ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

75 / 143
75話 一回戦第七試合から二回戦第四試合、姿を見せない歴史改変者

『さあ、次の一回戦第七試合も兄弟弟子対決です! まずは、天下一武道大会優勝経験者にして、亀仙人こと武天老師様の三番弟子、チャパ王選手!』

「この大会のために編み出した奥の手を、早くも使う時が来たようですな」

 

『続いて武天老師様の一番弟子、拳法の達人、孫悟飯選手!』

「やれやれ、一回戦から油断できない相手とぶつかったものじゃわい」

 そう言う孫悟飯とチャパ王の戦闘力は、それぞれ7500と4600。これまでの兄弟弟子対決と比べて、その差は圧倒的に小さい。

 

 それでも正面から普通にぶつかり合えば、高い確率で悟飯が勝利するだろう。しかし、チャパ王は予選で見せたようにヤードラット星での修行で瞬間移動を習得している。地力の差で油断すれば、足をすくわれてしまうだろう。

 

『一回戦第七試合、開始!』

「参りますぞ! 度重なる敗北を糧に生み出した我が奥義を、とくとご覧あれ!」

 試合開始と同時に、舞うような独特な動きを見せるチャパ王。悟飯はそれを目で見ると同時に、チャパ王の気の位置を把握しながら間合いを詰める。

 

(今のところ、以前の千人拳と変わらないようだが……こちらから仕掛けるか!)

「ジャン拳……チョキ!」

 二本の指を伸ばしてはなった目つぶしが、チャパ王を捉えた! かに見えたが、チャパ王の顔は掻き消え、悟飯の指は空を切った。

 

「はぁーっ!」

「な、なんと!?」

 そして、本物のチャパ王が繰り出す攻撃を何とか左腕で受け止め、防御する悟飯。

 

(今のは残像拳か? しかし、間違いなく気はあった。ええい、チャパ王の技の正体を確かめるためにも、もう一度仕掛けるしかない!)

「ジャン拳、グー!」

 そして、今度は鋭い拳の一撃をチャパ王に見舞った。その一撃はチャパ王の胴体に触れ……悟飯が集中していなければ気が付かなかっただろう程、微かな手応えを残して掻き消える。

 

「ぜやーっ!」

 そして、本物のチャパ王がカウンターを狙って悟飯の胴体に膝蹴りを見舞う。腹筋を固めて膝蹴りを受けた悟飯は、後ろに飛んで距離をとる。

 

「ぐっ……だが、分かったぞ、チャパ王よ。お前の奥義の正体が! 四身の拳の分身と残像拳、そして瞬間移動を組み合わせた幻のような動き……相手の攻撃を僅かな気しか持たない分身で惑わせ、その隙を狙う技じゃな!」

「見事。流石は我が兄弟子。二度の攻防で我が奥義、夢限拳を見破るとは」

 

 チャパ王の奥義、夢限拳は残像のような分身を発生させながら動き、相手の攻撃を分身に引きつけ本体は回避するという四身の拳と残像拳と瞬間移動、そして八手拳や千人拳の複雑なステップを高度に組み合わせた技だ。

 数値にして1にも満たない気しか持たない分身は幻のように存在が微かで、本体と重なり合って発生するため質量のある残像として機能する。

 

 さらに、本体と重なり合っているため気の感知だけで見分けるのは難しい。それどころか、気の感知だけに頼ると本体の一部と誤認して攻撃してしまう。

 この夢限拳は、目で見るだけでなく気を感知して相手の位置を認識する達人程引っかかってしまう技だった。

 

「むう、何ともやり難い技じゃな。しかし、この奥義はお前にとっても大きな負担がかかるはず」

 分身一体一体に分ける気はほんのわずかとはいえ、四身の拳は高度な技だ。分身を創り出すこと自体に、高い集中力を必要とする。

 

「ふっ、その程度の事は百も承知。一年前からこの日のために技を磨き続けてきたのは、伊達ではないのだ」

 しかし、チャパ王は悟飯が指摘した欠点を理解し、克服するために修行を重ねていた。

「なるほど。ならば、此方の弱点を突かせてもらうとするかの。はぁ!」

 すると、悟飯は両手から連続で気弾を放った。彼が口にしなかった夢限拳の弱点は、接近戦でなければ真価を発揮できない事。そして、技を発動している間は気功波を放てない事だ。

 

 四身の拳の応用を常に連続で使用しているのだ。気を練って気弾を放つことはできないだろうと踏んだが、その通りだったのか、チャパ王は悟飯が放った気弾を回避するだけで気弾や気功波を撃ち返してこようとはしない。

 しかし、チャパ王はこんな時のために瞬間移動を習得していた。

 

「はあああっ!」

「甘いっ!」

 気弾を連打し続ける孫悟飯の視界から、チャパ王の姿が掻き消え、彼の背後に現れる。兄弟子を背後から急襲しようとするチャパ王だったが――。

 

「がっ!?」

 その腹に悟飯の後ろ蹴りが決まった。

「甘いのはおぬしの方じゃ。夢限拳、破れたり」

 チャパ王の夢限拳は、四身の拳以外にも彼の複雑なステップが必要な技。だというのに、瞬間移動した直後はステップが止まってしまう。そのため、悟飯は惑わされずにチャパ王を攻撃する事が出来たのだ。

 

「くっ……天津飯の目でも見抜けない段階まで完成させたが、まだ至らないか。いや、この刹那の隙を突く事が出来る兄弟子殿を讃えるべきか」

「ホッホッホ、褒めても手や足しか出せんぞ」

「しかし、奥義を破られてもまだ勝負が決まった訳ではない!」

 

 己を奮い立たせて孫悟飯に立ち向かうチャパ王は、再度夢限拳を仕掛ける。悟飯は「懲りん奴じゃのう」とやはり気弾による遠距離攻撃でチャパ王を追い詰める。そしてチャパ王の姿がやはり掻き消えるが……。

 

「がはっ!?」

「ぜやーっ! ぐおっ!?」

 なんと、悟飯の背後と真横にチャパ王はそれぞれ現れた。四身の拳を応用し、悟飯の真後ろに囮用の分身が、そして彼の真横に本体が瞬間移動したのだ。

 

 しかし、悟飯は囮の分身は先ほどと同じように後ろ蹴りで迎撃したが、本体が別にいる事も見抜いてそちらに気弾を叩きつけたのだ。

 

「かめはめ波ーっ!」

 そして、チャパ王が態勢を立て直す前にかめはめ波で一気に勝負を決めた。

「ふう、ヒヤリとしたわい。精神と時の部屋で修行して地力をあげていなければ、負けていたのは儂の方じゃったな」

 こうして孫悟飯とチャパ王の兄弟弟子対決は、孫悟飯に軍配が上がったのだった。

 

 次に、一回戦最後の試合。

『一回戦も最終試合となりました。予選では前々大会のランファン選手にも負けない大胆さで、眩しい水着姿を披露してくれたGCコーポレーション会長令嬢、ファンの数も急上昇中、ラズリ選手!』

「言っておくけど、もう脱がないからね。……色仕掛けなんて意味のない相手だし」

 

『対して、前回大会に続いて本戦出場。孫悟飯選手の孫で、前回大会優勝者ギネ選手のご子息にして、武天老師様の弟子の一人! 幼いながらも武のサラブレッド、孫悟空選手です!』

「皿? ぶれっど? 皿に乗ったパンの事か? オラ、パンよりコメの方が好きだぞ」

 

「そういう意味じゃないよ。あんたもジャガーと一緒に勉強したらどうだい?」

 やれやれとため息を吐くラズリに対して、悟空は能天気に「でぇじょぶだ」と答えた。

「頭の修行も、亀仙人のじっちゃんに見てもらってるからな。ブレッドって、パンの事だろ?」

 「あははは」と、観客席から笑い声が響く。なお、弟子にクリリンだけではなくチチやランチ(彼女は勉学の修行は受けていないが)がいるため、教科書に官能小説を使うようなことはしなかったようだ。

 

『では、緊張もほぐれてきたところで……一回戦最終試合、開始!』

「行くぞっ!」

「やれやれだよ!」

 試合開始と同時に、悟空は楽しそうに、ラズリは苦笑いを浮かべてぶつかり合う。ラズリは残像拳やどどん波を駆使して戦ったが、やはり悟空との実力差をひっくり返す事は出来ずに負けてしまう……かに見えた。

 

「あっ! 凄いご馳走!」

 ラズリが明後日の方向を指さしてそう叫んだのだ。

「えっ? 何処だ? 凄いご馳走!?」

 悟空は攻撃の手を止め、思わずラズリが指さした方向に振り向く。だが、当然振り向いた先にご馳走なんてない。

 

「今だっ!」

 その隙を突いて、なんとラズリは悟空の背後に回り込んで尻尾を掴んで握り締めた。その途端、へたりと悟空が膝を突く。これで勝負は彼女の逆転かと思われたが……。

 

「なあんちゃって」

「なっ!?」

 しかし、悟空は尻尾を力強く動かしてラズリを逆に跳ね飛ばすと、「波っ!」っと空中にいる彼女にかめはめ波を放つ。

 

「くっ、キャァァァァッ!?」

 とっさに舞空術で留まろうとしたようだが、悟空のかめはめ波の勢いに耐える事は出来ず、そのまま場外に押し出され、エネルギーフィールドにぶつかってしまった。

 

 そしてラズリの場外負けが決定した訳だが……驚くべき事に悟空は原作より三年早く尻尾の弱点を克服していた。同じサイヤ人のターレスが、そしてあの世との交流試合でやってくるサイヤ人達も尻尾の弱点を克服していたので、自分もそれに倣ったのだろうが、大きな進歩だ。

 

 尻尾を五つ目の四肢として使って戦闘を行うには、弱点の克服は必須じゃからな。

 

 さて、これで天下一武道会二日目の試合は終わり、儂等は出場している選手達と合流して食事を取り、ターレスにランチについて一か月ほど黙っていてくれるよう頼みこみ、今日の試合について話したわけだが……今回の大会も何事もなく終わりそうじゃな。

(原作も始まったから、てっきり今回こそ歴史改変者が手を出してくると思っていたのだが……はて?)

 儂はそう内心で動きを見せない歴史改変者を訝しく思っていた。トワが来たら、汚名返上の機会だったのだが。

 

 しかし、後になって歴史改変者の立場になって考えてみると、『自分達が手出ししなくても、勝手に歴史が改変されているから必要はない』と言う事なのかもしれない。

 おかしい。儂は、歴史改変者ではなくタイムパトロールの味方のはずなのじゃが……。

 

 

 

 

 

 

 あくる大会三日目。今日は二回戦と準決勝、そして予選落ちした選手達から選ばれた十六名のバトルロイヤル形式の試合が行われる。

 

『さあ、天下に名を轟かせる八人が出そろいました! 今日、この八人から決勝戦に進む二名が決まります。

 まず二回戦第一試合、アックマン選手対ターレス選手の対戦です!』

 

「フハハハハ! ターレス、あの世では貴様の一族が大活躍していたが、この世で勝つのはこのアックマン様だ!」

「悪いがそうは行かねぇな。なあに、安心しろ。お前には明日も試合があるさ。決勝戦じゃなくて、五位決定戦だがな」

 

 お互いに相手を挑発し、自身の戦意を高めるアックマンとターレス。戦闘力はアックマンが約5300、ターレスが約8100。実戦と違い場外負けのある天下一武道会では、油断できる程力量に差はない。

『試合開始ー!』

 アナウンサーの号令と同時に地面を蹴って駆け出し、大気を振動させる程激しくぶつかり合う二人。

 

「チッ、腕をあげたな!」

「それでなお貴様に追い付けんのでは、誇る気にならんな!」

 力とスピードではターレスに軍配が上がるが、アックマンはその差をテクニックで補っている。しかし、地上戦は分が悪いと踏んだのかもしれない。

 

「せっかくだ! 空中戦も楽しんでいけ!」

 背中の翼を力強く羽ばたかせると、高速で飛び上がった。ターレスも後を追うが、そこで予期せぬことが起こった。

「速いっ!?」

 なんと、空中戦になった途端アックマンのスピードが上がったのだ。

 

 いや、単純に速くなったわけではない。拳や蹴りの速さは地上と変わらない。上がったのは移動速度……機動力だ!

「俺様には翼がある事を忘れていたようだな!」

 そう、アックマンは気で強化した翼の羽ばたきによって生まれる力を利用し、機動力を大幅に上昇させていたのだ。

 

「くらえっ、アックスパイラルアタッーク!」

 そして、全身を高速回転させながら行う体当たりを仕掛けた。こうした技は小回りが利かず、相手に回避されると自滅しかねない危険性がある。

 しかし、ターレスは避けなかった。

 

「受け止めてやる! フォトンシールド!」

 両掌を前に突き出し、気を収束させフォトンシールドを作り出した。

 黒い槍と化したアックマンとターレスのシールドがぶつかり合って火花を散らす。果たして、回転が止まるのが先か、シールドが砕けるのが先か……。

 

「くっ! まさかアックスパイラルアタックに耐えるとは!」

 先に力尽きたのは、アックマンの回転だった。

「ふっ! フォトンウェイブ!」

 自身が展開したフォトンシールドごと、フォトンウェイブを放ってアックマンを諸共吹き飛ばそうとするターレス。

 

「うおおおおおっ! 場外に出てなるものか!」

 そうはさせまいと、強引に羽ばたき、体を捻ってなんとかフォトンウェイブから脱出するアックマン。しかし、ターレスはそれも読んでいた。

 

「どどん波っ!」

「あ、アックショット!」

 ターレスが放ったどどん波に向かって、アックショットを放って迎撃しようとしたアックマン。しかし、消耗していた状態で慌てて放ったため十分な威力がなかったアックショットは、どどん波に貫かれてしまった。

 

「ぐあぁぁぁ!」

 そして、どどん波を受け、アックマンは舞台の上に落ち気を失った。

 

『エイトっ! ナイン! テーン! ターレス選手の勝利です!』

「ぐっ……貴様、何故アックスパイラルアタックを避けなかった?」

 アナウンサーのテンカウント後、意識を取り戻したアックマンに問われたターレスはニヤリと笑って答えた。

 

「俺が避けていたら、尻尾を使って方向転換なり急ブレーキをして、俺を背中から攻撃するつもりだったんだろう?」

「見抜かれていたか。まだまだ俺も修行が足りん」

 

『本日最初の試合から手に汗握る激戦でしたね。では、続いて二回戦第二試合、映画では牛魔王と羅刹女の娘、現実ではGCコーポレーション社長令嬢タイツ選手! それに対するは映画でも現実でも正義のヒーロー、桃白白選手の対戦です!』

 

「負けないわよ」

「ふっ、今大会こそ準優勝するのはこの私だ」

「……そこは優勝を狙うところじゃないの?」

「順当に行けば、決勝の相手はサンだぞ。大猿にでもならなければ勝てんわ」

 

「あー、まあそうね」

 お互いに向き直るタイツと桃白白。タイツの戦闘力は約5600、それに対して桃白白の戦闘力は7450。その差はアックマンとターレスよりも小さい。

 

 しかも、タイツには超能力がある。ルールでカッチン鋼コーティングを使えない桃白白にとって、苦しい戦いになるだろう。

『試合、開始です!』

「行くぞ!」

 試合開始と同時に間合いを詰める桃白白。しかし、タイツは瞬間移動で姿を消す。

 

「そこだ!」

「っ!?」

 しかし、桃白白はタイツの姿を見失った事に動揺せず、すぐに背後に向かって回し蹴りを放った。すると、タイツが現れ、蹴りを受けて後ろに吹っ飛んだ。

 

「な、なんであたしが瞬間移動する先が分かったの!?」

「ただの勘だ。それに、私が何度超能力を持つ相手と手合わせしたと思っている」

 桃白白はタイツの気を読んだわけでも、未来を見たわけでもない。ただ、経験上瞬間移動で消えた相手は、自分の背後や死角に現れる可能性が高い事を知っていたため、賭けに出ただけだ。

 

「なるほど……だったら!」

 再びタイツが瞬間移動で姿を消す。桃白白は再度背後に蹴りを放ったが……。

「どどん波ーっ!」

 今度はそれが仇になった。

 

 タイツは今度も桃白白の背後に現れたが、そこは蹴りの届く距離からだいぶ離れた場所だった。そして、蹴りが空ぶった不安定な姿勢の彼に向かって、どどん波を放ったのだ。

「しまったっ!? くっ!」

 体勢を立て直している時間はないと見て取った桃白白は、敢えて地面に倒れる事を選んだ。間一髪、彼の頭上をどどん波が通り過ぎていく。

 

「やぁーっ!」

 しかし、ほっと一息ついている暇はない。倒れた桃白白に向かって、タイツは即座に間合いを詰めて蹴りを放って来たからだ。

 

 踏みつけて来た左足、蹴り上げようとした右足を回転して回避する桃白白。そして回転の勢いを利用して立ち上がろうとしたが……。

「ぬおっ!?」

 タイツの尻尾が脚に巻き付いていた。

 

 強引に動きを止められた桃白白を、タイツの拳の連打が襲う。固めた腹筋と両腕の守りで受け止めるが、体勢が不安定であるためダメージを全て防ぐことはできない。

 タイツとしては少しでもダメージを与えて体力を削っておきたかったが、桃白白もいつまでも攻撃を受けるままにはしていない。

 

「四妖拳! かっ!」

「きゃっ!?」

 上着を破って背中から飛び出した新たな二本の腕で、タイツの腕を掴んで止める。そして、ナメック星人から習得した怪光線を目から放ってタイツを怯ませ後ろに下がらせた。

 

「くっ、女の子の顔を狙うなんて、パブリックイメージが傷ついても知らないわよ!?」

 溜め無しで放った怪光線だったので、かすり傷程のダメージも受けていないように見えるタイツがそう叫ぶと、四本腕のまま桃白白は言い返した。

 

「強くなったな、タイツよ! もはやお前を女子供とは思わん、一人前の武道家として戦おうではないか! ……とでも言っておけば、大丈夫だろう」

「聞こえてるわよ!」

 パブリックイメージを守るのも大変なようだ。とはいえ、タイツも別に本気で言った訳ではない。戦いの最中に叩き合う軽口のようなものだ。

 

「さあ、仕切り直しだ!」

 桃白白は四妖拳で自ら破った上着を完全に脱ぎ捨てると、プラズマブーストを発動。倍増した身体能力を活かして、高速でタイツに接近する。

 

「スピリットブースト!」

 タイツも併せてスピリットブーストを発動し、気を倍増させる。そしてタイツは地上では桃白白が有利だと見て、気か超能力で飛ぶしかない空に退避する。

 

「甘いっ!」

 しかし、なんと桃白白は地面を倍増した脚力で蹴って飛び上がり、弾丸のようにタイツを追う。

「甘いのはそっちよっ!」

 だが、地面を蹴った反動で加速した桃白白の動きは直線的で小回りが利かない。タイツはそれを利用して、横にスライドして回避しようとした。

 

「きゃっ!?」

 だが、桃白白はタイツの横を通り抜ける瞬間に四妖拳で増やした腕の片方から放った気弾で彼女を攻撃したのだ。

「はーっ!」

 そして、自身はもう片方の腕で放った気弾を蹴って、方向転換。タイツの周囲を高速で跳ねまわり、死角から気弾を放ち続けるというヒット&アウェイ戦法に出た。

 

 タイツも瞬間移動での逃げや、どどん波で桃白白の狙撃を試みるが、なかなかうまくいかない。

「く~っ、ヒーローなら真っ向から向かってきなさいよ!」

「ふはははっ! そんな安い挑発には乗らんぞ! ヒーローは勝つからヒーローなのだよ!」

 アックマンと同じ超加速による空中戦だが、桃白白は彼と違って真っ向勝負を避けている。そのため、アックマンを受け止めるのに全力を注げばよかったターレスと違い、タイツは彼をどうにかして止めなければならない。

 

 消耗しきる前に。

 

 プラズマブーストとスピリットブーストの欠点は、何もしていなくても体力を消費する事だ。桃白白はこの戦法で自分が疲れ切る前に、タイツの体力を削り切れると考えたのだろう。

(でも、そうはいかない!)

 

「フォトンシールド!」

 タイツは跳ねまわる桃白白を止めるために、直径十メートルもの巨大なフォトンシールドを展開した。

「なにぃっ!?」

 この規模のシールドを展開されるとはさすがに予想外だったか、桃白白は頭からシールドに突っ込んだ。だが、シールドは彼を弾き返すことなく砕け散った。

 

 なんと、シールドには最初から桃白白を止められるほどの気は込められていなかったのだ。せいぜい、彼の勢いを緩める程度の強度でタイツには十分だった。

「どどん波!」

 勢いを失った桃白白に、タイツのどどん波が突き刺さる。

 

「だ、だが、既に仕込みは十分だ! くらえ!」

 しかし、桃白白もただ跳ねまわっているだけではなかった。彼が空中で足場にしていた気弾。それは空中にまだ在った。そして、彼は蹴る時にこっそり気を込めて気弾の威力を増していたのだ。

 

 その気弾が一斉にタイツに向かって殺到する。咄嗟に瞬間移動で逃げようとしたタイツだったが、フォトンシールドにどどん波と連続で技を放っていたため間に合わず、強化された気弾の乱打を受けて爆発に飲み込まれた。

 

「っ!」

「がはっ!」

『両者ダウン! カウントをとります! ワーン! ツーウ! スリー! ……桃白白選手、立ちました! フォーっ!』

 そして無情にもカウントは進んでいき、二回戦第二試合の勝者は桃白白となったのだった。

 

「ほ、本当に強くなったな。おかげで準決勝が控えているというのに私はボロボロだ」

「メディカルポッドで休みなさいよ。あれなら、一時間もあれば体力ぐらい戻るでしょ。あと、実戦だったら勝っていたのはあたしだからね!」

「ふん、分かっているわ」

 

 実戦だったら場外負けはなく、戦場はシールド発生装置で遮られていない。桃白白がいくら加速して飛び回っても、タイツが瞬間移動で大きく距離をとっていれば彼の攻撃も仕掛けも通じなかっただろう。

「しかし、ルールのある大会に出場している以上、それは負け惜しみだぞ。貴様も、明日の五位決定戦に備えるがいい」

「はいはい」

 

 気絶から目を覚ましたタイツはしっかりとした足取りで、逆に勝ったはずの桃白白は辛そうに歩いて控室に戻ったのだった。

 もちろん、その後桃白白はメディカルポッドに入った。

 

『二回戦第三試合はなんと、兄弟どころか夫婦対決です! サン選手対牛魔王選手! 羅刹女が勝つか、それとも牛魔王が勝つのか……まるで映画のワンシーンのようですが、これまでの試合に負けない白熱した戦いになるのは間違いありません!』

 

「ど、どでかいプレッシャーだべ」

 アナウンサーの前口上に、牛魔王は冷や汗を浮かべていた。精神と時の部屋で兄弟子である孫悟飯と二年分の修行をして来た。その結果、彼は戦闘力にして7千というこの宇宙で最も大規模な戦闘集団だろうフリーザ軍でも、中堅以上の戦士に相当する強さに至った。

 

「なあに、オラ達はいつも通りやるだけだべ」

 しかし、儂が人造人間5号に改造した牛魔王の妻、サンの戦闘力は約8万7千。その差は圧倒的で、普通に戦えば十秒と持たず牛魔王は敗北するだろう。

 

「いつも通りか……そうするべ!」

『それでは……試合開始!』

 そして始まった試合は、夫妻が日常的にしている組手をやや実戦に近くしたものになった。

 

「うおおおおおおっ! マッスルカタパルトだべぇ!」

「くっ、でもその技は隙がデカいって言ってたで――わっ!?」

 いつの間にか習得していたマッスルカタパルトをサンに受け止められた牛魔王は、カッ! と口を開いてそこから気功波を吐き出した。

 

 予想外の攻撃に対応できず、気功波に飲み込まれるサン。

「すぐに反応出来ねぇのは、経験が足りねぇからだべ!」

「やっただな! さすがオラのおっとうだ!」

 

 お互いに技を繰り出し、問題点を指摘し、褒めて惚気合いながら攻防を繰り返す。これが夫妻のいつもの組手のようだ。

 儂が移植したサイヤ人の細胞の効果で、戦闘に楽しみを見出すようになったサンにとって、拳での会話は重要なコミュニケーションになっていた。

 

 そして牛魔王は、自分より妻が強くなった事にプライドは傷ついては……あまりいなかった。武道家として悔しさを感じないわけではないが、それよりも自分も強くなっているという確信があり、なにより病弱で一時は危なかった妻が元気で逞しく生きている喜びが圧倒的に大きかったのだ。

 

 そして多くの観客にとっては白熱した、儂にとっては微笑ましく、そして一部の者にとってはしょっぱい物が食べたくなるほど甘い試合は、やはりサンの勝利となったのだった。

 

『二回戦第四試合、夫婦対戦に続いて祖父と孫、そして兄弟弟子でもある二人の対決です! 武天老師様の一番弟子、拳法の達人! 孫悟飯選手! その孫悟飯選手の孫にして前回優勝者ギネ選手のご子息、グルメス公国の英雄の一人でもある孫悟空選手!』

 

「へへっ、行くぞ、じっちゃん!」

「うむ、全力でぶつかって来るとええ」

 試合が始まった途端、悟空は悟飯に向かって飛び掛かった。間合いを詰めての拳、足払いと尻尾の二段構えの攻撃。激しい攻勢を悟空が仕掛けているように見えるが、悟飯はそれらを受け止め、払いのけ、回避している。

 

 強くなった悟空だが、それでも戦闘力は660。7500の悟飯の十分の一以下だ。差があり過ぎて、普通なら戦いにならない。しかし、それは二人とも分かっている。ギネを加えた三人で生活し、普段から組手を行っているのだから。

 

 そのため、やはり悟空と悟飯の試合は先のサンと牛魔王の試合と同様、普段よりやや実戦形式の組手になった。もちろん、悟空も隙あらば勝とうとしているが、そもそも悟飯に隙が無い。

 

『そこまで! 悟空選手がテンカウントで起きあがれなかったため、悟飯選手の勝利です! それでは、午後の敗者一決定戦と準決勝を行う前に、お昼休みを挟みますので、トイレやお昼ごはんはその間に済ませておいてください』

 

 こうして二回戦第四試合は悟飯の勝利となったのだった。




〇夢限拳

 四身の拳と残像拳、千人拳の複雑なステップを高度なレベルで組み合わせた奥義。戦闘力にして1にも満たないな分身を常に発生させながら動き、質量と気のある残像として使って相手を攪乱。その隙を付いて攻撃するという技。

 ただ、気の感知能力を持たない者にとっては、ただの連続残像拳と化してしまう。また、天津飯のように単純に目の良い相手は惑わしきれない恐れがある。そして、技の使用には集中力を必要とする。


〇アックスパイラルアタック

 気で翼を強化し機動力を増したアックマンが、全身をドリルのように高速回転させて放つ体当たり。当たれば威力は大きいが、急には方向転換できない危険な技……に見えて、実は緊急時には尻尾から気功波を放って回転やスピードを緩める事で停止できる。


 wtt様、h995様、Mr.ランターン様、ノーデンス様、佐藤東沙様、コダマ様、PY様、タイガージョー様、T〇M〇K〇TA/こたのん様、gsころりん様、みえる様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。