ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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86話 ついに(一部に)明かされる正体!

 ホワイト将軍以下、マッスルタワーにいたレッドリボン軍を捕虜という名目で行動を制限する。それは悟空達がドラゴンボール探しを続行するなら、8号にとって必須の措置だった。

 何故なら、ホワイト将軍達は勝負には負けたが壊滅したわけでは無いからだ。

 

 殴り倒された兵士達やムラサキ曹長達は軽傷なので、すぐ動ける。メタリック軍曹は電池を抜かれただけで、ホワイト将軍に至ってはキリで強化されていた間のダメージは残らないので、ほぼ無傷。そして何より問題なのが8号だ。

 

 レッドリボン軍所属の8号が、ドラゴンボールの捜索を続けている他の将兵の下に派遣されると、彼の精神的に良くない。

 そしてタイツと我が社の副社長が進めようとしているあるビジネスで、ホワイト将軍達がジングル村にいた方が好都合だからだ。

 

 そして……。

「それにしても捕虜か。何時からGCコーポレーションは軍事活動までするようになったんだ?」

「軍事活動ね。もしかして、ドクター・フラッペって言う人と関係あったりするの、お爺ちゃん」

「サイボーグ3号君、メチャクチャ強かったものね。あたしでも見えなかったし」

「む、むぅ……」

 

 そして、ホワイト将軍とブルマ、タイツに囲まれて正座する儂。まるで儂の方が捕虜として尋問されているようだ。

「爺さんよ、こうなっちゃ言い逃れは無理だ。吐いちまった方が楽になるぜ」

 さらにターレスからも自供を促された儂は、観念したのだった。……実際、証拠はガチガチに固められている。

 

 メタリック軍曹を解析したブルマによって、彼を遠隔操作していたのが人造人間3号である事はばれている。そして、サイボーグ3号として潜入してもらっている8号の高性能さは隠しようがない。

 フラッペが8号のような人造人間を作れるなら、今の桃白白に勝てないはずが無いからな。

 

「そうじゃ、儂がドクター・フラッペの正体じゃ」

「何!? 本人だと!? 実はフラッペはお前が遠隔操作しているロボットじゃないかとは思っていたが……じゃあ、本物のフラッペはどうした!?」

「ホワイト将軍、本物も何も、ドクター・フラッペは最初から儂が変装して演じていた、実在しない人物じゃ。『本物のフラッペ』は存在しない」

「な、なんだと……!」

 

 驚くホワイト将軍。そして、それ以上にショックを受けた様子なのがブルマだった。

「じゃあ、桃白白様は!? 桃白白様ともグルだったの!?」

 ブルマは桃白白のファンなので、彼が儂によって作られたヒーローなのではないかと不安だったようだ。……思いっきり儂の胸倉を掴み上げて首を絞めにかかっているから、覚えているのは不安ではなく怒りかもしれない。

 

「いや、別に儂は桃白白をヒーローに仕立て上げようとしたわけではない。レッドリボン軍を誘う為に、悪の科学者っぽく見えるように活動していたら、それを率先して解決したのが当時まだ儂と面識のなかった桃白白だっただけじゃ」

 

 少なくとも、最初はそうだった。途中から、あの桃白白が警察に協力して動いているなら解決してくれるだろうと当てにして、警察だけでは倒せないようなロボットを配置したのは事実だが。

 だとしても、原作では世界一の殺し屋だった桃白白が、まさか主演映画が作られるほどの国民的ヒーローになるとは儂だって予想しなかった。

 

「それに、フラッペとの戦いが注目されがちじゃが、桃白白はフラッペ以外の悪党も大勢退治している。それは正真正銘、儂とは無関係じゃ」

 桃白白の活躍によって退治された悪党は、フラッペと関係ない悪党の方が多い。しかし、そうした悪党は普通の銀行強盗や山賊、誘拐犯、海賊、密輸業者なので、映画やドラマの悪役としては使われないためフラッペとの対決の印象ばかりが強くなっているのだが。

 

「本当!?」

「うむ、まあ、去年には儂の正体も彼には打ち明けたが」

「やっぱりグルなんじゃない!」

 

「おいおい、落ち着けお嬢さん。そんなに締め上げられたんじゃ話せるものも話せ……全然苦しそうじゃないな、こいつ」

「まあ、爺さんだからな。それより、なんでレッドリボン軍を誘うとか、潜入なんてまどろっこしい事をやってるんだ?」

「そうよね。お爺ちゃんがその気になれば、一日で壊滅できるし、乗っ取る事も出来るんじゃないの?」

 

 そして、尋問は儂が何故そんな事をしたのかという動機に及んだ。

「それは、悪の科学者ゴッコが楽しかった――」

「お爺ちゃん、本当の事を言わないとパパや最長老様に言いつけるわよ」

「仕方ない。実は、未来予知に関する事なんじゃが……」

 

 っと、儂はフラッペとして活動していた理由を説明した。一人、ホワイト将軍だけは歴史云々に関して理解が追い付いていない様子だったが、まあ何とか納得してくれた。

「世界はここ一つではなく、複数のパラレルワールドとやらが存在して、今まで俺達が悪の宇宙人と呼んでいた存在は、タイムトラベラーだった。……はあ、SFの世界だな。

 まあ、それはいい。気になるのは、貴様がレッド総帥の信頼を獲得して軍での地位を上げた事に何か関係しているのか?」

 

「いや、それは全くの偶然じゃ。儂も予期していなかった」

 レッド総帥の身長を伸ばす事に成功したのは、儂にとってもイレギュラーな出来事だった。

「……未来予知と言っても、結構穴だらけだな」

「うむ。儂もそう思う」

 

「それで、サイボーグ3号は人造人間8号なのよね? 7号は誰?」

「多分、サイボーグ1号、ランファンじゃないか? ちなみに、サイボーグ2号はお前らも知っているランチだ」

「ランチさんがサイボーグ、つまり人造人間!? ……まあ、だったとしても違和感ないわね」

「そうね、角が生えてたし、くしゃみで性格が変わるし」

 

「ランチの性格に関しては、改造前からじゃ」

「マジ!? そっちの方が驚きなんだけど?」

 

「ランファンってこの前の天下一武道会の予選に出ていた女だよな? 昔、歴史改変者に操られた。それが7号で、悟空がサイちゃんって呼んでるのが8号なら、ランチは9号か?」

「そうじゃ、ターレス。後、10号がサイボーグ4号として活動中じゃ」

「俺が知らない間にずいぶん増えたな。道理でギネの後、新しい人造人間を作らないはずだぜ」

 

「それにしても、なんでその人たちを人造人間にしたの?」

「それはの、フラッペとして潜入している時にレッドリボン軍の縄張り内で彼女達が死んだからじゃよ」

 特にランファンやランチを狙っていたわけでは無い。本当に偶然だ。なお、マロンに関してはブルマ達と面識がないため、態々名前を口にはしない。

 

「なるほど。我がレッドリボン軍の戦力の半分は、ゲロと繋がっていたという事か。これではクーデターを起こしても無駄だな」

「クーデター? あんた達、そんな事企んでたの?」

「ああ、王立国防軍に食い込んだ後にな」

 

 ホワイト将軍は勝負でレッドリボン軍の目的を話すと約束したが、クーデターを企んでいる事までは話すつもりはなかった。しかし、フラッペの正体がゲロだった事で、黙っていても意味は無いと判断したのだろう。

「爺さん、こいつらがクーデターを起こしたらどうするつもりだったんだ?」

「それはもちろん、起こす前に止めるつもりじゃった。レッド総帥には、合法的に表舞台に立ってほしいと儂は考えているからの」

 

「合法的に? そんな方法があるのか?」

「いや、今は無い」

 地球国の政治形態は世襲による王政だ。その下には貴族……現在のグルメス公爵や、ジャガーの実家であるバッタ男爵等がいる。ただ、町や村単位になると国民が選挙で代表者を選ぶ事もある。

 

 なので、現時点ではどれほど国民の支持を得ようと、合法的な手段では国王になる事は出来ない。せいぜい都の長までだ。しかし、民主主義の概念は存在している。

「だから、これから制度を変えればいいだけの話じゃ。国王を象徴的な存在にし、その国王の信任を得て国民に選ばれた人物が大統領として政治を行う、とかの」

 と、儂が生きた前世の日本の政治形態を例に話す。

 

「制度を変えるって、お爺ちゃんが言うと洒落じゃすまないわね。でも、お爺ちゃん、国王さんに不満でもあったの?」

「タイツ、そう言うわけでは無い。ただの……極稀に儂を次期国王に推薦しようとするような言動があってな」

 

 現地球国国王に問題があるわけでは無い。むしろ、彼はよくやっていると儂は思う。特に教育は通信教育を充実させることで、学校の無い辺境の村でもそれなりの教育を受ける事が出来るのは素晴らしい。おかげで、地球国の識字率はとても高い。

 原作悟空のように、一人きりで半ば野生児のように生活している場合はどうしようもないが。

 

 まあ、都の治安が悪く、辺境では魔族やモンスターや山賊が野放しになっていた等、問題がないわけではない。しかし、それでもクーデターを起こして政権を奪っても国民から支持が得られるような悪政や暴政とは程遠い。

 それに、我が社が警備業界に進出してから、問題の治安も改善傾向にある。

 

 儂が問題視する点と言えば、時折儂を次期国王になる事を勧めるような事を言う事ぐらいだろうか。内密に、公的な文書に残さない形で言ってくるので、知っている者は数名だが。

 

「俺達レッドリボン軍のライバルは、お前だったのか?」

「止めてくれ。全力で儂は敗北するぞ。それに、我が社が強大で、儂や人造人間達に勝てない事は分かっていたじゃろうに」

 

「まあ、そうだな。話を戻すが、あんたはレッド総帥の味方、なのか?」

「別にそうとも言えんな。ただ、クーデターが成功して王位をレッド総帥が手に入れた場合、先行きが暗そうじゃから、止めた方が良いとは思っているが」

 

 クーデターで政権を手に入れる方法では、現国王が良い為政者である以上国民からの支持を得るのは難しい。

 そうである以上、国民を統制し秩序を維持するには力で押さえつけるしかない。……レッドリボン軍が体制側になる以上、これは必須だ。

 

 しかし、今はまだ潜伏しているピッコロ大魔王とコーチンや、いずれ地球にやってくるだろうベジータやフリーザ、そして何より現在進行形で暗躍している悪の宇宙人こと歴史改変者達相手に対処するには、レッドリボン軍では力不足だ。

 

 もちろん、脅威には儂等が立ち向かうが……それを国民に知られても、レッド総帥が力で体制を維持する事が可能かは大いに疑問だ。

 特に、レッド総帥はピッコロ大魔王やスラッグ、そしてフリーザのように、配下に対して圧倒的な強さを持っている訳ではない。

 

 ピッコロ大魔王達は、それぞれの配下が反逆を企てたとしても、一人だけで壊滅させる事が出来る。だが、レッド総帥には不可能だ。だから、彼が独裁者になる場合は、普通の独裁者と同じように部下や国民の反乱を恐れ警戒し続けなければならない。

 

 国民が知る事が出来る情報を完全に統制すれば、反乱を防ぐことも可能だろう。しかし……それをすると我が社の経済活動が著しく阻害され、副社長の要望で儂が動かざるをえなくなるので、止めてほしい。

 

「先行きが暗い、か。それは、お前らが倒そうとしている宇宙に君臨する悪の帝王が存在するからか? それと、お前らが歴史改変者と呼んでいるタイムトラベラーの目的はなんだ?」

「察しが良くて助かる。前半の問いに対しては、その通りじゃと答えよう」

 

 自軍の兵器だけではなく自分自身や大佐二名が操られて正気を失い、自軍の基地内に謎の怪物(ブヨン)を送り込まれた。これではホワイト将軍が悪の宇宙人に対して、自分達ではどうにもならない相手だと考えるようになっても当然だ。

 

「ターレス、知らない人がいるところじゃ、悪の宇宙人って言う決まりだったじゃない」

「あ、やべっ」

「それはもうホワイト将軍には良いじゃろう。何せ、捕虜じゃし。それで歴史改変者についてザックリ説明するとじゃな――」

 

 儂はざっくりとホワイト将軍に歴史改変者について説明した。原作については語らず、歴史改変者は悪の宇宙人ではなく、悪のタイムトラベラーで、最終的には歴史を支配して己の野望を叶えようとしている存在であると説明する。

 

 また、歴史改変者に対抗する組織としてタイムパトロールが存在し、本来は彼らが歴史改変者と戦っていると説明する。

「ますますSFっぽくなってきたな。だが、そのタイムパトロールはなんであの怪物が現れた時は出てこなかったんだ?」

 

「いや、タイムパトロールも来ていたが、歴史改変者本人と戦うのに忙しくて怪物の方にまで手が回らなかったのじゃよ。

 それに、彼らは基本的に未来から来る。彼等からすると過去になるこの時代の我々には顔を見せられん」

 

「そのタイムパトロールについて知っているあんたは何なんだ?」

「儂は外部協力者じゃよ。この歴史の地球を始めとした惑星に、歴史改変者が現れたら通報するよう頼まれている」

「……なるほど。俺達がクーデターを起こして地球を手に入れても、手に負えなくなるだろうってのはよく分かった」

 

 がっくりと肩を落とすホワイト将軍。納得してくれたようじゃし、これで儂の出番は終わりだ。

「じゃあ、一息入れたら村長さんも呼んで今後の事を話しましょうか。実は、あなたにも一枚嚙んで欲しいビジネスの話があるのよ」

 次はタイツの番だ。

 

 

 

 

 

 

 その頃、まだフラッペとして潜入している儂(分身)は、困惑していた。

 場所はレッドリボン軍基地の会議室。レッド総帥やブラック補佐、そしてオレンジ将軍もいる。また、モニターにはブルー将軍の顔も映っていた。

 

「覚悟はできている。是非、俺をサイボーグにしてくれ!」

「同じく、私もサイボーグへの改造を志願します!」

 帰還したシルバー大佐とバイオレット大佐が、フラッペ(儂)にサイボーグ化手術を受けたいと言い出したのだ。

 

 これには以前その気になったら言ってくれと言った儂も驚いた。

 

「私が言うのもどうかと思うが、落ち着くっぺ。サイボーグに改造した後、元に戻すのは出来ないっぺ。今後の人生を左右する選択だから、もっと時間を置いて考える事を推奨するっぺ」

『そこのマッドサイエンティストが引き留めるのが意外だけど、私も同意見よ。もしかして、二人ともドラゴンボールを手に入れられなかった責任でも感じてるの? だったら、そんな必要はないはずよ』

 

 暗号化された回線で通信しているブルー将軍も、二人を止める側に回っていた。

『今日イエロー大佐の隊が二個目のドラゴンボールを発見したんだから。あんた達とホワイト将軍の隊が奴らの時間稼ぎに成功したのもあってね』

 そう、レッドリボン軍はブラウン大佐が見つけた四星球に続く、二個目のドラゴンボールを手に入れるのに成功していた。

 

 原作ではおそらくブルー将軍が奪ったドラゴンレーダーを使ったバイオレット大佐が手に入れたボールに相当するはずだが、この歴史ではイエロー大佐が発見する事に成功したのだ。

 これでドラゴンボールの内訳は、レッドリボン軍が二個、悟空達が四個、そしてブルー将軍の隊が探している未発見のボールだ。

 

 これでレッドリボン軍は最低限達成する以上の目標を叶えた事になる。できれば半分以上確保したかったが、二個でも交渉には十分だ。ブルー将軍が残りの一個も確保できれば、作戦は成功と言えるだろう。

 

「フラッペとブルーの言う通りだ。ドラゴンボールを手に入れられなかった事に責任を感じているなら、その必要はない。

 しかし、他に理由があると言いたげだな?」

 

「はい、総帥。俺は、悪の宇宙人に操られた。その力は強大で逆らう事が出来なかった」

「私のパワードスーツが操られた時も、抵抗する事は出来ず本来敵のヤムチャに救出される始末でした」

「今後、作戦が上手く進んだとしても、次の脅威になるのは悪の宇宙人だ。対抗するためには力がいる。圧倒的なパワーアップが必要だ」

 

「……確かに、ホワイト将軍の所にも悪の宇宙人が現れ、引っ掻き回していったようだからな」

 儂等はホワイト将軍とその部下を捕虜に取ったと連絡したが、その際、マッスルタワーで何が起きたのかも(タイムパトロールの事以外は)レッドリボン軍に情報を渡している。

 

「悪の宇宙人が兵器や人間を操り、何処からか怪物を連れて来るのを防げるかは分からん。だが、対処法は分かっている。倒せばいい。倒せば兵器はともかく、人間はほぼ無傷の状態で正気に戻り、怪物は消える。

 しかし、現在の我が軍では操られた兵器や将兵を倒す事が難しい」

 

『……』

 レッド総帥の言葉に、画面に映ったブルー将軍が悔しそうに端正な顔立ちを歪める。レッドリボン軍最強の彼でも、操られたシルバー大佐達を倒すには力不足だからだ。

 

「だが、シルバー大佐、お前達は一年未満のトレーニングで強大な力を手に入れた。そのために必要だった努力と忍耐を軽く考えている訳ではないが、このままトレーニングを続け強くなることも可能ではないのか?」

 沈黙したブルー将軍の代わりに、ブラック補佐がシルバー大佐を引き留めにかかった。死んでしまったならまだしも、レッドリボン軍の重要な存在である大佐を二人実験に差し出すのは避けたいのだろう。

 

「……聞いた話だと、サイボーグ1号と2号、そして4号は脳も弄られているとか。もし強くなっても、大佐達の人格や忠誠心、指揮能力が失われるリスクもあるのでは?」

 そして、オレンジ将軍も二人の改造には反対のようだ。言葉にした懸念以外にも、儂に二人が改造される事で、フラッペの影響力がレッドリボン軍内部で増大する事を警戒しているのだろう。

 

 ブラック補佐もオレンジ将軍も、組織人として非常に正しい判断だ。

 

「確かに、トレーニングでも強くなることが出来る。俺自身、自分はもう限界だと思っている訳じゃない。まだまだ強くなれるはずだ」

 シルバー大佐達も若いとはいえ、軍の大佐にまでのし上がった人物だ。ブラック補佐達の言葉に出さなかった懸念を理解していない訳では無いだろう。

 

「だが、それでは時間がかかり過ぎる。少なくとも、鶴亀仙流の孫悟空やヤムチャ並みに強くなる必要があるが……情けないが、一年や二年じゃ奴らどころかブルー将軍にも追い付ける気がしない」

『にも、とは失礼ね!』

「実際に戦った経験から言わせてもらうと、次元が違いました。どんなに過酷なトレーニングを積んでも、彼らに追いつける気がしません」

 

 しかし、その懸念を脇に置く程の差をシルバー大佐とバイオレット大佐は実経験で味わっていた。……確かに、サイヤ人やそのハーフ、そしてクリリンのように地球人ではトップクラスの天才にトレーニングだけで追い付くのは難しいだろう。

 

「それに総帥、今回、悪の宇宙人に操られたホワイト将軍を止めたのは孫悟空やドクター・ゲロではなく、ドクター・フラッペが創り上げたサイボーグ3号でした。

 1号(ランファン)でブルー将軍に匹敵し、2号(ランチ)は鶴亀仙流の天津飯と互角、そして3号(8号)で悪の宇宙人に操られた存在を倒せるのなら、俺達が5号と6号に成れば、それ以上の力を発揮出来るはず!」

 

「いや、3号は機械ベースなので、生身の人間をベースに改造する場合とは単純に比べられないっぺ。実際、力では4号(マロン)より3号の方が上だっぺ。さらに、改造した後に新しい体に慣れるトレーニングも必要だっぺ」

「だが、その4号は2号より強いのだろう? なら、4号に勝るとも劣らない力を得られるなら十分だ。どんな姿になっても構わんっ、俺を改造してくれ!」

 

 儂が一応予防線を張ったが、シルバー大佐の意志は固かった。

 

「わ、私は構うけど……角か尻尾が生える位なら大丈夫です」

 バイオレット大佐の意志はそれに比べると若干柔らかかったが、改造手術を止めるつもりはなさそうだ。

 

「……分かった。後はフラッペと話すがいい。フラッペ、二人の事を頼むぞ」

 そして二人の様子にレッド総帥も折れるしかなかった。

「分かったっぺ。ただし、今すぐ改造するのは無理だっぺ。各種検査を受けてもらう必要があるっぺ。その後、改造プランを練るッペ。そして実際に改造するのは今進行中の作戦が進み、王立国防軍に食い込む事に成功してからの方が望ましいっぺ」

 

「ずいぶん時間がかかるな」

「あんただったら、即日私達の体をメスで切り開くに違いないと思ってたのに」

「期待に沿えなくて残念だっぺ」

 この辺りの悪印象は、儂がマッドサイエンティストっぽく振る舞っているせいじゃな。つまり、フラッペを上手く演じられているという事じゃ。儂の素がマッドサイエンティストっぽいわけでは無い。

 

「遺体を改造してサイボーグにするのと、生きている人間を生きたまま改造するのは訳が違うっぺ。また、作戦が成功すればドクター・ゲロから悪の宇宙人だけではなく、奴の人造人間の情報網も手に入れられるかもしれないっぺ。

 急いでリスクを冒して低性能のサイボーグになるよりは、一年ぐらい時間をかけても高性能なサイボーグになった方が良いはずだっぺ」

 

 と、説明する。……ドクター・ゲロからの情報云々に関しては、ただの方便だが。

 自ら被験者になる事を希望してくれたのはありがたいが、このままフラッペの正体がゲロである事を黙って改造するのは気が引ける。

 二人が悪人で、なおかつ遺体だったら説明も何もしなかっただろう。しかし、そうではないので改造を急ぎ、二人を仮死状態にして判断能力を奪うような事をする気にはなれない。

 

 なにより、今は時間をかけてセリパとトーマを人造人間11号と12号に改造中じゃし。流石に四人同時に改造を進めるのは、儂でもキツイ。

 シルバー大佐とバイオレット大佐には事が終わった後、儂の正体を明かしてから改めて人造人間になるか尋ねる事にしよう。

 

「分かった。確かに、俺も死にたい訳じゃないからな」

 っと、シルバー大佐達も今すぐ改造する事を要求せずに、納得してくれた。

 

「ブルー、追加戦力としてサイボーグ4号をそちらに送る」

『っ!? お、お言葉ですがレッド総帥、戦力でしたら我が隊には既に1号がおりますし……』

「2号は動かせんし、3号はゲロに捕虜に取られている。この基地を守るよりも、作戦遂行中の悪の宇宙人に対処するための戦力としてお前の隊に合流させた方が有用だろう。

 お前が苦手とする女だが、ここは抑えてくれ」

『……了解いたしました』

 

 そして、儂の背後ではマロンのブルー隊への合流が決まったのだった。

 

 

 

 

 

 

「…………」

 ドクター・ウィローの研究所があった永久氷壁。そこで驚嘆すべき現象が起きていた。城のような巨大な氷の塊が空に浮いていたのだ。

 

 直径百メートルを超える巨大氷塊が、音もなく上下運動を繰り返している。その様子は、蜃気楼のように現実味が無かった。

 その巨大氷塊の近くに座禅を組んで瞑想している少年がいる事に気が付く者は稀だろう。だが、その少年……チャオズこそが巨大氷塊を念動力で動かしている張本人だった。

 

「チャオズ、そろそろ一息入れろ」

「はい、桃白白様」

 チャオズに一声かけた桃白白は、彼が巨大氷壁を割らないように元あった場所に降ろすのを見て、こいつも成長しているのだなと内心で感嘆していた。

 

 ほんの少し前まで、風船のように浮いている幼児だったのにと昔を思い出し、それがあまりにも年寄りっぽい時間感覚だったと気が付いて顔をしかめる。

「桃白白様?」

「いや、何でもない」

 まだまだ自分は若いと言い聞かせている二百歳以上の桃白白は、チャオズにお茶の入った水筒を渡した。

 

「天達は?」

「ふむ……あっちで青春中だな」

 桃白白が目で指した先では、激しい雪煙が上がっていた。二人がいるのとは別の氷の上で、天津飯とランチが実戦さながらの組手をしていた。

 

「くらいやがれ!」

「はーっ!」

 拳と蹴りの応酬の間を縫って、ランチが角から怪光線を放ち、天津飯は気合でそれを弾き、再び間合いを詰めようとする。

 

「へっくしゅん! わわわっ!」

 その瞬間、くしゃみをしたランチの髪が金から青に変わり、気が消える。青髪ランチは状況を察した瞬間、迫る天津飯に対して足元の雪と氷を巻き上げて姿を隠す。

 

「気が消えた。だが、俺の目から逃げる事は出来ん! そこだっ!」

 青髪ランチの姿を見失った天津飯だったが、雪煙の合間から僅かに見えた影を見逃さず額の目から光線を放つ。

「っ!? しまった!」

 だが、光線が貫いたのは青髪ランチの残像拳だった。では、本物はどこに? そう動揺する彼の足首を誰かが掴んだ。

 

「やりました! このまま投げちゃいますよ!」

 それは青髪ランチの手だった。両腕を伸ばして雪の下をくぐらせ、天津飯を捕まえたのだ。そのまま鞭のようにしなる両腕で天津飯を持ち上げて放り投げ、舞空術で体勢を整える前に攻撃して勝負を決めようとする。

 

「四妖拳!」

 だが、そうはさせないと四妖拳で腕を増やした天津飯は、体を柔軟に曲げて逆に彼女の両手を掴み返し、四本の腕で引っ張った。

 

「きゃぁぁぁ!?」

 逆に放り投げられた青髪ランチは、まるで一本釣りにされたカツオのように背中から氷原に叩きつけられた。

「ま、参りました~」

 そして目を回しながら降参する青髪ランチ。誰がどう見ても白熱した、実戦に限りなく近い組手だった。

 

「……真剣な話がある。組手の後だが、聞いてほしい」

 しかし、天津飯にはそうは思えなかった。

「真剣な話ですか? あの、もう一人の私に変わった方が良いですか?」

 

「どちらでも構わない。ランチさん、君は俺に、隠し事をしているな?」

「ギクッ!?」

 口に出るほど、青髪ランチの心臓が跳ねあがった。傍から見るとコミカルだが、天津飯に対して重大な秘密を隠している彼女は内心大慌てだった。

 

「この前の天下一武道会での君とターレスの試合を見て、もしかしたらと思っていた。その後の占い婆様の宮殿での交流試合、チャオズから君がセリパさん達サイヤ人とテレパシーで話していたと聞いた」

「うう……ばれていたんですね。でも、なんで今まで黙っていてくれたんですか?」

 

「あなたが何かを隠していたとしても、俺が魔神城で助けられたのは事実だ。それに、君は武天老師様の弟子でもある。あの方が何も気が付いていないはずはない。何より、俺も君が悪い人間だとは思っていない。

 言い出しづらい事なら、無理に聞き出す事は無いと思っていた。だが、すまない。俺は自分が思っていたより、器の小さな男だったらしい」

 

「そ、そんな事ありません! 隠し事をしている私が悪いんです。実は私――」

 『もしばれた場合は、儂が口止めした事も含めて話していい』とゲロから言われていた事を思い出して、青髪ランチは秘密を打ち明ける事にした。

 

「はい、実は私は、人造人間9号なんです!」

「なっ、なんだと!? 君は人造人間だったのか!?」

「……あれ? ばれていたんじゃないですか?」

「いや、俺は君が実力を隠しているんじゃないかと……後、実は宇宙人なんじゃないかと思っていた。それで、生前のセリパさん達と会っていたのではないかと。腕も伸びるし。だが、まさか人造人間だったとは思わなかった」

 

 天津飯が耐えられなかったのは、ランチに対する自分の猜疑心ではなく、本当は自分よりずっと強い異性が、実力を隠して自分と互角であるふりをしているという状況だった。

 以前からタイツと修行しているため、異性より弱い事に対して殊更屈辱だとは感じない。しかし、手加減しているならそう言って欲しかった。

 

 あと、自分が宇宙人の末裔である天津飯は、ランチも魔族やモンスター型地球人ではなく地球に移住した宇宙人やその末裔ではないかと思い、親近感を覚えるとともに打ち明けてくれない事に歯がゆさを覚えていたのだ。

「なんだぁ、そうだったんですか。私、てっきり全部ばれちゃったのかと思ってました。じゃあ、一件落着と言う事で……」

 

「待ってくれ。聞いてしまった以上、説明してほしい。何故ゲロ会長は君が人造人間である事を黙っていたのか、そして君が9号だという事は、7号と8号はどこに居るんだ?」

「そ、そうなりますよね。ええっとですね、実はゲロ会長は――」

 

 そうしてランチが天津飯に全てを打ち明けている頃、桃白白にゲロからテレパシーで『タイツとブルマとターレスにばれた』と連絡が入ったのだった。

 




 変わり者様、gsころりん様、PY様、佐藤東沙様、kubiwatuki様、大谷地ひよこ様、 太陽のガリ茶様、都庵様、asis様、みえる様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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