ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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原作と一人称が異なる場合(わしが儂になっているなど)がありますが、ご了承いただければ幸いです。


8話 天才科学者の蝶の力学

 ゲロが宇宙に旅立つ少し前の西の都に、一人の変わった老人が歩いていた。

「うーむ……最近のピチピチギャルは良いパイパイをしておるわい」

 アロハシャツを着て亀の甲羅を背負い、サングラスで隠した視線で通りすがりの若い女性の胸元を凝視している彼の名は亀仙人、もしくは武天老師。武術の神様と讃えられる人物である。

 

 普段は小さな島のカメハウスで暮らしている彼が西の都にまで足を運んだのは、ピチピチギャルを観賞するため……ではない。

 天下一武道会で優勝した科学者にして会社社長、ドクターゲロという男について調べるためである。

 

 その大会は当時まだテレビ放送されていなかったが、エアロビ番組を見てエロ本を購読している亀仙人は、ゲロが舞空術や気功波を放った事を偶然知った。

 鶴仙人に金を積んで教えを受けたのかと思い、もしゲロが鶴仙人の弟子に相応しい悪行を為す男なら腕ずくでも止めるつもりで彼は西の都に来たのだ。

 

「さて、エロ本でも買って帰るか」

 だが、幸いにも彼の覚悟は外れた。西の都に来て調べてみたが、ゲロの周囲に鶴仙人の影は無かった。そしてゲロ本人の評判も、「研究のため」という理由でしょっちゅう何処かへ、しかも長期間姿を消すそうだが、決して悪いものではなかった。

 

 それどころか彼が開発した医療技術で多くの人々が救われているという。

 

 清廉潔白に見せて、裏では悪どい事をしている。と言うのもよくある話だ。しかし、よくある話だからという理由だけで人を疑うのも理不尽だろう。

 それに、よくよく考えてみれば鶴仙人の弟子にならなければ舞空術や気功波を使えないわけではない。亀仙人の知らない優れた武闘家が修行の果てに習得したとしても、何の不思議もない。

 

 それがゲロ本人なのか、ゲロの師匠なのかは分からない。確かなのは、新しい世代の武闘家は育っているという事だけだ。

 そうして亀仙人は、本屋でエロ本を買って帰った。

 

 

 

 

 

 

 同じ頃、別の場所で鶴仙人は渋面を浮かべ唸り声をあげていた。

「ううむ、亀仙人とは無関係か」

 彼が調べていたのは、奇しくもその亀仙人が調べていたのと同じ人物、ドクターゲロについてだった。

 

 ゲロに注目したのは亀仙人と同じ理由だ。亀仙人は舞空術を使えないはずだが、それは彼が知っている時点での情報でしかない。彼が知らないうちに習得していた可能性もあると、鶴仙人は考えていた。

 

 そして鶴仙人は裏社会に関わっているため亀仙人よりも情報収集の手段が多かった。

 しかし、情報屋に金を払うなどして調べた限りでは、亀仙人やその弟子との関わりはゲロやその周辺人物には見えてこなかった。

 

 何年か前、ゲロの会社がスポンサーになった天下一武道会が開かれる年に、丁度弟が脱サラして殺し屋に転職すると言い出したので、その前に名を上げるのと調査のために送り込んでみた。だが、やはり亀仙人の影はなかった。

 その後、弟の桃白白は何故か殺し屋にならず用心棒や悪党退治をして金を稼いでいるようだが……まあ、別にいいだろう。

 

「それはそれとして目障りではある」

 自分の弟子でもないのに舞空術や気功波の使い手であるゲロが世間に知られ、その技が世間に広まるとしたら、それは鶴仙人にとっては都合が悪い。何故なら、彼の鶴仙流の希少価値が相対的に低下するからだ。

 

 情報によれは、ゲロは普通の意味での弟子はとっていない。しかし弟子入り志願者や、人造人間2号とやらに敗れた後弟子入りを申し出た元挑戦者を鍛えているらしい。

 条件はある程度の年齢(十五歳以上)である事と、それなりに実力(空手の黒帯ぐらい)があること。修業の内容は鶴仙人の基準だと生ぬるいぐらいだが、一般の道場やジムと比べると厳しく、十人中九人が辞めるという。

 

 だが、残った十人に一人は必ずそれなりの実力者に育ち、ゲロコーポレーションが数年前から始めた警備部で活躍している。

 連中が空を飛んだとか、光線を放ったとか、そうした話は今のところは聞いていないが……。

 

「しかし、それは単に修行が生ぬるいせいでまだ使える弟子がいないだけ、とも考えられるな。……桃白白に頼んでみるか」

 桃白白の用心棒や賞金稼ぎの仕事が空いたら、弟子志願者として潜入してもらい、情報を集め終わったら辞めさせればいいだろう。

 

 最近はドクターフラッペなる悪の科学者を追って警察に協力しているらしいが、尻尾を掴めないとぼやいていたようだし。そう結論を出した鶴仙人は、さっそく弟に連絡を取った。

 なお、ゲロ本人を暗殺しようとしないのは、彼が地球で一、二を争う大企業ゲロコーポレーションの社長だからだ。

 そして鶴仙人の予想では、ゲロは彼自身や桃白白程ではないだろうがそれなりに強いはずだと見ていた。目障りだからという理由だけで殺すには、とても割に合わないのだ。

 

 

 

 

 

 

 ゲロが4号と共に宇宙船で地球を旅立ったしばらく後、西の都の警察はある犯罪者を追っていた。

「ここか、ドクターフラッペが出入りしていたというタレコミのあった廃工場は」

 彼らが追っているのは、悪の天才科学者ドクターフラッペ。もさっとした髪をした小太りな男で、常にサングラスをしているため、素顔はまだ確認されていない。

 

 ドクターフラッペは今まで、違法な武器や爆弾の製造、犯罪組織同士での抗争、自作したロボットによる銀行強盗等、数々の凶悪犯罪に手を染めている。

 それらの多くは警察の努力と最近捜査協力者として加わった、ある武闘家の手腕によって未遂で終わっているが、凶悪犯である事に違いはない。

 

「静かすぎる……まさか、逃げられたか!?」

「突入しましょう!」

「待て」

 慌てて突入しようとする警官達を止めたのは、この場にそぐわない男だった。

 

 髪を三つ編みにして纏め、口元には髭を伸ばし、桃色を基調とした拳法着を着ている、とても警官には見えない中年に見える男。

「桃白白さん!」

 警察の頼りになる捜査協力者であり、天下一武道大会優勝経験者である、桃白白だった。

 

「奴の事だ、またロボットが待ち構えているかもしれん。ここは私が先鋒を務めよう」

「お願いします、桃白白さん!」

 背中に警察官達の信頼の眼差しを受けた桃白白は、「うむ」と頷くと廃工場の扉に素早く近づく。

 

「これは……ふん!」

 桃白白が拳を突き出すと、頑丈そうな扉が音を立てて内側に吹っ飛ぶ。

『侵入者発見! 侵入者発見!』

 すると、桃白白が吹き飛ばした扉を腕の一振りで薙ぎ払って、工場の奥からロボットが現れた。

 

 全体的に四角く、腕の先はC型のマニュピレーターになっている、まるで古い玩具のロボットをそのまま大きくしたような姿だが、その力は侮れない。

「う、撃てっ! 桃白白さんを援護するんだ!」

 警官達が銃の抜き引き金を引くが、弾丸はロボットの装甲の表面に傷を作るだけで弾かれてしまう。

 

『侵入者、排除!』

 そしてロボットは桃白白に向かって鉄の腕を振り下ろした。

「ほう、力は前のロボットより強くなったようだな」

 だが、なんと桃白白は片手でロボットが振り下ろした腕を掴んで止めていた。

 

「では、次は耐久力が上がったか試してやろう。せいっ!」

 そして、空いている方の手で拳を握り、ロボットの胴体に向かって突き入れた。桃白白の突きは、驚くべき事に弾丸も弾いた鉄の装甲を容易く破り、ロボットの内部の機械に致命的な破壊をもたらした。

 

『ガ、ピィィィ……』

 耳障りな電子音を響かせて、機能を停止するロボット。

「フッ、耐久力はそのままだったようだな」

「さ、流石です、桃白白さん!」

「銃も通じなかったロボットを一撃で……凄い!」

 

 不敵に笑う桃白白の背に、警官達の尊敬の眼差しと称賛の声が向けられる。桃白白は思わず口元が緩みそうになるのに耐えつつ、顔つきを厳しくして振り返った。

「見張りのロボットは一体だけだったようだが、気を抜くな。どんな罠が仕掛けてあるか分からんぞ」

 そう言えば婦人警官達から「渋くて素敵」と言う囁きが、男性警官から「憧れるなぁ」という称賛が再び彼にそそがれる。

 

 そして肝心の捜査の方だが、廃工場にはそれ以上のロボットや罠は設置されていなかったが、大量の銃や手榴弾等の兵器が保管されているのが発見された。

「これほど大量の武器が隠されていたとは……恐ろしい」

「おそらく、ここはドクターフラッペの武器倉庫だったのでしょう。しかし、これほど大量の武器を集めて何をしようとしていたのか……」

 

「犯罪組織に売ろうとしていたのか、それとも自分で手下を集めて使わせるつもりだったのか……奴の行方も含めて、手掛かりになりそうなものは何もありません」

 口々にドクターフラッペに対する恐れと、今回も尻尾を掴めなかった事に対する悔しさを吐露する警官達。

 

 なお、ドクターフラッペに扮したゲロがここで何をしていたのかと言うと……何もしていない。彼はただ他の犯罪組織……山賊団や盗賊団を潰した時に手に入れた武器を集めた後、お手伝いロボットを動員して新品のように磨いて箱詰めし、この廃工場に並べた。そして、警官が正面から戦えば苦戦するだろうが、背中の電池を抜けばすぐ停止してしまうロボットを一体配置したに過ぎない。

 

 集めた武器を使って何かする予定も、売る相手も、存在しない。ゲロはただそうしてドクターフラッペの変装をして廃工場を出入りして見せ、警察がここに踏み込むように誘導したのだ。そして、その後はお手伝いロボットをカプセルにして回収、その後すぐ瞬間移動で立ち去ったため彼に繋がる手掛かりが残っていなくても当然である。

 

「相変わらず逃げ足は速い奴だ、ドクターフラッペめ。だがしかし、この私がいる限り奴の悪行は必ず阻止して見せよう!」

 そう言ってポーズを決める桃白白も、ドクターフラッペの正体も何も知らない。では、なぜ彼は殺し屋にならず警察の捜査協力者をしているのだろうか?

 

 彼が実は良い奴だから……ではない。たしかに桃白白も、スラッグのように生まれた時から邪悪な心しかない完全な悪人ではないだろう。しかし、原作では脱サラして殺し屋になるような人物である。

 桃白白は殺し屋になったから冷酷非道な人格になったのではなく、冷酷非道な部分を脱サラする前から持っていたので、殺し屋になったと考えるべきだ。

 

 では何故かというと……鶴仙人によって送り込まれた天下一武道大会で優勝した事で、殺し屋になる必要がなくなったからだ。

 桃白白が殺し屋になった理由は、サラリーマンが嫌になったから。そして稼ぎたかったから。だが、天下一武道会で優勝した事で、彼は有名になった。

 

 当時の優勝賞金の三百万ゼニー程度では、桃白白は当然満足しない。だが、その後彼にボディーガードや用心棒の高額の報酬付きの依頼が殺到したのだ。

 まあ、殺し屋を始める前にもう少し稼いでみるかと、戯れに受けてみれば依頼主からは「先生」と呼ばれ、襲撃者が放った銃弾を素手で掴み取って見せれば歓声が上がり、元々高額だった報酬に色が付く。

 用心棒になれば先生と呼ばれて敬われ、召使のような付き人が付いた。

 

 今では桃白白はちょっとしたヒーローで、街を歩けばサインや記念撮影を求められ、ピチピチギャルから黄色い声援を浴びる日々。

 稼げる額は殺し屋の方が上なのは、桃白白も分かっている。しかし、殺し屋ではこの称賛は得られない。

 

(兄者には悪いが、殺し屋になるのは無しだ。ヒーローのままでもそれなりに稼げるし、今度、私を主役にした映画の話も来ているからな!)

 ヒロイン役の女優には誰を推薦しよう。キスシーンはどうしよう? ベッドシーンも……いや、あまり露骨だとクールで渋い武術の達人である私のイメージが壊れてしまうかな?

 

 そんな事を考えつつ、桃白白は警官達と共に署へ引き上げるのだった。

 ……まるでミスターサタンのようだと思うかもしれないが、この頃サタンはまだ生まれたばかりの赤子なので彼の立場を奪ったとか特にそういう事もない。

 

 ちなみに、ゲロは意識して桃白白の情報が自分に入らないようにしていたので、彼が殺し屋をしていない事を知ったのはこの出来事の後だった。

 何故なら、「桃白白が殺し屋をしている事を知っていて、止められるのに止めない」という事は、被害者を見殺しにする事になるので、知りたくなかったからである。

 

 

 

 

 

 

 惑星ベジータをフリーザが破壊した後、彼の兄であるクウラは一人用のポッドに乗ったサイヤ人の赤ん坊を見逃した。

 慈悲をかけたわけではない。ただフリーザの尻拭いをする気が無かったのと、サイヤ人の赤ん坊一匹程度では何も出来まいと思ったからだ。

 

「クウラ様、所属不明の宇宙船が惑星ベジータの存在した方角からデータのない座標へ航行しています!」

「……見せろ」

 だが、二度目となると気になる。

 

「は、スクリーンに出します!」

 宇宙船のスクリーンに現れたのは、クウラの記憶にない宇宙船だった。サイヤ人が使っているものでも、フリーザ軍や自分達が使っている宇宙船とも形状が異なる。

 

 それはドクターゲロの宇宙船だった。彼の宇宙船は何百年も前に地球へ来た神様……ナメック星人の宇宙船を参考に、彼とブリーフ博士の科学技術によって設計建造されたものだ。その後、ナメック星で最長老から得た情報によって発掘した宇宙船や、ヤードラット星人の科学技術も参考にして改造を重ねているが、クウラ達から見るとその外見は旧型に見えた。

 

「なんだ、見ない船だな。旧型か? それとも通りすがりの観光客か?」

 クウラ機甲戦隊のネイズが思った感想をそのまま口にするが、サウザーは首を横に振った。

「いや、見かけは旧型にも見えるが、速さから計算すると旧型にしてはエンジンの出力が高い。おそらく、サイヤ人が侵略した星の船を鹵獲し、改造したのだろう」

 

「スキャンは……出来ません。こちらのセンサーを妨害しています」

 オペレーターがそう報告した。

 そう、ゲロは宇宙船をステルス仕様に改造していた。そのおかげで、クウラ達は宇宙船には誰も乗っておらず自動操縦で動いているとは気が付かなかったのだ。

 

「どうします、今度も見逃しますか?」

「撃ち落とせ」

 弟の尻拭いをするつもりはないが、今回の宇宙船は大きさからみれば複数人のサイヤ人が乗っている可能性は高い。さすがにそれを見逃す気にはなれなかったクウラは、部下に撃墜を命じた。

 

「はっ! ミサイルを発射します!」

 そして発射されたミサイルは、ステルス仕様に惑わされることなくゲロの宇宙船に命中。宇宙船は閃光と共に砕け散った。

 

「ふんっ、俺にいらん手間をかけさせるとは……フリーザめ」

 ゲロが宇宙船に施したステルス性は、クウラの宇宙船には一歩及ばなかった。そのせいで捕捉され、撃墜されてしまった。

 

 しかし、ゲロが宇宙船に施したステルス性によってクウラ達は宇宙船が無人である事に気が付かなかった。もしそれにクウラ達が気づいていれば、宇宙船を拿捕してデータを抜き取るか、宇宙船が向かう先を解析するなどして、地球の存在と位置を彼らが知ってしまったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 惑星ベジータが小惑星の衝突によって消滅。サイヤ人の生存は絶望的。

 その知らせをラディッツが聞いたのは、ベジータ王子と同じ班でとある惑星の侵略を行っている最中にとった小休止の時だった。

 

 それを知った時、彼が口にしたのは「どうでもいい」と言う冷たい一言だった。

「ふんっ。親父もお袋も、あっけないもんだな」

 ラディッツは、実は両親を疎んでいた。

 

 下級戦士でありながら一万に迫る戦闘力を誇り、仲間からも人望厚い戦士バーダック。しかし、ラディッツにとっては厳しい父親で、彼にとっては恐怖の対象でしかなかった。

 そして母であるギネは、彼にとってうっとうしい存在だった。何かと口うるさく、訳の分からない事を言う。

 

 他のサイヤ人の子供は親からそんな扱いは受けていなかった。彼らは自分のように父親を恐れていなかったし、母親から構われておらず、自分より自由で何より強く見えた。

 それに劣等感を覚えたラディッツは、父親を恐れるのも、母親に構われるのも、嫌で仕方がなかった。

 

 そう、彼は五歳にして反抗期を迎えていたのである。

 

 そんなラディッツが自分に向けた音声データが届いているのを知ったのは、惑星の征服を終えて一人用ポッドでフリーザ軍に戻るため宇宙に出た後だった。

「お袋からか? チッ」

 どうせ助けてくれとか、そんな意味のない命乞いだろう。そう思ったラディッツだったが、どうせこの狭い機体の中では他にやる事もない。後はコールドスリープに入るだけなので、聞いてみてもいいだろうと音声を再生した。

 

『ラディッツ、聞こえるかい?』

 聞こえてきた母、ギネの声はラディッツが予想していたよりも落ち着いていた。

『ラディッツ、よく聞くんだよ。惑星ベジータに彗星か小惑星かは知らないけど、危険が迫ってるんだ。バーダックが飛び出していったけど、ダメかもしれない』

 

「親父が? 親父は、小惑星に立ち向かったのか?」

 ラディッツはギネが敢えてついた嘘には気が付かなかったが、彼の中で父親の死のイメージが、「小惑星によって成す術もなく死んだ男」から、「小惑星に対して最期まで戦った勇敢な男」へと変わった。

 

『だから、こうして話せるのも最後になると思う。ラディッツ……あんたなら大丈夫、あたし達が居なくても強くなって、バーダックみたいな強い戦士に成れる』

 そして、甘っちょろい事ばかり煩く言う母だと思っていたギネからの言葉に、ラディッツは目を見開いた。

 

『あんたは頭も良くて、生まれた時から強くて、バーダックだってあんたには期待してたもの。あたし達の自慢の息子だよ』

 母親の声を聞きながら、ラディッツの中にあった両親へのわだかまりが溶けるように消えていった。

 

「親父が俺に期待してた? 俺が、自慢の息子……だと?」

 それまでラディッツは、自分は両親から評価されていないと思っていた。だからこそバーダックは他の親が子供にするよりも厳しく自分に当たり、ギネは自分に口うるさく構ったのだと感じていた。

 

 だが、それは勘違いだったとラディッツは気が付いた。父は自分に厳しかったのは期待していたから、母が自分に口うるさく構っていたのは……この時の彼は、それをなんと呼ぶべきか知らなかった。だが、後にその正体を知る事が出来た。

 ……愛だ。自分を愛していたからだ。

 

『ラディッツ、カカロットをよろしくね。頑張るんだよ』

 そして、音声データは終わった

「カカロットをよろしく……? あいつは生きているのか? そうか、飛ばし子か」

 戦闘力が低い子は、宇宙船に乗せて文明が進んでいない星に飛ばされる。カカロットは惑星ベジータが消滅する前に、他の惑星に飛ばされたのだとラディッツは気が付いた。

 

 だが、ギネはカカロットをどこの惑星に飛ばしたのか言わなかった。言い忘れたのか、ギネも知らなかったのか、それはラディッツには分からない。

 カカロットが飛ばされた惑星は、おそらく惑星ベジータから遠いだろう。だが、必ず見つけてみせる。

 

「そうだ、俺は親父とお袋の子、ラディッツだ。カカロット、お前も俺と同じ誇り高きサイヤ人の戦士である親父と、そしてお袋の子だ。

 どこにいるかは分からないが、必ず生き延びろ。生きていれば、この兄がお前を見つけてやるからな!」

 

 こうして一人の少年が、戦士へと覚醒したのだった。

 

 

 

 

 

 

 そして時間は遡り、亀仙人が西の都からカメハウスに帰ってしばらくたったある日の事だった。

 亀仙人はのんびりとウミガメや不死鳥と暮らしていた。

「ん、あれは誰じゃ?」

 ビーチベッドでくつろぐ亀仙人の目に、海のかなたから迫る怪しい黒い影が映った。

 

「お前、カリンの修行受けた、武天老師?」

 それは空飛ぶ絨毯に乗った、アラビア風の衣装に身を包んだ黒い肌の人物……ミスターポポだった。

「いかにも、儂が武天老師じゃ。カリン様に師事した事もあるが……それを知っているあなたは、どちら様ですかな?」

 

「ポポ、神様の付き人。神様、お前に修行を付けてくれる。ポポと一緒に来い」

 何故このタイミングで神様は亀仙人こと武天老師に修行させようと思い立ったのか。それは……他にやる事が無かったからだ。

 

 ゲロからピッコロ大魔王とは比べ物にならない程強大な悪の帝王が宇宙に存在する事を知らされた彼は、愛する地球のために色々と備えていた。

 時が来れば選ばれた戦士達のために使う精神と時の部屋を改装したり、自身も健康に気を付けながら修行をやり直したり。

 

 しかし、それらも一段落した地球の神様は次に取り組むべき事を考えた。そして、とりあえず今から優れた武闘家を育てる事にしたのだ。

 ただ、故郷であるナメック星の戦士達は自分が教えられる段階にはない……それこそ、魔封波ぐらいしか教えられるものが無かった。精神と時の部屋を利用してもらう手もあるが、あれは使用できる時間に限りがあるため、今のうちにその時間を使い切ってしまったら、いざという時困るかもしれない。

 

 そのため、白羽の矢が立ったのがゲロと4号を除けば唯一カリンの修行を終えた武天老師だったのである。

 

「な、なんとっ!? 神様が儂に修行を!? こうしちゃおれん、ウミガメ、不死鳥、儂はちょっと神様の所で修行してくるぞいっ!」

 そして亀仙人も武闘家。神から修行を付けてもらえると聞いて、胸が高鳴らないはずはなかった。

 

「はぁ。行ってらっしゃいませ~」

 ウミガメと不死鳥に見送られ、亀仙人はミスターポポの魔法の絨毯に乗って神様の神殿へと旅立ったのだった。

 なお、神様の姿を見て顎が外れんばかりに驚く事になるのだった。

 




・鶴仙人

 亀仙人と同じ理由でゲロに注目し、亀仙人よりも情報収集の手段を持っていたのでより詳しく調べる事が出来た。そのため、現在も継続調査中。近々桃白白を送り込む事を企んでいる。

 なお、カリン塔に登っていないので神様からはスルーされた。



・桃白白

 殺し屋になるはずが、何故か街のヒーローになっている鶴仙人の弟。善人になったのではなく、人々から称賛を受けるのが気持ち良すぎて、金銭欲よりそれを優先した結果である。
 実力は原作通りで、彼を主役にした映画の企画もあるらしい。

 亀仙人が桃白白の事に気が付かなかったのは、彼が西の都に来たのは桃白白が西の都からやや離れた山の中に隠されたドクターフラッペのロボット工場を警察と摘発に行った時期と、偶然重なったため。



・クウラ

 自動操縦で地球に向かうゲロの宇宙船を発見し、撃墜。残骸を調べる事もしなかったので、宇宙船に誰も乗っていなかった事と、そして宇宙船が向かっていた地球の存在には気づいていない。



・フリーザ

 惑星ベジータを破壊してサイヤ人を滅亡させた。「奇麗な花火ですよ!」と上機嫌ではしゃいだが、その後クウラから小言を言われて機嫌は一気に下方修正されたらしい。



・ラディッツ

 幼いサイヤ人の戦士。ギネの遺言を聞いたことで、父であるバーダックに感じていた恐怖は尊敬に変わった。
 ただし、彼が目覚めたのは正義の心や慈悲の心ではなく家族愛である。
 彼は弱虫を呼ばれる事になるのか、それとも……。



・不死鳥

 亀仙人とカメハウスで暮らしており、人間を不老不死にできるらしい。ただ、亀仙人が死んだ事があるので、多分彼が出来るのは人を不老にする事であって、不死にする事は出来ないと思われる。
 原作が開始される時期には食中毒で死んでしまっていたが、原作開始より十年以上前のこの時点では生存している。



・神様

 悪の帝王(フリーザ)に備えて精神と時の部屋を改装したり、ゲロや4号が瞬間移動で連れてきたナメック星人に魔封波を伝授したり、色々備えていた。
 そしてついに、武天老師を弟子として神殿に招くに至った。



みそかつ様、popfrom様、kuro様、アドメラレク(゜.゜)様、車椅子ニート(レモン)様、尾羽太様、おでん様、酒井悠人様、路徳様、カド=フックベルグ様、ゆーの助様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。
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