ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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74話 一回戦第一試合から第六試合 疑惑のランチ

 ギラン、チチ、孫悟飯、サタン、ターレス、ランチ、タイツ、サン、孫悟空、チャパ王、天津飯、アックマン、チャオズ、牛魔王、ラズリ、桃白白。以上の十六名が天下一武道会本戦への出場が決まった。

 

「くぅ~っ! いいかサタンっ、俺とお前の違いは、クジ運の差だけだって事を、忘れるんじゃねぇぞ!」

「ガハハハ! 勝負は時の運というだろう!」

「この場合は、『運も実力の内』の方が正しくないか?」

「っ!? じゃ、ジャガーに言葉を訂正された!? お、俺はもうダメだ……」

「どういう意味だ!?」

 

「ゲロよ、今度は頭の修行に力を入れ過ぎたようじゃな」

「いや、あっているのは三回に一回ほどなので、まだまだですな」

 天下一武道会の一日目は予選までなので、儂等はホテルへ帰る前に集まって話していた。

 

 なお、パンプットと桃白白はそれぞれ取材を受けている。それぞれの予選での勝敗についてもだが、パンプットは二期の制作も決まっている主演ドラマ、桃白白は主演映画第四弾に付いても注目されているようだ。

 

 パンプットの主演ドラマはスラム出身の少年(パンプット)が、荒れた生活を送る中、偶然ある武道家(チャパ王)が人助けをしている所を目にして、自身も武道家になりたいと志し、弟子入り。そして修行をして強くなりながら仲間達と共に数々の悪党を倒していくというアクションドラマだ。

 

 二期では、大金持ちの家に生まれ、天才科学者による科学的なトレーニングを積んで強くなった、主人公とは真逆の境遇のライバルが現れる。まあ、ぶっちゃけるとジャガーと儂なんだが。

 映像を加工する事で、普通のアクション俳優(戦闘力10未満)同士の格闘戦を、超人(戦闘力10以上)同士の戦いに見せる事は可能になったが……超人と常人の戦いを、超人同士の白熱した戦いのように加工するのは、費用と何より時間がかかる。そのため、主人公と戦うライバル役の俳優には、パンプットと本当に白熱した戦いを行う事が出来る実力が求められるのだ。

 

 桃白白の主演映画第四弾は、現代の悪の科学者フラッペが蘇らせた悪魔の科学者ウィローが、桃白白の肉体を狙って自らが作り出したバイオ生命体、狂暴戦士達を送り込んでくるというアクションアドベンチャー映画だ。

 序盤では街中で狂暴戦士に襲われた桃白白のアクションシーン、中編以降では仲間とともに永久氷壁の内部にある、迷宮と化したウィローの研究所に乗り込む桃白白達のアドベンチャー。そして後編でのウィローとの対決と、見どころの多い映画になる予定だ。

 

 ラストは激高したウィローが宇宙空間から地球ごと桃白白を倒すためにプラネットゲイザーを発射するが、桃白白と仲間達が力を合わせて打ち負かす、という熱い展開も用意されている。

 それに、まだマスコミには伏せているが、前作に登場したピッコロ大魔王(4号)も、「桃白白を倒すのも、この地球を支配するのもこの儂だ」と言って桃白白の救援に現れるサプライズも用意されている。

 

 ……だいたい『この世で一番強いヤツ』通りのストーリーじゃな。

 ウィローが映画の悪役として登場する事になったのは、実は儂がウィローの開発した合金を大量生産が可能なように改良し、ウィロー合金と命名して発表したのが原因だったりする。

 

 これで儂がウィローの研究を見た事が明らかになり、悪魔の科学者ウィローに関する注目が高まった。実際に何が起こったのかは、報告書にして地球国政府には提出してある。歴史改変者に関する部分は触れず、単に『ドラゴンボールを探して赴いたら、たまたまそこがウィローの研究所で、結果戦闘になって退治した』という事にしたが。

 

 その報告書は国家機密ではなく誰でも見る事が出来たのだが、映画関係者までそれを見てしまい、「是非映画にしましょう!」という事になった。

 しかし、『神龍の伝説』のように記録映像を編集した半ドキュメンタリー映画にすると、歴史改変者に関する儂等の話を編集しなければならなくなる。……それに、監督と脚本家の活躍の機会が減る。

 

 それで、実際に起こった事件を元にした映画として撮影する事になったのだった。

 まあ、その方がウィローも「人妻(ギネ)の肉体を欲するマッドサイエンティスト」でなくなるからいいだろう。やっている事は変わらないから、殊更悪く描いている訳ではないし。

 

 なお、狂暴戦士とウィロー役には、儂が作ったロボットを使う予定だ。人工知能は無く、遠隔から儂や3号が操縦して演技や戦闘を行う。

 後、やはり都合がつかない俳優や女優はウーロンが変化して出演している。コーチンは全編彼が演じた。

 

 そのコーチンの本物は生きているので、この映画の事を知ったら激怒するかもしれんが……まあ、それで彼が癇癪を起して何か事を起こせば、居所が判明するだろう。その際、何かしらの被害は出るだろうが、コーチンはピッコロ大魔王を利用した何かしらの計画を立てている事が推測される。

 刺激せず黙っていても、その計画によって何かしらの被害は出る。なら、暴発させても同じだ。

 

 もちろん、被害が最小限になるよう努力するし、被害の弁済にはドラゴンボールの使用を含めて考えるが。

 

 それはともかく、話を天下一武道会と選手たちに戻そう。

 

「は~、予選落ちか……昨日は『グルメス公国でも活躍した、武天老師様の四番弟子!』って、テレビでも宣伝されてたのにな」

「気を落とさないでください、ヤムチャ様! 三年後がありますよ!」

「そうですよ、ヤムチャさん。気を落とす事無いですよ」

 

 予選落ちして肩を落とすヤムチャを慰めるプーアルと、彼と同じく予選落ちしたのに何処か嬉しそうなクリリン。しかし、ヤムチャはクリリンにじとっとした視線を向ける。

「クリリン、お前は良いよな。ラズリちゃんとデートの約束をして」

「で、デートじゃないですよ! ただ、買い物の荷物持ちに付いて行くって約束しただけですよ!」

 

 突然ビキニ姿になったラズリに驚き、硬直した間に場外へ投げ飛ばされて負けたヤムチャ。その後、ラズリが下着姿になったと勘違いした儂とクリリンはラズリに駆け寄ったのだが……どうやら、クリリンはその時ラズリに新しく服を買いに行く時の荷物持ちを仰せつかったようだ。

 

 なお、財布は儂持ちである。

 

「ヤムチャよ、クリリンをそう責めるでない。まずはおのれの未熟を恥じねばならんぞ。よくやった」

「ああ、結局水着だったけどあの瞬間は『やった~!』って思ったもんな」

「それに比べて桃白白は……我が弟ながら気の利かない奴だ」

 そう口々にヤムチャを褒める亀仙人とウーロン、鶴仙人。

 

「そうだ、どうせならブルマも見せてくれよ、水着姿!」

「馬鹿ね、もう着替えてるわよ。試合はとっくに終わったんだから」

「ええ~っ! クッソ~、当たったのがアックマンじゃなくて悟飯の爺さんだったらな~」

「貴様等、いい加減にしないとアクマイト光線を撃つぞ」

 

 服の下には水着を着ていたが、色仕掛けが効きそうにない相手だったので結局脱がなかったブルマと、正義の悪魔を自称するアックマンは思わず半眼になってウーロン達を眺める。

 

「それはともかく……だいたい六年ぶりに姿を見たが、あのランファンという女武術家は、大きく成長したようじゃな」

 二人の視線に耐えかねたのか、鶴仙人がそう話題をずらす。しかし、確かにランファンは六年前と比べて圧倒的に強くなっていたので、ブルマとアックマンも含めて「確かに」と頷いた。

 

 ランファンは桃白白に結局負けているが、それだってある程度拳を交えてからの敗北だ。六年前の彼女なら、桃白白の拳が起こす風だけで吹き飛んでいただろう。

 そして、気を感じる事が出来る者はランファンの気がかなり大きくなっていた事にも気が付いている。

 

「また歴史改変者に強化されたんだべか?」

「いや、もしかしたらコーチンのような科学者に何かされたのかもしれんぞ」

 と、ランファンが儂に改造された人造人間である事を知らない牛魔王やアックマンが口々に推測を口にする。

 

「確かに大きく成長していた。おっぱいが!」

 しかし、儂が答える前に亀仙人が拳を握ってそう力説すると、高まっていた緊張感は霧散し、白けた空気が場を満たした。

 ……もしかすると、わざと話題を逸らそうとしてくれたのかもしれん。

 

「まあ、それはともかく……キリは計測されませんでしたし、コーチンが彼女に何か仕込んだにしては弱すぎる。やはり、儂等の知らないうちに修行して強くなったのだろう」

「そうだね。牛魔王と戦ってたジンって奴とかもいるんだし」

 儂の言葉を、ギネがそう言って支持する。実際、ジン(シルバー大佐)達は久しぶりに見た顔見知り以外の強者だったので、強く印象に残ったようだ。

 

「それと、六年前の画像と比較し測定した結果、亀仙人の言う通りランファンのバストは確かに大きくなっていた」

「それはどうでもいい」

 本人の希望で儂が豊胸手術を行ったから、確実な情報じゃ。しかし、ギネからはあっさり切り捨てられてしまった。

 

 ちなみに、そのランファンやシルバー大佐達は全員予選で敗退したものの、儂の関係者と戦った事で「情報収集として十分な成果を上げた」とレッド総帥は作戦成功とした。そして、全員レッドリボン軍に帰還し、ドラゴンボール捜索の任務に当たるようにと命じた。

 

 予選敗退者も、トーナメントの決勝戦まで勝ち進んだ選手や、バトルロイヤルで観客の投票で選ばれた選手は、敗者最強決定戦というバトルロイヤル形式の試合があるのだが、それに出場しなくていいと考えたようだ。

 まあ、レッド総帥達にとってはサイボーグ2号(ランチ)が無自覚なスパイ(という設定)で潜り込んでいる以上、シルバー大佐達に武道家のまねごとをさせておく必要はないという事なのだろう。

 

 敗者最強決定戦に勝ち残っても本戦に復帰できるわけではなく、百万ゼニーの賞金とトロフィーが手に入るだけなので、確かにレッドリボン軍にとっては旨味の無い話だ。

 

 

 

 

 

 

 翌日、まず改めて本戦出場者の紹介と組み合わせ抽選が行われた。

 

『第一試合、チチ選手対アックマン選手! 第二試合、ランチ選手対ターレス選手! 第三試合、タイツ選手対ギラン選手、第四試合、桃白白選手対チャオズ選手! 第五試合、サン選手対天津飯選手、第六試合、牛魔王選手対サタン選手、第七試合、チャパ王選手対孫悟飯選手、第八試合、ラズリ選手対孫悟空選手!

 以上の組み合わせに決定しました!』

 

 そして始まった一回戦第一試合。

『牛魔王選手とサン選手の長女、去年双子の妹と弟が生まれお姉さんになったチチ選手! 尻尾も生えて生まれ変わった彼女の実力はいかに!?

 そして予選ではチチ選手と同じく尻尾の生えたブルマ選手を倒したアックマン選手! 新たな尻尾と、ベテランの尻尾! どちらが勝つのでしょうか!?』

 

「尻尾の戦いのような物言いは止めろ!」

「そうだべ! オラだって武天老師様の所で修行しただ! 鍛えたのは尻尾だけでねぇ!」

 二人はアナウンサーを怒鳴りつけると、改めて向かい合った。

 

「クックック、最近俺の生まれ故郷の地獄で色々あってな。俺もサイヤ人に負けてはいられないのだ!」

「オラ、今地獄にいるサイヤ人の人達とはあんまり関係ねぇんだけども……ブルマさんの仇はとるべ!」

 

 『試合開始!』というアナウンサーの合図に合わせて、チチは勇ましくアックマンに突っ込む……ようなことはせず、逆に彼から距離をとった。

 チチの戦闘力は約560だが、アックマンの戦闘力は約5360。十倍近い差があると、多少の駆け引き程度では勝敗は覆らない。アックマンに迂闊に近づけば、一瞬で場外まで叩き出されてしまう。

 

「実力の差は分かっているようだな。だが、その程度の距離はないも同然だぞ!」

 しかし、チチが後ろに下がるより、アックマンが間合いを詰める方が圧倒的に早い。彼は一瞬で、頭の上で両掌を合わせているチチの眼前にまで接近した。

 

「って、んん!?」

「アイスラッガーっ!」

 はっとして何かに気が付いた様子のアックマンに構わず、チチは両手を振り下ろし、その間に気を収束させて作った刃を投じた。

 

「おわっ!?」

 慌てて横に転がって避けるアックマン。チチが放ったアイスラッガーは、エネルギーシールドに衝突して弾けて消えた。

 

「き、貴様っ! なんて危険な技――」

「かめはめ波ーっ!」

 猛然と抗議するアックマンに向かって、チチはかめはめ波を放った。なんと彼女は、アックマンがアイスラッガーは避ける事を見越していたのだ。

 

「ふふん。さっきのアイスラッガーは、見かけだけのフェイントだべ。本当に当たっても、おめぇぐらい強ければ薄皮一枚切れるかどうかだべ」

 どうやら、最初からアイスラッガーには気を余り込めなかったらしい。その分、本命のかめはめ波に全力を注いだようだ。

 

「くっ、まんまと一杯食わされた。しかし、恐ろしい奴だな。そんな事では、地獄の鬼より恐ろしい鬼嫁と呼ばれるぞ!」

 しかし、煙から姿を現したアックマンは、多少煤で汚れているだけで大きなダメージを受けている様子はなかった。不意をつく事には成功したが、やはりダメージらしいダメージを与える事は出来なかったようだ。

 

 なお、将来彼女の亭主になる婚約者の悟空は、「チチもやるもんだな~」とむしろ彼女を応援している。危機感を覚えた様子は全くない。

 

「そっだら事ねぇ! オラがなるのは可愛い奥さんだ! 太陽拳!」

 チチもアックマンの言葉に動揺する事無く怒鳴り返すと、今度は太陽拳を放つ。

 

「甘いわっ!」

 しかし、アックマンは背中の翼で視線を遮る。

「どどん波っ!」

 だが、それがチチの狙いだった。なんと彼女は尻尾の先端からどどん波を放ったのだ。

 

「ぐおっ!? またしても引っかかってしまったか。だが……アクマイトウィング!」

 しかし、アックマンもやられっぱなしではない。彼は開いた翼から気を放射し、全周囲に向かって爆発させたのだ。原作ピッコロの爆発波に似ている技で、広範囲を攻撃する代わりに威力は低いように思える。

 

「あんれぇ~っ!?」

 しかし、圧倒的な実力差があるチチにはそれで丁度良かった。場外まで吹っ飛ばされると、そのまま倒れて目を回している。

 

『チチ選手場外! 一回戦第一試合、勝者はアックマン選手です!』

 アナウンサーの声に歓声が上がり、アックマンが勝鬨をあげる。

「容赦のない技に、太陽拳からの不意を突いてのどどん波……鶴の、チチを鍛えたのって儂じゃよな?」

「かめはめ波も使っとっただろうが。それに流派を合流させたのだから、別にいいではないか」

 それを聞きながら、思わずと言った様子で尋ねる亀仙人に、鶴仙人は呆れたようにそう言って返していた。

 

 なお、彼女に尻尾からどどん波を撃つことを提案したのはやはりブルマだった。どどん波を教えたのも彼女である。

 

 

 

 

 

 

『では続いて一回戦第二試合! チチ選手に続く武天老師様の女性の弟子にして、現在進行形で鬼のような角が特徴的なランチ選手の入場です!』

「おい、アナウンサーっ! 喧嘩売ってんなら買ってやるぞ!」

 

『いえ、褒めてます! いや~っ、最近は尻尾や角の生えた個性的な美人が増えたなー』

「チッ、調子のいい奴だぜ」

 そうアナウンサーと掛け合いをしながら現れたランチは、予選とは違って鶴亀仙流の道着ではなく普段の彼女と同じ格好をしている。肩と腹、そして太腿が露出したタンクトップとホットパンツの組み合わせに、男性の観客の注目が向く。

 

『そして、アックマン選手と同じく三大会連続本戦出場、映画ではカンフーキッドでおなじみのターレス選手です!』

「やれやれ、今年で十五になるのにまだ『キッド』かよ。自分の生まれが呪わしいぜ」

 そう小声でつぶやくターレスだが、カメラや観客の前に出ると笑顔で手を振る。

 

「悟空そっくりだが、やっぱり中身は全く違うな」

「まあな。会長の令息をやってると色々あるのさ。なんなら、お坊ちゃんのまま相手してやろうか?」

「ケッ、よせやい、気色悪りぃ。ガキはガキらしくかかってきな!」

 

 そう言うランチだが、実は何年か死んでいたので肉体年齢はターレスより多少上程度で、彼をガキ呼ばわりできる程年上という訳ではない。むしろ、人造人間に改造した結果年を取らなくなったので、三年もたてば彼女の方がターレスに年下扱いされても不思議はないのだが……本人は気が付いていないので、黙っておこう。

 

『一回戦第二試合……開始!』

 アナウンサーの声を合図に、まずターレスが動いた。

「天津飯とほぼ互角だったよな? どんなもんか試させてもらうぜ!」

「チッ!」

 一瞬でランチとの間合いを詰めたターレスは、そのまま彼女に肉弾戦を仕掛ける。

 

 激しい拳と蹴りの応酬に、観客は盛り上がるが……ターレスはすぐに奇妙な事に気が付いた。

「お前、手加減してるな?」

「ああっ? これがっ、余裕があるように見えるのか!?」

 ターレスは天津飯ならギリギリ反応できるだろう、という程度の速さでランチに向かって攻撃している。

 

 もし天津飯だったら、必死にターレスの拳や蹴りを捌いて、なんとか大きな一撃を受けずにしばらく持ちこたえるだろう。

 ランチも表面上はそうだが……。

 

「ああ、余裕があるように見えるぜ。お前の顔には、本物の焦りや緊張感が無い」

 ランチの顔には戦意や怒りは浮かんでいるが、ターレスが看破したように本当に追い詰められた対戦相手が浮かべる感情が無かった。

 

 歴戦の武道家である鶴仙人や亀仙人、桃白白だって格上との試合で拳が頬を掠めれば僅かながら反応がある。しかし、ランチの場合はその反応が浅いのだ。

 まるで、本当は受けても痛くもかゆくもないというかのように、危機感が薄い。

 

「そ、そんな事はっ」

「まあいい、後で亀仙人の爺さんから話を聞けば分かるからな」

 焦るランチだったが、ターレスはすぐにそう囁くと彼女を追求するのを止めてしまった。儂や亀仙人が事情を知っている事まで読んだようだ。

 

 僅かな間戦った自分が気づいたのだから、師匠として一年近く修行を見て来た亀仙人が気付いていない道理もない。

「……勘のいいガキだぜ」

「お褒めに預かり光栄だ。それで、手加減を止めるつもりはあるのか?」

「悪いが仕事中だ」

 

「そうか……ならこれで終わりだ!」

 そして後ろに飛びのきながら、フォトンウェイブを放った。

「くっ!」

 不意打ち気味の気功波にランチは対応できず、そのまま場外へ吹き飛ばされてしまった。

 

 ランチが本来の実力を出していれば、結果は逆になったはずだが……まあ、我慢してもらおう。

 ちなみに、ターレスとランチの会話は二人の拳や蹴りがぶつかり合う激しい戦闘音で、撮影用のマイクでも拾えていない。正確には、拾えないように儂が遠隔操作した。

 

『ターレスにも気づかれたようじゃな。どうする?』

『できれば後一か月ぐらいは誤魔化したいところですな。ターレスには、儂から一か月待ってくれと頼んでおきましょう』

『お前さん、ある意味正直じゃな』

 

 観客席では、儂と亀仙人がテレパシーでそんな会話をしていた。

 

 続いての第三試合。

『大学生活に芸能活動、そして武道! マルチな才能を見せ、ついに尻尾も生えた世界一強い社長令嬢、タイツ選手の入場です!』

「どうも~」

 

『対してこちらも悪役俳優として定評のある、三大会連続本戦出場のギラン選手! 今回も一回戦で敗退してしまうのでしょうか!?』

「うるせぇっ! 俺様が噛ませ犬なのは銀幕の中だけだってところを見せてやるぜ!」

 

 そう威勢よく叫んだギランは、試合が始まると確かに噛ませ犬とは言えない実力を示した。

 人間型地球人にはない尻尾や翼を組み込んだ独自の格闘術は、カリン塔での修行で無駄が省かれ技として洗練されていた。

 

 さらに、自力で気功波を放てるようになった彼は、口から放つスーパーギラン砲以外にも、大きく広げた翼から複数の気弾を一度に放つギランミサイルと言う技を開発し、ヤムチャやサタンが使うのを見て覚えたらしい太陽拳も習得していた。

 

「ぐわ~っ!?」

 しかし、戦闘力240のギランが、5600のタイツに勝てるはずはなかったのだった。試合で当たっていたのがラズリやサタンだったら、どちらが勝ってもおかしくない白熱した試合になっただろう。

 

 続く第四試合。

『映画も試合も絶好調! 我らがヒーロー、桃白白選手の登場です! そして、桃白白選手と同じ師の教えを受けた弟弟子、チャオズ選手も続いて入場です!』

 

「ふっ、全力でかかってくると良い。超能力も何でもありだ。私も、普段の組手よりはちょぴっとだけ本気を出してやろう」

「はいっ!」

 

 お互いに向かい合う兄弟子と弟弟子。しかし、やはり桃白白は余裕があるのに対して、チャオズは普段から白い顔に緊張が浮かんでいるのが分かる。

 原作で二人がぶつかるのは、六年後の天下一武道会の予選で、その時には桃白白はメカ桃白白になっていた。

 もちろん、この歴史の二人は原作と何もかも異なる。実力の差も、圧倒的だ。

 

 チャオズが弱いわけではない。225という数字は、原作の若返ったピッコロ大魔王に迫る数値だ。しかし、桃白白の戦闘力は約7500。勝負は数字だけでは測れないものだが、三十倍以上の差はいかんともしがたい。

 前大会でブルマが戦士タイプのナメック星人の若者、ムデンに対して行ったような、大会ルールを利用した奇策なら目もあるが、桃白白もそれは分かっている。そうそう隙は見せないだろう。

 

『試合開始!』

「どどん波!」

「ふむ、まずは遠距離戦か?」

 試合開始と同時に、チャオズは原作の天下一武道会よりもずっと広い舞台を活かして、瞬間移動を繰り返して徐々に空に逃げながら、どどん波を連射する。

 

 圧倒的なスピードの差を瞬間移動で補うのは良いが、どどん波を放つ理由が分からず桃白白は眉間に皴を寄せた。

 チャオズが連射するどどん波が桃白白に当たったとしても、ダメージは全くない。ちょっと服が埃を被るだけだ。また、目隠しや弾幕としての意味も殆ど果たせない。

 

「自棄になっている訳でもあるまい。……まさか、挑発のつもりか?」

 ただ瞬間移動で距離をとるだけでは、桃白白が高速で間合いを詰めてくるかもしれない。だが、どどん波を放ってみせれば、桃白白はその場からあまり動かずチャオズに気功波を撃ち返してくるかもしれない。

 チャオズはそう考えたのだろうと桃白白は見当をつけた。

 

「いいだろう。乗ってやる」

 その上で、桃白白はチャオズの挑発に乗ってやることにした。その上で、何か策があるのなら見せてみろと、弟弟子を試そうとしていた。

 

「そこだ! どどん波っ!」

 チャオズが連射しているものより、一割ほど気を込めたどどん波を放つ。それは瞬間移動で現れたチャオズを狙い違わず捉えた。

 

「うわ~っ!?」

 そして、大爆発を起こした。爆音が轟き、煙がチャオズの姿を覆い……パラパラと塵のようなものが舞台に落ちる。

 

「なっ……き、気を込め過ぎたか?」

『桃白白選手のどどん波がチャオズ選手に命中! さあ、チャオズ選手はどうなる……あれ?』

「チャ、チャオズの気が、消えた?」

「ばっ、馬鹿な……!」

 

 煙の中から無事なチャオズが現れる事も、逆に気絶したチャオズが落ちて来る事もなく、戸惑う桃白白とアナウンサー。

 選手控室では天津飯が膝から崩れ落ちかけてランチに肩を支えられ、観客席では鶴仙人がユーリンを抱えたまま愕然としている。儂も内心では、ナメック星へドラゴンボールを使いに行こうと思いかけていた。

 

 だが、「まさか」と動揺するあまり、隙だらけになっている桃白白の背後に、チャオズが瞬間移動で現れた。

 チャオズは素早く桃白白の肩に触れ、ハッとした彼が振り返る前に再び瞬間移動で姿を消した。

「ふんっ!」

「あっ」

 そして、次に現れた時は舞台の外だったが……現れたと同時にチャオズは桃白白に振りほどかれ、逆に地面にたたきつけられてしまった。

 

「お、惜しかった」

 そしてそのまま失神してしまった。

 

 後でチャオズ本人から聞いたのだが、彼はどどん波を撃ちながら高く飛ぶことで、桃白白に絶対背中を見られないようにした。そして、こっそり四身の拳で分身を一体背中に創り出し、瞬間移動で分身と本体を入れ替えた。

 つまり、あの時どどん波を撃っていたのは途中から分身になっていて、本物のチャオズは分身の背中に手足を縮めてくっついていたのだ。

 

 そして、桃白白が放ったどどん波が分身に命中した瞬間……なんと分身を自爆させた。本体はその自爆とどどん波の爆発の煙の中で姿を隠し、気を消して桃白白が隙を見せるのを待ち構える。そして、機を見計らってやはり瞬間移動で桃白白の背後に移動し、彼を場外に落とそうとした。

 と言う事らしい。

 

 見事な死んだふり作戦だ。実戦でも敵の不意を衝くのに使えるかもしれん。

 

「ふう……二度もこの私に冷や汗を流させるとは、見事だ。まったく、肝が冷えて勝った気がしない」

 アナウンサーが自身の勝利を告げるのを聞いてから、桃白白は気絶したまま地面にめり込んでいるチャオズを掘り起こし、肩に抱いたまま選手控室に戻るのだった。

 

 そして一回戦も後半の第五試合。

『前回準優勝、去年双子を出産し三児の母になったとは思えない美貌とスタイルの持ち主! 羅刹女ことサン選手!』

 

「そ、そんなに褒めないでほしいだよ~」

 映画に出演した事でファンの間に定着した呼び名でアナウンサーに褒められ、照れるサン。

 元々美人であるのに加え、天才科学者である儂が改造し、儂が懐妊後から出産、その後のケアまで関わったサンのスタイルが崩れる訳がないのだが、改めて言われると儂も誇らしい。

 

『そして、此方も三大会連続一回戦出場記録を持つ天津飯選手! 今大会こそ二回戦への進出なるか!?』

「今大会こそは、そう思っていたのですが……」

 入場した天津飯の姿からは、先の試合でチャオズが死んだと誤解した時の衝撃が残っているようには見えない。しかし、彼はアナウンサーの言葉に苦笑いを浮かべながらサンを見つめる。

 

 兄貴分であるターレスや偉大な兄弟子である桃白白が対戦相手でも、天津飯は勝つつもりで挑んだだろう。しかし、流石にサンには勝てる気がしないようだ。

 

 サンの戦闘力は、8万7千。対して天津飯の戦闘力は約1800。その差はなんと約五十倍。先の試合の桃白白とチャオズよりも、その差は大きいのだ。

 数値ではなく気の大きさで測っても、天津飯にとってサンに挑むのは、ネズミがゾウに戦いを挑むような感覚だろう。

 

『試合開始!』

「参ります!」

「思いっきり来たらええだよ」

 しかし、前々回、前回と一回戦で格上と当たり続けた天津飯は、臆することなくサンに挑みかかった。

 

「太陽拳! スピリットブースト!」

 まず天津飯はサンに向かって太陽拳を放ち、その直後に気を倍増させるスピリットブーストを発動。どうやら、彼はチャパ王とヤードラット星で行った修行で、スピリットパワーについて学び、技を習得したようだ。

 

「はーっ!」

 そして、流れるような動作で額の第三の目から怪光線を発射する。太陽拳の閃光でサンの視界を潰している間に、全力の攻撃を叩き込む。それが天津飯の作戦だったようだ。

 その作戦は成功し、怪光線はサンに命中した。

 

「四妖拳! うおおおおおっ!」

 更に、腕を四本に増やした天津飯が駆け出す。

「いい思い切りだべ! でもまだまだだ!」

 同時に、サンも目を閉じたまま駆け出す。その様子からは、怪光線が当たった事によるダメージは全く見られない。

 

「八手拳!」

 天津飯はチャパ王から学んだのか、それとも盗んだのか、なんと八手拳……この場合は十六手拳を繰り出す。観客は拳の大激流にしか見えない彼の攻勢に、歓声をあげるのも忘れて見入っていた。

 

 しかし、サンは両腕で天津飯の拳を受けるが効いた様子はない。スピリットブーストで天津飯の戦闘力が倍増していても、差が約五十倍から約二十五倍になった程度。鼠が倍の大きさになっても、象には敵わない。彼女は気で天津飯の位置を把握するのを優先し、ほぼ効かない彼の拳のラッシュをあえて受ける事を選んだのだ。

 

「でやーっ!」

「がっ!」

 そして、サンの膝蹴りが天津飯の腹に入る。堪らず目を剥き、動きが止まる彼だったが――

「がぁぁぁ!」

 そのままサンに向かって口から強力な気功波を放った。なんと、天津飯はナメック星人の魔口砲まで習得していたのだ。

 

「くっ!?」

 至近距離から高威力で貫通力もある気功波を受けたサンは、流石に無傷とは言えなかった。しかし、すぐに天津飯の頬に拳を叩き込み、意識を刈り取る。

 

「ふぅ、おどれぇた。ちょっと手がヒリヒリするだよ」

 だが、サンが受けたダメージはかすり傷同然だった。原作のサイヤ人襲来編でナッパに放った気功砲が効かなかった事を比べれば、かすり傷でも与えられただけでも大金星だが……自分の目で見ていたらショックは受けただろう。

 

『テンカウントが過ぎても立ち上がれなかったので、サン選手の勝利です! 敗北した天津飯選手も、確かな実力を我々に魅せてくれました! 両者を拍手で見送りましょう!』

 アナウンサーの言う通り、天津飯は確実に成長している。彼だけではなく、チチやチャオズもだ。観客も勝者と敗者を分けず、温かい拍手で気絶したままの天津飯を肩に担いで運ぶサンを見送ったのだった。

 

 そして、次の試合も若い戦士が出場する。

『続いて一回戦第六試合! 天下一武道会優勝経験者にして、サン選手のご亭主! 牛魔王選手!』

 身長約四メートル、歴代の天下一武道会出場選手の中でも巨躯(能力で巨大化した4号やタイツは除く)を誇る牛魔王の登場に、観客が沸き立つ。

 

『そして、武天老師様の弟子の一人! 新進気鋭の少年武道家サタン選手! なんと、またまた兄弟子対弟弟子の対戦です!』

 一方、入場したサタンはかなり緊張した様子だ。牛魔王の迫力に気圧されているのだろう。兄弟弟子と言っても、彼と牛魔王が亀仙人の下で修行した時期は大きく異なっている。そのため、牛魔王本人と会った事はまだ数えるほどしかない。

 

 原作のサタンはこのように、試合で強い相手と戦う時は、運良く相手が体調不良を起こしたり、急用が出来たりして不戦勝になっていたらしいが、この歴史ではそうはならなかったようだ。

 

「いつもより実戦に近い組手だと思って、思いっきりやると良いべ。でぇじょぶだ、魔神城の時と違って、おめぇ達が負けても地球が滅びる訳でねぇ」

「は、はいっ!」

 しかし、牛魔王に言われて魔神城での激戦を思い出したのか、深呼吸を一度して肩から余計な力を抜いた。地球の存亡をかけた実戦で、サタンは肝をかなり鍛えたようだ。

 

『一回戦第六試合、開始!』

「ダイナマイトアタック!」

 アナウンサーの合図が終わった途端、サタンは得意のダイナマイトアタックを慣行。牛魔王に肉薄する。

 

「思い切りのいい蹴りだべ」

 しかし戦闘力7000の牛魔王に約280のサタンの蹴りでは、いくら思い切りが良くても通じない。

「はぁぁぁぁ!」

 だが、サタンはそれに構わず牛魔王の足元に潜り込むようにして密着し、攻撃を続ける。

 

「むっ、こ、これはちょっと困ったべ」

 牛魔王の巨体は武器にもなるが、こうした場合は弱点になる。しかし、牛魔王はすぐに打開策を思いついた。

 今の彼は飛べるのだ。

 

「ふんっ!」

 舞空術で空に飛び上がり、足元のサタンから距離をとろうとする牛魔王。サタンは彼に追いすがる事はせず、両手を腰だめに構えた。

 

「かめはめ……波ぁーっ!」

 サタンは牛魔王が距離をとるために下がるのに合わせてかめはめ波を放つことで、攻撃を直撃させようと狙ったようだ。その作戦は成功した。

 

「今度はこっちの番だべ!」

 しかし、牛魔王はサタンのかめはめ波を難なく耐えきると、彼の足元に向かって気弾を放った。

「ぐ、ぐわ~っ!?」

 気弾は狙い違わずサタンの足元に着弾し、巻き起こった爆発でサタンを吹き場外まで吹き飛ばしてしまった。

 

『場外! 牛魔王選手の勝利です! 新進気鋭の少年武道家、サタン選手も健闘しましたが、兄弟子の壁はやはり高かった!』

 

 こうして一回戦も残り二試合となったのだった。

 




〇アクマイトウィング

 翼から発する気功波による全周囲攻撃。原作ピッコロの爆発波相当の技。



〇ギランミサイル

 翼から無数の小気弾を放つ技。一発一発の威力は小さく、必殺技というより相手の動きを阻害したり、相手が放った気弾を打ち落としたりするための技。

〇チャオズの自爆

 この作品では、四身の拳で作った分身にさせる事で、カミカゼゴーストアタックっぽい技になりました。



 ヨシユキ様、佐藤東沙様、変わり者様、-SIN-様、酷糖様、gsころりん様、アマラ深界在住様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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