ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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70話 戦闘民族サイヤ人の王、覚醒の時!★

『ベジータ王、これでも貴様には感謝している』

「戯言を!」

 戦闘力を十倍にしたまま、ベジータ王はウィローと戦い続けていた。常に高速で飛び回り、多重残像拳でウィローをかく乱する。

 隙をついて間合いを詰めて、構造上弱いだろう手足の関節に渾身の拳や蹴りを放つ。

 

『戯言? いいや、本音だとも』

 だが、それらはウィローに対して彼が期待したほどの効果をあげなかった。

 多重残像拳はウィローの改良されたセンサーを誤魔化す事が出来ずに見破られ、関節部分をいくら攻撃しても彼のサイボーグボディがオーラのように纏っているエネルギーを貫く事が出来ず、有効打になりえない。

 

『茶番とはいえ、貴様に従う事で宇宙人のテクノロジーに触れる事が出来た。おかげで私の認識は地球から解き放たれた』

 生前のウィローにとって、宇宙は天文学の世界でしかなかった。しかし、地獄に落ちてから宇宙の広さを知り、自分が井の中の蛙であったことを思い知った。

 

『その礼に、閻魔大王の力を封じてこの世に復活した後は、いずれ貴様等サイヤ人の仇であるフリーザの肉体を私が手に入れてやろう』

 今のウィローの目は、広い宇宙へ向けられていた。とはいえ、この言葉通り改心した訳では全くないが。

 

「フン! フリーザが貴様ごときに倒せるものか。奴を倒すのは、我が息子ベジータ四世だ!」

『その時は、貴様の息子の肉体を手に入れるまでだ』

「図に乗るなよ、ガラクタ人形が!」

 そうウィローを罵倒しつつも、ベジータ王は内心ではウィローに勝つ事を既に諦めていた。

 

 何故なら、普段の十倍にパワーアップした自分よりも今のウィローの方が強かったからだ。

(気は分からんが、今の儂の倍以上の強さなのは間違いない。弱点も見つからんのでは、時間稼ぎ以上の事は不可能だ)

 戦闘力163万のベジータ王の予想通り、ウィローの強さは戦闘力に換算して390万。生前の彼の百倍にまで高まっている。

 

 しかも、盗んだ永久エネルギー炉を動力源にしているためエネルギーが切れる事はない。地獄にいる限り、破壊されるまで永遠に今の強さを維持する事が出来る。

(まだ援軍は来ないのか、閻魔!? 間に合わなくなっても知らんぞ!)

 彼にとっての希望は、以前自分が反乱を起こした時に鎮圧しに現れた大界王星で何千年も修行し続けている戦士達が現れる事だけだった。

 

『そろそろお遊びは終わりだ。これ以上貴様に時間をかけている訳にはいかない』

 だが、援軍が現れる前にウィローはベジータ王との戦いを切り上げる事にしたようだ。

「っ!?」

 巨体に似合わないスピードでベジータ王の背後をとったウィローが、そのハサミ状のロボットアームをハンマーのように振り下ろす。

 

 そして地面に叩きつけたベジータ王を、ウィローは更に脚で周りの地面ごと蹴り上げ、宙を舞う彼をフォトンストライクで吹き飛ばした。

「がはっ!?」

 岩盤……ではなく、針山に叩きつけられたベジータ王は衝撃と共に意識を取り戻した。針山の針を通さずへし折った戦闘服と自身の肉体の強度に感謝するが、受けたダメージは大きい。

 

『貴様に勝てる事が分かれば十分だ。現世に戻ったら、まずはギネの肉体を手に入れ、他の戦士や人造人間を狂暴戦士へと改造するとしよう』

 しかも、ウィローはベジータ王の作った偽りの満月に向かってエネルギー弾を放ってかき消してしまった。途端、彼の全身から力が抜けていく。

 

 こうなれば、最早時間稼ぎすら不可能だ。

 

(チッ、援軍は間に合わなかったか。だが、貴様が現世に出たとしてもギネはともかくネイルを倒す事は出来んぞ!)

 ネイルの戦闘力は今年の交流試合時点で約60万。そして、二十倍界王拳を使えば1200万まで強くなることができる。

 

 ウィローが閻魔大王をどうにかしてあの世とこの世の理を狂わせ、現世に脱出したとしても、ゲロなり4号なりが瞬間移動でナメック星からネイルを連れてくれば勝てる。ベジータ王はそう確信していた。

 それまでに多少の被害は出るだろうし、運が悪ければギネが死ぬかもしれないが、ドラゴンボールとやらを使えば生き返せるだろうし……ゲロが再改造手術でもすればまた生き返せるかもしれない。

 

 なんにせよ、もう無理をする必要はない。出来る事はやった。不愉快だが、損害を最小限にして後はネイルやゲロ達に任せればいい。

 そう思った時、地獄の空に複数の輝きが現れた。

 

『あれは……?』

 閻魔大王の宮殿に向かおうとしたウィローが、先ほどエネルギー弾でかき消したのと同じ輝きが複数現れた事に、思わず足を止める。

 

『グオオオオオ!』

『ベジータ王を援護するぞ!』

『王が回復する時間を稼ぐのだ!』

 なんと、地獄の各地でサイバイオマンと戦っていたベジータ王の側近やエリート戦士達が彼を助けるためにパワーボールを使用し、大猿へと次々に変身したのだ。

 

 十や二十は優に超える数の戦闘服姿の大猿達。その戦闘力は10万から20万で、理性も保っている。軍として、これほど強力な存在は今現在の宇宙では他に存在しないだろう。

 

 しかし、どんな軍でも突出した力を持つ個には敵わないのがこの世界の常だ。

「待てっ、止めろっ! 貴様らが敵うはずがない!」

『邪魔をするな!』

 ベジータ王が叫ぶのと、ウィローがフォトンストライクを彼らに向かって乱射したのはほぼ同時だった。

 

『グワアアアア!?』

 ウィローが無造作にはなったエネルギー弾によって、サイヤ人が誇るエリート戦士達は次々に倒れていく。

 戦闘力を163万にまで高めたベジータ王でも足止めがやっとだったのだ。大猿になってもその一割ほどしかない彼等では、いくら人数がいてもウィローの足を数秒止めるのがやっとだ。

 

『チィ! 距離をとれ!』

『迂闊に近づくなよ!』

 しかし、それでもサイヤ人達は諦めようとはしない。距離をとってウィローに向かって口から気功波を放ち、遠距離戦を展開し始めた。

 

『ええいっ、しつこいぞ!』

 ウィローはフォトンストライクをばら撒いて彼らを排除しようとし、または地獄の空に浮かんでいるパワーボールの破壊を狙う。しかし、強化改造した今もウィローが戦闘の素人である事には変わりがない。そのため、距離を空ければフォトンストライクを避けられる可能性が出て来る。

 

 また、パワーボールは一つや二つ破壊しても影響がないほど空に輝いているし、減ればまだ無事なサイヤ人が新たにパワーボールを打ち上げる。

 

『グワアアアアア!?』

『ウオオオオオオ!?』

 しかし、サイヤ人達は櫛の歯が欠けていくように、たった数秒の足止めと引き換えに次々に倒れていく。

 

「やめろっ! 何故だっ、何故意味もなく、勝てない戦いを続ける!?」

 どれほど善戦しようと、サイヤ人達が稼げる時間は後一分も無い。その時間を稼いで何が出来るのかというと、何もできない。

 

 ただウィローが地上に出て、ネイルに倒されるまでの時間が一分伸びるだけだ。なんの貢献もしていないし、何の利益も無いし、何の意味もない。

 なのに、何故だ? 戦闘を楽しむのがサイヤ人の性だとしても、これはあり得ない。

 

「何故って、お前がこんなところでやられてるからに決まってんだろ」

「っ!? トーマか」

 不意に聞こえた声の方へベジータ王が顔を向けると、そこにはトーマ達がいた。

 

「ほらよ。お前の部下から預かってきた仙豆だ」

 そう投げ渡してきた仙豆の袋を持ったまま、ベジータ王は聞き返した。

 

「さっきの言葉はどういう意味だ?」

 一方、トーマは何故そんな事を聞き返されたのか理解できず、困惑した様子で答えた。

「どういう意味って……忠誠心とか、信頼とかそんなもんだろ」

 

「忠誠心に信頼だと? どういう意味だ!?」

「お前、頭でも打ったのか!? 意味が知りたきゃ自分で辞典でも引けよ!」

「違う! ウィローに勝てない戦いを挑む事が、何故儂への忠誠や信頼に繋がるのだ!?」

 

 ベジータ王はウィローにやられたが、配下のサイヤ人達がそれに殉じる意味は無い。何故ならベジータ王は死んで……消滅した訳ではない。動けないが、こうして意識を保ち話す事が出来ている。

 それに、ウィローの目的もベジータ王やサイヤ人達を消滅させる事ではない。目的の障害となり得るから排除しようと考えていたようだが、排除した後に止めを刺してまで消滅させるつもりはないようだ。

 

 ウィローとしては、そんな事よりも閻魔大王の身柄を抑える事を優先したいはずだ。大界王星の死後も修行を続ける戦士達が来る前に、現世に脱出しなければならないのだから。

 それをベジータ王の配下達は知らないが、それでも推測する事が出来るくらいの頭はあるはずだと、ベジータ王は考えていた。だというのに、何故?

 

「そう言われてもな……俺達、今も昔もお前に忠誠なんて誓っちゃいねぇしな」

「殊更逆らってやろうって考えていた訳じゃないが、気に入らねぇ上司って感じか?」

「いや、あたし等にとっては中間管理職って奴じゃなかったかい? トップはフリーザだったし」

「そうだな」

 

 しかし、バーダックチームはベジータ王に対して臣下としての忠誠心や敬意は抱いていなかった。下級戦士である彼らはベジータ王達王族やエリート層との関わりが薄く、生前は自分達のボスはフリーザで、ベジータ王はその間にいる中間管理職、という認識をぼんやりとしていたような気がする。という程度だ。

 

 チームリーダーのバーダックならまだ他の認識があったかもしれないが、それでも忠誠心は持っていなかっただろう。

 

「貴様等……」

 散々な言われようだったので睨み返すと、トーマ達は笑って答えた。

「仕方ねぇだろ。生きてる頃はあんたとほとんど接点がなかったし、メチャクチャ嫌な奴だったしな」

「トーマ、そろそろあたし等も行くよ」

「そうだな。エリート連中もだいたいやられちまったし、奴らのパワーボールが残っている内にやっちまうか」

 

「お、おいっ!? まさか貴様らまでウィローの邪魔をするつもりか!?」

 大猿化したエリート達が殆どやられたのを見たトーマ達は、自分達もウィローに戦いを挑もうとした。思わず引き留めるベジータ王に、彼らは答えた。

 

「当たり前だろ。あんな頭でっかちのサイボーグ野郎に舐められるのは、気に入らないからな」

「へへっ、大猿になるのも久しぶりだぜ」

 全く臆した様子も、悲壮さも感じさせない彼らにベジータ王は何度目かの問いを叫んでいた。

 

「何故だ!? 貴様らでは絶対に勝てんぞ!」

「何故って……まあ、死んだ後のお前も嫌な奴だけど、メチャクチャって程じゃねぇからな」

「それに、あたし等にもプライドってもんがあるんだよ。戦闘民族サイヤ人のね」

 

 それだけ言うと、バーダックチームは空に飛び立ち、パワーボールの光を目にして大猿へと変身した。

『グオオオオオ!』

『ガアアアアアア!!』

 王族の血を引くエリート達と違い、下級戦士出身のバーダックチームは大猿に変身すると理性を失ってしまう。

 

『くっ! しつこいぞ! 貴様らに関わっている暇はもうないのだ!』

 しかし、バーダックチームは苛立つウィローに対して上手く立ち回り、一人が集中して攻撃を受けないよう彼の注意を散らしている。本当に理性を失っているのか、疑わしい程のチームワークだ。

 

 その戦闘力は最も低いセリパでも42万、高いトーマで74万だ。先ほど最後の一人が倒れたエリート達より、ウィローにとっては手ごわい敵だろう。

 ただ……どんなに善戦しても三分ももたないだろう。それがベジータ王には分かってしまう。

 

「ふざけるな……儂への忠誠心? 信頼? 儂が回復さえすれば、ウィローを倒せるとでも思っているのか」

 受け取ったままだった小袋から、取り出した仙豆を口に放り込み、噛み砕く。豆の味と共にダメージと疲労が回復するが、それに満足感を覚える余裕もないほどベジータ王は激怒していた。

 

「下級戦士が、この儂の前で戦闘民族サイヤ人のプライドを語るだと……」

 立ち上がりながら、ウィローを睨みつける。トテッポがエネルギー弾を受けて倒れ、それに激高したパンブーキンがウィローの接近を許して腕の一振りで薙ぎ払われる。

 

「ふざけるな!」

 腸が地獄のマグマよりも煮え立ち、視界が血の池に落ちたかのように赤くなる。生きていた時にどんな屈辱を受けた時よりも……コルド大王やフリーザに舐めた態度をとられた時や、破壊神ビルスに足蹴にされた時よりも、激しい怒りで頭がどうにかなりそうだ。

 

 立ち上がれずにもがくパンブーキンを庇おうと前に出たトーマは、ウィローに首を締め上げられ、その隙にウィローの背後から襲い掛かろうとしたセリパは、トーマを投げつけられて諸共地面に転がされる。

 

「我こそは――」

 ベジータ王の怒りの対象はウィローではない。バーダックチームや彼の部下達でもない。

 戦闘民族サイヤ人のプライドをいつの頃からか忘れ去り、「自分が勝たなくてもいい」、「自分は負けても構わない」と情けない事を考えていた自分自身だ。

 

「我こそは、戦闘民族サイヤ人の王! ベジータ王なるぞ!!」

 怒りを爆発させたベジータ王は、そう激怒しながらウィローに向かって飛び出した。

 

『いい加減にしろ。止めを刺して……なんだ!? このエネルギー反応は!?』

 トーマとセリパに止めを刺そうとしたウィローは、自分に向かって高速で接近する巨大なエネルギー反応に驚き、反射的に振り向いた。

 

『うおおおおおっ!?』

 センサーに映った金色の輝きに驚愕し、反射的にかざした腕に大きな衝撃を受ける。そのまま耐える事が出来ず、後ろに跳ね飛ばされた。

 驚き見てみると、複数の永久エネルギー炉を動力にしたエネルギーフィールドに守られているはずの腕がへし折られていた。

 

『馬鹿な……ベジータ王、なんだ、その姿は? それに、私のセンサーでも正確に計測できないそのエネルギー量は、いったい?』

 驚愕のあまり立ち上がる事も忘れたウィローが、自身の片腕を破壊した相手を見上げる。

 

「儂にも分からん。だが……そうか。クククッ、こうなるとはな」

 ウィローの腕を殴り。エネルギーフィールドを貫いて破壊して尻餅をつかせたベジータ王は、その時になって自身の身に起きた変化に気が付いた。

 

 金色に変化した髪や髭に、同じ色のオーラ。高まった戦闘意欲に、無限に湧いてくる力……。

「まさか、息子より先に儂がスーパーサイヤ人になるとはな」

 そう、ベジータ王はスーパーサイヤ人へと至っていた。フリーザから解放された地獄での生活と、プライドを忘れていた自身への激しい怒りによって、息子のベジータ四世よりもずっと早く伝説へと至ったのだ。

 

『ス、スーパーサイヤ人だと!? 馬鹿な、それは貴様等サイヤ人の伝説上の存在ではなかったのか!?』

 大きく狼狽えるウィロー。彼の作戦に、スーパーサイヤ人の出現は想定されていなかったから無理もない。

『くっ! 伝説といっても、戦闘力が十倍から二十倍に上がった程度だろう! 不意さえつかれなければ、どうにでもなる!』

 だが、今更作戦を中止する事は出来ない。さらに言えば、ベジータ王に休戦と現世に脱出するための同盟を申し入れる事も、その高すぎるプライドが邪魔をして出来ない。

 

「フッ、二十倍程度か……どうやら、戦闘力の計測装置でも貴様はゲロの足元にも及ばんらしいな」

『な、なんだと!?』

「どういうことか、自分の身で確かめるがいい! 行くぞ!」

 

 その瞬間、ウィローのセンサーからベジータ王の姿が掻き消えた。

『ヌオオオオ!?』

 そして、激しい衝撃と共にウィローの巨体が宙を舞う。ベジータ王に足を掴まれて放り投げられたのだと気が付いたのは、地上からこちらに向かって気功波を放つベジータ王の姿を確認した後だった。

 

『み、右腕をパージ!』

 迫りくる気功波に対して、回避も迎撃も間に合わないと判断したウィローは、とっさに壊れた右腕を外して投げつける事で防ごうとした。

 その狙い通り気功波は右腕部と衝突して爆発を起こしたため、直撃は避けられた。

 

『くっ!』

 バランスが大きく変わった巨体を制御するためのプログラムを変更し、右腕に回していた分のエネルギーを残りの体を守るエネルギーフィールドに割り当てる。それを着地するまでの僅かな時間で行ったウィローは、確かに天才科学者と言える。

 

「今の儂と貴様の力の差は、もう理解できたか?」

『っ!?』

 左側に現れたベジータ王に、ウィローは反射的に残った左腕を叩きつけた。激しい衝撃波が大気を震わせる。

 

「どうした、それでフルパワーか?」

 だが、ベジータ王は自分の何倍もの質量があるはずのウィローの腕を、片手で受け止め微動だにしなかった。

『そ、そんな……馬鹿な……!』

 ウィローもサイヤ人の特性は知っている。復活したベジータ王の戦闘力が上がっていても、その程度ならまだ倒せると計算していた。

 

 しかし、今ベジータ王が行った事……自身の一撃を受け止めて平然とするには、十倍程度のパワーアップでは不可能だ。

 金色になったベジータ王の戦闘力は、十倍や二十倍ではきかない程パワーアップしている!

 

 ウィローが遅ればせながら気が付いたとおり、ベジータ王は仙豆で回復した事により戦闘力が16万4千から21万9千にアップした。そして、スーパーサイヤ人に変身した事で、総戦闘力は大猿化の十倍を圧倒的に上回る五十倍にまで高まった。

 

 今のベジータ王の戦闘力は約1095万。強化改造したウィローの390万の倍以上だ。

 

「なら、此方の番だ!」

 ベジータ王は受け止めていたウィローの左腕を、抱くように両腕を回し……そのまま締め潰した!

 

『っ!?』

「ふんっ!」

 そして、そのまま引き千切る。血の代わりに千切れた回線や切れたパイプから火花やオイルが溢れるが、それを投げ捨て、両腕を失ったウィローに向かってマシンガンのように気弾を乱射する。

 

『グワアアアアアア!?』

 いわゆるグミ撃ち気弾を、ウィローはエネルギーフィールドを操作して必死に防御した。巨体である彼から見れば小指の爪より小さな気弾だが、一発一発に恐ろしい破壊力が内包されている。

 

 それでも気弾の半分以上はエネルギーフィールドを貫通し、彼のサイボーグボディを傷つけた。

「自慢の頭脳だけは守り切ったようだな」

 ベジータ王が気弾を連射するのを止めた時、ウィローの脚部や尻尾は破壊されていたが、巨大な頭脳が収まっているカプセルは無傷のまま保たれていた。

 

『お、おのれ……!』

 しかし、それ以外はボロボロだ。サイボーグボディだけではなく、彼のプライドも。

「貴様には感謝しているぞ、ウィロー。お陰で儂は戦闘民族の王としてのプライドを取り戻し、スーパーサイヤ人になれたのだからな」

 逆に戦闘民族サイヤ人の王としてのプライドを取り戻したベジータ王は、ウィローを追い詰め彼にとっておきの手を切らせようとしていた。

 

「礼に、今降伏するなら閻魔大王に口添えしてやってもいいぞ。小物だから穏便に済ませてやってくれ、とな」

『……っ!!』

 その効果は劇的で、ウィローの意識に何かが切れる音を響かせることに成功した。

 

『ゆ、許さん! 許さんぞ、このサルがああああ!』

 生前、地球諸共ギネ達を抹殺しようとした時と同じく、激高のあまり理性を失ったウィローは、背面のブースターで空高く飛び上がった。そして盗んだ永久エネルギー炉を操作してオーバーロード……出力を限界以上に発揮させる。

 

『死ねぇえええ!』

 全エネルギーを集中させ、赤黒いエネルギー波……プラネットゲイザーを放った。

「いいだろう……。受けるがいい、これがスーパーベジータ王の全力だ! キングスブレイザー!」

 だが、ベジータ王が放った輝くような気功波がぶつかると、プラネットゲイザーはあっさりと押し返された。

 

『そ、そんな、ば、馬鹿なぁぁぁ!?』

 絶叫するウィローだったが、キングスブレイザーは彼を飲み込む寸前に僅かに向きを変え、彼の脳ではなく残っていたサイボーグボディの胴体に風穴を開けた。そこに収められていた永久エネルギー炉が破壊され、ウィローのボディの機能が停止する。

 

 断末魔のような悲鳴をあげながら、為す術もなく落下するウィロー。しかし、地面に叩きつけられる寸前で、ベジータ王が彼を掴んで受け止めた。

「フンッ、貴様を消滅させたところで、儂には何の得も無いからな」

 

『貴様……! 私が恩を感じて貴様に忠誠を誓うとでも思っているのか?』

 ウィローの口調には、感謝している様子は全くなかった。むしろ、怒りと憎しみに満ちている。彼は理解したのだ。キングスブレイザーの向きが頭部から胴体に変わったのも、今こうして受け止められているのと同じように彼が消滅しないようベジータ王が加減したからだと。

 

 自身が全力を出したというのに、敗北した上に手加減されて生き延びるなんて屈辱だとしか思えなかった。

「貴様の都合など知った事か。勘違いするなよ、儂は貴様を助けた訳じゃない。貴様に消滅されると、閻魔大王の怒りの矛先が儂にだけ向く事になるからな」

 そう言うベジータ王だが、すぐにニヤリと口の片端を吊り上げて言った。

 

「気に入らなければ、いつでもリベンジしてくるがいい。フリーザが地獄に落ちるまでの、いい暇つぶしになる」

 その時のベジータ王の目は、確かに戦闘民族サイヤ人のものだった。

 

 

 

 

 

 

 こうして悪魔の科学者ウィローが地獄で起こした反乱は鎮圧された。時間にすると、サイバイマンが暴れ出してから一時間も過ぎていなかったが、閻魔大王にとっては先代から地獄の支配者の座を引き継いで以来最も肝を冷やした事件だったらしい。

 

 当然、儂がこの事件の事を知ったのは全てが終わった後だ。

 

 また、短い間に鎮圧されたといってもそれまでに出た怪我人の数や、破壊された施設の修繕などは大変だったようで、閻魔大王から「仙豆と作業用の機械を供えてくれ」と要請された時は目を丸くした。ベジータ王がスーパーサイヤ人になったと聞いた時ほどではなかったが。

 

 まさかベジータ王が、息子のベジータはもちろん悟空より先にスーパーサイヤ人になるとは思わなかった。彼もスーパーサイヤ人に至る可能性はあると思っていたが、こんなに早いとは儂の想定外だった。

 これは今年の交流試合でデータを提供してもらわねばならんな。

 

 もちろん、儂だけではなく事件を知ったターレスやギネも仰天していた。ギネの方は、死んだ後もウィローが自分の体を……フリーザの肉体を手に入れるまでの間だけ利用するつもりだったとしても……諦めていなかった事もショックだったようだが。

 

 なお、反乱鎮圧後の顛末としては……全ての責任はウィローにあると閻魔大王は沙汰を下した。

 ウィローを雇っていたベジータ王や、ウィローが自身や狂暴戦士達を改造するのに使った永久エネルギー炉を供えて送った儂にも、いくらでも責任を追及できただろう。

 しかし、閻魔大王は地獄の支配者としての自身の立場から、それをしなかった。

 

 まずベジータ王は、閻魔大王から見れば彼もウィローも地獄の罪人の一人でしかない。それなのに上司としての管理責任をベジータ王に正式に問うと、罪人達の間での上下関係を正式に認めた事になる。なので、責任を問う事は出来ない。

 

 次に儂に関しては、供え物を供えただけだから咎める事はするべきではないと判断したようだ。生者が死者を悼んで供える物に制限を課すべきではないと、地獄の支配者として考えているのだろう。……儂は供えた物があの世に届くと知っているため、供え物をする趣旨が異なるが。

 

 もちろん、非公式な文句は言われた。ベジータ王の方は説教と、サイヤ人達が使っていた研究室の修繕は自分達でするようにと申し渡された。

 儂の方は、再発防止策の徹底じゃな。重力トレーニング室や再生ポッド等の永久エネルギー炉を、他の目的で使えないように安全装置をつけてから供えてほしいと言われた。

 

 そして反乱の首謀者のウィローだが、下された罰は天国にいる科学者に依頼して、サイボーグボディを劣化改造する事で戦闘力を抑える事にした。プラネットゲイザーを始めとしたエネルギー波を撃つ事は不可能になり、激しい挙動も難しくなった。

 今のウィローはサイバイマンどころか、ニオンにも軽く捻られる程度の力しかないそうだ。

 

 尚、ウィローに従ったエビフリャー達狂暴戦士や、改造されたサイバイオマンやサイバイマン達は若干刑期が伸びただけで済まされた。

 

 ここまでは罰について語ったが、反乱を鎮圧したベジータ王達には閻魔大王からそれなりの褒章が与えられた。責任の一端はあるが、それよりも事態の解決に尽力した事や鬼の避難を助けた事、そして何より残虐さで恐れられたサイヤ人達が、敵に止めを刺さなかった事を閻魔大王は評価したらしい。

 

 協力した宇宙海賊や元フリーザ軍やスラッグ一味の罪人と同じく、数十年から数百年の恩赦(それでも彼らの刑期からすれば誤差の範囲だが)、数日の刑罰の停止(戦いの余波で破壊された地獄の施設の修復期間が必要だったという事情もある)、そして地獄の一丁目で使用できるクーポン券が支給された。

 

 そして、これが最も大きい変化だろう。閻魔大王が罪人の反逆を抑える自警団の創設を決め、それにベジータ王率いるサイヤ人が参加する事を要請した。

「いいのか? 儂はいくつもの星を侵略した残虐非道なサイヤ人の王だぞ。それに地獄を守れなどと依頼して、儂等が裏切らないと思うのか?」

 

「思わん。が、他の罪人よりは格段にその可能性は低いだろう。お前達に依頼するのは、皮肉なものだとは思うが」

 

 以前ベジータ王が起こした反逆の頃から、閻魔大王は地獄にも独自の防衛力が必要だと考えていたらしい。

 今までは大界王星の戦士達に救援を頼んできたが、彼らに頼り切りというのは拙い。彼らは生前の功績が認められて、修行をしているのだ。閻魔大王としては彼らに尻ぬぐいを頼み続けるのは、彼ら自身が気にしていなくても心苦しい。

 

 それに、救援に来てもらうまで時間がかかる。前回の反逆ではベジータ王が現世に出られると知らなかったため地獄に留まり続けたから間に合った。しかし、次も間に合うとは限らない。

 もしウィローが作戦通り、この世との交流試合でベジータ王やバーダックチームが留守のタイミングで反逆を仕掛けてきていたら、閻魔大王は囚われ、この世とあの世の法則が滅茶苦茶になってしまったかもしれない。

 

 それを防ぐための戦力として、ベジータ王率いるサイヤ人達が今の地獄では最も信頼できる。強さだけならフリーザ軍やスラッグ一味の幹部だった罪人もかなりのものだが、彼らのトップが死んで地獄に落ちた後も閻魔大王側に着いてくれるか……生前の上司が反逆を企てた際に逆らって戦ってくれるか疑わしい。

 

 対して、サイヤ人達はトップであるベジータ王が既に地獄に落ちているし、ある程度の信頼関係と実績もある。

「だが、自警団を率いろと言っている訳ではない。あくまでも参加だ。リーダーは鬼から選ぶ。いいな?」

 どうやら、地球の刑務所で囚人にボランティアをやらせるのと似たような感覚で命じているようだ。

 

「良いだろう。フリーザが来るまでの退屈しのぎにはなるだろうからな。代わりに、トレーニングの時間は確保させてもらうぞ」

「それは構わん。自警団への参加は刑罰の一環とし、それ以外の刑罰の時間を半分にする。その時間を当てるといいだろう。……というか、お前にはフリーザより強くなってもらわないと儂も困る」

 

「それと、自警団を組織するなら戦力の維持と向上のために武闘大会を開くのはどうだ? 地球の天下一武道会に倣って、ルール有の競い合いをするのだ。名は……あの世だと大界王星の戦士達も含まれるから、地獄一武道会でどうだ?」

 

「地獄一武道会か……まあ、良いだろう。罪人達のストレス解消にも良いかもしれん」

 こうしてベジータ王は、地獄で閻魔大王にも意見を言えるほど確固たる地位を手に入れたのだった。

 




〇戦闘力推移

・ベジータ王:16万4千→21万9千 瀕死から仙豆にとって回復した際にパワーアップし、更にスーパーサイヤ人に至った。スーパーサイヤ人になると、戦闘力は1095万に跳ねあがる。
 スーパーサイヤ人化出来たのは地獄に落ちてから、特に地上と交流試合をするようになってからの生前と比べるとずっと穏やかな生活と、「勝つのは自分ではなく、ネイルや大界王星で修行している戦士達でいい」と考えていた自分への激しい怒りによるもの。


☆:阿井 上夫様からベジータ王のスーパーサイヤ人姿のイラストを頂きました! 



【挿絵表示】


凛々しく威厳たっぷりです!


・ウィロー:390万→10 巨大頭脳とサイボーグボディから、一般的な天才科学者の肉体に。軽く捻ったニオンのデコピン一発で消滅しかねないひ弱なボディに。

・狂暴戦士ズ:ウィローに再改造をさせて戻す(弄らせる)のは危険なのでそのまま。



〇サイヤ人達のベジータ王に対する忠誠心

 生前よりも地獄に落ちてからの方が数倍高い。



〇地獄の自警団

 リーダーは鬼が勤め、ベジータ王はあくまでもアドバイザーや顧問、そして戦闘要員相当。ただ、おそらく早々に実権を握られる。
 それは閻魔大王も予想しているが、それでベジータ王達が悪さをするようなら諦めて大界王星の戦士達に救援を求める予定。




熨斗目花様、酒井悠人様、ヨシユキ様、gsころりん様、ノーデンス様、クラスター・ジャドウ様、excite様、kubiwatuki様、Veno様、熨斗目花様、是非様、太陽のガリ茶様、phodra様、gsころりん様、みえる様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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