネルギー弾を放った。

「キャアアアアアア!?」

 エネルギー弾はニオンからやや離れたところに着弾し、爆風で彼女を吹き飛ばす。地面に何度も叩きつけられた彼女の手からスカウターが零れ落ちる。

 

「う、ううぅ……」

 しかし、非戦闘タイプとはいえさすがはサイヤ人。地球人なら死んでいてもおかしくない衝撃だったが、ニオンは意識を保っていた。

 

『さすがは地球最強の肉体の持ち主であるギネと同じ種族だ』

 そう言いながらも、ウィローは特に理由は無いが潰し損ねた羽虫に止めを刺す程度の感覚で、彼女に向かって再びエネルギー弾を放った。

 

『来たか……!』

 だが、ウィローが放ったエネルギー弾は彼方から飛来した気功波によって地獄の空に弾き飛ばされてしまった。

「よくもやってくれたな、ウィロー」

 危ういところでニオンを救ったのは、ベジータ王だった。

 

「ベジータ王……!」

 地上に降り立ったベジータ王は、顔をあげたニオンに向かって拳大の布袋を投げ渡した。

「ゲロが供えた仙豆という豆だ。これを使ってモロコ達を回復させろ」

「しかし、これはベジータ王が使うべきでは……」

「フンッ、裏切り者を一人処分するのにそんな大層なものはいらん。下がっていろ」

「は、はい!」

 

『冷酷非道と恐れられたサイヤ人の王が部下を思いやるとは、一度死んで甘くなったようだな』

 その様子を見ていたウィローにそう言われ、ベジータ王は再び鼻を鳴らした。

「確かにな。貴様のような負け犬を拾ってやった挙句に裏切られては、甘くなったと言われても否定はできんか」

 

『負け犬だと!? 悪魔の科学者と恐れられたこの私が!?』

 ベジータ王を煽ろうとしたウィローだったが、煽り耐性は彼の方が低かった。巨大な脳が収まっているカプセルの中の液体を泡立たせ、怒りをあらわにする。

 

「お前以外に誰がいる。しかも、悪魔の科学者と言っても所詮は辺境の惑星の内だけの評価ではないか。それに比べてゲロはどうだ? 自ら建造した宇宙船で星々を巡り、様々なテクノロジーを吸収し、戦闘力も生身のままあれほど高めるに至った。

 それに比べれば貴様など井の中の蛙にすぎん! せいぜい小悪魔と言ったところだな!」

 

『いい気になるなよ! 私が貴様を裏切ったのは、今の貴様に勝てる算段が付いているからだと言う事が理解できないようだな!』

 激高したウィローはサイボーグボディから伸びていたエネルギー供給路を断つ。これで、彼のボディ内にある盗んだ永久エネルギー炉が生み出す動力は、彼の体を動かす事だけに専念される。

 

 まるで気を解放したかのように、ウィローの全身から赤黒いエネルギーが発せられる。

「なるほど。我々のトレーニングからデータを収集して対策をとっていた訳か」

 しかし、ベジータ王の顔に浮かんだのは驚愕ではなく不敵な笑みだ。彼はスカウターで「空を見るなよ」と通信しながら、その手に青白い光の球を作り出した。

 

「ふん! 弾けて、混ざれ!」

 パワーボールを自分の後ろの空に向かって投げ、地獄に上がるはずのない満月が出現する。

 

「うおおおお! 行くぞ! その改造したらしいサイボーグボディをスクラップにしてくれる!」

 その輝きを一瞬だけ目に受けて、ベジータ王は大猿に変身しないままその戦闘力を十倍にパワーアップさせた。その戦闘力は16万4300から164万3千。フリーザの第二形態すら上回る。

 

「くらえ!」

 その星すら砕く拳を構えて、ベジータ王が高速でウィローに迫る。しかし、次の瞬間彼の攻撃はウィローの腕によって阻まれた。

 

「な、なにっ!?」

 ウィローの腕の表面を覆うエネルギーフィールドによって、ベジータ王の拳は受け止められていた。

『フッ、単細胞な愚か者め!』

 そしてウィローが腕を振ると、ベジータ王は踏みとどまる事も出来ず薙ぎ払われ、研究室の残骸から離れた血の池に叩きつけられ、水柱をあげて沈んでいった。

 

「キサマァ!」

 すぐに血の池から飛びだしたベジータ王だったが、その顔には怒り以外にも驚愕が浮かんでいた。

『フッフッフ……言ったはずだ。今の貴様にも勝つ算段が付いたと』

 ウィローはベジータ王の戦闘力が十倍に上がっても百パーセント勝てる力を改造によって得ていた。

 

 その力はスカウターでは計測できないが、390万……今のベジータ王の倍以上だった。

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃閻魔大王の宮殿前のタロ達は、自分達より数の多いサイバイオマン相手に粘り強く戦い続けていた。

「クソっ、ベジータ王が反乱を起こした時に来た大界王様の所で修行している戦士は、今回は遅刻か!?」

「文句を言うんじゃねぇよ! 前だって奴らが来たのはベジータ王が反乱を起こしてから三時間は過ぎてたぞ!」

 残念なことに、サイバイオマンがサイバイマンを引き連れて暴れ出してからまだ十分も過ぎていなかった。

 

『排除! 排除! 排除!』

「同じ事しか言えないのか、こいつらは!?」

 突っかかってくるサイバイオマンを、タロのように戦闘力が1万に近い者達が接近戦で押さえつけ、1万より数千以上低い者が気弾や気功波によって遠距離から援護する。ここ何年かの間に磨いた連携によって、数でも質でも劣るサイヤ人達は持ちこたえていた。

 

「くっ、こいつらが自爆できなくなっていて助かりましたね!」

 そして、気絶から目覚めたリークが言ったようにサイバイオマンはパワーアップと引き換えに、サイバイマンが可能だった自爆を失っていた。ウィローが施した改造の副作用か、意図的な作用かは不明だ。

 

 しかし、戦闘力1万の自爆攻撃なんてされたらただでは済まないので、サイヤ人達にとっては間違いなく幸運だったと言える。

「リークっ、それは『せめてもの幸い』って言うんだぜ!」

 だが、戦況が苦しい事に違いはない。前に出たタロの顔面に、ついにサイバイオマンの蹴りが命中した!

 

『何!? 消エタ!?』

 命中したかに見えたが、サイバイオマンの蹴りが触れた瞬間タロの姿は掻き消えてしまった。

「「どどん波!」」

『ギャアアアア!?』

 驚愕で動きが止まった隙をついて放たれた、本物のタロとリークのどどん波がサイバイオマンを直撃する。

 

「苦労して習得したが、まさか交流試合の前に実戦で試す事になるとはな」

 連続してこの世との交流試合に出場したタロとリークは、有用だなと思った技を独自に習得する事に成功していた。それが残像拳とどどん波だ。

 

「これでやっと一匹……でも、切りがありませんよ」

 サイバイオマン達はまだまだサイヤ人達よりも多い。

「耐えろ! 持ちこたえれば俺達の勝ちだ!」

「そりゃあそうだが、防戦ってのはストレスが溜まるぜ」

 

 改めて耐える戦いを行う覚悟を決めるタロ達サイヤ人。

『ギャ!?』

『ギィィ!?』

 そんな彼らの見ている前で、高速で飛来した気功波が次々にサイバイオマン達を打ち落とし始めた。避ける事はもちろん防御も出来ず悲鳴をあげて落ちていくバイオマン達。

 

 一瞬、大界王の所で修行している戦士達が来たのかと思ったタロ達だったが、気に馴染みがあったので直ぐに違うと気が付いた。

「トーマ! セリパっ!」

「パンブーキンとトテッポもか! 遅ぇぞ、お前ら!」

 

「わりぃな、ここに来るまでに暴れてるサイバイマンを退治していたら時間がかかっちまった」

 援軍に駆けつけたのは、トーマ達バーダックチームだった。大界王の所で修行している戦士達に比べれば実力は格段に落ちるが、彼らはタロ達……そしてサイバイオマンよりも圧倒的に強い。

 

「オラオラ! 邪魔だぜ、テメェ等!」

「さっさと寝ちまいな!」

 パンブーキンやセリパが拳や蹴り、そして気弾を放つたびにサイバイオマンが悲鳴をあげて吹っ飛ばされていく。

 バーダックチームの戦闘力はセリパが4万2千で原作ネイルと互角、そしてパンブーキンが6万1千。二人だけでもサイバイオマンに勝ち目はないが、6万8千のトテッポ、7万4千のトーマが様子を見ている。

 

 これで閻魔大王が大界王へ要請しているだろう援軍が来るのを待つ必要もないかに思えたが、そう甘くはなかった。

 

「あれは……! おい、お客さんが来たぜ!」

 サイバイオマンの残り数匹になった時、トーマはこちらに向かってくる黄色の巨漢、緑色の小男、薄紅色のモヒカンの三人組に気が付いた。

 

 悪魔の科学者と恐れられたウィローとコーチンが作り出した狂暴戦士、ミソカッツン、キシーメ、そしてエビフリャーだ。

「ああ、見た目からして他の奴等とは違うな。気は――」

 生前の彼等なら、今のバーダックチームの敵ではなかった。しかし、バイオマンやサイバイマンを改造したウィローが、彼らを改造していないはずはない。

 

「あたしやパンブーキンより上だね」

「だいたいトーマと同じくらいか、それ以上だ」

 セリパとトテッポの見立ては正しく、狂暴戦士達の戦闘力はミソカッツンが7万、キシーメが7万5千、そしてエビフリャーが8万。それぞれ生前の十倍に強化改造されている。

 

「トーマと同じか、より強いだと!?」

「なんてこった……閻魔大王が呼ぶはずの援軍はまだかよ!?」

 サイバイオマンとの戦いに勝ったと思った直後に現れた強敵に、タロ達は目を見開いて慄く。

 

「へっ、じゃあ、ドドリアにやられた時程じゃないな」

「ああ、俺達の方が上だ」

 しかし、トーマは慄くどころか不敵な笑みを浮かべ、いかつい顔のままだがトテッポもそれに同意した。

 

 たしかに彼等が殺されたドドリアとの戦いでは、リーダーであるバーダック不在の状況で、敵は一人だが最も強いトーマの四倍以上の戦闘力を持ち、四人全員の戦闘力を合計しても敵わないドドリアに突然襲撃された。

 それに比べれば、今相対している狂暴戦士達は最も強いエビフリャーの戦闘力もセリパの倍程度で、トーマより高くてもその差は二割もない。そして、狂暴戦士三人の戦闘力の合計より、トーマ達四人の戦闘力の合計の方が高い。

 

「勝ち目は十分ある。むしろ、これぐらいの相手の方が燃えて来るってもんだぜ!」

「タロ、怖いなら他の連中と一緒に下がってな!」

 勝ち目はあるが強敵には違いなく、僅かな隙や気の緩みが敗北へつながる厳しい戦いになる。しかし、そうした戦いこそ戦闘民族サイヤ人の闘争本能を激しく燃やし、滾らせる。

 

 それがタロ達にも伝わったのか、彼等はハッと我に返ったように怯えを振り払って怒鳴り返した。

「大きなお世話だ! 援護してやるから精々感謝しろ!」

「お、俺だってバーダックさんとチームを組んだ事があるんだ! こんなところで逃げたら、バーダックさんに笑われちまう!」

 

「へっ、それでこそサイヤ人だぜ」

 戦意を取り戻したタロ達に振り返らず、しかし嬉しそうに笑顔を深めるトーマ。そんな彼らのやり取りを見ても、狂暴戦士達の残忍な笑みは揺るがない。改造によって強化された自分達の強さと勝利を確信しているからだ。

 

「お前らの事はゲロから聞いてるぜ! くらいな!」

 戦いはパンブーキンが放った気弾から始まった。狂暴戦士達はそれに対して、超柔軟な身体を誇るミソカッツンが前に出る。気弾をその体で受けてゴムのように跳ね返すつもりだ。

 

「……!」

 そして、ミソカッツンは狙い通り気弾を跳ね返したが――。

「はっ! 来るって分かってりゃあ、こんな事も出来るんだぜ!」

 なんと、パンブーキンは跳ね返された自らの気弾を組んだ両手で真上に弾いた。

 

「排球アングリーボンバー!」

 そして、その気弾をトテッポが更に弾く。狙いは、ミソカッツンではなく回り込んで側面から凍結拳を放とうとしていたエビフリャーだ。

 

「っ!?」

 放とうとしていた凍結拳をそのまま盾にする氷を作るために使ったが、アングリーボンバーが予想以上の威力だったために彼は爆発に巻き込まれてしまった。

 

 ゲロ達が天津飯の排球拳にヒントを得て編み出した、三人の気を一つの気弾に込めていく排球弾。パンブーキンはミソカッツンが受け止めた気弾を跳ね返してくるのを見越して、彼とトテッポの二人だけで放ったのだ。

 

「キエエエ!!」

 まずはバーダックチームが有効打を与えたが、狂暴戦士達も黙ってはいない。エビフリャーとは逆の方向から回り込んだキシーメが両腕から白いコードを伸ばして電撃を放ち、ミソカッツンも間合いを詰めようとする。

 

「そっちの武器は分かってるんだ、近づかせないよ!」

「オラオラ! もっとぶん投げてやれ!」

 だが、キシーメのコードが気ではなく実体である事を利用して、セリパの気弾の連射と、鬼達が避難する際に置いて行った金棒や戦闘の余波で砕けた岩などをタロ達が投げて軌道を遮る。

 

「ヌガアアア!」

 それでもセリパへ間合いを詰めようとすれば、両腕にフォトンシールドを構えたトテッポが割って入る。電撃を防ぐのに専念しているため、キシーメが時折放つ蹴りを受けてしまうが、それはサイヤ人の肉体の頑丈さと戦闘服の防御力で耐え続ける。

 

 

「テメェは俺一人で充分だぜ!」

 そして真っすぐ間合いを詰めてきたミソカッツンには、パンブーキンが正面から殴りかかる。

「グフフ!」

 ミソカッツンは無防備にパンブーキンの拳を受けるが、戦闘力の差が1万程ある以上に彼のゴムのように柔軟な身体にダメージを与える事は出来ない。

 

「効かねぇって? そんな事は承知の上だぜ!」

 しかし、パンブーキンはそれに構わず素早いジャブを連続で放ち続ける。彼の狙いはミソカッツンの足止めだからだ。

 

 ミソカッツンは三体の狂暴戦士の防御の要であり、攻撃を受けた時回避するよりその場に留まって受け止め、跳ね返す事を優先する癖がある。それを見抜いての作戦だ。

「っ!」

 それに気が付いたエビフリャーが、煙の中から飛び出してミソカッツンの援護に向かおうとする。

 

「おっと、お前の担当は俺だぜ!」

 そこに割って入ったのはトーマだ。彼はエビフリャーの懐に入り込み、そのまま超接近戦……インファイトを展開する。

 

「拳を振れなきゃ、凍結拳とやらも使えねぇだろ!」

 トーマが密着するような超接近戦をエビフリャーに挑んだのは、彼の凍結拳を封じるためだ。左右の拳から冷気を放出する凍結拳は、歴戦の戦士であるトーマ達から見ても厄介な技だ。当たれば冷気で生じる氷で動きを封じられてしまう。

 なら、技を最初から撃たせなければいいとトーマは考えた。

 

「グゥ!!」

 トーマの肘や膝、そして拳が排球アングリーボンバーのダメージが残るエビフリャーを攻め立てる。まだまだ致命傷には程遠いが、思うように戦えない怒りと焦りが人工生命体の精神を追い詰める。

 それでも素の力はトーマよりエビフリャーが上なので、強引に離脱しようと試みる。しかし、インファイトでの戦いの経験がないエビフリャーは攻撃に力を乗せきれず、トーマを引きはがす事が出来ない。

 

「パンブーキン! 今だ!」

「おうっ!」

 トーマの合図で、他の狂暴戦士がミソカッツンを援護できない状態になった事に気が付いたパンブーキンは足止めを止め、地上に素早く降り立つ。

 

「……?」

「プラズマブースト! マッシブカタパルトォ!」

 そして、身体能力を倍増させて必殺のマッシブカタパルトを放った。地面をクレーターのように陥没させて飛び上がったパンブーキンは、右腕の肘からミソカッツンの胴体にめり込み、そのまま全身がめり込んでいく。

 

「っ!!」

 パンブーキンの猛烈なタックルに耐え、彼を跳ね返して地面に叩きつけてやろうとするミソカッツン。しかし、その前にウィローに強化改造された肉体にも限界が訪れた。

 風船が破裂したような音を立ててミソカッツンの胴体に穴が開き、パンブーキンの巨体が貫通した。

 

「ヌグゥ!」

 それを見たエビフリャーが、仲間が減った事に動揺して唸り声をあげる。だが、ミソカッツンを貫いたパンブーキンが空中で方向転換して自分に向かって来ようとしているのに気が付いた。

 

 あれを受ければ自分もただでは済まないと判断したエビフリャーは、なりふり構わずトーマから離脱する。その際、脇腹に彼の膝が深くめり込んだが、その反動も利用して距離をとる事に成功した。

「グフッ。……!?」

 痛みの代償に、パンブーキンの奇襲はトーマとの同士討ちになった。かに思われたが、パンブーキンにぶつかる寸前、トーマの姿が掻き消えた。

 

「残像拳って技だよ。知らなかったか?」

「っ!?」

 背後から聞こえたトーマの声に慌てて身を翻そうとしたエビフリャーだったが、もう遅かった。

 

「ファイアバレット!」

 隙だらけの背中にトーマの必殺技を受けたエビフリャーが、悲鳴をあげる事も出来ずに吹っ飛ばされる。

「「オラオラオラオラァ!」」

 しかも、そのままダメ押しにトーマとパンブーキンが放った気弾が、体勢を立て直す暇も与えず叩きつけられる。

 

 こうなれば戦闘力がトーマより1万ほど高くても、どうしようもない。二人が気弾を撃つのを止めた時、エビフリャーは白目を剥いて動かなくなっていた。

 

「ぬおおおお!」

 一方、トテッポとセリパ対キシーメの戦いも大詰めを迎えていた。

 コードを鞭のように振るったり、腕に纏わせて殴りかかったりと、他の二体に比べれば得意技に応用が利くキシーメだが、トテッポとセリパを攻めあぐねていた。

 

 小型のフォトンシールドを左右の手に構えたトテッポの守りを突破できず、彼を倒す事を優先しようとするとセリパのハンティングアローやエナジーバレットが狙い撃ちしてくる。

 逆にセリパを先に倒そうとコードを伸ばせば、トテッポが間合いを詰めて畳み込んで来る。

 そして、セリパの更に後ろからタロやリーク達サイヤ人の援護が飛び、それらはキシーメにとって殆どダメージはならないが、目障りで仕方がない。

 

 そんな苦しい戦況を打破できないまま戦い続けている内にミソカッツンが破れ、エビフリャーも倒れた。いよいよ追い詰められたキシーメの目に光が映った。

「太陽拳!」

「ガッ!?」

 太陽拳に視界を焼かれたキシーメは、反射的に顔を両手で庇ってしまう。

 

「ウオオオオオ!」

 その次の瞬間、がら空きになった胴体にトテッポのラッシュが決まる。容赦なく左右の脇腹に拳を叩きこまれ、鳩尾につま先が突き刺さる。そして前のめりになったキシーメの顎を蹴り上げる。

 

「ハンティングアロー!」

「ファイアバレット!」

 そしてセリパと、エビフリャーを倒したトーマがトテッポに蹴り飛ばされたキシーメに必殺技を叩きこんで止めを刺す。

 

 こうして狂暴戦士達はバーダックチームに敗れたのだった。

 戦闘力を十倍に強化改造されながらもバーダックチームに勝てなかったのは、彼らが戦闘力を十倍に強化されただけだったからだろう。

 

 狂暴戦士達の情報を事前に得ていただけではなく、この世との交流試合でゲロや鶴亀仙流の技を取り入れたバーダックチームに勝つには、それだけでは不十分だったのだ。

 ウィローも本来なら狂暴戦士達の戦闘力だけではなく、戦闘プログラムも向上させたかった。トレーニングに汗を流すサイヤ人達からデータをとってそれを狂暴戦士達に学習させる事を考えていたのだ。

 

 しかし、ウィローにとってはあまりに状況が悪かった。ゲロの永久エネルギー炉を手に入れるためにサイヤ人に近づく事には成功したが、サイヤ人が作った研究室で狂暴戦士やサイバイマンの改造を行うわけにはいかない。

 そして、彼の信奉者であるコーチンがいない事も大きかった。

 

 労働力は狂暴戦士で補えても、高度な技術力を持つのはウィローただ一人。そのため、彼は永久エネルギー炉の奪取とそれがばれないようにする仕掛け、狂暴戦士の強化改造を行うための隠し施設、そして自身のサイボーグボディと狂暴戦士のパワーアップ、サイバイマンをサイバイオマン化させる改造手術を一人で行わなければならなかった。しかも、昼間は地獄の刑罰を受け、夕方からはサイヤ人達に計画がばれないよう研究をしているふりをしなければならない。

 

 その上、ベジータ王やバーダックチームだけでなく、ゲロが作る人造人間達も年々強くなっていくため計画に何年もかけてはいられない。万全の準備が出来た時に、ベジータ王や人造人間達が強化改造した自分より強くなっていたら意味がない。また、準備が終わる前に反乱を企てている事がばれたら、億を超える戦闘力を持つらしい悪の帝王フリーザすら敵わない大界王星で修行している戦士達を呼ばれてしまう。

 

 そのため、ウィローはソフトではなくハード……戦闘プログラムよりも戦闘力の強化改造を優先したのだ。その判断は、戦闘力に圧倒的な差があるといくらテクニックがあっても通じない事を考えれば、間違ってはいない。

 それでもやはり、時間と手が足りなかった。

 

「ふう、これでウィローの手下はまだ他の場所で暴れているサイバイマンとバイオマンだけか?」

「じゃあ、もうそろそろ終わりだね。ウィロー本人はベジータ王が倒しに行ったようだし」

「お! 噂をすればなんとやらだな。あっちを見るなよ」

 

 そう言ってパンブーキンが顔を逸らす。何故なら、地獄の空にパワーボールによって作られた偽りの満月が輝いているからだ。

 そして、ベジータ王の気が急激に大きくなるのも感じ取れた。ウィローは体の殆どが機械であるため気の位置と大きさを感じ取れないが、ベジータ王に倒されるのは時間の問題だろうと思われた。

 

「おい……妙だ」

 しかし、トテッポが言ったようにベジータ王の気は激しく動きまわっている。何者かと激戦を繰り広げているかのように。

 それが気のせいではない事を証明するように、激しい爆音と閃光が彼らの耳や目に届く。

 

 そして、僅かずつだがベジータ王の気が小さくなっている。

「これは、もしかしてベジータ王の奴、やられてんのか? あの脳味噌お化けに」

「仕方ねぇ、助けに行ってやるか。供え物の仙豆ってどこだ?」

「あたし達の寝床に置きっぱなしだろ。ベジータ王も持ってるはずだけどね」

 

 ベジータ王がどうやら苦戦しているらしいと察したバーダックチームは、仙豆を持って助けに行く事にした。

 ベジータ王が個人的にボコボコにされるのは構わないが、大将対決で彼が負けてサイヤ人全体が敗北したかのように思われるのは気に食わない。

 

「タロ、お前らは閻魔大王の宮殿にこのまま避難してろ!」

「おう、分かった!」

 そうタロ達に言うと、バーダックチームはベジータ王達の救援に向かったのだった。

 




〇サイバイオマン

 サイバイマンをバイオマンに改造した存在。地獄でもGTで原作ゲロが18号を新たに作っているので、多分改造する事も可能だろうと思って設定しました。
 戦闘力は1万です。なお、バイオマンに改造する過程で自爆や頭部から溶解液を噴射する能力を失っています。



〇戦闘力推移

・ウィロー:3万9千→390万 自身の仇の一人が発明した永久エネルギー炉を複数体内に設置して動力とする事で、爆発的なパワーアップを遂げた。若返ったスラッグだけではなく、フリーザも最終形態になる前なら倒せる。しかし、永久エネルギー炉はゲロがお供え物としてあの世に送った物なので、普通に現世に行くと消失してしまう。そのため、現世でこの強さを発揮したければ、閻魔大王の身柄を抑えて彼の力を封じ、あの世とこの世の理を乱すか、現世で改めて永久エネルギー炉を手に入れなければならない。

・ミソカッツン:7000→7万

・キシーメ:8000→8万

・エビフリャー:8500→8万5千 永久エネルギー炉のエネルギーを利用して戦闘力が十倍に強化改造された狂暴戦士達。しかし、戦闘プログラムの強化はほとんどされておらず、新しい技なども習得していなかったため戦闘パターンに変化が乏しかったために、バーダックチームに敗れてしまった。

・ベジータ王:15万6千→16万4千3百 クウラ機甲戦隊のドーレを上回る実力に至ったベジータ王。大猿化すると(姿を人型に維持した場合も)戦闘力は163万。若返ったスラッグを上回る事が出来る。

・セリパ:3万8千→4万2千 原作ネイル並みに強くなった。

・パンブーキン:5万6千→6万1千 プラズマブーストを使用すると、身体能力のみだがギニュー隊長に匹敵する。

・トテッポ:6万2500→6万8千 フォトンシールドや太陽拳を習得している。

・トーマ:6万8千→7万4千 ギニュー特戦隊のギニュー以外のメンバーとのチーム対決なら、まず勝てるだろう実力に成長したバーダックチームのリーダー代理。チームで排球波を、個人では残像拳を習得している。



 佐藤東沙様、太陽のガリ茶様、Paradisaea様、大自在天様、kubiwatuki様、Veno様、excite様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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