ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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88話 海底に隠された海賊のアジト! 悟空一行を待ち構えていたのは!?

「え? 何これ? 魚雷っ!? あいつら魚雷を撃って来たわよ!?」

 ブルー将軍が指揮する潜水艦からの通信に応じたブルマは、レーダーに映った影と鳴り響く警報音に思わず声を上げた。

 

「なんだって!? あいつらっ、何考えてんだ!?」

「おいおい、魚雷くらいでそんなに騒ぐことは……しまったっ! ここは海の底だった!」

「で、でも魚雷くらいならこの潜水艇はビクともしない……んじゃないのけ?」

「この潜水艇はパパが作ったものじゃないから、当たったら木っ端微塵だよ!」

「お助け~っ!」

 

 状況を理解して、悲鳴をあげるウーロン。

『ごめんなさ~いっ、つい手が滑って魚雷の発射ボタンを押しちゃったみた~い。でもぉ、もし魚雷が当たってもあんた達なら平気よねっ』

「覚えてなさいよ!」

 スピーカーからブルー将軍の、悟空でも嘘だと分かるほど憎たらしい声が響く。

 

「なるほど。魚雷が当たっても俺達は平気だが、潜水艇はそうもいかない。そして潜水艇が壊れれば、俺達はボール探しを中断して地上に戻らざるを得なくなる。

 よく考えてるな」

 

「小賢しい連中だぜ。返り討ちにしてきてやる」

「ストップっ!」

 瞬間移動でブルー将軍の潜水艦に乗り込み、気弾の一つも放って逆に沈没させてやろうとするターレスだったが、タイツに止められた。

 

「ブルーって将軍と何人かは深海に放り出されても死なないだろうけど、普通の兵隊達は死んじゃうかもしれないでしょ」

(サイボーグ1号をしているランファンは人造人間7号なんだから、迂闊に仕掛けちゃダメよ!)

 

 言葉ではブルー隊の兵士達の身が危ないからという理由で、そしてテレパシーではランファンが本当はターレスや自分より強いだろうから仕掛けるのは危ないと伝えるタイツ。

 違いは悟空達にまだ聞かせられないだけで、どちらの理由も正しい。

 

 ランファンが強いのは確かだが、彼女が瞬間移動を使って兵士達を助けられるかは分からない。そうである以上彼女がブルー隊の兵士達を助けるためにターレスを割と本気で撃退しようとする可能性もある。

 

「チッ、ならどうする?」

「もちろん、かっ飛ばして逃げるのよ!」

「ええっ、大人しく地上へ逃げようぜ! 海の中じゃお前らも戦えないんだろ!?」

「問答無用!」

 

 情けない悲鳴をあげるウーロンを無視して、ブルマは操縦桿を巧みに操って潜水艇を操縦し魚雷をやり過ごそうとした。

 しかし、基本的に潜水艇より魚雷の方が速い。徐々に距離を詰められていき……。

 

「えいっ!」

 タイツが念動力で岩を動かし、魚雷と潜水艇の間に差し込んだ。魚雷はそのまま岩に激突して爆発し、潜水艦はそのまま逃れる事に成功する。

 

「凄いっ、岩を盾にしたのか!」

「超能力で外の物を動かせるのか」

「さすがタイツさんだべ!」

「まあね。気弾ならともかく、魚雷ならこれで充分よ」

 

 タイツに喝さいを贈るクリリン達。しかし、まだ危機を脱してはいなかった。

「っ!? あいつらまた魚雷を撃って来たわ!」

「なんだと!? 二発続けてなんて誤射じゃすまないぞ!」

「ひえええっ、角煮にされる~っ!」

 

 再び悲鳴をあげながら海底の障害物を利用しながら逃げ回るブルマ達。しかし、ブルマはドラゴンレーダーの反応が近い事に気が付いた。

 

「待ってっ、レーダーの反応が近いわ! ドラゴンボールはあそこの洞窟の奥よ!」

「なんでそんな所に去年使ったドラゴンボールが入り込むんだ? ただの洞窟じゃねぇのか?」

「さあね。キラキラ光る物を集める習性のある半魚人の巣でもあるんじゃないの!? とにかく中に入るわよっ、姉さんは魚雷をよろしく!」

 

「任せて!」

 タイツは先ほどよりも二回りは大きな岩を動かし、魚雷を防ぐとそのまま洞窟の入り口に蓋をする。そして、ブルマ達の潜水艦は洞窟の奥に進んでいったのだった。

 

 

 

 

 

 

「魚雷が岩に命中! 目標、見失いました!」

「チッ、やっぱりそう上手くいかないものね」

 一方、ブルー将軍の潜水艦では、冷や汗を浮かべる射手の後ろでブルー将軍が舌打ちをしていた。

 

「超能力であんなでかい岩を動かされちゃ、仕方ないわね」

 責任を問われるのではないかと恐れていた射手だったが、彼の予想に反してブルー将軍は悟空一行を逃した事を彼の責任だとは思っていなかった。

 

 射手の腕が良かろうが悪かろうが、大きな岩を動かして盾にされては関係ないとブルー将軍は理解していた。もちろん、射手の腕が悪かったとしてもそれを理由に処刑を命じたりはしないが。

 

「一発なら誤射で済むと言っていたが、二発撃ったぞ。どう言い訳するつもりだ?」

「いけないんだ~、レッド総帥ちゃんに言いつけちゃうから」

「フンッ、どうとでもするわよ。それと! ちゃん付けは止めなさい!」

 

「岩の向こうに洞窟があり、目標はその中に入ったようです。今は入り口を岩が塞いでいます」

「そう……出てくる様子はないわね。あいつらがこの海域に現れたのは今日が初めてのはず。洞窟に別の出口があるとしても、知っているとは思えない」

 

 一度激高したブルー将軍だが、すぐに悟空一行の行動に妙な点を覚えた。ただ魚雷から逃げるだけなら、悟空達は潜水艦を捨てて逃げても良かったはずだ。

 それに、悟空達はレッドリボン軍より高性能なドラゴンレーダーを持っている。その彼らがここに現れたという事は……。

 

「ドラゴンボールがあるのは、洞窟の奥なんじゃないか? 海流に運ばれたか、何かの拍子に蟹やタコにくっついたかして入り込んだのかもしれない」

 ハッとしてパスタが推測を言葉に出した。同じ事を考えていたブルー将軍は頷くと、さっそく悟空達を追う事にした。

 

「マロン、丁度探索はあんたの番だったわよね? 探索の代わりに先行して岩を退かして、そのまま洞窟の中を偵察してちょうだい」

「はーい」

 

 

 

 

 

 

 洞窟の中を進んだ悟空達は、途中で洞窟の壁が人工物のようになっている事に気が付き、謎の地下ドックに行きついた。

 

「ふう、なんだいここは?」

「潜水艦がいっぺぇだ。もしかして、秘密のアジトってやつだべか?」

「どの潜水艦も古いわね。ホイポイカプセルに出来なさそう……それに、動かした形跡がないわね」

 潜水艦から降りて元の大きさに戻ったラズリやチチは、困惑した様子で地下ドックを見回している。ブルマは、停泊している潜水艦がかなりの年代物である事に気が付き、更に使われた様子もここしばらくないようだと見て取った。

 

「つまり、昔この辺りを縄張りにしていた海賊のアジトか。こいつは面白くなってきたな」

「ほう、海賊か。亡霊か悪霊でも出てくれば楽しめそうだな」

 ラピスとターレスが瞳を輝かせながら、ニヤリと口の片端を吊り上げる。

 

「海賊の亡霊かぁ。どれくらい強えかな?」

「ぼ、亡霊って、そんなのいるはずがねぇべっ、悟空さっ!」

「そ、そうだよ、滅多な事を言うなよ、悟空っ!」

「そうか? でもよ、ついこの間も占い婆の宮殿で母ちゃんの仲間やベジータ王のおっちゃんに会ったばかりだろ?」

 

「あっ、そう言えばあの人達って死人だったな」

「まったく幽霊っぽくないから、つい忘れてたべ」

 亡霊という言葉に反応したチチとクリリンだったが、占い婆の宮殿で毎年会っているサイヤ人達の事を思い出して落ち着いた。

 

「いや、それより海賊のアジトと言えばお宝じゃないか? 見たところ、海賊が何らかの理由で居なくなってから手付かずなようだ。つまり……」

「お宝も手付かずかもしれないって事だね」

 そしてヤムチャとラズリは海賊のお宝に目を光らせる。

 

「腕がなりますね、ヤムチャ様!」

「な、なあ、お宝があったらみんなで山分けだよな!?」

「手つかずって事は、海賊が仕掛けた罠なんかもそのままだから十分気をつけてよ」

 そして一行の中で最も年上なタイツが、引率のように先頭を歩く。

 

「後ろからレッドリボン軍も来てるんだから」

「っ!? あいつら、もう追いかけてきたの? ドラゴンレーダーも持ってないのに」

 そして、ブルー将軍達の気から位置を察知し、タイツ達は彼らが追ってきている事に気がついた。……だが、ブルー将軍達の前にマロンがいて、彼女達が話している間にこの地下ドックにたどり着いている事には気が付かなかった。

 

 動力を永久エネルギー炉だけから取っている人造人間10号であるマロンは、ロボットや機械ベースの8号と同じく気を全く発していない。

 ブルー将軍は彼女のその特性を理解していたわけでは無く、彼女に先行偵察を命じたのは偶然だった。しかし、結果的には名采配と言えるだろう。

 

「さて、とりあえずドラゴンボールの反応を追うか。ブルマ、どっちだ?」

「こっちよ」

 そして潜水艦をカプセルに戻したブルマは、レーダーの反応を頼りに海賊のアジトを進み始める。

 

 そこに、前方から髑髏状の頭部を持つ人型の敵が現れた。

「海賊の亡霊か!?」

「いや、ただのロボットだ。……がっかりだぜ」

「なんだ、ロボットか。って、がっかりしてる場合じゃないぞ!」

 

 無人になったアジトを忠実に守り続けたロボットは、臆せず手に持った剣で悟空達に襲い掛かる。しかし、彼らは原作よりも大幅に強くなっている。

「こいつっ、見た目より弱い?」

「なあ、こいつ壊してもいいんか?」

 

 ロボットの攻撃は、クリリンにも簡単に避けられてしまう。右手に握った剣だけではなく、左腕に装着されたマシンガンから銃弾をばらまくが、クリリンは銃弾を手で掴み取り、悟空は如意棒で弾いてしまった。

 

「まあ、昔に作られたにしては悪くない性能だと思うけどねー。あ、もちろん壊していいわよ」

「でも爆発はさせないようにね。ここ、古いから爆発の衝撃で崩れるかも。もちろん、気功波も禁止よ」

「それはちょっと面倒――あ、こいつ!」

 格闘戦では侵入者を排除できないと判断したロボットは、電撃を帯びた尻尾で弱そうに見えた相手を狙った。

 

「あん? お前の相手はこいつらだろ」

 しかし、ターレスはロボットが放った尻尾をフォトンシールドであっさり弾き飛ばした。製造された時代に合わない高性能さを持つロボットだったが、流石に戦闘力を計測する機能は未搭載だった。

 

「よし、ロボットの方は俺に任せろ! プーアル、空になった水筒があったな? セットしてくれ!」

「分かりました、ヤムチャ様!」

「よし、魔封波!」

 

『ッ!?』

 なんと、ヤムチャはロボットに向かって魔封波を仕掛けた。気の風がロボットの機体を持ち上げる。

「魔封波って、ロボットにも効くんだべか!?」

 チチがもっともな疑問を口にするが、ロボットの姿は彼女が見ている前で引き伸ばされていく。

 

「はぁぁ!」

 そして、ヤムチャはプーアルが置いた空の水筒にロボットを入れる事に成功した。閉じ込められたロボットが外に出ようとガタガタと水筒を揺らすが、ヤムチャがすかさず札を貼り付けて封印する。

 

「ふうっ、成功だ」

「お前、良く札なんて持ってたな」

「ああ、地球の神様の神殿で覚えてから、機会があったら使おうと思ってたのさ。しかし……やっぱり難しい技だな。我ながらよく成功させられたもんだぜ」

 

 魔封波は、封印したい対象と術者の実力差に応じて体力を消費する。ロボットの場合はその気が無いが、代わりにロボットを動かしているエネルギーの大きさによって、体力を消費するようだ。

 

「見るのはグルメス公爵が封印された時以来だな。やっぱりすげぇ技だな」

「本当っ! すっごくカッコイイわよね!」

「そうそう……って、おめぇ、誰だべ? ブルマさん、親戚の人だべか?」

「えっ? うわっ、あんた誰!?」

 

 ブルマは、いつの間にか一行の中に交じっていたマロンに気が付き、驚いて声を上げた。

「はぁい、マロンちゃんで~す」

 とっさに彼女の周りから離れる悟空達に、水着姿のマロンは気にした様子もなくウィンクまで見せながら自己紹介を返した。

 

 その緊張感や悪意の無さに、高まりかけた緊迫感が一気に緩む。

「マロン、さん? ええっと、なんで、いや、どうしてここに?」

「うん、ブルーちゃんにね、先に行って見て来いって言われて泳いできたの」

「ブルーちゃんって、ブルー将軍の事? じゃあ、あんたもレッドリボン軍なのか?」

 

「わかんなぁい。サイボーグ4号って呼ばれてるけど、ブルーちゃんは『あんたをブルー隊の一員とは認めないわよ!』って、すぐ怒るの。キーッ、て」

「そ、そう。サイボーグって? あとその尻尾は?」

「えっとねぇ、ドクちゃんが作ってくれたの。尻尾も可愛いでしょ?」

 

 ペラペラと、よく言えば無邪気に、悪く言えば何も考えていなさそうな様子で質問に答えるマロン。それを聞いてフラッペの正体がゲロだと知っているブルマとタイツ、そしてターレスは彼女が人造人間10号だと察した。

 

(あの爺、何考えてこいつを人造人間に改造したんだ?)

(たしか、レッドリボン軍の縄張りの内側で死んだからとか話していたから、この人もランチさんと一緒に何かの事故で死んじゃったんじゃない?)

(そこを改造して生き返らせたと。多分、コンセプトはただの一般人をどれくらい強く出来るか試す実験と、メイン動力を完全に永久エネルギー炉にした人造人間の開発ってところじゃないかしら)

 

 テレパシーでそう意見を交換する三人。そして、気を感じ取れないためマロンの実力は測れないが、自分達より圧倒的に強いはずだと察した。

 あのゲロがわざと性能を低く抑えた人造人間を開発するはずが無い。

 

「レッドリボン軍って事は、俺達と戦うんだよな?」

「ん~? それも悪くないけどぉ、あたしブルーちゃんから偵察して来いって言われてるから、このままあなた達に付いて行こうかな~って。

 ヤムちゃん達に付いて行った方が、近くで偵察できるじゃない?」

 そう言いながら、なんとマロンはヤムチャの腕に自分の腕を絡めた。

 

「えっ? ええっ!?」

 セクシーなビキニ姿のマロンから視線を逸らしていたヤムチャは、逃げる間もなく彼女に腕を組まれ、温かく柔らかい感触に驚いて視線を向ける。そして、斜め上から彼女の深い胸の谷間を見てしまい硬直してしまう。

 

 マロンがヤムチャを選んだのは、一行の中で彼が最も背が高くイケメンだったから、ではない。彼が魔封波を放った姿が格好良かったからだ。

「ど、どうする? ついて来るって言ってるけど?」

「どうすりゃいいんだろうな?」

「う~ん、ついてくるだけなら、別にいいんじゃねぇか?」

 

「おう、是非ついて来てもらおうぜ!」

 そして、マロンの希望は受け入れられた。積極的に賛成したのはウーロンだけだが、誰も彼女を拒絶しなかったのだ。

 

 なお、それはマロンの無邪気さがクリリンやラピス達の警戒心を解いたというわけでは無い。警戒しても疲れるだけだなと、呆れさせたのだ。

 

 一方その頃、マロンが身に着けている小型通信機から事の次第を聞いていたブルー将軍は呆然としていた。

「あの女、偵察って言葉の意味を理解してるのかしら?」

「理解している以前の問題だな。多分、何も考えてないぞ」

「まあ、いいじゃないか。あいつらの情報もこれで分かるんだし」

 

 偵察に出した兵が、敵と合流してそのまま一行に加わってしまう。彼らにとって常識外の展開に、怒りも忘れてしまう。

「フラッペの奴、あの女をちゃんと改造したんでしょうね? まさか、その改造の影響であんなふうになったのかしら?」

「いや、改造される前からあんな感じだったような……私も改造される前の彼女をそう知っている訳じゃないけど」

 

 頭を抱えるブルー将軍に、ランファンは言い難そうにそう告げる。なお、マロンはしっかり脳改造もされているが、人格を変える目的で細胞を移植されていないので影響はあまり受けていない。……フリーザ一族の細胞を多めに移植されているのに、人格に影響が出ていないのは逆に大したものかもしれない。

 

「そうね。もうマロンに関しては放っておきましょう。流石に裏切りはしないでしょうし。後で生みの親に苦情は入れるけど。

 それより、このままドラゴンボールを、そして海賊のお宝を手に入れるわよ!」

「そう来なくっちゃっ」

 

 海賊のお宝と聞いて盛り上がるブルー将軍とパスタ。マロンの暴挙に呆然としていたボンゴも、ハッとして意識を切り替える。

 そしてブルー隊は悟空達に続いて地下ドックに潜水艦をつけると、留守を任せる数名を除いて海賊のアジトに上陸していった。

 

 

 

 

 

 

「なあ、その尻尾……?」

「なあに、ウーロンちゃん? あたしの尻尾がそんなに気になる? 歩くのに邪魔?」

「いや、そうじゃなくてさ、ちょっと上に上げてくれない?」

「上に? こう?」

「そうそう、エヘヘヘ……」

 

 ヤムチャと腕を組んだまま進むマロンの後ろを歩くウーロンは、彼女の長い尻尾を上げさせて彼女の歩く度に左右に揺れるヒップを堪能していた。

 

「あれ、どう思う?」

「どう思うって、ちょっと羨ましい――」

「まさかと思うが、ヤムチャを人質にしてるつもりか? たしかに、今のヤムチャは咄嗟に動けるとは思えないが……」

「あ、そう言う事」

 

 ターレスの質問にクリリンは正直な感想を口にし掛けて照れ隠しに、苦笑いを浮かべた。

 悟空とほぼ同じ顔のターレスだが、彼は異性に興味がないわけではない。ないが、特殊な状況のためその辺りの関心は脇に追いやられていた。マロンがレッドリボン軍のサイボーグだと聞いても、スケベ心を優先するウーロンに対しては内心で「呑気なもんだぜ」と思いながらも、ある意味で感心していた。

 

「羨ましい。へぇ、羨ましいんだ?」

「えっ!? ラズリさんっ、さっきのは口が滑っ、いや誤解がっ」

「何が誤解なんだよ、言ってみろよ、クリリン」

 そして、失言を聞き逃さなかったラズリに凄まれ、狼狽えるクリリン。なお、買い物に付き合う約束はまだ果たされていない。

 

「お前らもお前らで、呑気なもんだな」

「ヤムチャ様っ、頑張ってください! 固まらずに歩けるようになったのは大きな進歩です! 克服までもうちょっとです!」

「……俺達の中で一番緊張感を持ってるのは、プーアルとヤムチャかもな」

 

 マロンと腕を組んだまま固まっているヤムチャは、彼女に引きずられるようにだが歩いてはいた。約二年前、パスタを見ただけで固まって動けなくなった時と比べたら、プーアルが言う通り大きな進歩と言えるだろう。

 

「なあ、おめぇってどれぐらい強いんだ? 4号って事は、サイちゃんより強いんか?」

「サイちゃん? あ、は……っと、危ない、危ない。3号ちゃんの事? うーん、分かんない」

 そして悟空は一行の先頭グループに居た。チチが彼の視界にマロンが入らない前へ連れて行ったためだ。しかし、悟空はマロンに興味があるようで時々振り返っては話しかけている。

 

「分かんねぇのか?」

「そうなの。あの子、目を覚ました後、すぐにホワイトちゃんの所に行っちゃったから、話した事も無いのよね。でも、ドクちゃんはあたしよりあの子の方が強いって言ってたわ」

「そっかー。サイちゃん強えもんな」

 

「悟空さっ、そんなにこの人の事が気になるだか?」

 そのためチチが嫉妬からやや苛立った様子で尋ねるが、悟空はクリリンと違ってやましい事がないので狼狽えずに答えた。

 

「ああ、こいつには気が全くねぇからどれくらい強いのか分からねぇからな。チチもマロンがどれくらい強いか分からねぇだろ?」

「そ、そりゃあ、そうだども……」

 

 そう二人が話している後ろでは、ウーロンが尻尾を上げさせた目的に気が付いたマロンが、「ヤダー、ブタちゃんのエッチッ」と悲鳴と呼ぶには危機感のない、殆ど笑い声のような声を上げていた。

 

「あの人、誰かに似てると思ったけど……うちのママにそっくりだわ」

「あ、そっか。ママに似てたのね」

 ブルマとタイツは、自分の母親のパンチー夫人を思い浮かべ、その言動がマロンと似ている事に気が付いた。

 途端に、マロンに持っていた悪い印象が弱まっていく。「ママと同じタイプの人なら、まあ仕方ないか」と。

 

「なにっ? 私、パンチーさんに似てるの? ありがとう、マロン感激~」

 そして、マロンはブルマ達の言葉は内面ではなく外見だと解釈して喜んでいた。パンチー夫人は以前からモデルとして雑誌やテレビで活躍していたため、似ていると言われて彼女もまんざらではなかった。

 

「なるほど、パンチーおばさんか」

「じゃあ、まあ仕方ねぇだな」

 そして、その影響かラズリとチチのマロンに対して持っていた悪印象がかなり和らいだのだった。ある意味、夫人の人徳のなせる業と言えるだろう。

 

「おい、この先に何かあるぞ」

 そして、一人前に注意を向けていたラピスが海賊の仕掛けた罠に気が付いた。壁には丸い穴が開き、床には無数のボタンが並んでいる。

 

「ボタンを踏むと壁から何かが飛んでくる仕掛けか」

「ふうん、毒ガスだったらともかく、矢や銃弾なら怖くないわね」

 しかし、海賊が仕掛けた罠は悟空どころか、ブルマにも脅威と認識される事は無かった。

 

「だけど、罠が足元だけじゃなくて、空中にも張り巡らされている可能性もあるわよね。電気が生きているし」

「じゃあ、四身の拳で――」

「えいっ」

「ヤムチャ様を持ったまま、マロンさんが飛んだーっ!?」

 

 空中にも赤外線か何かの罠が張り巡らされているかもしれない。そう警戒したタイツが四身の拳で分身を作ろうとしたが、その前にマロンがヤムチャの腕を抱えたまま空を飛んでボタンの無い向こう側まで行ってしまった。

「大丈夫よ~、飛んで行けば何ともないみたい」

「……みたいね。じゃあ、行きましょうか」

 

「そういや、タイツ達の瞬間移動で向こう側まで行けばよかったんじゃねぇか?」

「そりゃあお前、向こう側に落とし穴とかがあったら危ないから、タイツさん達はそこまで警戒してたんだよ。そうですよね?」

「ま、まあね。その心配もなさそうだけど」

 

 海賊が仕掛けた罠なのだから、警戒した方がいい。そう思っていたタイツだったが、少し警戒しすぎだったかもしれないと思い直していた。

 よくよく考えてみれば、海賊が自分達のような存在を想定してアジトを造ったはずが無いからだ。

 

「おい、俺は飛べないんだけど?」

「蝙蝠にでも変身すれば? 先行くわよ」

 そして、悟空達は難なく罠を突破したのだった。

 

「やれやれ。海賊ももう少し歯ごたえのある罠を仕掛ければよかったのにな。大きな岩が転がってくるとか、天井が落ちて来るとか」

「ラピス、ここをアトラクションか何かだと勘違いしてないだろうね?」

 

 残念ながらラピスが期待していた歯ごたえのある罠との出会いは無いまま、一行はついにアジトの最奥まで到達した。

「宝箱だ!」

「待って待って、私も見たーいっ」

 宝箱を目にして、とっさに駆け寄るウーロンとつられて動くマロン。

 

「待て、ウーロン。何か罠が仕掛けられているかもしれない!」

 マロンに腕を組まれ続けたヤムチャだったが、マロンが手を放した瞬間立ち直って二人を呼び止めた。

「大丈夫だって、ここまでだって大したことなかっただろ」

 しかし、ウーロンの危機感はここに到達するまでの間にすっかり麻痺していた。そして、マロンには元々危機感がない。

 

「あ、開いたっ!」

 宝箱が開いた瞬間、人形が起き上がって構えているマシンガンを乱射する。

「ひえええっ!?」

「きゃっ!?」

 銃弾は悲鳴をあげるウーロンの頭上を通り過ぎて、マロンに迫った。もちろん、銃弾が当たったところで彼女にとっては痛くも痒くもない。

 

 短い悲鳴をあげたのも、銃弾より人形が現れた事に驚いたからだ。もしかしたら、ただの地球人だった頃の死因であるマシンガンに対して、僅かながらトラウマを持っていた可能性もあるが。

 

「はあっ!」

 しかし、銃弾がマロンに届く事は無かった。ヤムチャが彼女の前に出て銃弾を次々に掴み取ったからだ。

「ふうっ。まったく、だから言わんこっちゃ――」

「助けてくれてありがとうーっ! やっぱりあなた、すっごくカッコイイわ!」

 そして、感激したマロンに抱き着かれ、頬にキスまでされた事で再び固まってしまった。そのまま朽木のように倒れてしまう。

 

「あれ? どうしたのー?」

「ヤムチャ様ーっ!? ヤムチャ様は女の子が苦手なんです!」

「そう言えばそんな事を聞いた気がする。やだ、可愛い~」

 倒れたヤムチャに駆け寄るプーアルと、彼の頬を指でつつくマロン。

 

「なあ、あれってヤムチャが庇わなくても大丈夫だったんじゃないか?」

「そうだろうけれど、助けてくれたのと、格好良かった事が重要なんじゃない? あの人にとっては」

「なるほどな。……お前らはどう思う?」

 

「知ったこっちゃないわよ」

 一行の後ろの方に居たターレスが振り返ると、そこにはブルー将軍と彼の部下達がいた。

「敵に合流するわ、いちゃつくわ……信じられない。まあ、一人戦闘不能にしたって考えれば、悪くない働きなのかもしれないけど」

 

「あ、ブルーちゃん。やっほー」

「ヤッホーじゃないわよ! ともかく、そのドラゴンボールと海賊の宝を渡してもらおうかしら」

「おいおい、なんでそうなるんだ? まさか、俺達から力ずくで奪えるとでも?」

 

 ターレスはそう言ってブルー将軍を睨みつける。気を探ると、ブルー将軍やボンゴ、パスタも一年前よりも格段に強くなっている。兵士達も、一人一人がシルバー大佐やホワイト将軍の部下の倍以上の強さだ。

 だとしても、ターレスとタイツには及ばないが……

 

(まあ、それも人造人間7号のランファンと、そこのマロンが本気を出したらあっさり奪われるかもしれないけどな)

 ブルー隊に混じっているランファンと、まだ倒れたままのヤムチャの傍らにいるマロンがどれくらいの強さかは、ターレスも知らない。しかし、ゲロが改造した人造人間だ。最近やっと戦闘力1万に到達した自分より弱いという事は無いだろう。

 

「どうかしらね。そっちは光線……気功波とやらが使えないでしょう? 天井があるから空を飛んでも意味は無いし、あたし達の方が有利じゃないかしら?」

 そして、この海賊のアジトはブルー将軍達にとって有利な戦場だった。……だとしても、彼がタイツやターレス、もっと言えば悟空に勝つのは難しいのだが。

 

「あ、それと魚雷の件は御免なさいね。手が二回連続で滑っちゃて。お詫びのしるしに、ドラゴンボール以外のお宝なら分けてあげてもいいわよ」

「手が滑ったって、そんなわけ――!」

「なあ、そんな事どうでもいいからそろそろやろうぜ。オラ、おめぇ達と戦うのを楽しみにしてたんだ!」

「孫君!?」

 

「あら、水に流してくれてありがと。じゃあ、やりましょうか!」

「ブルーちゃん、あたしもー?」

「あんたもよ! あんたも戦うのは嫌いじゃないんでしょ!? 上手く倒せたら、捕虜にでも取りなさい。ホワイト隊と交換するから!」

 

「は~い。あれ?」

 マロンがヤムチャから手を放して立ち上がったその時、彼の懐から札の貼られた水筒が転がり落ちた。

 すると、突然札が破けて水筒から封印されていたはずのロボットが出現。さらに、周囲の壁が前触れもなく崩れた。

 

「なんなのっ!?」

「海賊の罠か!?」

「いや、悪の宇宙人……歴史改変者ね」

 

 狼狽えるブルー将軍達に、タイツが身構えながら答える。

『カカカカカ!』

 正解だとでもいうかのように、崩れた壁の向こうから山のように積まれた金や宝石と、髑髏マークの付いた船長帽や眼帯をして、剣や銃で武装した骸骨達が現れた。

 

 ロボットや骸骨達は、禍々しい気を纏い、悟空一行とブルー隊に区別なく襲い掛かった。

 




〇ブルー隊の射手

 原作では魚雷を繰り返し外した事で、ブルー将軍に処刑されてしまった。この作品でも命中させる事は出来なかったが、特に罰せられることはなかった。



〇海賊ロボ

 制作者不明。某ドラクエの骸骨兵士に似た頭蓋骨を模した頭部に、剣で武装した右腕とマシンガンになっている左腕を持つ。
 装甲が頑丈だったため悟空達とそこそこ戦えていたので、ピラフマシンより強いと思われる。

 ただ、ホイポイカプセルが無かった時代に活躍した海賊のアジトにあった事を考えると、当時の最先端テクノロジーの塊だったのは間違いない。
 独自に侵入者か否かを判断する人工知能、長年整備する人間がいなかった状態でも十全に動きマシンガンを乱射している。さらに、永久エネルギー炉でもないのに燃料切れを起こしていない。

 もしかしたら死期を悟った海賊が自身の財宝を誰にも渡さないために、アジトに入ってきた者は無差別に攻撃するようプログラムしたのかもしれないが、それを考慮したとしても驚くべき性能だと思う。

 なお、この作品でターレスを弱そうと判断した理由は、やや離れたところで立ったまま動かなかったので、「戦う気が無い」=「弱い」と判断したという理由です。



〇海賊の罠

 普通の人には致命的な罠で、ブルー隊の兵士はブルー将軍が突撃させたために全滅してしまった。……矢を受けた状態で自分達がやられた事を報告した兵士もいたが。
 原作アニメだと矢が刺さったままゾンビのように動き出し、ブルー将軍に近づいた後、突然普通に話し始めるというコミカルなシーンがあった。



〇海賊の財宝

 原作コミックでは宝箱の中だけだったが、原作アニメでは悟空達がブルー将軍を倒して逃げ出した後、アジトの崩壊が進むにつれて周囲の壁が壊れ、さらなる財宝と玉座に座った海賊の骸骨が現れた。

 この作品ではアニメ版の財宝を採用しております。



〇ヤムチャのあがり症

 マロンのお陰で急速に治りつつある。



 -SIN-様、メイトリクス様、gsころりん様、ぱっせる様、鳥揚 和様、佐藤東沙様、太陽のガリ茶様、クロスオーバー大好き侍様、ドーワ6様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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