ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
諸君、宇宙から生還した天才科学者のドクターゲロである。儂等は4号とターレスと共に瞬間移動で秘密研究所が地下にある別荘に移動したところだ。
「うおっ!? クソ、この瞬間移動って奴はどうにも慣れないぜ。ここが爺さん達の……なんだこいつ!?」
地球へ初めて訪れたターレスは、すぐ近くで草を食んでいるトリケラトプスに驚いて思わず身構えている。
「ターレス、彼はこの島の番トリケラトプスのタロウです。草食ですから落ち着いてください」
「このタロウの気がここに瞬間移動するための目印でな、倒さんでくれよ」
「チッ、分かってる。ちょっと驚いただけだ」
儂と4号は別荘に入り、隠し通路から地下の秘密研究所に降りる。
「さて、ターレスよ、念のために聞くが体に不調は無いか?」
「そうだな……重力が弱くて落ち着かねぇって事ぐらいだ。まあ、それはあんたの宇宙船に連れていかれた時からだが」
惑星ベジータは地球の十倍の重力じゃったからな。突然重力が十分の一になった事で体が軽くなり、戸惑っているようだ。
「てっきり宇宙船が安物か、文明が未発達な星の宇宙船だから人工重力が弱いのかと思ったが、こんな重力の弱い星があるとはな」
まだ戦闘員として他の星に送り込まれた事がないターレスは、惑星ベジータから出た経験がない。そのため、彼にとっては10Gが普通らしい。
「そうか。この星の重力は惑星ベジータの十分の一じゃからな。まあ、しばらくすれば慣れるだろう。
では、とりあえずあのカプセルに入ってくれるか?」
そう言って儂が卵型のカプセルを指さすと、ターレスは胡乱気な顔をした。
「あれの中に入れて俺をどうしようってんだ?」
「あれはお前さんが軽く殴っただけで穴が開く、ただの医療機器だ。お前さんが病気にかかっていないか、検査するための装置じゃよ」
「病気? 俺は弱っているように見えるのかよ?」
「念のためだ。この星にはサイヤ人の病気を治せる医者はまだいない。すぐに終わるから、入ってくれんか?」
生きているサイヤ人を連れて来る予定はなかったので、宇宙船には生き物の体内にいる菌やウィルスをスキャンする装置は地球人と4号用に調整した物しか積んでいなかった。それに、携帯用の装置よりこの研究所にある大型の装置の方が高い精度でスキャンする事が出来る。
「……そう言えば、色々データを提供するって約束だったな」
そう言って、ターレスは渋々とした様子だったがカプセルに入った。そしてさっそく彼の体をスキャンするが、幸いなことに健康体で地球人の害になるウィルスなどは持っていないようだった。
「さて、それでこれからの事だがターレス、お前さんには儂の養子になってもらおうと思う」
「なにっ!? 爺さんが俺の親父になるのか!?」
カプセルから出てきたターレスにそう言うと、とても驚かれた。
「ターレス、お前の歳だとそれが一番手っ取り早い。ああ、記録上はこの惑星、地球の地球人という事にして記録を作るから、そのつもりでの」
何せ、両親もいつ生まれたのかも分からない3歳児が突然現れたのだ。色々と記録を捏造して誤魔化さなければ、マスコミが面倒な事になる。
とはいえ、このあたりの事は4号を作った時にやっているのでどうにでもなる。
「おいおい、サイヤ人の俺に爺さんの星の人間のふりをしろってのかよ?」
「そう難しく考える必要はない。この星の住人にとって宇宙人は、未知の存在じゃ。尻尾が生えている事で多少は物珍しがられるだろうが、『だからどうした?』という態度でいれば、深く追求して来る者はいないだろう」
この地球には儂の前世の地球と違い、いわゆる人間以外にも擬人化された獣のような姿の獣人等が存在する。尻尾が生えているぐらいなら、簡単に誤魔化せるだろう。……天津飯だって額に第三の目が有っても地球人で通っていたはずだ。
「あんたは宇宙人の事を広めてないのか?」
「ああ。宇宙へ行ったが、宇宙人と会ったとは儂も儂の友人家族も世間には発表していない。せいぜい、珍しい蛙を持ち帰って発表したぐらいだ」
宇宙人の存在を今の地球で広めても、あまりいい事があるとは思えなかったので、儂とブリーフはナメック星人やヤードラット星人の事を世間には秘密にしている。
儂の会社やブリーフの会社以外の企業が宇宙進出を目指して何かトラブルを起こされたら……フリーザ軍に拿捕されて地球の場所がばれたり、原作に登場していない宇宙海賊やらなにやらを招き寄せたり……面倒どころか詰みかねない。
せいぜい、宇宙に行った証拠としてナメック蛙を発表した程度である。
「なら別にいいけどよ、俺はこれから爺さんの事をお父様とでも呼ばなきゃならないのか?」
「別に爺さんのままでも構わんよ。実際、孫でもおかしくない歳だ」
ターレスにもそのうち基本的な礼儀作法を教えるつもりだが、まだ彼は三歳児でこれから覚えてもらう事は他にも山ほどある。一度に詰め込もうとするべきではないだろう。
「とりあえず、地球の重力に慣れるついでにこの島を探検してきたらどうじゃ? 4号、案内してやりなさい」
「おいおい、俺はガキじゃないんだ。お守りなんて必要ないぜ」
儂が島を見て回ってくるようにと言い、案内兼見張りとして4号に付いていくように言うが、ターレスは腕を組んでそっぽを向いた。
いや、三歳児が何を言っておるんだ。それともやはり、サイヤ人は独立心が強いのだろうか?
「ターレス、私はこの島にある甘い果物を食べに行きますが、あなたはどうしますか?」
「っ!? ……仕方ねぇな、ついて行ってやる」
しかし、4号が気を利かせてくれたおかげでターレスを研究所の外へ連れ出す事が出来た。劇場版では冷酷さを見せたターレスだが、さすがに3歳の頃は食い気優先のようだ。
……そういえば、ターレスが劇場版で地球に使った神精樹の種は、どこで手に入れたのだろうか。医療カプセルでスキャンした時には持っている様子はなかったから、この世界線ではまだ手に入れていないのは確実だが。
神精樹の実は神のみが口にする事を許されているという設定がある。そうである以上、種は神が持っているのが自然だ。
そしてドラゴンボールの神は、界王神や破壊神など一線を画する存在から、地球の神様のようにフリーザ軍の兵士でも手が届く存在まで幅が広い。
それから考えると、ターレスが征服したどこかの星の神が神精樹の種を所有しており、それを彼が奪ったと考えられる。つまり、幸いにも今の彼は神精樹の種の存在も知らないという事だ。
儂としても、うっかり地面に落として芽吹いたら地球を滅ぼしかねないような植物の種は扱いに困るので、存在しない方が助かる。
神精樹の実は強力なパワーアップアイテムだが、儂としては星を犠牲にするため好んで利用したい代物ではないのだ。
「さて、それはともかくターレスがいない間に、彼に見せたくない作業を終わらせるとしよう」
儂はホイポイカプセルを五つ取り出し、研究所の開けた場所でそれを元に戻した。そう、ターレスに見せたくない作業とは、彼と同じサイヤ人達の遺体の処理だ。
儂にとっては医療行為の延長線上にある事だが、幼い少年に見せるべき事ではないという分別ぐらいはある。ターレス自身が気にしないとしても、それは変わらない。
冷凍カプセルから取り出した遺体を大まかに洗浄殺菌し、戦闘服とインナーを脱がせ、改めて各種サンプルを採取。そしてもう一度、今度は念入りに洗浄した後に細胞修復剤を投与して、妻が眠っているのとは別に用意してある保存カプセルに、一人ずつ入れていく。
これで壊れた細胞が、程度によるが一週間から数カ月で元通りになるはずだ。あまりに損傷が大きい場合は無理だが、それは試してみなければ分からない。
「彼らが着ていたのが戦闘服でよかった。そうでなければ、脱がせるのが一苦労だったわい」
自分で動かない人間の服を脱がせるのは、中々手がかかった。引っ張れば引っ張っただけ伸びる戦闘服とそのインナーだったからよかったが、そうでなければ裁断して脱がせるしかなかっただろう。
その戦闘服も貴重なサンプルだが、研究に取り組むのは後回しにして、とりあえず保管する。
ここからはターレスに見られても構わない作業だが、早く確認しておきたかったのでそのまま進める。
それはフリーザ軍に向かって仕掛けたスパイロボットの成果だ、彼らは実に良い仕事をしてくれた。
「おお、これは間違いない……フリーザ一族の、フリーザの細胞じゃ!」
そう、スパイロボットはフリーザの細胞の採取に成功していたのである。
多分、惑星ベジータを破壊した直後に、「奇麗な花火だ」とはしゃいでいる時に口から飛んだ唾液の飛沫に混じっていた細胞を採取したのだろう。
解析したデータを何度も確認したが、間違いない。この生命力、この特異な生態……フリーザの細胞だ!
「フハハハハハ! やった、やったぞ! これで儂の目標達成までの距離が大幅に近づいた! ……とはいえ、先に作らなければならなくなった物がある。確認も出来たし、研究に取り組むのは明日からにしてとりあえず培養しておこう」
高笑いをあげ終わった儂は、フリーザの細胞の半分を培養器に、残り半分を冷凍保存用の装置に入れた。
そして、満月までに作らなければならなくなったある物の製作に取り掛かったのだった。
空を飛んで洋梨に似た果物を手に取ったターレスは、即座に齧りついた。
「く~っ、美味ぇ! 宇宙船で食った時から思ってたが、この星の食い物はみんなこんなに美味いのか!?」
「気に入ってくれたようで何よりです。私はあまり他の星の食糧事情に詳しくないので、比較はできませんが」
私、人造人間4号がそう答えると、ターレスはよほど果物を気に入ったのか、食べる手を止めずに話し続けた。
「そいつは贅沢なこったぜ。惑星ベジータじゃ、こんな美味い果物はなってないからな。まあ、俺が真面な飯にありつけなかっただけかもしれないが」
どうやら、地球の食べ物はよほど美味いらしい。私が知っているのは地球以外ではナメック星とヤードラット星だけなので、比較対象が少なくやはり評価はできないのだが。
ナメック星人は水を飲むだけで充分生きていけるため、料理の文化は地球よりも格段に劣っている。しかし、ナメック星の魚は美味しかった……いや、ナメック星の魚を地球の調味料を使って料理したから美味しかったのかもしれない。
ヤードラット星の食事は……確かに地球の料理に比べると薄味だった気がする。
そうして思い返してみれば調理していない食材そのものの味は、地球の物が最も美味しく感じた気がする。
「少なくとも、果物では私が知る星の中で一番です」
「へえ、そうかい。そりゃあ、楽しみだ」
ターレスはそう言って種を吐き出すと、やっと満腹になったのか満足げに腹を擦って空を見上げた。
「飯は美味いし、フリーザ軍もまだ嗅ぎつけてねぇ。重力の弱さにも慣れてきた。中々居心地がよさそうな星だぜ」
そういうターレスからは、母星と多くの同族を喪って悲観する様子は全く見られなかった。私に見えるのは、ドクターが彼を宇宙船に連れてきた時から見せていた、彼の図太さや逞しさだ。
「なんだよ、俺の顔に何かついてるか?」
「いえ、ただドクターから聞いていたサイヤ人と、実際にこの目で見るあなたと言うサイヤ人の違いに戸惑っているのです」
「あぁ?」
何を言われたのか分からない、そんな様子のターレスに、私は端的に答えた。
「想像していたより、邪悪で冷酷には見えないなと」
私は、ドクターから『原作』についての知識を与えられている。しかし、それはドクターと同じ知識を持っている事を意味しない。
ドクターは前世で目にした、『ドラゴンボール』という作品の知識を持っている。漫画を読み、アニメや映画を見て、胸を高鳴らせ、楽しんだ記憶をドクターは持っている。
だが、私は『ドラゴンボール』という作品を見た事はない。あるのは、ドクターに刷り込んでもらった知識だ。
だから、ドクターに刷り込まれた知識以上のものは……ストーリーやキャラクターに対する思い入れはない。
これは私という存在が誕生して十年以上経ち、多くの経験を積んだ今だから私自身も理解出来たことだ。ドクターも、まだ気が付いていないだろう。……この事については、後日ドクターに打ち明けて相談するべきだろう。私とドクターは別人だから別々の事を考えるのは当然だが、二人とも同じように感じていると誤認したままなのは良くない気がする。
それはともかく、私に残虐非道には見えないと言われたターレスは胡乱気な顔つきをして言い返してきた。
「それは……馬鹿にしてんのか?」
「いえ、ただ感想を口にしただけです。サイヤ人は危険な戦闘民族だと聞いていたので」
それ以上に、『原作』の知識ではターレスと言えば、孫悟空がもし頭を打たずサイヤ人のまま育ったらどうなるのか、と言ったテーマから誕生したキャラクターであり、劇場版ではそのテーマに相応しい悪役ぶりだったと記憶している。
「ふんっ、俺は見ての通りガキだし、まだ戦闘員でもないからな。それに、サイヤ人たって色々いるんだぜ。俺は違うが、非戦闘タイプの連中は大人しいもんさ。
残虐非道と恐れられるのも悪くないが、爺さんとお前には世話になるからそれぐらいは言っておいてやる」
ターレスは地球の食べ物を、よほど気に入ったようだ。私の前でも、だいぶ緊張を解いている。
しかし、ターレスが自己申告した通り彼がまだ子供である事に大きな意味があるのかもしれない。どんな悪人でも、生まれた時から悪人ではないという考え方がある。
生まれた時からある程度知能を与えられた人造人間である私は、その真偽を決める立場にない。だが、少なくともターレスにはそれが当てはまるのだろう。
人の本質はそう簡単に変わらないとも言うが、『原作』でターレスが地球に現れるのは今から二十年以上先の未来だ。二十年という時間は、地球人やサイヤ人の寿命から推測すると、人を変えるには十分な時間のはずだ。
ドクターが、「子供や赤ん坊と遭遇したら別だ」と言っていた意味が分かった気がする。
もっとも、ターレスをいわゆる世間一般での「良い子」にしようとすれば反発されるだけで終わりそうだが……ドクターはどこまで考えているのだろうか?
そうこうしていると日が傾き、夕方になった。
「そろそろ夜になります。別荘に戻りましょう」
「なあ、晩飯ってあるよな?」
「……まだ食べるんですか?」
私は思わずターレスが平らげた果物の種の小山を見て、それが幻ではない事を確認した。
「当たり前だろ。サイヤ人は大飯ぐらいだからな。言っておくが、三食腹いっぱい食べさせてやるって約束したのはお前らだからな。後悔しても遅いぜ」
「……ドクターなら大丈夫です。きっと約束を守るでしょう」
そう言いつつも、私は若干の不安を拭えなかった。
そうして別荘に戻ると、丁度ドクターが表に出てくるところだった。
「おお、お帰り、ターレス、4号。
早速だがターレス、お前さんには渡しておく物がある」
「なんだ? 俺を見張るための発信機か何かか?」
「違う。儂はお前さんの気……生体エネルギーを離れていても感じ取れるから、発信機の必要はない」
「げっ!? 超能力ってのは何でもありかよ!?」
「ターレス、超能力ではなく修めれば習得出来る技術です。あと、私もあなたの気を把握しています」
「げげっ!? クソ、勘弁しろよぉ~」
私が説明すると、ターレスはお手上げだというように肩を落とした。どうやら、彼は自分以外に監視される事や不自由を強制される事に大きなストレスを感じる性格らしい。
「はっはっは! 位置を把握されるのが嫌なら、気のコントロール法を覚えるしかない。気を消せば、儂らから己の位置を隠す事など容易い事だ」
「本当か!?」
「本当だとも。だが、それだけではないぞ。気のコントロールを習得すれば、スカウターを誤魔化す事も出来る。スカウター頼りのフリーザ軍の兵士達の不意を突く事も出来るという訳だ」
「よしっ、俺は気のコントロールを覚える!」
瞳を輝かせるターレスにドクターは満足げに頷いた後、手に持ったゴーグルを彼に見せた。
「渡したいものはこのゴーグルだ」
「なんだ、こりゃ?」
「お前さん達サイヤ人は、満月を見ると大猿に変身してしまうじゃろう? それを防ぐためのブルーツ波遮断ゴーグルじゃ。満月の日に外に出るときは、これを付けるように」
サイヤ人は満月を見ると大猿に変身して戦闘力が十倍に跳ね上がり、しかもその際王族以外は理性を無くして本能のまま暴れ出してしまう。
それを防ぐには月を破壊する、前もって尻尾を切断しておく、等の手段があるがドクターはそれらを選ばなかったようだ。
「チッ、仕方ねぇな。大猿になっている間に条件を破っちまったら飯が食えなくなるから、つけてやるよ」
そう舌打ちしてゴーグルを受け取ったターレスは、尻尾を切断される可能性もあった事に気が付いていない様子だが。
「では、晩飯にするか。手伝いロボットも準備を終えている頃じゃろうし。……近々食材の調達を副社長かブリーフに頼まねばならんな」
この別荘には非常時の保存食以外にも私とドクターが三か月は食いつなげる食料が貯蔵されているが、ターレスの食欲を考えると三日で底を突くかもしれない。
「明日は、魚でも獲りましょう」
ドクターは食料の事を心配しているようだが、私はドクターがターレスの事をしっかり考えていると分かって安堵していた。
地球に戻ってきて三か月が過ぎた。食料は4号と儂が巨大サメや首長竜を獲った事もあり、副社長に一度頼んだだけで済んでいる。儂らは公にはまだ地球に帰還していない事になっているので、直接買いに行く事が出来ない。そのため、副社長に食料を買い集めてもらい、それを儂か4号が瞬間移動で受け取りに向かっている。副社長にはしばらく頭が上がらんな。
ただ幸いなことに、三歳のターレスの食事量は原作の十二歳の孫悟空よりは少ない気がするので、今のところはなんとかなりそうだ。
あの後4号と話したが、彼と儂の『原作』に対する認識の違いについて知って驚かされた。言われてみればもっともな話だが、言われてみなければ気が付かないからコミュニケーションは大切なのだと思い知らされた。
あと、ターレスの尻尾を切断しなかった理由も聞かれたが、それは単純にターレスと良好な関係を築きたかったからという単純な理由だ。
尻尾はサイヤ人の誇り、というようなことを『原作』でラディッツが言っていたような覚えがある。サイヤ人にとって、尻尾は弱点であると同時にアイデンティティの象徴なのだろう。
それを危ないから切断させろと言われたら、どう思うか? 児童虐待も甚だしい。
孫悟空の場合は神様に尻尾を消されても、当時の彼にはサイヤ人としての自覚もなかったのでケロリとしていたが。
それに、握られると力が抜けるという弱点さえ克服すれば、尻尾は武器になる。自身の体重を支えたり、相手の足を払ったり、トリッキーな使い方が可能なはずだ。
なので、ターレスやこれから作るサイヤ人ベースの人造人間の尻尾は温存する方針である。
そうして、別荘から瞬間移動で抜け出してドクターフラッペとして活動したり、サイヤ人の遺体の修復を待つ間培養したフリーザの細胞を実験用マウスに移植する動物実験を行ったり、戦闘服やサイヤ人たちのアタックボールとか、一人用ポッドと呼ばれている球形の宇宙船の解析を進めていると、ちょっとした出来事が三つ起きた。
「ふーむ、やはり宇宙船からの定期連絡が途絶えたようじゃ」
「ドクター、それは我々が残してきた宇宙船の事ですか?」
「うむ。自動操縦にした後、定期的に存在を報せるようプログラムしておいたのじゃが……それがもう続けて二度観測できていない」
定期連絡は地球の位置がばれないように、惑星ベジータに向かう際に宇宙空間に放出した複数の小型衛星を経由する方式をとっていたため、想定より遅れて連絡が届く場合も考えられる。しかし、二度続けてとなると宇宙船に何かあったと考えるべきだろう。
隕石か何かと衝突したか、宇宙海賊かフリーザ軍に捕捉されて破壊されたか。……拿捕された場合は自爆装置が作動するようプログラムしていたから、地球の存在は知られていないと思いたい。しかし、宇宙人の技術なら儂のプログラムを停止出来る可能性もある。
「とりあえず、地球の周りに接近する宇宙船がないか見張るためにスパイ衛星を放っておくか」
ジャコに気が付かれる可能性があったので、彼が地球から帰るまではやりたくなかったのだが……フリーザ軍の接近に気が付かず手遅れになると致命的だ。仕方がないだろう。
「しかし、我々が『帰ってくる』時はどうしますか? 一工夫必要だと思いますが」
4号が言う通り、儂らは公にはまだ宇宙を旅している事になっているので、地球に「帰った」事にするには宇宙船に乗って帰ってくる姿を見せる必要がある。
出発する時、ドクターフラッペとして活動するためのアリバイ工作として、派手に宣伝したからな……。
ただまあ、難しい問題ではない。
「そうじゃな、帰還予定日に合わせて一度宇宙へ行き、予備の宇宙船を使って無事帰ってきたように偽装するとしよう」
実は、この研究室には儂らが乗っていた宇宙船と同じ外見の宇宙船の予備がある。ステルス仕様ではないし、エンジンの出力も低いが、その代わりホイポイカプセルにできる設計になっている。
宇宙服を着てそれを持った儂と4号が舞空術とサイコキネシスで宇宙まで行き、そこでホイポイカプセルから予備の宇宙船に戻して乗り込む。そして、後はさも宇宙船に乗って帰ってきたような演技をして、地球に降りるだけだ。
それはさておき……儂は細胞再生剤の効果で無傷の状態に戻ったサイヤ人……儂を助けてくれた女サイヤ人の遺体が保存されているカプセルをのぞき込んで、改めて彼女の顔を見た。
肩までの長さの髪に、やや釣り目だが可愛らしい顔立ちの美人……これはギネさんではなかろうか?
サイヤ人は顔の種類が少ないそうだから、そっくりさんである可能性もあるが……。
「儂にぶつかったサイヤ人はバーダックだったようじゃし、彼女じゃろうな」
まさか孫悟空の母親の遺体を持って帰ってくるとは……いや、彼女の死の原因になってしまった事の方が問題か。
これはバーダックに殴られるかもしれん。彼がタイムパトローラーになっていればだが。
儂が居なくてもギネはフリーザが惑星ベジータを破壊した時に、他の大勢のサイヤ人と共に死ぬはずだったとか、そもそも儂を殺しかけたのはバーダックだとか、いろいろ言う事は出来るが……こういった問題は理屈よりも感情を納得させる方が重要なので、もし会う機会があったら謝罪と一発ぐらいなら殴られる覚悟をしておこう。
「同時に儂に出来るせめてもの償い、そして恩返しとして、今ある技術で最高の人造人間に改造する事を約束しよう」
ちゃんとフリーザの細胞と永久エネルギー炉も組み込むからな!
「……ドクター、そのバーダックが今にも乗り込んで来るのではないかと若干不安になりました」
「ハッハッハ、流石にそれはあるまい」
「おい、爺さん、気のコントロールの修行を見てくれよ!」
儂が4号の肩を叩いていると、ターレスがそう言いながら飛んで来た。彼はまだ気のコントロールを習得していないが、すぐに覚えたベジータが特別なだけで、彼の出来が殊更悪いわけではない。
それに、サイヤ人襲来編のベジータは数々の戦闘を生き残ってきた二十代から三十代の成熟した大人だ。その豊富な戦闘経験も彼の強さの一部だったはず。
それに対してターレスはまだ戦闘員になる前に儂によって地球へ連れてこられたため、戦闘経験は無きに等しい。
差が出るのも当然という事だ。
「構わんがドリルはやったのか?」
儂はターレスに気のコントロールだけではなく、勉強も教えていた。彼を儂の養子として恥ずかしくない秀才にする……というような気は全くないが、文字の読み書きと算数ぐらいは覚えておくべきだと判断したからだ。
その後の勉学はターレスが好きにやればいい。やりたくなければ無理に勧めんし、求めるなら応援しよう。
「ああ、あれぐらいなら朝飯前だぜ」
「よし。儂も丁度気分転換がしたかったところだ。修行を見てやろう」
儂は一旦研究を止め、羽織っていた白衣をハンガーにかけようとした。その時、前触れもなく何者かの気配が儂のすぐ前に発生した。
これは、瞬間移動!? いったい何者が――。
「お爺ちゃんっ! 帰ってるなら言ってよ、宇宙のお話を聞かせてくれる約束でしょう!?」
現れたのは、なんとタイツだった。ブルマもおんぶして連れてきている。
「お、おお、すまんかったな」
「だ、誰だ、お前!?」
「あんたこそ誰よ、お爺ちゃんが連れてきた宇宙人? にしては地球人そっくりだけど」
「ターレス、彼女はドクターの友人の博士の娘のタイツ、その妹のブルマです。二人とも、彼はドクターの養子になるターレス。彼はサイヤ人という宇宙人です」
混乱しかけた状況を、4号がそうタイツ達とターレスを互いに紹介して、なんとか落ち着けてくれた。
「ふーん、あ、確かに尻尾が生えてるわね」
「や、やめろっ! 俺の尻尾に触れるな!」
「お爺ちゃんの子供になるんなら、あたしがお姉ちゃんね」
「なんでそうなるんだよ? マジなのかよ、爺さん?」
「まあ、そうなるか。それよりもタイツや、どうやってここに……いや、いつの間に瞬間移動が出来るようになったのじゃ?」
儂が最も気になる事を尋ねると、タイツは事も無げに答えた。
「いつの間にって、お爺ちゃんやヨン兄ちゃんの真似をして練習したからに決まってるじゃない」
超能力は、真似をして練習したら使えるようになる物ではないと思うが……。
「パパだって超能力が使えるんだから、娘のあたしが使えても不思議はないでしょ」
「ふ~む、まあそういうものか。では、気の探知はどうやったんじゃ?」
「気? うーん、よくわかんない。パパとか、ママとか、あとお爺ちゃんとヨン兄ちゃんが何処にいるのか、何となくわかるだけよ?」
どうやら、タイツは両親であるブリーフとパンチー夫人が最長老から潜在能力解放を受けたためか、原作にはない才能を授かって生まれてきたようだ。
後は、家族や儂らが日常的に超能力を使っているから、それを手本にしたのだろう。気の探知は、今のところは普段からよく一緒に過ごしている対象の気しか感じ取れないようだが。
「あ、そうそう。お爺ちゃんの会社の人から食べ物を持って行ってって、お使いを頼まれてたの。はい」
なるほどと考え事をしていた儂に、ケースに入ったホイポイカプセルを手渡すタイツ。後で経緯を聞いたところ、大量の食糧を買い集めている事を一部のマスコミに嗅ぎつけられつつある事を察知した副社長が、次はそちらで頼めないかとブリーフに話を回し、ブリーフが儂の所に行きたがっているタイツにお使いを任せたという事だったようだ。
ブリーフ、瞬間移動出来る気がする、と娘が言ったとしてもいきなりお使いを任せるのはどうかと思う。何事もなく成功したから何よりだが。
「せっかく来たんじゃ、タイツも気のコントロールを習っていくか? 儂らの所以外にも瞬間移動する事が出来るようになるぞ」
「面白そうね。やってみる」
「おいおい、修行までついてくるのかよ……」
「ターレス、競い合った方がきっと修行もはかどりますよ。ではドクター、ブルマは私が見ていますから行ってきてください」
こうして儂等の隠遁生活は賑やかに過ぎていった。
後は時間を作ってやって来たブリーフとスカウターや戦闘服について解析と研究を進めたり、ターレスやタイツに気のコントロールについて教えたり、人造人間に関する研究を進めたりと、充実した毎日を過ごすことが出来た。
無事、フリーザ軍や危険な宇宙海賊も地球には来なかった事だし。
計算外の出来事としては、桃白白が我がゲロコーポレーションの警備部門、通称GCGの特別顧問として雇われていた事か。……世界最高の殺し屋になるのは止めたのだろうか?
万が一にもクリリンが多林寺ではなく我が社に来ないよう、年齢制限を設けていたが……桃白白が来るとは想定外も甚だしい。
とはいえ、まっとうに働いている人間を「殺し屋になってもらうため」と言う理由で解雇する訳にもいかん。しばらくは成り行きを見守ろう。
……もしかしたら、儂を暗殺するために潜入しているだけかもしれんから、いつか直接会わなければならないだろうが。
社員やブリーフ達を人質に取られたら危ないからの。
とりあえずは、儂と4号が表向きに帰還した後、しばらくフラッペが現れない理由作り……ドクターフラッペが大規模な戦闘用ロボット工場を作ろうとして、それを警察によって摘発され、フラッペが大きな損失を被る、と言うシナリオに修正が必要じゃな。
ちょっとロボットを強くして、数を増やしておこう。
そして九か月後、警察……と言うよりも桃白白と我が社の警備部の活躍で、ドクターフラッペの戦闘用ロボット工場(偽)の摘発が無事成功した後、ジャコが地球へ飛来し……そのしばらく後、孫悟空が無事地球へ飛来した。
・ゲロ
妻が眠っている間に養子が出来、人造人間達の生みの親だけではなく、書類上でも一児の父に。
フリーザの細胞やサイヤ人の遺体、他にも様々な成果を持ち帰る事が出来てウキウキしている。
ターレスに対しては、特に態度を作らず自然体で接している。また、サイヤ人の尻尾は残す方針。それを切断するなんてとんでもない!
・4号
若干ターレスに対して警戒していたが、島で過ごすうちに打ち解けていった。『ドラゴンボール』と言う作品を知るゲロと、ゲロから教えられた『原作』の知識しかない自分の違いについて、ターレスをきっかけに自覚する。
・ターレス
地球に胃袋を掴まれたサイヤ人の子供。サイヤ人らしい大食漢を発揮するが、ゲロと4号には彼なりに懐いている。やはり、束縛しなかったのが良かったのかもしれない。
ゲロとの約束もあって、タイツ達ともそれなりに仲が良い。
この話が終わったタイミング(悟空地球飛来時)では四歳。
・タイツ
実は超能力の才能も持って生まれていた天才少女、ゲロの別荘に遊びに行きたいからと言う理由で瞬間移動を習得する。ただ気のコントロールをマスターした訳ではないので、移動できるのは家族と家族同然の付き合いをしている者の所のみとなっている。
この話が終わったタイミングでの年齢は六歳
・ギネ
保存用カプセルの中の液体に浮かんでいるが、細胞再生剤によって顔の損傷が治ったため、ついにその正体がゲロにも明らかに。謎のヴェールは戦闘服同様脱がされました。
・ゲロの別荘
管理人はいないが何体ものお手伝いロボットが設置してあり、常に手入れされている。料理をしているのもゲロや4号ではなく、お手伝いロボット達である。
・ゲロの別荘がある島
海に囲まれた島で、大きさは数百人ぐらいなら生活が営めそうなぐらい。ゲロが別荘(秘密研究所)を建てるまでそんな島が無人だったのは、島の周りの海に体長十メートル前後の巨大サメや首長竜、海竜が住み着いていて船では近づけないため、
ペットのタロウは元々カプセルコーポレーションで飼われていたが、思っていたより大きくなったのでブリーフ夫妻が「専用の牧場を買おう」と相談している時に、丁度いいからと言う理由でゲロが貰った。
・孫悟空
この話が終わったタイミングで地球のパオズ山方面に飛来した。二歳。
・バーダック
ゲロのハート(生命)をキャッチしかけた歴戦のサイヤ戦士。本来なら死亡しているはずだが、作品やゲームによっては過去にタイムスリップしてフリーザの先祖を倒したり、仮面のサイヤ人にされたり、タイムパトローラーになったりしている。
いま、ゲロが最も脅威を覚えている人物。
・桃白白
ドクターフラッペが作った戦闘用ロボット相手に大活躍! だが、工場にいたドクターフラッペは遠隔操作されたロボットだった。ドクターフラッペと桃白白の戦いは、まだ終わらない……。
酒井悠人様、AZOTH様、路徳様、変わり者様、コダマ様、是夢様、翡翠314様、nicom@n@様、あんころ(餅)様、くるま様、竜人機様、アドメラレク(゜.゜)様、カド=フックベル様、六四様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。