ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
『いよいよ天下一武道会決勝戦! 天下一の強者は、カンフーキッドことターレス選手か、それとも羅刹女ことサン選手か!? 前々回大会で両選手が対戦した時はサン選手が勝ちましたが、あれから六年が経っています! 果たして勝敗は変わるのか!?
そして勝った方の選手が、午後の前大会優勝者のギネ選手とエキシビジョンマッチを戦います!』
「さて、ただじゃ負けてやらねぇぜ」
「一応聞くんだけども、大猿に変身したりはしねぇんだべか?」
入場したターレスとサンの戦闘力は、それぞれ8140と8万7千だ。ターレスが大猿化して戦闘力が十倍になればだいたい互角になる。
「当たり前だろ。戦闘力が十倍になっても理性が無くなったら、あっさり場外負けになっちまう」
しかし、下級戦士出身であるターレスは大猿化すると理性を失ってしまう。舞台から落ちたら負けというルールも忘れてしまうため、あっさり負けてしまう可能性が高い。
「その上、負けた後も審判の判定を無視して暴れ続けたら、出場禁止になっちまうかもしれないからな」
「じゃあ、ベジータ王さんみてぇに、大きさそのままで変身したり、スーパーサイヤ人になったりは?」
「期待してもらってありがたいが、無理だな。特にスーパーサイヤ人はそんな簡単になれるもんじゃないってこった」
ターレスも一応勝ちは狙うつもりだったが、今大会で優勝しなければならない切羽詰まった事情も無い。次の大会の出場資格を失うかもしれないような、イチかバチかの賭けに出るつもりはなかった。
一応、これまでの試合で見せていない特訓中の技もあるので、賭けに使うとしたらそっちだろう。
『それでは、試合開始!』
「行くぜ!」
ターレスは利き手に気を集中しながら駆け出した。サンは、これまでと同じように正面から受けて立とうとその場で身構える。
しかし、突然ターレスの姿が掻き消えた。
「っ!?」
サンの目でもターレスが何処に行ったのか追えなかった。それが逆に彼女にターレスが何をしたのか予想させた。
「瞬間移動! そこだべ!」
すかさず振り向いたサンは、そこにいたターレスに向けて反射的に回し蹴りを叩き込む。しかし、彼女の蹴りは何の手応えもなくターレスをすり抜けてしまった。なんと、彼女が蹴ったのは残像だったのだ。
「あんれ!?」
「フォトンシールド!」
元の位置に戻っていたターレスは、まんまと誘導に引っかかったサンを背後からフォトンシールドで包む。
「フォトンウェイブ! 今度こそ飛んでいきな!」
そして以前の大会で仕掛けた時と同じように、フォトンウェイブでシールドごと場外へ飛ばし、エネルギーシールドの壁に叩きつけて場外負けにしようと試みた。
それは上手く行くかに思えたが……。
「かめはめ波ーっ!」
なんと、飛ばされているサンがエネルギーシールドに向かってかめはめ波を放った。もちろん、エネルギーシールドはびくともしないが、その反動でサンはターレスのフォトンシールドとウェイブを突き破って、舞台上に戻って来た。
「ふぅ、危なかったべ。いったい何時の間に瞬間移動、いや、残瞬拳を習得したんだべか?」
「昨日も言ったが、俺が誰の養子だと思ってる? まだ成功率が高くねぇから見せた事はなかったが、前からこっそり練習してたのさ」
ターレスは、実は以前から瞬間移動を習得しようとしていた。周りに儂や4号、それにタイツとブルマがいるから触発されたのだろう。
しかし、現段階では未完成。瞬間的に移動する事は出来るようになったが、まだ狙った場所以外に飛んでしまう事が多かった。そのため、この大会の試合では使わなかったのだろう。試しに使ったら、場外へ瞬間移動してしまうかもしれないのだから当然だ。
だが、決勝戦の相手がサンなので、イチかバチかの賭けに出なければ確実に負ける。なら、体力も気力もある最初に賭けに出るべきと考えたのだろう。
そして、ターレスはスピリットパワーを制御して二回の瞬間移動に成功したのだ。
「もっとも、それも危なかったの一言で済まされちゃ、ザマァねぇがな」
とはいえ、この大会で初めてサンにかめはめ波を使わせたのは評価に値するだろう。
「だが、悪足掻きぐらいはさせてもらおうか!」
ターレスはそう叫ぶと、再び姿を消した。瞬間移動だと察知したサンが、とっさに気を探る。
「ありゃ? なんでそんな所に?」
なんと、ターレスは舞台の上に移動していた。
「うおっ!? ま、まだだ!」
しかも、驚いた様子でやや態勢を崩して落下しかけてから、また瞬間移動している。
今度はサンの右側の舞台の端に出現した。
「んん? え~っと、ほい!」
ターレスが何を狙っているのか理解できないサンだったが、とりあえず気弾を放ってみた。しかし、ターレスは素早く三度瞬間移動を使用する。
今度現れたのはサンの真後ろ。また残瞬拳かと警戒したサンが態勢を崩す蹴りではなく左ストレートで攻撃するが、当たる寸前でまた瞬間移動した。
その様子を今日の五位決定戦に出場するため選手控室から見ていた悟空は、首を傾げた。
「ターレス兄ちゃん、何やってんだ?」
その疑問に、超能力者として経験豊かなタイツが答えた。
「あれはね、悟空君……瞬間移動の制御が中途半端だから、ターレス自身も何処に出るか分からないまま戦っているのよ」
移動地点を場外負けにならない範囲に出来る程度には制御出来ているが、完全に制御している訳ではないので、場外負けにならない範囲のどこに移動するか分からない。そんな状態のようだ。
「とはいえ、本人も何処に移動するか予想できないせいで、サンもターレスが何処に出るか読めないようだぞ」
そうアックマンが言う通り、ターレスの制御出来ていない瞬間移動はサンをかく乱し続けている。
しかし、それはターレスの運次第だ。そして、幸運はいつまでも続かない。
「はっ!」
「しまっ!?」
運悪くサンの真正面に移動してしまったターレスは、サンの拳を受けて意識を刈り取られたのだった。
『超能力でサン選手をかく乱し続けたターレス選手でしたが、サン選手の先読みによってついに倒されてしまいました!
今大会の優勝はサン選手! 準優勝はターレス選手です!』
と、アナウンサーは高度な読み合いの結果サンがターレスを倒したように評して、決勝戦を閉めたのだった。
『それでは昼休みを挟んで、午後から五位決定戦、続いて今大会優勝者のサン選手対前回大会優勝者のギネ選手のエキシビジョンマッチを行います!』
その頃、歴史改変者達はそれぞれの理由で天下一武道会に手を出すのを控えていた。
ドミグラ達は、他の歴史改変を行うための仕込みに忙しい。さらに、せっかく仕込んだコーチンとピッコロ大魔王が動き出してしまわないか見張る必要もあった。
ドミグラ自身も含めて三人の魔人で構成された一味は、ゲロ達の歴史の改変以外にも暗黒魔王メチカブラの一味の動向を警戒する必要があり、多忙だった。
トワ達は、バーダックの再洗脳と仮面をさらに強化するのに忙しくて、小さな改変を行う暇がなかった。
彼女達も人数は三人でドミグラ一味と同じだが、魔術が使えるのはトワのみ。ミラは戦力にはなっても単独で歴史改変をする事は出来ず、仮面のサイヤ人ことバーダックは自由意志を奪っているので戦力として以外には使えない。
そして、両陣営には天下一武道会に手を出さない共通する理由が二つあった。
一つは、ゲロが推理した通り自分達が手を出さなくても勝手に改変が行われるので、態々自分達がキリを消費して、何よりタイムパトロールと戦うリスクを冒して歴史改変を行う理由がない事。
そしてもう一つは……ゲロが会場のそこかしこにキリを計測するセンサーや監視カメラを仕掛けている大会会場に自分から姿を現したくなかったからだ。
「……現れないわね。以前から活発に動いているから、今回も仕掛けてくると思ったのに」
一方、歴史改変者が現れない事に肩透かしを食ったのはゲロだけではなく、時の界王神率いるタイムパトロールも同様だった。
「チッ、臆病な奴等だ。……それにしてもゲロの野郎、本当に俺達の味方なのか? 裏で歴史改変者と組んでいるんじゃないだろうな?」
「父さん、いい加減信じてあげましょうよ。正直、疑わしいですが……彼から貰った仙豆のお陰で助かっていますし」
今度こそトワ達を倒し、いいように操られているバーダックを解放してやろうと身構えていたベジータは、そう舌打ちしながら、思わずゲロを疑う。トランクスは弁護するが、いまだに信じていいか迷っているようだ。
やはり、他の歴史とは言えブルマが天下一武道会に出場している事に、違和感を覚えずにはいられないようだ。
二人とも当時の事はあまり知らないが、ブルマが強い事に関してだけは「おかしい」と分かる。地獄でベジータ王がスーパーサイヤ人になったとゲロから聞かされた時は驚かされたが、やはり強くてサイヤ人ハーフなブルマの違和感を超えるほどではない。
「ベジータ、ちょっと疑り深くねぇか? オラは良い奴だと思うぞ、あのゲロのじっちゃん」
一方、悟空は呑気なものだ。他の歴史のとはいえ、実の父親が洗脳され敵に捕らわれているようには見えない。
「カカロット! そう言う貴様はどうなんだ!? 貴様だけなんだぞ、この当時の地球にいたのは!?」
「そう言われてもなぁ、ジャッキー・チュンのじっちゃんがいねぇのは驚いたけど、そんぐれぇかな? クリリンやヤムチャが予選落ちしたのも驚いたし、じっちゃんと試合出来るこの歴史のオラの事はちょっと羨ましいけどよ。
あと、チチの母ちゃんが大人になったチチにしか見えなくて変な感じだな」
「……貴様も意外と考えてはいるんだな」
「へへ、まあな」
そう言って笑う悟空だが、やはり細かい事は忘れていた。何せ、タイムパトロールの悟空にとって初めて天下一武道会に参加したのは四十年以上……約半世紀程昔の事だ。
親友のクリリンや当時から仲間だったヤムチャ、強敵だったナム、そして結局試合で勝つことが出来なかったジャッキー・チュン等の事は覚えているが、他はあまり覚えていない。
もちろん、天津飯やチャオズ、桃白白がいること等、自分の過去とこの歴史の大会が全くの別物なのは理解しているが。
「はぁ。善人だからと言って、注意しなくていいとは限らんって話じゃな。まあ、歴史改変者と繋がっている事はないと思うが」
時の界王神クロノアの要請に応えてタイムパトロールに協力している老界王神は、そう言った。
「それに、トランクスの言う通り、奴の仙豆のお陰でこれを手に入れたのだろう?」
老界王神の近くには、封印されている暗黒ドラゴンボールが一つあった。怪我の回復は老界王神でもできるが、彼に戦場に赴いてもらう訳にはいかない。
携帯でき、瞬間的に効果が出る仙豆は、暗黒魔王メチカブラ配下の強力な魔神との戦いでも悟空達の力になっていた。
『それでは五位決定戦を行います! 参加選手はアックマン選手、タイツ選手、牛魔王選手、そして孫悟空選手です!』
「ワクワクすっけど、オラも負けねぇぞ!」
「サンやチチ、子守を頼んだ会長達にも良い所を見せねぇとな」
「ふふん、本物の瞬間移動の使い方を見せてやるわ」
「フハハハ! 優勝は逃したがこの大会を勝利で終えてやろう!」
参加選手の戦闘力はそれぞれ、悟空が約660、牛魔王が約7000、タイツが約5600、アックマンが約5300。悟空以外の三人は圧倒的な差はない。
『それでは、試合開始です!』
さて、どうなるかと思ったが、まず悟空が大きく後ろに下がった。彼と彼以外の三人は実力の差が大きいので、近くに居たらすぐ場外へ吹き飛ばされると考えたのだろう。
「貴様は怪我をしないうちに負けておけっ! アックショット!」
「うわっ!?」
しかし、アックマンのアックショットを受けて場外まで吹き飛ばされてしまった。弱い者から狙った訳ではなく、乱戦中に悟空が飛び込んできて、手加減していない一撃が彼に当たってしまうような事故を防ぎたかったようだ。
しかし、それはタイツや牛魔王に遠慮せず戦える状況を作ってしまった。
「マッスルカタパルトだべぇ!」
牛魔王の突撃を慌てて回避し、空に逃げるアックマンとタイツ。しかし、タイツは瞬間移動で牛魔王の背後をとり、人差し指を突き付ける。
「どどん波!」
「ぐおっ!? やっただな!」
タイツが放ったどどん波は狙い違わず牛魔王の背に命中した。しかし、見た目以上に頑強でタフな肉体を誇る牛魔王は、溜めが不十分などどん波では足を止めない。
「魔口砲だべ!」
巨体からは想像しにくい素早さで振り返ると、口を開いてタイツに向かって魔口砲を放つ。そして、自身は舞台を蹴って飛び上がり、アックマンを追う。
「翼のある俺に、空中で敵うと思ったか!?」
「試してみねぇと分からねぇべ!」
タイツが魔口砲を避けている間に、牛魔王へ攻撃を仕掛けるアックマン。ターレスに行ったヒット&アウェイ戦法で攻勢に出ようとするが……。
「サイコどどん波!」
地上にいるタイツが、空中にいるため真下という死角が出来た牛魔王とアックマンに向かって、超能力によって操作され対象を追尾するサイコどどん波を放つ。
彼女が狙ったのは牛魔王……ではなく、アックマン!
「くっ! 普通は協力して牛魔王を倒すのではないのか!?」
「普通はね! でも、あたしにとっては牛魔王さんよりあんたの方が厄介なの!」
三人の中で戦闘力が最も高いのは牛魔王だが、瞬間移動が使えるタイツにとってはターレスを機動力で翻弄したアックマンの方が厄介な相手だった。
「そいつは光栄だが、貴様の思い通りにはさせんぞ!」
アックマンは高速でサイコどどん波から逃げ回りながら、急に方向転換をして牛魔王に迫る。ギリギリで牛魔王を回避して、サイコどどん波を彼に擦り付ける事を狙っているのだろう。
「そうはさせねぇべ!」
牛魔王もそれを察して、急接近してくるアックマンを捉えようと腕を広げる。
「ありゃ?」
しかし、アックマンは牛魔王の間合いに入った瞬間、地上に向かって急降下。牛魔王の腕は空振り、そこにサイコどどん波が命中した。
「ダメ押しにくらえ! アックバスター!」
そして、舞台に着地したアックマンが身を翻して、両手から巨大気弾のアックバスターを放ち、牛魔王の背中に命中する。
「ぐはっ! ぬ、ぬぅ~」
二度の爆発で煤だらけになった牛魔王は舞台上に落下するが、それでも意識は保っていた。だが、流石の彼も二人の必殺技を続けて受けてはすぐに立ち上がる事は出来ない。
アナウンサーがカウントをとる声が響くが、アックマンに強敵を倒した勝利に酔う時間はない。
「あたしには空中戦は仕掛けないわけ?」
「地上に留まっておいてよくも言う!」
タイツはターレスや牛魔王と違い、狙った場所に確実に移動できる瞬間移動と追尾能力があるサイコどどん波が使える。アックマンだけ飛んでいても空中戦に付き合う必要はなく地上から攻撃できるのだ。
そのため、アックマンはタイツと地上で肉弾戦を繰り広げていた。しかし、二人の戦闘力の差は僅か。拳と蹴りを何度打ち合っても、互いに回避や防御してしまうのでなかなか有効打にならない。
『ナーイン! 牛魔王選手、ギリギリで立ち上がりました!』
その時、二人の耳にアナウンサーの実況が入る。ハッとして視線を向けると、そこには言葉通り立ち上がった牛魔王が構えをとっていた。
「かぁ~めぇ~……」
最後の力を振り絞り、かめはめ波を放とうとしている。このまま殴り合いをしていたら、一網打尽にされる。そう焦ったのが命取りだった。
「き、貴様! 俺の尻尾に!?」
とっさに逃げようとしたアックマンの尻尾に、タイツの尻尾が絡みついていた。
「あたしの尻尾捌きも悪くないでしょ? さあ、飛んでけーっ!」
体ごと回転するようにしてアックマンを牛魔王に向かって放り投げる。今大会では空中戦を得意としてきた彼だが、それは姿勢を制御できている間に限る。
「波ーっ!」
「ぐわぁぁぁぁ!?」
体勢を立て直す間もなく、アックマンは牛魔王が放ったかめはめ波に飲み込まれ、エネルギーシールドまで吹っ飛んで行った。
「フォトンウェイブ!」
そして、牛魔王もタイツの気功波の爆発に飲み込まれ、今度こそダウンしたのだった。
『テーン! 五位決定戦、タイツ選手の勝利です! 今回の天下一武道会は優勝サン選手、準優勝ターレス選手、三位、孫悟飯選手! 四位、桃白白選手、そして五位はタイツ選手に決定しました!』
今年の天下一武道会の一位から五位までが決まった。しかし、観客がある意味決勝戦以上に心待ちにしているエキシビジョンマッチがこれから始まる。
『それでは、これより前回大会優勝者のギネ選手対今大会優勝者のサン選手。前々回大会から続く、前回大会優勝者を今大会優勝者が超える流れが続くのか、それとも前回大会優勝者がその強さを我々に再認識させてくれるのか!?』
「さて、ようやく出番だ!」
「オラも切り札を見せてやるべ」
『それでは……試合開始!』
アナウンサーの声が響いた次の瞬間、ギネとサンはぶつかり合っていた。連続した衝撃波が大気を震わせる。
「切り札って、育児しながら編み出したのかい? 凄いね」
「ふふん、四身の拳のお陰だべ!」
そう言い合う二人だが、ギネの戦闘力は去年のあの世との交流試合から修行して19万にまで上昇している。これまでの試合で圧倒的だったサンの8万7千の戦闘力の倍以上だ。このままぶつかり合っていれば、ギネが本気を出した瞬間圧倒されてしまう。
それを切り札で対抗するつもりのようだが、どうなるのか……。
「いくだぞ! 太陽拳!」
「させないよっ!」
太陽拳を放つサンに、足元に向かって気弾を放って爆発させるギネ。煙で太陽拳の閃光を防ぐつもりのようだ。
結局煙で一時的に視界が効かなくなるが、閃光で目をやられるよりは早く回復すると思ったのだろう。
そして、煙から距離をとったギネを追うようにサンが飛び出してくる。
「プラズマブーストだべ!」
なんと、サンもプラズマブーストを習得していた。これで彼女の身体能力は倍増し、肉弾戦のみだが戦闘力にして約17万4千。ギネに大きく近づいた。
驚くほど素早くなった彼女の拳を受け止めて、カウンターを狙うギネ。
「いたっ!?」
サンの拳にギネの腕が振れた瞬間、ギネは思わず悲鳴をあげて飛びのいた。驚きのあまり尻尾の毛が逆立ってまっすぐ上に伸びている。
「な、なんだいそれ!? 亀の爺さん達が使ってた、なんとか吃驚って技!?」
痛そうに腕をさするギネに、サンが得意げに話す。
「プラズマブーストで増幅した電気を、更に増幅して萬國驚天掌モドキの技に仕立てたべ。これなら、防御しても触れただけでメチャクチャ痛ぇから、覚悟するだよ」
サンが編み出した技は、生体電気の出力を上げて手足をスタンガンのようにする技のようだ。気を直接変化させ性質を電気にする萬國驚天掌と違い、気で肉体を強化して電気を作っているので、「モドキ」とつけたようだ。
「ほぉー、サンもなかなか工夫するの。あの技、萬國驚天掌より安全なようじゃし、儂も教えてもらおうかの」
「たしかに、技をかけられる相手にとっては萬國驚天掌よりは安全だと思うが、止めておいた方が良いでしょうな」
「ほう、何故じゃ?」
説明を促す亀仙人に、儂はサンを観察しながら答えた。
「気で強化した肉体を使って電気を作るので、肉体を酷使する事になります。永久エネルギー炉の補助がある人造人間でもなければ、たちまち体力が尽きるでしょう」
プラズマブーストは元々肉体を酷使する技じゃからな。その出力をあげたら、どれほど体力を消費するかは説明するまでもないだろう。
「それに生身をスタンガンにするので……電流を流されたギネだけではなく、サンも拳が痛いはずじゃ」
ギネの腕とサンの拳が触れた瞬間、ギネだけではなくサンも拳に痺れるような痛みを感じたはずだ。萬國驚天掌モドキは自爆技なのである。
「なるほどのう。そうなると、サンがギネに勝つのは難しいか?」
そう鶴仙人が顎に手を当てて言う。儂も、サンの切り札が萬國驚天掌モドキだけなら、ギネが勝つだろうと思っていた。
「やり難いっ!」
「掠っただけでも痺れるだぞ!」
勝負は萬國驚天掌モドキを発動させているサンが攻め立て、ギネが必死に回避しながら距離をとろうとするという、一見するとサンが優勢に見える。
しかし、サンの体力の消費は大きく、体内の永久エネルギー炉による補助を超えているはずだ。このままギネが逃げ続ければ、プラズマブーストを維持する事が出来なくなりサンの方が負けてしまうだろう。
だが、その時舞台上に漂っていた煙から現れる者が居た。
「よし。もう十分だべ」
なんと、それはもう一人のサンだった。舞台上の観客と、何よりギネの注意が萬國驚天掌モドキを発動している方のサンに向かっている間、気を消して薄くなりつつある煙の中で休んでいたのだ。
「四身の拳を使ってたの!?」
「太陽拳と煙でギネさんから隠れた間に使ったべ! そんでもって、オラは分身で――!」
「休んで気を回復させたオラが本物だべ!」
プラズマブースト、そして萬國驚天掌モドキを使った本体が、分身と協力してギネに攻撃を仕掛ける。ギネもさすがに二対一では回避し続ける事は出来ず、二人のサンの連携の前に敗北したのだった。
「「やったべ~っ!」」
『エキシビジョンマッチは、サン選手の勝利です! では、十分間の休憩の後に表彰式を行います!』
こうして、第二十四回天下一武道会は歴史改変者の横やりが入ることなく終わったのだった。
そして、天下一武道会が終わった後、悟空はドラゴンボール探しに旅立つ……事はなく、普通に儂等と共に占い婆の宮殿に来ていた。
「今年は天下一武道会があるから、儂としては交流試合は無くても構わんかったんだがのー」
「そう言うなよ、婆さん。あの世側で俺達が出られるのは今年が最後かもしれないんだからよ」
「それで爺さん、あたし達の改造はどれくらいで終わりそうなんだい?」
天下一武道会が開催された今年も、あの世とこの世の交流試合は行われる事になった。トーマとセリパの肉体の改造が進んでいる事と、スーパーサイヤ人になったベジータ王のデータを儂が欲しがったのが主な理由である。
占い婆も本音では「面白い試合を見る機会は、多い方が良い」と思っているようなので、実際には協力的だった。
ちなみに、今回は例年と逆でベジータ王とバーダックチームが一日目にこの世に来ている。
「改造は順調じゃ。具体的には――」
「おっと。具体的な説明はいいから、いつぐらいに終わりそうなのかだけ教えてくれ!」
「どうせ聞いても分からないからね」
「……来年の春が来る前には、完成するはずじゃ」
儂の人造人間の改造技術も、5号のサンから磨き続けた結果向上している。さらに、ブリーフとコリー博士の協力も得られているので一年もあればセリパを11号、トーマを12号に出来る予定だ。
「尻尾をフリーザ族のものにして欲しいとか、そうした要望があれば別だが」
「いや、尻尾はこのままでたのむ。だが、それにしても来年の春か。ギリギリだが地獄一武道会に出場出来るな!」
「やったな、トーマ! 今回出場を逃すと、次に出場出来るのは何十年後になるか分かったもんじゃねぇからな」
「おいおい、また地獄に落ちる前提で話すなよ! まあ、落ちるだろうけどな!」
ガハハハとパンブーキンと笑いながら肩を叩き合うトーマ。どうやら、彼とセリパが人造人間になって蘇生する時期の事を気にしていた理由は、ベジータ王の要望を閻魔大王が認めた事で開催が決まった地獄一武道会が理由だったようだ。
「地獄に落ちた極悪人の中でも強者がぶつかり合う大会か。恐ろしいが儂も見に行こうかのー」
「儂も興味はあるが……大会として成立するのか? サイヤ人以外も出場するのじゃろう?」
地獄一と銘打った大会だ。出場する選手には生前フリーザ軍やその前身のコルド軍の兵士だった者や、スラッグ一味や宇宙海賊だった者ばかりだろう。
判定が気に食わなければ審判を殺そうとするなどして、早々にルール無用の殺し合いになるのではないだろうか?
しかし、そんな事は閻魔大王も承知しており、既に手を打っていた。
「それなら心配いらないぜ。閻魔大王が、大界王様の所で修行している戦士の中から審判に来てもらえないか頼んだらしい」
「なるほど。なら安心じゃな」
地獄にどれほど昔の悪人が残っていて、閻魔大王が何処まで出場を認めるか定かではないが、審判が大界王様の所で死後も修行を続けている戦士達が務めるなら大丈夫だろう。戦士達の方が強いじゃろうから。
ちなみに、先ほどから黙っているセリパはランチとテレパシーで再会を喜び合っているようだ。儂にも、まだ正体を明かせない事に対する文句がチクチクと来ている。
すまん、もう少しの辛抱じゃから待ってくれ。
そして最初から黙っているトテッポは、さっそく飯を食っていた。
「いいか! スーパーサイヤ人になるのに重要なのは怒りだ! 純粋な怒り、気を高め、背筋にぞわぞわとした寒気がしたら、気を一気に解放しろ!」
「純粋な怒り? そんなもんでなれるなら、スーパーサイヤ人が大量発生していてもおかしくないんじゃねぇか?」
「つべこべ言わずに試してみろ、ターレス! 下級戦士出身にもかかわらず、その歳で戦闘力8000に至ったお前なら、可能性は十分ある! いいか、才能だけではなく地道なトレーニングを積み重ねる努力も重要なのだ!」
一方、ベジータ王はターレスにスーパーサイヤ人になるコツを伝授し、熱弁を振るっていた。
以前のサイヤ人は、おそらくベジータ王の方針によって努力よりも生まれ持った才能を著しく重視する傾向が強い。生まれたばかりの赤ん坊の戦闘力を測り、低い場合は飛ばし子にする事もそれを表している。
しかし、自身がスーパーサイヤ人になった事をきっかけに、ベジータ王の価値観は大きく変化したようだ。
「考えてみれば、儂やこいつらの戦闘力が大きく伸び始めたのはここでの試合、そして地獄でトレーニングを始めてからだ。そしてエリートである我が側近達よりも、下級戦士のはずのこいつらの方が今では圧倒的に強い。
認めるのは癪だが、トレーニングを重ねる事で発揮される才能もあるのだ」
「へっ、今更何言ってんだかな」
熱弁を説かれたターレスではなく、立ち聞きしていたトーマがそう言うが、認められるのは嬉しいらしくまんざらでもない様子だ。
「じゃあ、オラも修行したらそのスーパーサイヤ人ってのになれるんか?」
「カカロットか。ふむ……貴様もなれるかもしれんな」
「本当か!? じゃあ、オラもっと修行して強くなるぞ!」
「その意気だ。ただ、貴様の親のギネだけでなくトーマ達もまだスーパーサイヤ人になっていないのだ。簡単ではないぞ」
息子にもそう話すベジータ王を、ギネは驚いた顔つきで見ていた。
「セリパ、なんだかベジータ王が別人みたいだよ。いや、毎年会うたびに変わっていった気もするけど、今回は本当に変だよ。昔なんて、ターレスと悟空に『我が息子ベジータの家臣としてよく仕えるのだぞ』って言ってたのに」
「ウィローが起こした反乱で、色々あったのさ」
「色々……頭を強く打ったとか?」
「いや、流石にそれで変わる歳じゃないだろ」
「以前のあいつの事はよく知らないが、私が初めて戦った時より何かが吹っ切れたように見える。それがスーパーサイヤ人になった事による変化なのかは分からないが、良い事ではないのか?」
まだギネはベジータ王の変わりように戸惑っていたが、ナメック星から来たネイルに問われると、「まあ、確かにね」と納得した。
こうして、今年の交流試合は始まったのだった。
〇ターレス
実は瞬間移動を不完全だが習得していた。習得していたが、不完全だったので決勝戦以外の試合では使わなかった。
また、決勝戦では舞台上&場外負けにならない箇所に移動していたが、プラズマブースト等を使わず瞬間移動に集中してあの状態だった。
〇サン
プラズマブーストを習得し、さらに体内電流の出力を上げて萬國驚天掌モドキを発動する事も可能。ただ、本家のように電流を伸ばして対象を捉える事は出来ず、体が触れた瞬間電流を流す事が出来るのみ。しかも、本家のように気の性質を電気に変えているのではなく、増幅した生体電流を使用した技であるため、自分にも痛みが走る。
〇ギネ
戦闘力16万から19万にパワーアップ。
ヨシユキ様、sugiyan様、佐藤浩様、excite様、佐藤東沙様、匿名鬼謀様、Mr.ランターン様、mnsk様、太陽のガリ茶様、phodra様、gsころりん様、みえる様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。