ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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84話 歴史改変者の誘惑を切り裂く白刃、魔獣ブヨンVSサイヤタッグ

 ピンク色の肌に短い手足にでっぷりと肥大化した腹という人型と言えるかどうか迷う巨大人工生物、ブヨンを目にしたタイツの反応は早かった。

「太陽拳!」

『うごっ!?』

 太陽拳でブヨンの視覚を封じると、プーアルを掴み、持ったままのウーロンと共に距離を取る。

 

「ぐえっ!?」

「な、なんなんですか、あれ!?」

「あたしも知らないけど、ロボットには見えないわね。ちょっとっ! あれ何なの!?」

 

『わ、分からん! なんなんだ、あの化け物は!?』

 念のために倉庫にも付けておいたカメラによって状況を知ったホワイト将軍の慌てた様子の声が、スピーカーから流れて来た。

 

 原作ではブヨンをマッスルタワーの五階に置いて、六階までやってきた悟空と8号を落とし穴で落として食わせようとしたホワイト将軍だが、この時代の彼はブヨンの事を全く知らない。ただの空き倉庫に見覚えのない化け物が出現しているのだから、慌てもする。

「つまり、番人じゃないのね!?」

『当然だ! というか、そっちに何か心当たりはないのか!?』

 

「そうね。なんだか気の禍々しさが、歴史改変……悪の宇宙人に強化された人と似てる気がするわ」

『なにっ!? また悪の宇宙人か!?』

「ととっ、二人は離れてて! できれば非常階段から上に行ってて!」

 

 タイツが話している間にブヨンが動き出した。視界が回復したのか、それとも適当に暴れているだけなのか、後者であったとしても巨体であるため、ただ動くだけで攻撃になり得る。

 ブヨンが振り回す鞭のような尻尾を蹴り返すタイツから、プーアルとウーロンは慌てて離れた。

 

「分かりました!」

「でも、非常階段ってどこだ!?」

『非常階段はお前らから見て右だ! さっさと逃げろ!』

 プーアルとウーロンを誘導したホワイト将軍は、祈るような気分でモニターに映るブヨンとタイツの戦いを見つめていた。

 

『その怪物は倒せそうか!? 倒せるよな!?』

 その祈りは、タイツがブヨンをマッスルタワーに大きな被害を出さず倒してくれることを願うものだった。ブヨンがタイツを倒してくれたら、とは一瞬しか考えない。

 

 彼にとってブヨンは、同僚であるシルバー大佐達に被害を及ぼした悪の宇宙人が差し向けて来た、謎の怪物だ。もしブヨンがタイツを倒したとしても、このピンク色の怪物がその後何をするか分からない。いや、場合によっては戦闘の余波でマッスルタワーが倒壊する恐れもある。

 

 そうなると一階で伸びている部下はもちろん、最上階にいる自分や村長も危ない。そして、逆転を賭けた勝負の続行も不可能になる。

 そのため、彼にとってブヨンの出現は全く歓迎できないものだった。

 

「う~ん、頑張ってみるけど、簡単には勝てなさそうね」

 そして、ブヨンは悪の宇宙人……ドミグラによってキリで強化され、本来の実力と比べると圧倒的に強くなっていた。

 

 その戦闘力は約1万。約7千のタイツを越えている。元々の知能や経験によって蓄積された技などの差があるため、タイツに勝ち目がないわけでは無い。しかし、簡単には勝てない強さだ。

 

「どうにか出来ないのか、将軍!?」

「……仕方がない。こうなったら一旦勝負を中止して――」

 断腸の思いで勝負を中断しようとするホワイト将軍。

 

「だから、勝負は悟空君達に任せるわ!」

「「へっ?」」

 しかし、タイツはそう言うと構わずブヨンと戦い続けている。そして、悟空達も彼女がテレパシーで事情を伝えたのか、すぐに階段を上って二階に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

「ふっふっふ、儂等は二階の番人……を急遽頼まれた、ジングル村の者です」

「ここを通りたければ我々の出す勝負に勝ってもらおうか! っで、いいんだっけ? セリフ間違ってないよな?」

「大丈夫だ! いやー、芝居なんて初めてだから緊張するなー」

 

 そして悟空達を迎え撃った二階の番人は、なんとジングル村の村人達だった。

「おいおい……本当にただの村人だぞ、この人達」

「あ、スノのお父さんもいるじゃない」

「パートや日雇いに番人を頼むなよ」

 

 気や動きを見る限り、村人に変装した軍人ではない。本当にただの一般人だと見て取ったヤムチャ達は困惑していた。

 この歴史のマッスルタワーは原作とは設計が異なり、二階に兵士達の宿舎があった。そのため、戦闘を行うようなスペースがない。

 なので、ホワイト将軍はここでの勝負は戦闘以外にする事にしたのだ。

 

「さあ、ワシの勝負はこの知恵の輪だ。外してごらん」

「私は詰将棋だ」

「俺が出題するクイズが解けるかな~」

「ちょっとサイン貰えるかな? 妻が君のファンなんだ」

「あ、ワシもワシも」

 

「た、戦うんじゃねぇのか?」

『フハハハ! 俺は勝負をしろと言ったのであって、戦って勝ち抜けとは言っていないぞ! さあ、どうする!?』

「うわぁ、地下で姉さんが戦ってるのに、緊張感が無いわねぇ」

 

 ジングル村の人々が出す頭脳戦に悟空やヤムチャはタジタジと引き下がり。代わりにブルマやラズリ、ラピスが前に出た。

「知恵の輪ね? ホイ、終わり。詰将棋は……金をここ、次に銀をここ、最後にまた金を動かして、王手!」

「クイズって、ことわざの穴埋め問題じゃないか。これぐらいなら知ってるよ」

「サインってこれで良いか?」

 

 知恵の輪や詰め将棋はブルマがすぐに解き、ラズリも正解を言い当て、ラピスが慣れた手つきでサインを書いていく。

『くっ、やはりすぐに解かれたか! 孫悟空とヤムチャとクリリンだけだったら、ここだけで足止め出来たというのに!』

 ホワイト将軍にとって想定外だったのは、天才少女のブルマや都でしっかり学校に通っているラズリ、そして女性ファンの多いラピスが一行に加わっていた事だった。

 

「三人とも助かったぞ! ホワイトのおっちゃんが言う通り、オラ達だけだったらここで負けてたかもしれねぇ!」

「孫君、あんた少しは悔しがりなさいよ」

「面目ない。頭の修行もしたんだが……」

「飛び級で大学生になったブルマさんには敵いませんよ」

 

「おおーいっ!」

「待ってくださーい!」

 そこにウーロンとプーアルが合流し、三階へ進んだ。そこは、二階と違って大きな広場になっている。

 

 マッスルタワーの三階は航空機の発着場兼整備場になっていた。この世界の航空機は、既に機種によっては垂直離陸が可能であるため、滑走路が必要ない。そのため、雪で頻繁に埋め尽くされる屋外に発着場を造るより、壁を開放できるようにして屋内に作った方がいいと考えられたのだ。

 

 そのため、三階の天井は高く造られている。

『俺ノ名ハ、めたりっく軍曹。コノ三階ハ通サナイゾ!』

 しかし、メタリック軍曹が立ち上がるとそれほど高くないように見える。

 

「デケェっ! こいつ、牛魔王のおっちゃんよりデケェぞ!」

「こいつ、本当に人間か!? ……いや、ロボットだ!」

「ええっ!? でも大きさ以外は人間にしか見えないぞ!?」

「クリリン、気を探ってみな。あんなでかいくせに気を全く感じないなんて、ロボットでもなきゃ不自然だろ」

 

「いや、ラズリさん、俺まだ気を探るのって苦手で……でもロボットだって言うなら、歴史改変者に強化されてないかぎり戦える!」

 そう言って構えを取るクリリンに向かって、メタリック軍曹は素早く間合いを詰めると踏みつけようとした。

 

「たーっ!」

 一斉にその場から退く悟空達。クリリンは彼らの中で最も早くメタリック軍曹に近づくと、飛び上がってその頭部を思い切り蹴りつけた。

 

『……フ』

「えっ!? 効いてない!? うわっ!?」

 しかし、彼の蹴りはメタリック軍曹にダメージを与えられなかった。逆に、左手で軽くはたき落とされてしまう。

 

「こいつっ!」

「なかなかやるな。どどん波!」

 ラピスが放ったどどん波がメタリック軍曹の頭部に命中するが、人工皮膚に小さな焦げ跡が出来ただけだ。

 

 メタリック軍曹の戦闘力は500相当。さらに、体は改良した特殊合金製で悟空やヤムチャでもすぐには破壊できない程の頑丈さを備えている。クリリンだけではなく、ラピス、そしてブルマでも有効打を与えるのは難しい。

『アーン』

 そして、お返しとばかりに開いたメタリック軍曹の口から、光線が放たれる。……原作では口から出るのはミサイルだったが、装填数の問題を解決するためこの時代ではエネルギー波に変更している。

 

「危ないっ!」

 とっさにラピスを掴んでブルマが瞬間移動して回避する。

「この野郎っ!」

「くらえっ!」

 悟空とヤムチャがメタリック軍曹の腹や脚に拳や蹴りを叩き込むが、やはり大きなダメージは与えられない。

 

『ふん!』

 そして、メタリック軍曹はクリリンを引きずって離れたラズリに向かって右手を向けると、肘から先を発射した。

「腕を飛ばせるんか!? すげぇなっ! でもっ、オラの如意棒もすげぇぞ!」

 しかし、悟空が如意棒を伸ばして叩きつけ、ロケットパンチの軌道を変えた。

 

「助かったよ」

「気にすんなって。でもどうすっかな? あいつ、かなり頑丈だぞ」

「プーアル、お前が倒したって言ってたロボットみたいにやっつけられないのかよ!?」

「無茶言わないでよ! ここじゃ天井の高さが足りないし、あいつ見た目よりすばしっこいから避けられちゃう!」

「あのメタリック軍曹ってロボット、なんか変ね」

 

『フフッ』

 メタリック軍曹を攻略する有効な手段を思いつかず、身構えたまま話し合う悟空達。メタリック軍曹は、余裕の笑みを浮かべながら、戻ってきた左腕を回収して再び装着して見せる。

 

 メタリック軍曹相手にどれだけ時間をかけても問題なかった原作と違い、この歴史のホワイト将軍との勝負には時間制限がある。

 これまで時間をかけずに進んできたおかげでまだ四十五分以上あるが、そう長く時間をかける事は出来ない。

 

 そしてメタリック軍曹にとっては、無理をして悟空達を倒す必要はない。彼らが迷っている内は余裕を見せる演技をして、バッテリーの節約をして問題ないのだ。

 ブルマが何か感づいた様子なのが、儂としては不安だが。もしや、メタリック軍曹を遠隔操作しているのが3号である事がばれたのだろうか?

 

「こうなったらかめはめ波で吹っ飛ばすか?」

「よし、じゃあみんなで一斉に――」

「ちょっと待って。あたしに考えがあるわ。いい? 今からあたしが言う通りに動いて」

 

 短い作戦会議の後、悟空とヤムチャが動き出した。

「こっちだ、デカブツ!」

「オラはここだぞ!」

 二人はメタリック軍曹の周囲を高速で移動しながら残像拳を放った。スピードでは二人に敵わないメタリック軍曹は弱点である背中のバッテリーを守るために、そして二人が自分をすり抜けて四階へ続く階段を上らないよう後ろに下がり、遠距離攻撃を繰り出す。

 

『アーン。クラエ!』

 口から放つ光線と、右手のロケットパンチをそれぞれヤムチャと悟空に向かって放った。光線はヤムチャに避けられたが、ロケットパンチは悟空に命中した。

 

「ぐぎぎぎっ! ブルマ、これでいいか!?」

 いや、命中したのではなく受け止められたのだ。悟空はそのままメタリック軍曹の右腕を掴んで、本体の元に戻らないように引き留める。

 

「OKよ、孫君!」

 その間に駆け寄ったブルマが、メタリック軍曹の指に何かを巻きつけた。そして、すぐに悟空が手を放す。

『何ノツモリダ?』

 困惑した様子のメタリック軍曹だったが、ブルマの作戦がすぐに効果を発揮した。

 

『ナ、何ダ!? 体ガ縮ム!?』

 その巨体が見る見るうちに縮んでいき、プーアルと同じくらいの大きさになってしまった。

 そう、ブルマがメタリック軍曹の指に巻き付けたのは彼女の発明したミクロバンドだったのだ。

 

「ふう、タイマー機能をつけておいてよかったわ」

「でもどうするんだ? 小さくなったからって、丈夫さは変わらないんだろ?」

「それはね、こうするのよ」

 

 そう言うと、ブルマは念動力で小さくなったメタリック軍曹を持ち上げ、クルクルと回すと、すぐに背中の乾電池型バッテリーを外してしまった。

「よく背中にバッテリーがあるって気が付いたね」

「まあね。ところで皆。あたしはちょっとこのロボットを調べたいから先に行ってて」

 

『お、おいっ! そのメタリック軍曹は我がレッドリボン軍の兵器で――』

「別に壊しはしないわよ、ちょっと気になる所があるから調べるだけ。その代わり、このあたしを足止めできるんだからいいでしょ!?」

『む、むう……』

 

 ブルマに怒鳴り返されたホワイト将軍は、呻いて引き下がった。実際は機密情報の塊であるロボットを調べられるのはなんとしても止めるべき事態だが、そこまで考え付かなかったようだ。

 

「分かった。おっ! この気は、ターレス兄ちゃんだ!」

 その時、地下にターレスの気が出現した。

 

 

 

 

 

 

 時間をやや巻き戻し、儂はスカウターでキリを感知したため、各種機器を携帯した分身をマッスルタワーに瞬間移動で送り込んだ。

 もちろん、気を消して光学迷彩装置を使用した状態で。四身の拳で作った分身でも、すぐに消されたのでは送る意味がないからな。

 

「……まだ来ないか」

 なんと、その分身から見える範囲にドミグラがいた。マッスルタワーからやや離れた上空に浮かんだまま佇んでいる。

 

(この歴史にもドミグラがいたのか。まあ、メチカブラ一味が存在するなら、ドミグラが存在しても不思議はない。むしろ納得じゃが)

 儂がドミグラ一味もこの歴史に関わっていると知ったのは、この時が初めてだった。

 

 実際には、ウィローを倒した二年前の『この世で一番強いヤツ』事件の時には彼と彼の配下であるシャメルが動いていた。しかし、その時はドミグラは裏方に徹し、タイムパトロールと戦ったシャメルはメチカブラ一味の魔神、『死神』サルサに魔術で化けていたので気が付かなかったのだ。

 

 一応結界を張っているようだが、キリや魔力を感知する儂のスカウターを通してみると丸見えだ。

(今回はドミグラだったか。バーダックを助けるのはまたお預けになったが、ドミグラのデータを計測するチャンスではある。

 それと、キリで強化された存在と戦っているのはタイツか?)

 

 儂はさっそく計測を始めながら、マッスルタワーの地下でブヨンと戦っているタイツの様子を見る。相手が、この歴史では存在しないはずのブヨンである事には驚いたが、そこまで危険な状態ではないようだ。

 少なくとも、ゲームのようにタイムパトロールが直接相手をするほどではない。

 

(しかし、一応テレパシーで声をかけてみるか。もう少しでコツが掴めそうだと言っていたし)

 っと、考えているとドミグラの前に人影が現れた。

 

「今度はお前か、ドミグラ! この歴史を貴様の自由にはさせないぞ!」

 やってきたのはタイムパトロールのトランクスだった。彼はさっそくスーパーサイヤ人に成るとドミグラに向かって啖呵を切る。

 

「来たか、タイムパトロール。だが、待て。今回はお前達に協力してやっているのだから、話ぐらい聞いてくれてもいいだろう?」

 しかし、ドミグラはそう言って話し合いを提案した。油断なく警戒しているが、殺気は感じない。

「協力だと? 他の歴史から怪物を連れて来る事がか?」

 トランクスはドミグラの態度を不気味に思ったのか、すぐに挑みかからず身構えたまま聞き返す。

 

 その様子は話し合いに応じたというより、ただ警戒しているだけのようだ。しかし、ドミグラはそれで構わないとばかりに話を続ける。

「そうだ。本来の歴史に存在したブヨンという怪物を、この歴史に連れて来た。そのお陰で、この歴史と本来の歴史の乖離は僅かだが抑えられた。戦う相手が孫悟空ではないから、本当に僅かだが、そこは見逃してもらおう」

 

「見逃せるか! それでこの歴史の伯母さんが死んだらどうするつもりだ!?」

「殺させるつもりなら、もっとキリで強化している。戦闘力をもう10万や100万あげるくらい、私にとっては造作もない事ぐらいわかるだろう?」

 

「……用件は何だ?」

 ドミグラの言葉に納得したのか、身構えたままだが話を促すトランクス。ドミグラは笑みを深くした。

「お前達タイムパトロールと手を組みたい。暗黒魔王メチカブラを倒す、もしくは再封印するためにな」

 それは、ドミグラがゲームやコミックで行ったのと同じ提案だ。

 

「俺達の仲間になりたい、と言う事か?」

「勘違いするな。時の巻物とトキトキを諦めるつもりはない。ただ、共通の敵を倒すために協力し合うべきだと言っているのだ」

 

「そうか、なら……断る!」

 しかし、トランクス達の返事はゲームやコミックスとは異なっていた。

「何? 本気か? 返事は時の界王神と相談してからで構わんのだぞ」

「その時の界王神様も、俺と同じ意見だ!」

 

 きっぱり断られて狼狽えた様子のドミグラに、トランクスはさらに拒絶の意志を表す。いったい何故ゲームやコミック……つまり原作と異なる展開になったのか儂は訝しく思ったが、なんの事は無い。そもそもの原因はやっぱり儂だった。

 

 儂が提供した仙豆のお陰で、トランクス達タイムパトロールは暗黒魔王メチカブラ一味とある程度戦えていた。決して優勢ではないが一方的な劣勢でもなく、メチカブラが集めている暗黒ドラゴンボールを一つ確保する事に成功している。

 

 そのため、トランクスや時の界王神はドミグラと手を組む決断を下さなかったのだ。

 敵の敵は味方という言葉もあるが、時の界王神にとってはドミグラも結局は敵。これまでの関係を考えると、手を組んでも途中で裏切らないと信用できなくても無理はない。

 

 そして、「それでも背に腹は代えられない」と彼女に思わせる状況ではなかったので、ドミグラの提案は断られたのだ。

「そ、そうか。なら、トワに洗脳されているバーダックという男を解放するのにも協力しよう。これでどうだ?」

「バーダックさんはお前達の手を借りなくても、俺達で取り戻す!」

 

「くっ、なら我々も暗黒ドラゴンボールを確保しよう! それを貴様らに渡せば信用の証にならないか!?」

「何!? ……お前達も暗黒ドラゴンボールを狙っているのか!?」

「何故そうなる!?」

 

 いつの間にか、ドミグラとトランクスは掛け合いを続けながらも戦闘に突入していた。とはいえ、ドミグラは交渉を諦めていないのか、彼にとってはかなりの好条件を提示しながらトランクスの攻撃を避け続けている。

 しかし、元々信頼関係がないため全て空振りに終わっていた。

 

 その様子は、ドミグラが必死な分滑稽に見える。

 

「なら、別の歴史から魔人ブウやブロリー、他の宇宙の戦士の細胞を持って来てやるぞ! それに倒した魔神の細胞を、残っていれば死体も提供してやる!」

『トランクス君、とりあえず剣を納めて、ドミグラの話を検討するべきではないだろうか?』

 

「ゲロさん!? 突然テレパシーで割って入らないでください!」

『ちょっとゲロ!? そんな簡単に釣られないで頂戴! それとドミグラに近くにいる事がばれてるから、急いで離れなさい!』

 

 いかん。あまりにも魅力的な提案に、思わず食指が動いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 外で儂がコントのような真似をして、悟空達が二階から三階に進んでいる間にもタイツはスピリットブーストで戦闘力を倍増させてブヨンと戦い続けていた。

「どこから来たのか知らないけど、面倒な奴ね!」

『ばぁぁっ!』

 

 奇声と共に触角から放たれる電撃を瞬間移動で回避したタイツは、回り込んだ背後から鋭い蹴りを後頭部に叩き込む。後頭部を蹴られたブヨンは前のめりになり……そのまま一回転しながら尻尾でタイツを下から攻撃する。

「こいつ、打撃が全然効かない! 骨は無いの!?」

 そう怒鳴りながら回避したタイツを、ブヨンは尻尾で追撃し続ける。

 

 タイツは戦い始めてからすぐ、ブヨンに打撃や気功波による攻撃が効かない事に気が付いた。約二年前に戦った狂暴戦士ミソカッツンと同じタイプの体質だったからだ。

 そこでタイツは様々な攻撃を試した。瞬間移動で攪乱しながら、先ほどのように頭部を狙い、短い四肢の関節を攻撃し、天下一武道会だったら反則負けになるだろう目つぶしや、舌を掴んで引きちぎれないか試みた。

 

 しかし、そのどれもが有効打になりえない。ブヨンのどこを殴ってもゴムの塊のような手応えが返ってくるだけだったし、目潰しは太陽拳と同じくらいの時間で回復し、舌は引っ張れば引っ張っただけ伸びるだけだった。

「気の大きさでは、今のあたしの方が上回っているはずなのに!」

 スピリットブーストを使用して戦闘力を素の倍、約1万4千にしたタイツだが、それでもブヨンの体には通用しなかった。

 

 また、戦場となった地下室もタイツにとっては不利に働いた。

「こいつっ、柱があっても構いなしに攻撃するのは止めなさいよ!」

 マッスルタワーを破壊しないために、タイツはブヨンが放つ攻撃のいくつかを回避ではなく防御する事を強いられていた。

 また、地上階に被害を出さずブヨンを気功波で攻撃するのがなかなか難しい。

 

 もちろんチャンスがないわけでは無い。

「サイコどどん波!」

 超能力で軌道を自在に操作する事が出来るどどん波を撃ち、ブヨンの腹を貫こうとする。

 

『グッ……バハァ!』

 しかし、ブヨンの腹を貫く事が出来ず跳ね返されてしまった。しかし、そこまではタイツの計算通りだ。

「一人排球弾! アターック!」

 跳ね返されたサイコどどん波を、更に弾き返したのだ。狙いは、ブヨンのだらしなく開いた口。

 

『ア゛ッ! ア~ン!』

 狙い違わずブヨンの口の中に命中する排球弾だったが、なんとブヨンの首の後ろが大きく伸びたかと思うと、次の瞬間口の中から排球弾がタイツに向かって吐き出された。

 

「いいっ!? 口の中でもダメなの!?」

 慌ててフォトンシールドを張って構えるが、跳ね返ってきた排球弾を受け止め切れずに壁に叩きつけられるタイツ。キリで強化されたブヨンダークの柔軟性は、ミソカッツン以上だった。

 

「ぐっ! こうなったら助っ人を呼ぶしかないか。『ちょっと、ホワイト将軍』」

 いつの間にか監視カメラかスピーカーが壊れたのか、声がしなくなっていたホワイト将軍にテレパシーで一応断りを入れようとしたタイツだったが……。

 

『ガ~ッ!』

 ブヨンが電撃を放った。反応するのが遅れたタイツは、とっさに瞬間移動でブヨンの背後に逃げる。しかし、タイツと戦ううちに瞬間移動に慣れたブヨンは、電撃を放った直後に尻尾で背後を薙ぎ払おうとしていた。

 

「しまっ!?」

 ブヨンの尻尾がタイツを薙ぎ払う――。

「はぁ!」

 かに思えた瞬間、前触れもなく現れたターレスがブヨンの尻尾を蹴り返して防いだ。

 

「ターレス!? あんた、なんでここにいるのよ!?」

「ヤードラット星で修行してたら、爺さんから助っ人に来いって言われたんだよ。全く、成功するのにだいぶ時間がかかったぜ」

「って、あんた自力で瞬間移動してきたの!?」

 

「まあな。目印にしたお前の気がしょっちゅう消えたり現れたりするから、苦労したぜ。

 おっとっ!」

 

 話し込む二人に対して距離を取ったブヨンが、電撃を放った。突然現れたターレスに対してやや困惑していたようだが、とりあえず敵だと判断したらしい。

 しかし、左右に分かれて回避したターレスとタイツは会話を続けた。

 

「弱くは無いが、お前が苦戦するほどの相手とは思えねぇな」

「二年前、あたし達が倒した狂暴戦士、覚えてる?」

「あいつと同じって事か。じゃあ、同じ方法で倒すか」

「いや、ここじゃ狭くて巨大化は……ああ、もういいか。助っ人来ちゃったし」

 

 タイツがテレパシーでホワイト将軍に一方的なメッセージを送った次の瞬間、ターレスがブヨンに向かって突っ込む。

『グフフッ!』

 ブヨンはそれに対して、避けるどころか短い両腕を広げて彼を歓迎した。これまで通り柔軟性にとんだ肉体を活かして跳ね返し、体勢を崩したところを攻撃するつもりだったのだろう。

 

「はっ! 悪いが穴倉から出てもらうぜ!」

 しかし、ブヨンは超能力についてあまりに無知だった。ターレスと接触した次の瞬間、彼は薄暗い地下室ではなく、広大な銀世界へと放り出されていたのだ。

 

「おお、ターレスか。気を消していたのに良く儂の位置が分かったのぅ」

「へっ、コツを掴んだって……寒っ!? なんだここは!?」

 儂のすぐ目の前にブヨンと共にターレスが現れたので、光学迷彩装置を解除して姿を見せる。

 ターレスはそんな儂に向かって不敵な笑みを浮かべかけて……気温差に驚いて声を上げた。戦闘服のインナーは着ているので防寒は出来ているはずだが、顔や手は素肌が出ているからな。

 

「ヤッホー、お爺ちゃん! 話はあいつを倒した後……あれ?」

『……』

 早速巨大化してブヨン相手に強烈なパンチを叩き込もうとしたタイツだったが、ターレスから離れて雪原に墜落したブヨンは、すっかり凍り付いていた。禍々しい気もすっかり消えてしまっている。

 

「……寒さが弱点だったのね」

「地下室の天井に穴でも開ければ、すぐに勝てたんじゃないか?」

「いや、壊しちゃいけないってルールだったから……」

 そう二人が口々に言っている間に、凍り付いたブヨンの姿が薄くなると、まるで幻のように消えてしまった。残ったのは、大きくブヨンの形にへこんだ雪だけだ。

 

「消えた? 歴史改変者が回収したの?」

「いや、倒された事で術が解けて本来の歴史に戻ったのだろう。戻った先でどうなっているかは知らんが」

 ブヨンを連れて来たドミグラ本人に聞けば分かるかもしれんが……彼はターレス達が知覚できない結界の内側で、トランクスと戦闘(?)を続けている。

 

「ホワイト将軍、聞こえてる!? 外に出るのに瞬間移動を使ったし、ターレスを呼んじゃったけど、反則負けにはしないわよね!? あの怪物を倒すためだったんだから!」

「勝負? 何のことだ?」

『もちろんだ! だが、以後の勝負にそのターレスと……ゲゲ!? ドクター・ゲロは参加禁止だからな!』

 

 タイツの声に、ブヨンが消えてほっと胸を撫でおろしていただろうホワイト将軍が、理解ある審判を下してくれた。

 後は、悟空達とトランクス、それぞれの勝負の行方がどうなるか次第じゃな。

 

 




〇戦闘力推移

・ターレス:8140→10170 戦闘力1万の大台に。さらに、瞬間移動を習得。



〇ブヨンダーク

 ドミグラが異なる歴史から連れて来たブヨンをキリで強化した存在。キリで強化された事で元々脅威的だった体の柔軟性は狂暴戦士ミソカッツン以上になり、さらに電撃を出せる触角、鞭のようにしなる長い尻尾を持つ。
 戦闘力は約1万にまで強化されていた。

 しかし、寒さが致命的な弱点なのは元のままだったため、マッスルタワーの外に瞬間移動で連れ出された瞬間敗北が決定した。

 原作では地下室ではなく五階の番人で、四階から階段を上るのではなく、六階の落とし穴から行く事が出来る。悟空以前は六階まで進んだ侵入者はいなかったはずなのに、ブヨンがいる部屋の中には喰われたと思われる人族が転がっているので……粛清された部下の成れの果てかもしれない。

 原作でも悟空のかめはめ波を跳ね返すなど、苦戦させた。だが、悟空がマッスルタワーの壁を壊して冷気を呼び込んだことでカチカチに凍ってしまい、その後に砕かれている。



〇ドミグラとタイムパトロールの協力体制

 原作程タイムパトロールが暗黒魔王メチカブラ一味に追い詰められていないため、難航中。



 佐藤東沙様、gsころりん様、みえる様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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