ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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87話 海底大冒険! 悟空一行に放たれる、ブルー隊の凶弾!

 タイツと我がGCコーポレーションの副社長がジングル村で展開しようとしているビジネスは、豪雪地帯を利用したウィンタースポーツやアクティビティを目玉にした観光業だった。

 

「こんな雪しかない村で、観光業ですか?」

「一年中雪があるからこそ、観光業よ」

 懐疑的な様子のジングル村の村長に、タイツはそう断言して説明を始めた。

 

 この地球には、常夏のリゾート地はいくつもある。バッタ男爵の領地もその一つ。一年中水着を着て海に入る事が可能で、マリンスポーツやアクティビティを楽しむ事が出来る。

 しかし、一年中スキーやスノーボードを楽しむことができるリゾートは、一つもない。今、天津飯達が修行している永久氷壁等も存在するが、そこまで行くと宿泊施設どころか住んでいる人も皆無で、一般人にとっては危険すぎる。

 

 だから、このジングル村のある地域が観光開発には程よいのだ。

 スキー場を整備すれば危険は減少するし、観光施設や宿泊施設の従業員、そしてその開発工事に雇う人々も近くにいる。

「……だから俺達がいた方が好都合と言う事か」

 そして、ホワイト将軍達レッドリボン軍が警察と救助隊の代わりをしてくれれば、治安維持も心配ない。GCコーポレーションには警備部門のGCGがいるが、数が少ない上に世界中で活動している。特定の人物や場所を警備するならともかく、地域全体の治安を常に維持するにはレッドリボン軍の方が実は向いている。

 

「それにマッスルタワーが使えると、とっても便利なのよね。屋内発着場まであるとは思わなかったから、メチャクチャ都合がいいわ」

「一応、ここは俺達レッドリボン軍の基地なんだが?」

 

「使わせてくれるのは、建設作業中だけでもいいわ。同じ設備がある施設をもう一つ建てるから。それに、ジングル村の物流の便を良くできれば村も助かるはずよ」

「むっ……それはそうだな」

 ホワイト将軍は頭を回転させ、タイツのプレゼンがレッドリボン軍や自分にとってどんな利益があるか考えた。

 

 観光事業が上手くいく事が前提だが……まず、世間が持つレッドリボン軍のイメージが良くなる。観光地の治安維持を担うのだから、警察に準ずる組織として認識され信用を得る事が可能。

 さらに、縄張りが経済的に発展する事はレッドリボン軍にとって、そしてこのマッスルタワーを建設し、事業開始から関わる事になるホワイト将軍自身にとって、大きな利益となるはずだ。……捕虜に取られてしまった失点を取り戻しても余りある功績になるだろう。

 

 そしてGCコーポレーションとの協力体制を構築出来る事も大きい。

 フラッペの正体がこの儂、ドクター・ゲロだった事が分かった時点で、クーデター作戦の失敗が決定的になってしまった。将来レッドリボン軍がどうなるか分からない。最悪の事態を想定して、ホワイト将軍も身の振り方を考えなければならないし、出来れば部下が生き残る道も確保しておきたい。

 

(もっとも、そこまで悲観的にならなくていい気もするがな。それで、逆に協力するリスクは……ほぼないな)

 (一部の)宇宙をまたにかける超企業が推し進める観光ビジネスだ。失敗する事は無いだろう。

 

「しかし、観光開発と言っても色々問題が起こるんじゃないかね?」

 ホワイト将軍が押し黙ると、今度はジングル村の村長が異議を唱えた。自然の過酷さに耐え続け、慣れ切っている彼にとって、観光開発によって起きる変化の方に不安を覚えるのは当然だった。

 

「ええ、だから起こりうる問題について相談して、出来るだけ対処していくつもりよ。

 ちなみに、環境問題には細心の注意を払う事を約束するわ。これが、うちの会社の副社長が作った開発予定書の草案ね」

 とはいえ、タイツをバックアップしているGCコーポレーションの副社長もやり手だ。善良だが保守的な辺境の人々を動かすには、手間をかけるべきだという事を分かっていた。

 

「ふむ……ホワイト将軍、何が書いてあるか分かるかね?」

「暗号文より難しいぞ。もっと素人にも分かりやすく書いてくれ」

「なによ、お爺ちゃんの研究ノートと比べるとずっと分かりやすいわよ」

「ええっと、俺、分かる。説明しますか?」

 

「おお、助かった3……いや、8号君! 頼む!」

 こうしてタイツのビジネスは進み、明日には開発責任者のタイツと村長主催の、村人向けの住民説明会が行われる事になった。

 その説明後、村人同士で考え、観光開発を行うか否かの住民投票を行うようだ。

 

 ちなみに、儂はタイツ達が話している間、マッスルタワーの指令室にスカウターの戦闘力計測機能を応用した、生体レーダーシステムを設置するべく作業していた。

「う~む、まさか貴殿がドクター・フラッペだったとは。意外なような、そうでもないような」

「ムラサキ曹長、それはいったいどういう意味かね?」

 四身の拳を使用し、カッチン鋼をコーティングしたヤスリを駆使して必要なパーツの削りだしやアンテナの調節、プログラミングなどをしながら尋ねる。

 

「言葉通りの意味だが。良い意味でも、悪い意味でも、貴殿のような人物が二人もいるはずはなかった」

「天才、という意味ならブリーフやブルマ、タイツやコリー博士等、儂以外にも大勢いる。この地球は人材の宝庫じゃよ」

 他にも、ここにはいないし彼は名前も知らないだろうピラフ大王や、儂等で殺したウィロー。そして潜伏しているコーチンなど、天才科学者は儂以外にも何人もいる。

 

「いや、そっちの意味ではないのだが」

 しかし、そう言って首を横に振るムラサキ曹長。

「訳が分からんな。それより、始末書は書き終わったのかね」

 

「うっ、そうだった。くっ、何故俺だけ……」

「ホワイト将軍の命令を無視して8号を引っ張り出したからじゃろうに。気持ちはわからんでもないが、作戦実行中に上官の命令に逆らったにしては、軽い罰だと思うが」

 

「むっ、返す言葉も無い」

「8号にも後で謝っておくんじゃぞ。さて、これで一先ず完成じゃ」

 そう言う儂も、フラッペである事を隠していた罰として、このレーダーシステムを作らされているのだが。

 まあ、これで遭難者が生きていれば即座に発見する事が可能になるので、必要なシステムではあるのだが。

 

「さて、さっそく試運転じゃ。ふむ、悟空達はウィンタースポーツを楽しんでいるようじゃな」

 

 海に入った事があるが、雪山は初めて来た悟空達は、タイツがこの辺りを観光開発するつもりだと知り、こんな寒いところに人が来るのかと疑問を覚えていたようだった。そこで、適当な板を使ってスノーボードやソリを体験しているのだ。

 

 ちなみに、悟空は嘘が吐けないからというタイツとブルマの判断で、儂がフラッペである事はまだ彼等には話していない。

 

「……もしかして儂、悟空達にフラッペの正体を打ち明けた時に、また改めて罰を受ける事になるんじゃろうか?」

「ドンマイですぞ、ゲロ殿」

 

 

 

 

 

 

 ジングル村での説明会を終えたタイツを含めた悟空一行は、カメハウスがある小島に来ていた。

『なんじゃ、ゲロ、せっかく儂も黙っていてやったのにばれてしまったのか』

『面目ない。まさかブルマが悟空のドラゴンボール探しにこんなに早く加わるとは思わず、油断しました』

『未来予知を過信するからじゃ。気をつけるのじゃぞ』

『はい、肝に銘じます』

 

 なお、儂もついてきている。8号は穴が開いたマッスルタワーの修理をするため……という名目で残してきた。名目上だが捕虜になっている彼をブルー将軍との戦いに駆り出すと、立場的に板挟みになってしまうからな。

 

「しかし、今度のドラゴンボールは海か。儂が拾ってきてやろうか?」

 以前海底に落ちていたドラゴンボールを偶然見つけて拾った経験のある亀仙人が、そう提案する。原作ではほとんど描写は無いが、水泳も得意なのだろう。

 

「いいわよ。お爺ちゃんから潜水艇のホイポイカプセルを借りたから」

 しかし、タイツはそう言って亀仙人の提案を断った。原作では彼から潜水艦を借りるのだが、この歴史では祖父代わりの儂がいたので、タイツとブルマがまず儂に協力を要請するのは自然な成り行きであった。

 

「亀仙人のじっちゃんがドラゴンボールを取りに行っちまったら、オラ達がレッドリボン軍と勝負出来ねぇしな!」

「ほっほっほ、張り切っておるな、悟空」

「ああ! マッスルタワーでは、あんまり戦えなかったからな! 今度はブルーやボンゴの奴と勝負できそうだから、オラ今からワクワクしてんだ!」

 

 マッスルタワーでは強敵と心行くまで戦えなかった悟空は、捕虜にしたホワイト将軍から海にあるドラゴンボールを探しているのがブルー将軍達だと聞いて、今度は戦えそうだと期待に胸を膨らませていた。

 

「俺はあんまり会いたくないような気が……」

「あれ? ヤムチャさん、あのブルーってライバルじゃなかったんですか?」

「あれは向こうが突っかかって来ただけだ! しかも、戦ったのは一度だけだぞ!」

 

「それよりもヤムチャよ、修行の方はどうなっておる? クリリン、こやつちゃんと修行しておるのか?」

「あ、はい。結構頑張って……るっけ?」

「や、ヤムチャ様は頑張ってます!」

 

「頑張ってるねぇ? その割には、さっきからこっちを見ようともしないけど」

「俺は見てるぜ!」

「お前には聞いてないよ」

 

 なお、行く先が海と言う事でタイツだけではなくラズリやラピス、ウーロンもついてきている。前者は海底探検に興味を覚え、後者は女性陣の水着姿を見る機会を逃すまいと思ったようだ。

「海底だか……オラ、浜辺や浅瀬で遊んだことはあっても、足が付かない所に行くのは初めてだべ」

 そして、今回はチチもいる。彼女に声をかけたのは仲間外れにしているようで気が引けたブルマが誘ったのだ。

 

「海の中で戦うってどうするだ、悟空さ? すぐ息が上がっちまうべ」

「そうだな、水の中じゃ筋斗雲も飛べねぇだろうし……ゲロのじっちゃん、なんとかならねぇか?」

「永久酸素ボンベとか、作れねぇだか?」

 

「永久は流石に無理じゃな」

 悟空とチチに尋ねられた儂は、そう答えた。エネルギーと違って酸素は物質じゃからな。

「ただ、ブリーフが数時間は持つ小型酸素ボンベを開発している。あと、人造人間に成れば深海でも活動できるぞ」

 ホイポイカプセルの技術を応用した酸素ボンベは、片手に収まるサイズで標準サイズの酸素ボンベ以上に呼吸を確保できる。

 

 また、宇宙空間でも活動できるフリーザ一族の細胞を組み込んだ人造人間なら、そもそも呼吸は必要ない。また、頑健な肉体で深海の水圧にも耐えられるはずだ。

「ただ、レッドリボン軍も息は続かんじゃろうから、戦うとしたら空気のある所になると思うが」

 

「それもそっか」

 そう納得する悟空達だったが、実際にはブルー隊に加わっているサイボーグ1号と4号……ランファンとマロンは海の中でも活動できる。人造人間じゃからな。

 

「じゃあ、そろそろ行きましょうか。ほら、ミクロバンドで小さくするから集まりなさい」

 原作では悟空、ブルマ、クリリンの三人が潜水艇に乗ったが、この歴史では参加する人数は三倍以上だ。そのため、ミクロバンドで操縦者以外は小さくなって目的地まで向かうようだ。

 

「こんな小さくなって深海探検か。ゾッとしねぇな」

「心配しなくても大丈夫よ、ターレス兄さん。小さくなっても丈夫さはそのままだし、離れればすぐ元の大きさに戻るから。

 それに、巨大サメや巨大タコが襲ってきても、退治してお昼ご飯にすればいいじゃない」

 

 陸に恐竜がいるように、この世界の海の中にも魚竜や首長竜、そしてメガロドンのような巨大なサメが存在する。しかし、映画の中と違い鍛え抜かれた超人には敵わない。

 いや、これも映画のお約束という奴かもしれん。生きている人間が一番怖い、というのは定番じゃ。

 

「まあ、それもそうだな」

「お、俺達の事はちゃんと守れよな!」

「はいはい、分かってるわよ、ウーロン。もしもの時は瞬間移動でこのカメハウスに戻るから、うろちょろするんじゃないわよ」

 

 潜水艦にはブリーフが開発した小型酸素ボンベも人数分持って行くが、それは海中で活動する事を想定しての物だ。万が一の事故や潜水艇の故障の際には、やはり瞬間移動が便利で確実な脱出方法になる。

 

「まあ、あんたは魚に化けて泳いで脱出してもいいけどね。そう考えると便利ね、あんた」

「五分でここまで戻って来られる訳ないだろ!? 俺、絶対お前から離れないからな!」

「あんたね……あたしや姉さんの変な所触ったら、フライパン山でチャーシューにしてやるから」

「ひえええっ!? どうしろってんだよ!? 助けてくれよ、爺さん!」

 

「日頃の行いが行いじゃからなぁ。二人ではなくターレスにくっついていたらどうじゃ?」

「そんな殺生な!? ぐえっ」

「何が殺生だ。そう言うところだぜ」

 喚くウーロンをターレスが尻尾で軽く締め上げ、そのまま小さくなっていく。こうして悟空一行は最後のドラゴンボールがある海底へ向かっていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 ブルー将軍率いるブルー隊が乗る潜水艦の中は、ピリピリとした空気が漂っていた。それは談話室と兼用の食堂でも例外ではない。

 最後のドラゴンボールがまだ発見できていない事と、悟空一行との衝突が迫っているからではなかった。

 

「ねぇ、いつまで海の中にもぐってるの? あたし、日光浴したーい」

「あんたね!? あたし達が今どういう任務を遂行しているのか理解してる!?」

 原因は、昨日合流したサイボーグ4号ことマロンと、隊を指揮するブルー将軍の口喧嘩によるものだった。

 

 この潜水艦には、元々ブルー将軍とその部下のブルー隊、そしてボンゴ大尉とパスタ大尉、サイボーグ1号ことランファンが乗っていた。

 元々レッドリボン軍の女性兵士の数は男性兵士に比べて圧倒的に少ないが、その中でもブルー将軍の部下のブルー隊は全員男性で構成されていた。

 

 何故なら、ブルー将軍が女嫌いだからだ。個人的な理由だが、レッドリボン軍一の戦士であると同時に将軍の地位にある彼にはそれが許されていた。

 変化が起きたのは、グルメス王国軍にオレガノと名乗って潜入していたオレンジ将軍が帰還し、彼がスカウトしたボンゴとパスタがレッドリボン軍に加わってからだ。

 

 去年の『魔神城の眠り姫』事件で、ブルー将軍はボンゴだけではなく女のパスタも部下として引き連れていった。そして、今回の任務ではランファンも連れて来ている。

 それはブルー将軍の女嫌いが治ったからではなく、女嫌いの彼が認めるほどパスタとランファンが優秀だったからだ。

 

 通常の敵ならともかく、鶴亀仙流の弟子達を相手取るには彼女達の力が……それでも十分とは言えないが、必要だった。そのため、ブルー将軍はパスタとは適度な距離を取って任務に支障が出ないようにやってきた。

 ランファンに対しては、若干苛立ちを覚えたが主に彼女がブルー将軍との適度な距離を理解したため、なんとかなった。

 

 だが、マロンは思いっきりブルー将軍を刺激しまくっていた。

「え~、でも、あたしせっかくレッドちゃんに買ってもらった新しい水着持って来たのにぃ」

「レッド総帥にちゃん付け!? ぶっ殺すわよ!?」

 その様子は、地雷原でタップダンスを踊るが如くだ。

 

「やだ、ブルーちゃんったらこわ~いっ。そんなに怒ったら、お肌に皴が出来ちゃうわよ?」

「余計なお世話よ!」

 マロンが何故ブルー将軍の神経を逆なでし続けるのかというと、彼女の性格と特殊な立場のためだ。彼女はレッドリボン軍の兵士ではなく、サイボーグ4号。つまり、レッドリボン軍的には兵器なのだ。

 

 貰っているのは給料ではなくお小遣いだし、ブルー将軍に逆らっても降格はもちろん首にされる事は無い。何と言っても「兵士」ではなく「兵器」なのだから。

 ……上記の設定だけなら、捨てられないよう己の存在を守るために従順になるほうがそれらしいかもしれない。しかし、マロンの正体は人造人間10号。もしレッドリボン軍に見限られたとしても、痛くも痒くもない。

 

 マロンもゲロの頼みを反故にするつもりはなく、彼女なりにレッドリボン軍のサイボーグ4号としての演技をしているつもりだ。ただ生来の性格……目先の興味に心が移りやすく、他人への共感よりも自分の感情を優先する性格、深く考えるよりも感情を言動に表す傾向など……によって、軍に潜入するにはかなり場違いな演技にしかならなかった。

 

「パックしてる? あたしのでいいなら分けてあげよっか?」

「やってるわよっ! シャワーの後毎日ね! って、言うかあんたはやってるの? サイボーグなのに」

「うん。ドクちゃんは必要ないって言ってくれたけどぉ、お肌だけじゃなくて心の潤いにもなるし~」

「ドクちゃん……あのマッドサイエンティスト、後で覚えてなさいよ」

 

 そのため、ブルー将軍はマロンに手を焼いていた。しかし、ブルー隊の兵士達からの彼女の支持はかなりの物だった。

 

「マロンさん、クジラの歌を録音したテープなんだけど聞かない?」

「マロンちゃん、これ、俺が退治した魚竜の牙で作ったペンダントなんだけどどうかな?」

「マ、マロンさんっ、この任務が終わったら俺と食事にでもいきませんかっ!?」

 ブルー将軍がマロンから離れたのを見計らって、交代で休んでいる兵士達が次々と集まってくる。

 

「クジラの歌? 聞く聞く~っ! わぁ、カッコいい~っ! う~ん、でもあたしお小遣いもう使っちゃったからぁ……奢ってくれるの? やったぁ、ありがとねっ!」

 控えめに言ってもモテモテである。

 

 ブルー将軍の部下のブルー隊だが、嗜好までブルー将軍と同じではない。そのため、良い意味でも悪い意味でも女性らしいマロンは大人気だった。彼女に長い尻尾が生えていようと、彼らは気にしない。

 なお、マロンが来る前はランファンやパスタが人気を二分していたが、二人は兵士達を上手くあしらっていたのに対し、彼女はノリノリで兵士達と遊ぼうとする。

 

「キィ~っ! ここを遊覧船と勘違いしてるんじゃないでしょうね!?」

「そんなにイライラしていると、ツキが逃げるよ」

 あまりにもヒステリックな様子のブルー将軍に、見かねたパスタが声をかけた。

 

「それに、話題は合うみたいじゃないか。あたしより仲良くなれるんじゃないの?」

 マロンと同じ女であるパスタだが、彼女と仲良くなる事は諦めていた。嫌いとかどうとか以前に、自分とマロンは別のジャンルの人間だと思ったからだ。

 

 パスタも美容やファッション、グルメに興味がないわけでは無い。しかし、彼女はそれらに対する欲求より金銭欲が強いため、逆の意味で金のためならそれらが無くても耐えられるストイックさがある。

 そのため、同性でもマロンとは話題が合わないのだ。戦闘やトレーニング、強さに関する話は例外だが。

 

(逆に、なんでそれが例外なのかが分からないから気味が悪いんだけどね)

 そうパスタが思っている間に、ブルー将軍はヒステリーから立ち直っていた。

「確かにね。あんたよりはお化粧やお肌のケアなんかの話は出来そうね。……あいつが女でなければね!」

 苛立ちはまだ治まっていないようだったが。

 

「じゃあ、男だと思ったら?」

「そうね。あいつを男だと思えば……って、あんな胸の膨らんだ男がいるか!」

「冗談だよ、冗談」

 

「ブルー将軍! 探索に出ていたランファンさんが戻りました!」

 そこに兵士が報告にやってきた。ブルー将軍は瞬時に真剣な顔になった。

「そう、報告は?」

「残念ながらドラゴンボールは見つからなかったそうです。直接話を聞きますか?」

 

「そうね。通してちょうだい」

 そしてしばらくすると、シャワーを浴びたランファンが食堂に入ってきた。

「はぁい、残念だけどドラゴンボールは無かったわよ。珍しい深海魚は結構いたから、ドクターは喜びそうだけど」

 彼女はついさっきまでドラゴンボールを探すため、深海を泳いでいたのだ。

 

 宇宙空間でも活動可能な人造人間7号であるランファンは、恐ろしい水圧がかかる深海でも活動する事が出来る。それを活かしてランファンは直接深海を泳いでドラゴンボールの捜索を行っていた。

 この潜水艦も深海での乗り降りを可能にするために、フラッペ(ゲロ)によって改良されている。

 

「深海のドキュメンタリー映像に興味はないわ。他に何かなかったの?」

「ええ、他に沈没船があったわよ。昔の帆船っぽい感じ? 中まで見たけど、ドラゴンボールは無かったわ。お酒が入ってそうな樽とか、お宝っぽいのはいくつかあったからホイポイカプセルに入れて来たけど」

 

「酒樽? 海水が入ってなければオークションに出せば高値で売れるわね」

「パスタ……まず飲もう、じゃなくて売ろうって考えるのは流石ね」

「調べるのは任務が終わってからにしなさい。潜水艦の中じゃ、ホイポイカプセルから出すスペースも無いし」

 

「見つけたのはそれぐらいだけど……何かあったの? 将軍さん、妙に疲れているみたい。そもそも私と直接話そうとすること自体珍しい事だけど」

「あんたの後輩が、ちょっとね」

「ああ、マロンね」

 

 ランファンはマロンと同じサイボーグであるため仲がいい……とブルー将軍やパスタは思っているが、実際は彼女が人造人間として復活するまで一年以上、天国で交流していたので彼女の人となりを知っているためだ。

 その経験から、ランファンはこの上司とマロンの性格的な相性の悪さに気が付いていた。

 

 もっとも、ランファン自身もブルー将軍との仲は良くない。彼女の性格も、マロン程ではないが同じ傾向がみられるからだ。

 しかし、人造人間になる前から格闘家をしていたし、短いが社会人経験もある。そのため、マロン程自由奔放に振る舞わず、それなりに自重してレッドリボン軍にちょっとは合わせている。

 

「あの女のせいで分かったけど、あんた達って女にしてはかなりマシだったのね」

 マロンのお陰でブルー将軍の自分達に対する株は上がったようだ。ランファンは、思わずパスタと顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。

 

「自分より強い部下がこんなに厄介だったなんて、思わなかったわ」

 現代の普通の将軍にとって、自分より部下達の方が強いのはむしろ普通だ。武器を使わない肉弾戦だったとしても、一度に部下全員と戦って勝てる指揮官はまず存在しない。

 

 しかし、ブルー将軍はまず存在しないはずの将軍だった。フラッペ(ゲロ)が協力する前から超人的な力と超能力を持つ彼は、率いる部下全員と戦ったとしても楽々蹴散らして勝つことが出来た。

 そして、ボンゴとパスタを雇い入れてより過酷なトレーニングを積んだ今では、戦車だろうが原作ピッコロ大魔王だろうが軽く叩き潰せる力を手に入れるに至った。

 

 しかし、そんな彼でもサイボーグシリーズは戦っても勝てない。1号のランファンは実戦形式の模擬戦では互角だが、無限のスタミナがあるため実戦だとまず勝てない。2号のランチはブルー将軍が一年前、ボンゴとパスタを加えた三人がかりで攻撃を仕掛けても勝てなかったヤムチャより強い天津飯とほぼ互角とされている。

 そして3号の強さはブルー将軍にとっては不明なままだが……4号のマロンは自分よりも圧倒的に強いと彼は見抜いていた。

 

 潜水艦の艦内で模擬戦をするわけにもいかないので、指相撲で勝負したがその時あっさり負けてしまった。それだけではなく、勝負中にブルー将軍はマロンと指を組んだ腕を動かそうとしたが、彼女はびくともしなかった。それどころか、彼女はブルー将軍が何をしようとしたか気が付いた様子すらなかった。

 

 まるで幼児と大人の勝負だ。

 

「まあ、ブルー将軍以上の戦士が作れないんじゃ、ドクターがあたし達サイボーグシリーズを作った意味もないし」

(本当は、1号のあたしの時点でブルー将軍達より圧倒的に強いんだけどね)

 そう思うランファンの戦闘力は十万以上。ブルー将軍の数百倍の力を、ブルー将軍に匹敵する程度に抑えている。

 彼の「自分より強い」という認識は間違っていないが、力の差がどれくらいあるのかの予想は全くの見当違いになっていた。

 

 なお、食堂に姿を現さないボンゴはブルー将軍に代わって指令室で潜水艦全体の指揮を執っている。彼にとっては、マロンとブルー将軍のどちらも面倒な連中であるため、仕事をしている方が楽なのだ。

 

「じゃあ、とりあえずマロンに偵察に出るよう伝えてこようか」

 パスタがそう言いだしたのは、疲れている様子のブルー将軍を労わって……ではなく、マロンがランファンのように偵察ついでにお土産を拾ってくることを期待して声をかけるためだ。

 

「ええ、頼むわ」

 ブルー将軍もそれを察しているが、投げやりに手を振って任せた。

「ブルー将軍! レーダーに友軍以外の反応在り! ボンゴ大尉がすぐ指令室に戻るようにと――」

「今行くわ! あんた達もついてきなさいっ!」

 覇気を取り戻したブルー将軍は、さっきまでと別人のような足取りで指令室に向かった。

 

「レーダーの反応は? 目視してるの?」

「反応はこれだ。目視はまだだが、向こうには俺達に気づかれているだろう」

 ボンゴは太い指でレーダーに映る点を指さす。普通なら潜水艦に外部を撮影するカメラやモニターは無いが……このドラゴンボール世界の潜水艦は、深海を映すモニターが存在していた。

 

「十キロ先、ずいぶん小さな反応ね。レジャー目的の観光客の可能性は?」

「ここは陸地から離れているし、海上にクルーザーも浮かんじゃいない。念のために通信でも入れてみるか?」

「それはもう少し様子を見ましょう。それより、本部に連絡。本艦の近くに複数のドラゴンボール反応があれば、奴等よ」

 

 そこにやや遅れてパスタとランファン、マロンがやってくる。

「奴等かもしれないわ。偵察に出ていた時に気が付かなかったの?」

「真っ暗な深海で十キロも先の潜水艦に気が付けって言われても、無理よ。私にはレーダーやソナーは未搭載だし」

 そう答えるランファンだが、実際にはブルマ達の気を察知していた。ゲロからもテレパシーで連絡が来ていたし。

 

「それもそうね。射手っ、いつでも魚雷を撃てるよう準備しなさい!」

「えっ? 魚雷撃っちゃうの? 戦っちゃだめだよってレッドちゃん言ってなかった?」

「だからレッド総帥をちゃん付けで呼ぶんじゃないわよ! 私に考えがあるから、ちょっと黙ってなさいっ!」

 

「情報部より返信! 将軍の言う通り、ドラゴンボール反応が本艦の近くに複数出現しています!」

「そう、じゃあ……あなたっ、何をやってるの!?」

 本部と連絡を取っていたオペレーターに視線を向けたブルー将軍は、報告の直後彼が鼻をほじっているのを目にした。

 

「え? 鼻をほじっておりますが……?」

 信じられないと言った様子で自分を睨むブルー将軍に、困惑した様子で目を瞬かせるオペレーター。

「なんて不潔な。誰か、こいつを独房に放り込みなさい!」

「はっ! 来い、新入り! ブルー将軍を怒らせて余計な仕事を増やしやがって!」

「俺達ブルー隊では清潔さが大事だと言っただろ!」

 

「ひ、ひええ~っ、すみません~」

 たちまち逞しい兵士達に首根っこを掴まれ、通信担当のオペレーターを務めていた兵士は独房(として使われている倉庫)に連行されていった。

 

 彼は今回の任務の前に配属された新人であったため、ブルー隊の流儀をまだ知らなかったようだ。

「……改めて思うが、ここは軍隊だよな?」

「言いたい事は分かるけど、あたしは毎日シャワーが浴びられるから文句はないね」

 本来なら水の使用が限られる潜水艦だが、ホイポイカプセルで大量の真水を持ち込むことが可能になった。そのため、ブルー隊の全兵士は毎日シャワーを浴びて体を清潔に保つことが義務付けられている。

 

 おかげで潜水艦なのにまったく忍んでいないが、ブルー将軍にとってそれは些細な問題である。

 

 そうこうしている内に、悟空一行が乗っていると思われる潜水艦をモニターがとらえた。

「随分可愛い潜水艇ね。悟空ちゃん達、どうやって入ってるのかしら?」

「奴らの中にはテレポーテーションが使える超能力者がいるから、あの中に乗っているのは一人か二人で、残りは別の場所で待機してるんでしょ」

 

「それよりどうするの? このままあいつらにボールを探してもらって、その後ボールを賭けて勝負でも挑む?」

「シルバーやホワイトみたいに? フン、そんなの御免よ」

 ブルー将軍はランファンの質問に不敵な笑みを浮かべた。今の状況では、シルバー大佐達のように時間稼ぎをする必要はない。また、ホワイト将軍のようにそれなりに勝ち目がある勝負を挑める環境も彼等にはない。

 

「奴らに通信を繋げて、船籍と航行目的を尋ねなさい。型どおりにね」

「はっ! こちらレッドリボン軍ブルー隊! 貴船の船籍と航行の目的を尋ねたい!」

 すると、すぐに返事が返って来た。

 

『ええっと、こちらはGCコーポレーション所属の潜水艦よ。目的は……って、聞かなくても分かるでしょ?』

 聞き覚えのある少女の声に、ブルー将軍は不敵な笑みを深めて射手に命じた。

「前方を航行中の潜水艇に向かって魚雷を発射しなさい」

 

「っ!? よろしいのですか? レッド総帥の命令では――」

「奴らは潜水艦が爆発する前に、テレポーテーションで逃げられるわ。一発なら誤射で押し通せるから、さっさと撃ちなさい!」

 

「は、はいっ!」

 慌てて魚雷を発射する射手。悟空一行とブルー隊との戦いはこうして始まったのだった。

 




〇人造人間の深海での活動

 宇宙空間でも活動できるのなら、深海(水深200m以下)でも活動可能なのではないかと思いました。寒さは、宇宙空間より深海の方がマシだと思いますし、水圧に関しても高い戦闘力を持つ人造人間の肉体なら耐えられるのではないかと。



〇レッドリボン軍の潜水艦

 フラッペ(ゲロ)が開発した後、サイボーグ(人造人間)による深海探査等の運用を可能にするため改良され、エアロック等が実装されている。

 潜水艦とは思えない程居住性が高く、男女別のシャワールームまである。
 その分、潜水艦に重要なはずの隠密性を蔑ろにしている。しかし、ドラゴンボール世界の地球の状況を考えると、潜水艦同士の戦闘になる可能性はとても低いため、問題ないと考えられているらしい。

 ちなみに、ブルー将軍、ボンゴとパスタはそれぞれ原作劇場版『最強への道』と『神龍の伝説』で潜水艦に乗っている。



〇鼻をほじっていた兵士

 原作ではブルー将軍の命令で処刑されてしまった。この作品では、資金と人材が乏しい時代が長かったためレッドリボン軍の性質が変わり、部下を気軽に処刑する事はなくなったため、独房(倉庫)送りにされるだけで済んでいる。



 佐藤東沙様、リースティア様、kubiwatuki様、Mr.ランターン様、gsころりん様、食べるの大好き様、みえる様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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