ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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83話 ジングル村のマッスルタワー攻略勝負!

 防寒具を着た悟空が、筋斗雲に乗って北の空を進んでいた。

「や、やっぱ寒ぃな」

 しっかり防寒具を着こんでいても、風は凍てつくように冷たく悟空達の体温を奪っていく。

 

「だから飛行機に乗っててもよかったのに」

 その懐から声がする。ミクロバンドで小さくなったブルマだ。

「でもよ、タイツが飛行機だとレーダーに映るって言ってたじゃねぇか。レッドリボン軍がいたら、警戒させちまうって」

「別に警戒させてもどうって事ないと思うんだけどねー」

 

 そう話しながら、ブルマが視線を送るのは悟空が抱えているバッグだ。その中に彼女の姉のタイツを含めた皆が小さくなって入っている。

 ちなみに、流石のブルマも人数分のミクロバンドを作るのは面倒だったので、彼女達が使っているのは多人数用だ。ブルマが予備に作っておいたミクロバンドを改造し、腕に装着しなくても作動させれば近くにいる人間を小さく出来るようにしたのだ。

 

 ただ、機械からある程度離れるだけで元の大きさに戻ってしまうという欠点がある。しかし、移動には丁度いいと使われる事になった。

 

「瞬間移動で行ければ楽だったんだけどな」

「それが一番楽だけど、目的地に目印にできる気の持ち主がいないんだもん、仕方ないじゃない」

 なお、一人だけ先に現地に向かい、その気を目印にして瞬間移動で皆を運び合流する、というのは危険だからという理由で止める事にした。

 

 一人でいるところを歴史改変者に狙われる恐れがある。もっとも、悟空達にとっては念のために安全策を取ろう、という程度の恐れだが。

 

 

「そろそろじゃない?」

「レーダーの反応は、もうちっと先だな」

 雪が降っている、まるで季節が逆行しているかのような地域に入ってから、悟空はドラゴンレーダーの反応を確かめた。

 

 その時、大きく低い音が響いた。

「なに? 何の音?」

「ぶ、ブルマ、オラ、なんか急に腹が……」

「何っ? お腹痛いの? もしかしてミクロバンドを使って食べた副作用!?」

「腹が……減った!」

 

 ずるりと、コートの内ポケットの中で足を滑らせるブルマ。何と、突然響いた異音は、悟空の腹の虫だった。

「お腹減ったって、ついさっき家でお腹いっぱい食べたばかりじゃない!」

「いや、でもよう、腹が減っちまったもんは仕方ねぇだろ?」

 そう話している間も、悟空の腹は鳴り続けている。しかも、空腹を訴えているのは悟空だけではなかった。

『ブルマ、ヤムチャもお腹が空いたって。一旦降りてご飯にしましょ』

「ヤムチャも? 仕方ないわね」

 

 そして地面に降りると、ブルマやタイツ達はそれぞれ出て元の大きさに戻る。

「どうする? ホイポイカプセルの家は掃除中だから持って来てないわよ?」

「ウーロン、あのキャビンカーを出してやったらどうだ?」

「残念でした。俺のも整備中ですー」

 

「仕方ないわね。かまくらでも建てるわよ」

「そうね、雪ならそこら中にあるし」

 ブルマとタイツが念動力で雪を押し固め、かまくらを作ろうとした。その時、小さな気が近づいてくるのに気が付いた。

 

「光る雲が降りてきたと思ったら、あなた達は誰!? レッドリボン軍の人達じゃなさそうだけど」

 コートを着た悟空やブルマと同じような年頃の少女が歩いてきて、一行に声をかけてきたのだ。

「レッドリボン軍? この辺りにもやっぱりいるのか?」

 

「ええ、何か月か前から来てるわよ。それより、あなた達は?」

「旅行者、みたいなものよ」

「あたしは仕事の下見も兼ねてるけどね」

 ブルマとタイツの答えに少女は不思議そうな顔をした。この辺りには旅行者はもちろん、仕事に来る人間はレッドリボン軍を除けば滅多にいなかったからだ。

 

「そう。ところで、その人達は大丈夫? 具合でも悪いの?」

 しかし、雪の中で追及を続けるには、腹を押さえてうずくまっている二人の姿が少女には気がかりだった。具合が悪いのなら、こんなところで話している場合ではない。

 

「いや、腹が減って……」

「力が……」

「ヤムチャ様、しっかり!」

「こいつらはちょっと腹が減ってるだけだから、そんなに心配しなくて大丈夫だぜ。ところで君、名前は? 俺、ウーロンって言うんだけど……」

 

「大変じゃないっ!」

 ウーロンのナンパも耳に入っていない様子で、少女は声を上げた。こんな雪の中、空腹で動けなくなるほど衰弱しているなんて、(普通の人間なら)生死に関わる。

 

「あなた達が乗って着た車は? それとも飛行機?」

「いや、どっちも無いが」

 ラピスは何故そんな事を聞くのかと戸惑いながら、そう答えた。ウーロンのキャビンカーは整備中で、飛行機は元々持って来ていない。

 

「ええっ!? 遭難したの!? じゃあ、私についてきて、少し歩くけど私の家があるから!」

 しかし、少女が乗り物の有無を聞いたのは雪を凌げる場所の有無を確認するためだった。

 そして、普通の人は車や飛行機でもなければ少女が暮らす地域に来る事が出来ない。そのため、少女は「無い」という言葉を「ここに来るまで乗っていたが、今は何らかの事情で失っている」という意味だと解釈した。

 

 ……光る雲の事はすっかり忘れているようだ。筋斗雲を知らないなら無理も無いだろう。

 

「案内してくれるの? それは助かるけど、あなた名前は?」

「スノよ! ようこそ、ジングル村へ!」

 そうして一大事だと思って自宅に悟空達を招いたスノだったが、その悟空とヤムチャは彼女の家に着く前にすっかり回復していた。

 

「あれ? あなた達、動けたの?」

「ああ、ゲロのじっちゃんが持たせてくれたコードーショクのお陰でな」

「いや~、心配させて申し訳ない」

 プーアルが持っていた、儂の作った超高カロリーエナジーバーを食べた事で、二人は空腹状態から脱していたのだ。

 

 ちなみに、後日分かったが悟空とヤムチャが急に空腹で動けなくなったのは、やはりミクロバンドに原因があった。ミクロバンドで体を小さくした状態で、ケーキや果物を食べて腹を満たし、元の大きさに戻った悟空とヤムチャ。腹に入れた食べ物も二人の体に合わせて大きくなったが……大きさは変わっても食べ物に含まれている栄養の量は変わらなかったのだ。

 

 そのため二人は満腹でも、接種できた栄養はケーキ一つにも満たない量でしかなかった。そのため、すぐ空腹になってしまったのだ。

 儂やブルマが試した時は……儂は体質的にはただの地球人なので、一食分程度なら影響はなかった。ブルマはサイヤ人ハーフだが、試した後に小腹がすく度に菓子を摘まんでいたので空腹になる事はなかったようだ。

 

「だから言ったろ? 心配しなくて大丈夫だって」

「本当ね。お節介だったかしら」

「そんな事無いわよ。案内してくれて感謝してるわ。あ、スノのお母さん、あたしはこう言う者です」

 

「あら、名刺なんてご丁寧に……え!? あなた、GCコーポレーションの社長令嬢なの!? スノ、あんたが連れて来た人達、有名人よ!」

「本当だわっ! 改めてよく見てみれば、皆有名人じゃない!」

 

 フードやマフラーで顔が隠れていたので当初は気が付かなかったスノだが、改めて見ればテレビや雑誌で見た顔ばかりなので驚いて目を丸くした。

「そんな有名人がなんでうちの村に? 仕事って、レッドリボン軍の人達が関係してるの?」

「そう言えば、レッドリボン軍の奴等がここにも来てるんだったな。あいつら、ドラゴンボールを探してるんだよな?」

「ええ、あたしのお父さんや村の大人達を――」

 

「まさかっ、脅して無理やりボール探しを手伝わせてるとか!?」

「いいえ、時給千ゼニー賄い付きで雇ってくれるから、助かるって人も多いわよ。この村、現金収入が限られてるし」

「そ、そうなの……」

 悪党に支配された村をイメージして思わず立ち上がったウーロンは、ほっとした様子で椅子に座った。

 

「でも、実はちょっと困っているのよね。もうすぐ夏だし」

「そうね」

「どういう事? レッドリボン軍のせいで迷惑してる……って、言うには微妙な感じだけど」

 そう尋ねるブルマに、スノの母親は歯切れ悪く答えた。

 

「迷惑って程じゃないし、ホワイト将軍さんにも事情があるんだろうなとは思うんだけど、ちょっと困っていて……」

 

 ここからは、儂がサイボーグ3号(人造人間8号)から聞いた話からホワイト将軍とジングル村、それぞれの事情を考えたうえで説明しよう。

 

 ジングル村の村人達は、ホワイト将軍達レッドリボン軍が訪れた事を基本的には歓迎している。最初は突然武装した軍隊が来たのでどうなる事かと思ったが、ホワイト将軍は村長に話を通し、兵隊は村人に乱暴狼藉を働くどころか、口調は荒いが丁寧に対応してくれる。また、脅して強制労働どころかちゃんと金を払って雇ってくれる。

 

 スノが言ったように現金を得る方法が乏しいジングル村の村人達は、彼らに大いに助けられた。

 

 しかし、ボール探しが長引くにつれてやや困る事態になった。ジングル村にとって雪が溶けて地面が見えるようになる短い夏は、貴重な時期だ。

 地下で出来る茸の栽培やモヤシ作り以外の農業が出来る唯一の期間であり、狩猟や漁でも最も多く獲物がかかる季節だからだ。

 

 そのため、夏が近づくにつれて村人達はボール探し以外の仕事もしなければならなくなる。

 農業や狩猟や漁をしなくても、金があれば食料を購入する事が出来る。しかし、いくら金があっても商品が無ければ買えない。

 

 ジングル村は夏でも雪が降る寒い土地だ。雪で閉ざされた陸の孤島と言っても過言ではない。そのため、陸路はもちろん空路も安定して行き来できず、物流の便は悪かった。食料や生活必需品が買いたくても、すぐに商品が届くとは限らない。

 

 そうした問題は、ホワイト将軍が便宜を図ればだいたい解決する。レッドリボン軍が所有する輸送機で大量の食料品や生活必需品を運べばいいのだ。ホイポイカプセルを使えば、解決するのはもっと容易い。

 マッスルタワーをボール探しのための仮設施設ではなく、本格的な基地として運用し、ジングル村をレッドリボン軍の縄張りに入れるなら、それぐらいするべきだろう。

 

 しかし、ジングル村をレッドリボン軍の縄張りにするのはホワイト将軍個人の企みで、レッド総帥の意向ではない。もちろん、将軍である彼の意志をレッド総帥は無視しないだろうし、警官も駐在していないようなジングル村にレッドリボン軍の基地を置いて周辺地域を守る事は、地球国政府に対する政治的なアピールに繋がるから、メリットもある。

 

 問題は基地の維持費と兵の人件費がそれに見合うかどうかだが……魔族も現れない極寒の地の治安維持に必要な人員と兵器は少ない。さらに、レッドリボン軍の兵士は近年導入された過酷な訓練によって、生身でもちょっとした重機以上の働きが出来る。だからインフラ整備などの工事にも対応可能。

 

 ドラゴンボールの捜索さえ終われば、常時駐屯する人員を三分の一にしても十分回る。そして、基地は既に建設済。

 そのため、経済的にも問題なく基地を維持しながら運用する事が出来る。

 

 だが、そのドラゴンボール探しの任務はまだ終わっていない。

 ホワイト将軍も、まさかボール探しより地元の村の物流の便を良くするために人員を割きたいとは言えない。

 ボールさえ発見できれば終わるのだが、その目途も立たない。この地域にあるのは間違いないが、明日見つかるかもしれないし、逆に秋になっても見つからないかもしれない。そんな状況だ。

 

 そしてシルバー大佐達がボールの入手に失敗したため、状況はますます切迫している。少しでもボール探しにマンパワーをつぎ込みたいぐらいだ。

 

 そのため、ここ数日は村人達に協力を焦って頼むホワイト将軍と、世話になっているホワイト将軍の頼みを無下に出来ず困っている村長の話し合いが続いている。

 まだ初夏の前なので、村人達は農具や網、罠の手入れや作成で手がふさがっている者以外がボール探しを手伝っているという状況だ。

 

「……なんか、レッドリボン軍を悟空達が退治すれば解決するって感じじゃないな」

「解決はするだろうけど、そんな事をしたらあたし達が悪役になるんじゃないか?」

「正直、俺達が出る幕じゃないよな」

 

 ウーロンの言葉に、同意するラズリ。ラピスに至っては、部外者が口を出していい問題じゃないのでは? と思い始めている。

「って、退治って何? ホワイトさん達は悪い人じゃないわよ。ちょっと強引な所があるけど」

「へへっ、やっぱりレッドリボン軍って悪ぃ奴等じゃねぇな。なあ、ヤムチャ?」

「えっ? ああ、そう……だな?」

 

 スノの言葉を聞いて、何故かそう嬉しそうに笑う悟空に、ヤムチャは頷きかけてふと去年の事を思い出した。

(そう言えば、俺とプーアルは去年魔神城に落ちた隕石を調べに行ったら、ブルーとボンゴとパスタにいきなり襲われたような……? ブルーってレッドリボン軍の将軍なんだし、悪い奴等じゃないとは限らないんじゃないか? いや、その後地球を守るために共闘したから、水に流すべきなのか? まあ、確かに俺もプーアルも大した怪我はしていないし、無事だが)

 

「どうしたんですか、ヤムチャさん?」

「いや、ちょっとな。まあ、悪い奴等じゃないとしても、良い奴等だとは限らないよなって思って」

「ん? まあ、そうですよね」

「そうか? 悪ぃ奴じゃないなら良い奴だろ?」

「……悟空、俺、筋斗雲に乗れない理由が分かったよ」

 

 色々と話しているが、原作と違いジングル村とレッドリボン軍の問題は、武力で解決する性質のものではない。しかし、武力を使わなくても悟空達は問題を解決する事が出来る。

「とりあえず、あたし達がボールを見つければ解決でしょ。探しているボールが無くなれば、ホワイト将軍って人の任務も終わり。ボール探しの手伝いを村の人達に頼む必要もなくなるわ」

 

「そっか。あいつら、ボールを探してるんだもんな」

 ……というか、そもそもドラゴンボールを探すのが彼らの目的だ。

 

「それで、見つけたのが四星球でなければ渡しちまえばいいもんな」

「いや、それはちょっと待て」

 だが、悟空はホワイト将軍にドラゴンボールを渡す事まで考えていたため、ヤムチャが止めに入る。

 

「ドラゴンボールを渡すか否かは、レッドリボン軍がボールで何をするつもりか分かってから決めよう。俺だってレッドリボン軍の奴等が悪い奴だとは思ってないが、奴らにボール探しを命じている奴が良い奴かは分からないだろ?」

「そう言えば、ホワイト将軍達はドラゴンボールを何に使うのか話してませんでした?」

 

 悟空を説得するヤムチャの言葉に続けるように、クリリンがスノと彼女の母親に話しかける。ホワイト将軍の部隊とジングル村の住人はだいぶ打ち解けているようだからもしかしたらと思ったが、二人とも少し考えてから首を横に振った。

 

「ボールを見つけたらどうこうって話は聞いていないわ。ボールを使うって話も、今初めて聞いたもの」

「てっきり、珍しい石だから探しているだけかと思ったよ」

「そうか……あいつら、いったい何を願うつもりなんだろうな?」

 

「それはともかく、村長さんに話したい事があるんだけど、案内してもらえない?」

 タイツの「仕事」は村長に話を聞いてもらう必要があった。上手くいけば村人全員に説明する事になるが、まずはジングル村の責任者に話を通さなければならない。

 

「村長さんだったら、昨日ホワイト将軍の所に話しに行ったっきりよ。多分、そのまま泊まったんじゃないかしら?」

「村長さんはお酒に弱いけど、ホワイト将軍は逆に強いから、飲みながら話すと途中で潰れちゃうのよね」

 

「なるほど。レッドリボン軍との関わりは避けられないみたいね。まあ、あたしはもう瞬間移動で行き来できるから、日を改めてもいいけど」

「じゃあ、先にこの辺りにあるドラゴンボールを見つけて、『このボールが欲しければ、ボールを集める理由を教えろ』って言ってみっか」

 

「シルバー達の時と同じだな。まあ、そうするか」

 普通なら争いになる可能性は避けるべきだが、悟空達はサイヤ人だ。話をしに行った結果、戦いに発展してもそれはそれで嬉しい事なのだ。

 

「俺は、このまま待ってていいよな?」

「ウーロン、あんたも何かに役立つかもしれないから来なさい」

 ウーロンは普通に嫌がったが。

 

 スノ達ジングル村の村人達が巻き込まれるなら話は別だが、レッドリボン軍は一般人を巻き込むような集団ではなさそうだというのが悟空達の認識である。

 

 そして、スノの家を出た悟空達は、まずホワイト将軍達が探していたドラゴンボールを入手。そして、そのままマッスルタワーへ近づいて行った。

「妙だな。見張りがいないぞ」

「そう言えば、ボールを探しているはずの連中も見なかったね」

 しかし、マッスルタワーの周りは見張りの兵隊が一人も配置されていなかった。

 

『お前達! シルバー達を倒した孫悟空一行だな!?』

 その時、マッスルタワーから声が響いた。

 

「と、塔がしゃべった!? こいつ、もしかして塔の形をしたロボットなんか!?」

「違うわよ! 誰かがあのスピーカーを使ってこっちに話しかけてるだけよ!」

「最近ロボットと戦う事が続いてたからな……」

 

 緊張感が無い悟空達だが、見張りがいないのはドラゴンレーダーの反応が近づいている事を察知した軍情報部からの報告によって、彼等の接近がホワイト将軍に知られていたからだった。

(ついに俺達の所に来たか。こいつらに勝負を挑んで奴らに勝てるのか?)

 レーダーの性能差を考えると、ホワイト将軍達が彼等より先にドラゴンボールを手に入れられる可能性は無い。実際、もう悟空達は四つ目のボールを手に入れている。

 

(いや、勝つしかない! おめおめと引き下がることなんてできるか!)

 そこでホワイト将軍が考えたのが、悟空一行にドラゴンボールを賭けて勝負を挑む事だった。現在マッスルタワーにある戦力を計算し、賭けのルールをひねり出した。

 

『お前達にこの辺りにあったドラゴンボール一つをかけて、勝負を申し込む!』

 

 その勝負は、ホワイト将軍達に勝ち目があるのは当然だが、悟空達が負けても納得する形でなければならない。賭場で行うギャンブルではないのだ。負けた方が認めずに暴れ出したとしても、場を納めてくれる胴元はいない。

 しかも、強いのはホワイト将軍ではなく悟空一行の方だ。

 

(って、馬鹿な!? シルバーの報告にあった人数より倍以上に増えているだと!? しかも、あいつはこの前の天下一武道会で桃白白に負けたが、惜しいところまで行ったタイツじゃないか!

 だが……今更引けん!)

 

 一行の人数が増えており、その中の一人がタイツである事に頭を抱えたくなったホワイト将軍だったが、気力で言葉を続けた。

 

『勝負方法は、このマッスルタワーを一階から最上階まで、一時間以内に登り切る事! もちろん、タワーの各階には番人がいてお前達に勝負を挑んで来る! これに勝ち進んで登らなくてはならない! 一時間以内に最上階の番人の俺を倒したらお前達の勝ちだ!』

 

「シルバーといいブルーといい、レッドリボン軍って面白れぇ奴等だな」

「番人か。腕がなるぜ」

「ちょっと待ちなよ。ボールを賭けて勝負だって、あたし達に何のメリットも無いじゃないか」

 

 早速乗り気になる悟空とヤムチャを引き留めるラズリ。その答えはすぐ告げられた。

『お前達がもし勝ったら、我がレッドリボン軍が何故ドラゴンボールを集めて何をするつもりなのか! このマッスルタワーでは俺しか知らない超重要機密情報を教えてやる!』

 ホワイト将軍が賭けの代償に差し出すもの、それは情報だった。

 

 悟空達が知りたがっているだろう、レッドリボン軍の作戦の内容を教えてやる! そう言えば食いついてくるだろうと彼は考えていた。

(ただし、話すのはドラゴンボールを幾つか手に入れて、それを材料に政府と交渉して軍事に食い込む事までだ。後々に行う予定のクーデターまでは話さない)

 

 ドラゴンボールを集めて何をするつもりなのかは、政府との交渉だ。その後のクーデターにはドラゴンボールを使わないので、嘘ではない。

 これでもし負けても、ギリギリ大丈夫だろう。そうホワイト将軍は考えていた。

 

「って、言ってるけど、どうする? あたしは別に興味ないけど」

「う~ん、気にならない訳じゃないけど別にここで勝負して聞き出さなくても、残りのボールを探す途中で聞けるんじゃない?」

「姉さんの言う通りね。賭けの景品なら、もっとインパクトが欲しいわね」

 

『え……? いや、機密情報だぞ?』

 しかし、現実にはホワイト将軍が提示した情報に対するブルマ達の食いつきは悪かった。

「おめぇら、レッドリボン軍がどうするつもりなのか気になるって言ってなかったか?」

「悟空君、確かに言ったけど、ドラゴンボールを賭けてまで知りたいって程じゃないのよ。悟空君達も、ここで聞かなくてもボール探しを続けてれば、レッドリボン軍の他の将軍とか大佐と会うだろうから、その人から聞き出せばいいじゃない」

 

 気にはなるけど、別に無理して知りたいほど興味はない。タイツ達にとってホワイト将軍が提示したレッドリボン軍の情報は、その程度の価値しかなかったのだった。

 

『そ、そうだ! 飯はどうだ!? お前達が勝ったら食事をご馳走しようじゃないか!』

 このままではただボールを持って行かれるだけで、足止めも出来ない。それだけは防がなくてはと、ホワイト将軍は慌ててシルバー大佐が悟空達に提示したのと同じ報酬を付け加えた。

 

「食事って……他になんかないの?」

「美味しい料理なら、家で食べ慣れてるし」

「食べ物で釣ろうなんて、あたし達をガキ扱いしてないかい?」

 しかし、悟空はともかく女子三人は食べ物ではつられなかった。

 

 マッスルタワーの最上階にある自分の部屋で、ホワイト将軍は頭を抱えていた。

(こうなったら村長を人質に……いや、ダメだ! それをやった瞬間、負ける!)

 ジングル村の村長を人質にしたら、完全に悪党として悟空一行に認識され、圧倒的な力で叩き潰される。マッスルタワーの外から光線を連射されるだけで、此方は危機に陥るのだ。

 

「あ~、ちょっといいかね、将軍さん?」

「ん? なんだ?」

 そんなホワイト将軍に声をかけてきたのは、昼すぎまで酔いつぶれていたジングル村の村長だった。

 

『あ~、儂はジングル村の村長じゃが、ホワイト将軍が提案した勝負に乗ってやってくれんかね? 頼む』

 そして、マイクを通して悟空達にまさかの勝負に乗ってくれるよう頼みだした。

「え、村長さん? どうする?」

「……そうだね。乗ってやってもいいんじゃないか? タイツは村長の方に用があるんだろ?」

「そうね。ここでいきなり心証を悪くするのもなんだし」

 

 なんと、村長が頼んだことでブルマやラズリの考えが、勝負を受ける方向に変わった。二人にとっては直接利害関係のない大人からの頼み事だったのが大きかったのだろう。また、タイツにとっては仕事で村長に話を通す必要がある事から、彼の頼みを無下に出来なかったのだろう。

 

「よっしゃっ! さあ、やろうぜ!」

「まあ、勝負した方が修行になるよな」

「たまにはいつもと違う環境でトレーニングをするのも、いいだろ」

 そして、悟空やクリリン、そしてラピスは元から勝負に乗り気だったのでさっそく準備運動をはじめる。

 

「とほほ、やっぱりこうなるのか」

 結局勝負に巻き込まれる事になったウーロンは、そう肩を落としていたが。

 

『村長……!』

『将軍には日頃から世話になっとるしな。この仕事の後は、本部に帰るかもしれんのじゃろ? だったら最後くらい恩返しせんとな』

 

『恩に着る! 

 ルールを説明するぞ! 塔を登るのには階段を使う事! 外から壁をよじ登ったり、空を飛んだり、超能力を使ったり、天井や壁に穴を空けて進むのは禁止だ! 階段が使用不能になった場合は、階段が使える階までなら移動を許可する!

 後、助っ人を呼ぶのも禁止だ!』

 

「どういうことだ?」

「つまり、瞬間移動で武天老師様や会長を連れて来るのはダメで、ズルせず塔の階段を上って進めばいいって事だな」

「やれやれ、楽にクリアしてやろうと思ったんだけどな」

 

『では、勝負開始のチャイムを鳴らす! それから一時間後、再びチャイムが鳴るからそれまでに最上階にいる俺を倒せばお前達の勝ちだ。見届け人は村長とする!』

 そうホワイト将軍の声からスピーカーから流れた五秒後、チャイムが鳴り響くと同時にマッスルタワーの入り口が開く。

 

「行くぞ!」

 それを合図に駆け出す悟空達。彼らを迎え撃つのは、武装したレッドリボン軍の兵士達である。

「一階の番人は俺達レッドリボン軍兵だ!」

「雪国の過酷な労働で鍛えた俺達を、シルバー隊やバイオレット隊の連中と一緒にするなよ!」

 

 彼らは手に銃ではなく、軍用ナイフやスコップを持って悟空達に挑みかかった。勝負では武器を使わない事を条件にはしていないが、マシンガンや手榴弾程度では悟空達には効かないし、使っても同士討ちの危険があるだけというシルバー大佐の部下達と同じ判断を下したようだ。

 

「ぐへっ!?」

「がはっ!?」

「う~ん、そんなに違うとは思えねぇぞ」

 そして、兵一人一人の練度もシルバー大佐の部下達とそう変わりはない。これに関しては、多くの兵士を戦闘力10以上という地球人から見れば超人レベルに鍛え上げたレッドリボン軍の手腕を、評価するべきだろう。

 

「番人が普通の兵隊だけって、あたし達を舐めてないか?」

「この程度じゃ、ウォーミングアップにもならないぜ」

 ラズリとラピスがそう言いながら、無造作に兵士達を失神させていく。確かに一階の番人とはいえこれではあまりに芸が無い。しかし、ホワイト将軍達も今回の勝負について考え付いたのはちょっと前だったので、準備不足なのも致し方ないだろう。

 

「フレー、フレー、ヤムチャ様!」

「よーし、このまま一気に勝ち登ってくれよ。美人の女軍人もいないみたいだし」

 悟空達が戦っている後ろで、応援するプーアルと自分に火の粉がかからない事を祈るウーロン。

 

「今だ!」

 そんな二人を見た兵士の一人が、壁にあった何かのスイッチを押した。その瞬間、二人の足元がガコンと開く。

「お、落とし穴!?」

「なんでこんなところに!?」

 

「危ないっ!」

 タイツが、とっさにウーロンを掴んで飛ぼうとしたが、途中ではっと気が付いた。

「あっ、階を移動する時に飛んじゃいけないんだったわね」

 そう、ルールではマッスルタワーの階層を移動する際に、飛んではならない事になっていた。

 

「ええっ!? 上るんじゃなくて落とし穴に落ちるのを防ごうとしたんだからいいだろ、別に!?」

「いや、でも『移動する時に』って言ってたじゃない。移動には、落ちるのも移動だから、この場合飛ぶのは反則になると思うのよ」

 

「ね、姉さん、余裕すぎない?」

「まあ、良いじゃない。先に行ってて、あたし達は階段を見つけてすぐ追いかけるから」

「じゃあ、ボクも落ちないと。ヤムチャ様~、頑張ってくださ~い」

 そして、ウーロンを掴んだままのタイツと、プーアルは開きっぱなしの落とし穴に落ちて……降りていったのだった。

 

「おい、一応聞くが下には何がある?」

 ヤムチャがスイッチを押した兵士の胸倉を掴んでそう聞くと、彼はすぐに答えた。

「下は、使っていない地下倉庫だ。武器弾薬を保管するためのスペースだったが……武器弾薬を使う機会が無かったので、空のままだ。番人も、いない」

 

「武器もないって、あんた達本当に軍隊なのか?」

「って、言うかそんな所に落としてどうするつもりなんだ?」

「いや、一分一秒でも時間を稼げればと思って……」

 

 原作では存在しなかった地下室だが、特別な仕掛けは無くただの空き倉庫となっているようだ。

 

「じゃあ、姉さん達が階段を見つけて上がってくるのを先に行って待ってましょ」

「そうだな。よしっ、先に進むぞ!」

 一行の中で最も強いタイツがいれば、ウーロンとプーアルも安全だろう。そう思って、悟空達は二階へと続く階段を駆け上ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 その頃、吹雪き始めた空からマッスルタワーを見下ろす人影があった。

「メチカブラ達も動き出した以上、のんびりとキリを集め続けるだけでは拙くなった。私も動き出さなくてはな。まずは、本来あるべき歴史との乖離を留めてやろう」

 

 時の巻物を狙う魔神ドミグラがそう言って杖を一振りすると、この歴史には存在しないはずの者を他の歴史から呼び寄せた。

 

 

 

 

 

 

 薄暗い地下室にタイツとプーアルが降り立つと、天井に開いていた穴が音を立てて閉じた。周りにはいくつか備品らしいものが置かれている他は何もなく、がらんとしている。

 車が停まっていない地下駐車場という様子だ。

 

「じゃあ、一階に戻りましょうか。ええっと、階段はどこかしら?」

「お、おい、ここには誰もいないんだよな?」

 薄暗い倉庫の中を歩き出そうとするタイツ。彼女に掴まれたままのウーロンが、不安げな声をあげながら周囲を見回す。

 

「大丈夫よ。気は感じないし、ロボットがいる様子も――っ!」

「あっ、あんなところに何かが光ってますよ」

 プーアルがそう指さした先には、黄色く光る二つの点があった。タイツの背よりだいぶ高いところにあるそれは、しかし非常階段を表す非常灯などではなかった。

 

『グフ……』

 紅く炯々と光る二つの目をした、キリで強化された異形の怪物……ブヨンダークが他の歴史から召喚され、タイツ達の前に立ち塞がったのだった。




〇スノ

 ジングル村の少女。原作では飛行機が墜落して凍えて意識を失っていた悟空を、村まで引きずって歩いて帰った。……地味に怪力なのか、凄まじいスタミナを持っているのかもしれない。
 また、原作アニメでは落ちていたライフルを使い、ピッコロ大魔王を背後から狙撃しようと試みるなど高い行動力を持つ。

 原作では村人に強制労働を強いるレッドリボン軍を嫌っていたが、この作品のホワイト将軍はそうした事をしていないので好印象。ちょっと困った所はあるけど、親しい隣人と認識している。



〇ジングル村の村長

 原作ではホワイト将軍に囚われ村人に対する人質にされていた。この作品だと、ドラゴンボール探しに動員する村人達の人数についてホワイト将軍と話し合うために自らマッスルタワーを尋ね、途中で酒が入って酔いつぶれたため泊まる事になったため滞在していた。

 ドラゴンボールについては知らないが、ホワイト将軍達があんなに必死に探すぐらいだし、大切なものなのだろうと思っている。




 山霖様、鱸の丸焼き様、Othuyeg様、h995様、佐藤東沙様、 名無しの紳士様、太陽のガリ茶様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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