ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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91話 魔神達の魔の手! レッドリボン軍編最後の戦い

 前触れもなく基地内部に出現した悟空達に、レッドリボン軍の兵士達は大混乱に陥った。

「襲撃だっ! ぐはっ!?」

「司令部に報告しろっ! がはっ!?」

「オレンジ将軍は無事なのか!? うっ!?」

 

 そしてバタバタと倒れていく。

「なあ、倒しちまっていいのか?」

「倒してから聞くなよ」

「できれば、あんまり酷い怪我はさせないでやってくれ」

 

 レッドリボン軍の本拠地だが、基地に勤める兵士達が特別強いという事は無い。シルバー隊やホワイト隊の兵士達と同程度、戦闘力10から13ぐらいはある。しかし最精鋭のブルー隊の兵士達程の強さ、戦闘力30程に達する者はいない。

 

「何か隠し玉があるんじゃないでしょうね?」

「あんたらに通じるようなか? ねえよ、そんなもん」

 ブルマの問いに、オレンジ将軍は不貞腐れた様子で答えた。

 

「戦車や戦闘機、装甲車、それと巨大ロボットがあるが、お前らには通用しないだろ」

 オレンジ将軍は縛られている訳でもないのに、ブルマ達の指図に大人しく従っている。それは、自分が何をどうしても、どうにもならないと理解しているからだ。

 

 理解していても態度が悪いのは、自分とブラック補佐の大芝居を台無しにされた……どころか、フラッペの正体がこの儂、ゲロだったので最初から無駄だったからだろう。

 

「レッド総帥も、当初はサイボーグ4号……マロンを基地に待機させていたが、悪の宇宙人対策にブルー隊に派遣したからな」

「メタリック軍曹の量産とかもしていないしね」

 

 そして、オレンジ将軍の答えをシルバー大佐とバイオレット大佐が補足する。

 

「それにしても、どんな形で終わらせるつもりだ? このままただブラック補佐を退治するだけなら、俺達のシナリオとそう変わらないぜ」

「あんたは捕まえたけどね」

「そうだべ。ちゃんとパンジちゃん達に謝るだよ」

「名前を変えても変装しても、気で本人だってわかる。諦めろ」

 

 ブルマとチチに口々にそう言われ、チャオズにダメ押しまでされたオレンジ将軍は、肩をすくめて苦笑いを浮かべた。

 なお、ボンゴとパスタも彼と同じく大人しく付いてきているが……諦めている訳でも、殊勝に反省している訳でもないだろう。

 

 多分、捕まった後でどうにかして逃げ出せないかとか、下される刑罰を軽くする策は無いかとか、そして自分達の財産をどれくらい隠せるか、色々考えるのに忙しいのだろう。

 

「まあ、その辺りは置いておくとしてだ」

 とはいえ、どのみちあの三人を厳しく罰するような事にはならないじゃろう。その理由は諸々あるが……今は説明している場合ではない。

 

「終わらせ方は、レッド総帥を起こしてからになるが……まあ、全ての黒幕はフラッペで、テレビで演説をしていたのはブラック補佐そっくりにフラッペが作ったロボットと言う事にして、後は桃白白が退治した事にすればいいじゃろう」

 

「そうか。私とフラッペの因縁もここで終わりか。新しい映画の敵役を考えなければならんな」

「桃白白様……」

「本当は最初からグルだったんじゃないだろうな、お前ら」

 惜しむように遠い目をした後、続編映画の心配をする桃白白に、ため息を吐く天津飯と胡乱気な視線を向けるランチ。

 

 便利な架空の存在であるフラッペだが、原作に於けるレッドリボン軍編が終われば用無しだ。遠慮なく黒幕として死んだ事にするとしよう。

「まあ、そうなるだろうな。でも、そのブラック補佐そっくりのロボットや、フラッペの死体はどうやって用意するつもりなんで?」

 

 オレンジ将軍も、フラッペを黒幕に仕立てる事は想定していたらしい。

 

「気功波で吹っ飛ばされたことにしよう。フラッペは、自分で自分をサイボーグにしていた事にすれば死体の代わりに、適当な残骸を作れば十分じゃ。

 ブラック補佐は、事が終わった後に儂が謝って説得しよう」

 

 と、儂が話している間にレッドリボン軍の兵達の混乱をブルー将軍達が強引に治めつつあった。

「あんた達! このブルー将軍に逆らうつもり!?」

「よっ、はっ、怪我をさせずに当身だけでってのは中々難しいな」

「ふっ! 締め落としてたんじゃ時間がかかり過ぎる。おいっ、あんた達も手伝いなよ!」

 

 ブルー将軍はその地位によって、ラピス達は反射的にこちらを攻撃しようとする兵士達を失神させている。

「はーい。じゃあ、こんな感じでいい?」

 そしてマロンが超能力で兵士達を金縛りにして、その辺りにあるカーテンや絨毯を裂いて縄代わりにして縛り上げた。

 

「出来るんなら最初からやりなよ」

「だって、皆楽しそうだったから邪魔しちゃいけないかなって」

 

 何はともあれ、後はブラック補佐の身柄を確保して、また儂の分身をフラッペに変装させてそれを桃白白に吹き飛ばしてもらえば終わりだ。

 そう思っていたが、儂のスカウターからキリの反応を報せる電子音が鳴った。

 

「これは――」

 そして、基地の敷地に前触れもなく巨大なロボット……儂がフラッペとして開発したバトルジャケットによく似た機体が出現した。

 

『フハハハハ! レッドリボン軍はブラックリボン軍と名を改め、このブラック総帥の手によって世界を支配するのだ!』

「この声はブラック補佐!? いくら芝居だからって、飛ばし過ぎじゃないか!?」

 バトルジャケットから響いて来たブラック補佐の声に、思わず声を上げるシルバー大佐。

 

「あれ? でもブラックちゃんの気はあっちにもあるわよ? もしかして、ゲロちゃんみたいに分身したの?」

「いや、おそらく歴史改変者が連れて来た、他の歴史のブラック補佐じゃろう」

 言動からすると、劇場版『最強への道』の歴史からだろうか?

 

「会長、他の歴史とは?」

「詳しい説明は後でするが、単純にブラック補佐の偽物と考えても今は構わん。マロン、ランファン、ランチ、三人が中心になって戦い、他の者は援護や避難誘導を優先してくれ」

 

「そんなに強いのか?」

「ああ、今のターレスや桃白白でも相手にならんじゃろう」

 スカウターで計測したところ、バトルジャケットを強化しているキリは戦闘力に換算して約30万。ネイルに助けを呼ぶかどうかちょっと迷う程度だ。

 

 戦闘力約1万のターレスや桃白白でも、足元にも及ばない。悟空やヤムチャ、ブルー将軍達では、傷一つ付けられないどころか蹴散らされて終わりだろう。

 

「4号に8号を連れてくるよう連絡をした。後は任せたぞ」

「任せたって、ゲロのじっちゃんはどうすんだ!?」

「儂はちょっとやる事がある」

 

 そう言うと、儂はスカウターで計測したトワの結界がある方向へ向かって飛び立った。カプセルからバーダック救出のために開発した機材を出し、さっそく起動する。

(トワの魔力を乱す妨害装置。これなら結界はもちろん仮面による洗脳も無効化……は出来なくても、解く大きな助けになるはず)

 

 洗脳が乱されてバーダックの動きが乱れている間に、タイムパトロールの悟空達が彼の仮面を完全に砕けば作戦成功だ。

 ただ、永久エネルギー炉から発せられるエネルギーを魔力に変換するこの装置の性能を試した事は、身近に魔術師がいないので一度もない。そこが不安だ。

 

「さて、データ上では上手く行くはずだが……ん? トワ達の反応がやはり微妙に違う?」

 結界の外からスカウターで魔力を計測してバーダックの大まかな位置を計測しようとした儂だが、計測された魔力の波長が異なる事に違和感を覚えた。

 

 その瞬間、論理的ではないが強烈な嫌な予感がして肌が粟立つ。そして儂の視界の端に、少年に見えるほど小柄な魔神の姿が見えた。

「っ!? しまった!」

 彼の姿は前世の記憶で見た覚えがある。暗黒魔王メチカブラに忠実な天才魔神、サルサだ。彼は儂に向かって両手をつき出して叫んだ。

 

「魔封波っ!」

「ぬ、ぬおおおおっ!」

 強烈な勢いの気の奔流に、儂の自由は奪われた。瞬間移動で逃げようと試みるが、サルサが仕掛けた魔封波は強力で儂を離そうとしない。おそらく、気だけではなく魔力も使って儂を封じようとしているのだろう。

 

『ちょ、ちょっとゲロ!?』

 こうなると最早儂に出来る事はほぼない。せめて通信機で時の界王神様に連絡し、助けを期待するのが精々だ。

 そして細く引き伸ばされた儂は、そのままサルサが宙に浮かべた小瓶に入り、時間が停まった。

 

「そうはさせん」

 だが、次の瞬間空に放り出されていた。慌てて舞空術でその場に留まると、儂の前には逆立ったオレンジ色の髪をした男の後ろ姿があった。その向こうに、悔しそうに顔を歪めるサルサの顔が見える。

 

「何のつもりだ? 何故貴様がその男を助ける!?」

「この男を今攫われるのは困るのだ」

 後ろ姿の正体は、なんとドミグラだった。ドミグラが杖で儂が封印されそうになっていた壺を叩き割り、儂を助けてくれたようだ。

 

「そいつを殺せば大きな歴史改変になり、大量のキリが手に入るはずだ。それなのに、メチカブラ様に逆らってまで助ける理由があるのか?」

 儂を無視してドミグラに話し続けるサルサだったが、儂はこの隙に逃げる事は出来なかった。彼の殺意は今も儂に向かっており、そのプレッシャーで儂は金縛りにあったような状態だったからだ。

 

「キリなら、この男を殺すより生かしておいた方が稼げるのでな。それよりも、メチカブラはよほどこの男が自由に動き回ると困るようだな。

 それだけで、私が貴様の邪魔をする理由としては十分だと思わんか?」

 

「そうか。なら……貴様から先に殺すまでだ!」

 サルサは一旦引き下がるような素振りを見せたかと思ったら、ドミグラに向かって一気に間合いを詰めて殴りかかった。ドミグラはそう来る事を読んでいたのか、再び杖を振るってサルサの拳を受け止め、開いている方の手から気功波を放って牽制する。

 

 スカウターの性能に頼っても、儂に見えたのはそこまでだった。後は、儂とは次元がいくつ異なるのかもわからない程ハイレベルな戦いが繰り広げられている。

「そうじゃっ、バーダックは……いやそもそも本物なのか?」

 ハッと我に返って注意をトワ達の反応に向けると、儂の前から結界が消えた。そして、即座にドミグラとサルサも内側に含んだ新たな結界が張られる。

 

 おそらく、時の界王神様が張ってくれたのだろう。

 

『くっ、ドミグラめっ! 余計な真似を! ならば、もうこの仮面も無意味!』

 そして、結界に隔てられていたため肉眼で見えなかった仮面を被ったバーダックを含めたトワ一味と、悟空達タイムパトロールの三人が戦っていた。

 

 だが、なんとバーダックは自ら仮面を脱ぎ捨てた。

「フッ、これですっきりした」

 そして、仮面を脱いだ瞬間姿が大きく変わった。体が一回り程大きくなり、あっちこっちに跳ねていた髪が消えて代わりに角が生え、肌の色も変わった。

 

「おめぇっ、ダーブラ!? 父ちゃんに化けてたのか!」

 なんと、仮面のサイヤ人は魔神ダーブラの変装だったのだ。それに合わせるように、それぞれトランクスと戦っていたトワも、魔神トワに変わる。……ミラだけはミラのままだが。

 

「チッ、暗黒魔王一味の方だったか。舐めやがって」

「まさか、ゲロさんを殺すためにこんな手の込んだことを?」

 

 どうやら、魔神ダーブラや魔神トワが変装していたのは、儂を誘き出すためだったらしい。

 別の歴史のブラック補佐を連れて来て時の界王神と儂に、自分達の介入を報せて誘き出す。そしてタイムパトロールの三人は邪魔が出来ないよう変装したダーブラ達で抑え、結界の外で潜んでいたサルサが儂を魔封波で封印。そしてドラゴンボールで復活できないよう、何処かに拉致して殺さずそのまま閉じ込めておくと言ったところだろうか。

 

『ゲロッ! あなたはまた危険な真似をしてっ! もう少しで囚われの身になる所だったわよ!』

「いや、申し訳ない」

 まさか暗黒魔王メチカブラに目をつけられていたとは思わなかった。今はフラッペだった分身も戻しているから、もしサルサの魔封波が成功していれば、儂を封印した小瓶は彼らの本拠地か何処かにでも置かれて、救出は絶望的だっただろう。

 

 現時点で歴史改変者がその気になれば、儂等を容易く殺す事が出来る。だから、過度に警戒しても意味は無い。そう考えるあまり、軽率になっていたかもしれんな。

「次は注意します」

 儂の戦闘力が最低でも一億を超えるまでは、歴史改変者に対して何かする時は四身の拳で作った分身にやらせる事にしよう。

 

『いや、そう言う事じゃなくて……ああ、もうっ! 全然懲りてないじゃない!』

「我々にとっては懲りてもらっては困るので、それで十分だ」

 その時、サルサと戦っていたはずのドミグラが会話に加わってきた。通信を傍受しているのではなく、単に耳が良いのだろう。

 

 サルサはどうしたのかと周囲を見回してみるが、儂の見える範囲にはいない。

「奴は私が別の空間に飛ばした。トワがタイムパトロールと戦っている以上、この戦いの間に戻ってくることは無いだろう」

 どうやら、ドミグラは自身が開いた空間を繋げる門にサルサを落としたらしい。

 

「それは良かった。ところで、何故儂を助けたのかね?」

「助けたつもりはない。理由は、サルサに言った通りだ」

「そうか。危ないところを助けてくれて感謝する」

「……助けたつもりは無いと言ったはずだが?」

 

 儂が軽く頭を下げると、ドミグラは胡乱気な目つきになった。彼からすれば、儂に感謝されるいわれはないと言ったところか。

「それは聞いていたが、儂が君に礼を言ってはいかん理由にはならんじゃろう。何か別の目的があったとしても、助けられたら礼を言うのがマナーじゃ」

 

 ドミグラが儂を助けたのに別の目的があったとしても、それはそれ。助けられた儂が礼を述べて感謝を表すべきじゃろう。……もちろん、だからと言って恩義を感じて彼に便宜を図るかは別の問題だ。

 恩知らずではない。ついさっき、感謝の意を表して礼を言ったじゃろう?

 

「確かにそうだが、まあ、好きにするがいい」

 ドミグラの儂を見る目つきは、胡乱気なものから珍獣を見るそれになったが。

「恩を感じているのなら、時の界王神に我々との同盟を前向きに検討するよう言ってくれるか?」

 

『聞こえてるわよ! ゲロっ、絆されちゃだめよ!』

「君の細胞と血液サンプルを提供してくれたら考えよう」

『ゲローっ!?』

「それは断る。私のクローンを作られては堪らんからな」

「それは残念」

 

 ピアス型通信機から時の界王神様の叫び声が響いて、耳が痛い。

 それにしてもドミグラが儂を利用か。多分、歴史改変に関する事じゃろうな。儂がこの歴史からいなくなるより、このまま活動を続けさせた方が歴史改変を楽に進められるのだろう。

 

 この歴史の住人である儂が起こす行動は、タイムパトロールの管轄外じゃから止められることもない。儂がタイムマシンを発明して過去や未来に行き来したら話は別じゃろうが。

 

 と思っているとドミグラが素早く儂から距離を取った。そして、先ほどまで彼がいた空間を強力な気弾が通り過ぎる。

「次は貴様の相手をしてやろうか?」

 戦いを終えたベジータがドミグラに向かって気弾を放ったのだ。攻撃というより、牽制のためだろう。

 

「おっと、連中に逃げられたからと言って八つ当たりは止めてもらおうか。それに、今回は一応お前達に味方をしてやったはずだが?」

「フンッ、恩を着せるつもりか? 残念だったな。俺はそんな爺の命なんて惜しくもないぜ」

 

 敵対関係のドミグラに弱みを見せないための演技……には見えないベジータの物言いに、儂はおいおいと内心でツッコミを入れる。

「それで、戦いはどうなったのかね?」

「それが、しばらく戦ったと思ったらすぐ逃げていきました。邪魔が入ったので目的の達成、あなたを攫う事は不可能だと思ったのでしょう」

 

「なるほど。しかし、まさか他の歴史の自分達やバーダックに変装するとは、暗黒魔王は儂が思っていたより搦手を使ってくるようじゃな」

「あの、怖くは無いんですか? 暗黒魔王に目をつけられているあなたは、今後も狙われるかもしれないんですよ?」

 

 トランクスに問われた儂は、数秒思案した後「恐ろしいが、今のところ恐れるほどではないな」と答えた。

「儂を殺しても、儂はドラゴンボールで生き返る事が出来る。それを防ぐには儂が死んだ後あの世でもう一度殺せばいいのだが、暗黒魔王達にとってそれは都合が悪いのだろう」

 あの世に行くこと自体は難しくないはずだが、瞬間移動であの世を逃げ回る儂を追う内にタイムパトロールの邪魔が入ると考えたのだろう。

 

「そして、今回ドミグラが儂を助けてくれたので、暗黒魔王一味は今後君達タイムパトロールだけではなく、ドミグラ一味が妨害しに来る可能性も考えなければならなくなった。

 なので、恐ろしくて夜も眠れない、と言う事にはならないはずじゃ」

 

「な、なるほど」

 儂の考えを聞いてもトランクスはいまいち納得していない様子だったが、それ以上聞いて来なかったのでいいだろう。

 

「では、そろそろ失礼しようか。暗黒魔王は我々にとって共通の敵だという事を覚えておけ」

「おう、ゲロのじっちゃんを助けてくれてありがとな!」

「チッ、さっさと失せやがれ!」

 

 と、トランクスと話している内にドミグラは帰ってしまったようだ。

「いやー、今回はえらい目にあっちまったな」

「だが、その甲斐はあった。貴重なデータを取る事が出来たからな」

 儂に向き直ってそう言う悟空に、儂はスカウターを操作して計測したデータを確かめながら答えた。

 

 魔神トワと彼女が作った方のミラ、魔神ダーブラ、魔神サルサのデータを取る事が出来た。また、ドミグラのさらなるデータも計測している。

 残念ながら細胞は全く手に入らなかったが、この貴重なデータは今後絶対に役に立つはずだ。

 

『はぁ……本当に懲りないわね。もういいわ、皆、そろそろ帰って来て』

 時の界王神様の疲れたような声とともに、悟空達は時の巣に帰って行った。儂が地上のレッドリボン軍基地に注意を向けると、いつの間にかバトルジャケットが二機動いていた。片方はキリで強化されていない、儂が開発した機体のようだが……。

 

「はて? 何があった?」

 

 

 

 

 

 

『このブラック様が世界の支配者だ! 逆らう者は皆殺しにしてやる!』

 スピーカーから発せられる常軌を逸したブラック補佐の怒鳴り声を聞いて、ランファンは「あらあら」と笑った。

「他の歴史で彼にいったい何があったのかしら!?」

 そして拳をバトルジャケットの右膝の側面に叩き込む。

 

「きっと悲しい事でもあったのかも、ねっ!」

 ほぼ同時に、マロンの回し蹴りと尻尾のスイングが連続してバトルジャケットの頭部に叩きつけられた。

 華奢な二人だが、今はレッドリボン軍のサイボーグとしての演技を完全に止め、全力で戦っている。現在の戦闘力は、ランファンが約18万、マロンがなんと約24万。カッチン鋼以外の金属なら、ウィロー合金であっても軽く壊す事が出来る。

 

『この私に逆らうつもりか!? どうやら皆殺しにされたいようだな!』

 だが、禍々しい気……キリで強化されたバトルジャケットは、二人の攻撃でダメージを受けた様子もなく動き、腕でマロンを、足でランファンを狙う。

 

「ランファンちゃん、あたし達の攻撃ってあんまり効いてない感じ? 全然痛がってくれないし」

「そりゃあ、機械だから痛がりはしないでしょ。別の歴史のブラック補佐は、操縦しているだけだし」

「そっか」

 二人の攻撃は、特にマロンの攻撃は致命的と評するには程遠いがバトルジャケットにもダメージを与えている。しかし、ランファンが言った通りの理由によって手応えが分かりにくかった。

 

『ふはははははっ! どうしたっ!? 逃げる事しかできないのか、小娘共め!』

 哄笑を上げながら避ける二人を追い回すブラック補佐だが、同時に二人を狙っている事と小回りが利かないため二人は逃げる事が出来ていた。

 

「だったらこれをくらってみな! かめはめ波っ!」

 金髪ランチがかめはめ波を放つが、ブラック補佐はそれを読んでいたかのようにバトルジャケットの腕を盾にして頭部を守る。

『フッ、そんな見え見えの手を――』

 

「本命はこっちです! かめはめー波っ!」

 だが、その背後から青髪ランチがかめはめ波を放った。不意を突かれたバトルジャケットはバランスを崩し、ブラック補佐が耐えようと操縦桿を動かすより早く地面に倒れ込んだ。

 

「よし、これで基地の敷地から出たな」

「後はこのまま倒すだけですけど、私達では有効打を与えるのは難しそうですね」

「ちょっと待って! あなた、なんで二人いるの!?」

 金髪と青髪、二人のランチが頷き合っているのに気が付いたランファンが驚いて尋ねる。

 

「ああ、四身の拳だよ」

「それで分身を作る時、分身の代わりにもう一人の私を出せたら楽なのになって思っていたら、出せちゃいました!」

「青髪の方が本体じゃないと、やりづらいんだけどな」

 そう答える金髪と青髪のランチだが、当人達が言うように金髪ランチは青髪ランチが四身の拳で作り出した分身だった。

 

 その戦闘力は二人とも本来最大の20万。本来なら四身の拳で分身を一つ作っているので、気が半減するはずだが、彼女は青髪が永久エネルギー炉、金髪が気、人造人間に改造された事で一つの体に備わった二つの動力をそれぞれ分けているため、最大エネルギー量が減らなかったのだろう。

 

 これはゲロも想定していなかった現象である。

 

「そうなんだ、凄いわね」

「凄いけど、どうするの? 私達四人の力を合わせて、えいってする?」

「やるならあいつを空に向かってぶん投げてから、下から上に向かってやらねぇと、基地が吹っ飛んじまうぜ」

「そ、それはいけません!」

 

 レッドリボン軍基地では、ゲロに言われた通り悟空達が兵士達の避難誘導を行っている。

 途中でイエロー大佐が出てきて、「あんな狂ったような芝居まで打って泥を被ろうとするブラック補佐を、一人で逝かせるわけにはいかねぇ!」と、悟空達の前に立ちはだかろうとして一悶着起きかけた。

 

 しかし、すぐさまオレンジ将軍が「もうそう言う問題じゃねぇんだよ!」と叱責して、避難誘導に参加させた。

 なお、ブラック補佐の身柄はブルー将軍があっさり捕まえた。

「ま、待てっ、ブルーっ! バトルジャケットに搭乗した私を、バトルジャケットに搭乗して止めなければ――!」

「ちょっとっ、本物も正気を失ってるんだけど!? 縛り上げて適当に連れていくけど、誰か後で落ち着かせてよね!」

 

「いや、お前さん達の上官じゃろうに。まあ、後でゲロにやらせればいいじゃろ」

 それ以外は特に問題なく避難誘導は順調に進んでいる。タイツを始めとした超能力者が、念動力で拘束したレッドリボン軍兵達を運んでいるお陰だ。

 

「遅くなりました」

 そこに4号がサンとギネを連れて現れた。

「初めまして。10号のマロンで~すっ」

「えっ? ああ、初めまして。あたしは6号のギネだよ」

「5号のサンだべ。詳しい自己紹介は、後でするべさ」

 

「遅かったな。ところで、8号って奴は何処だ?」

 金髪ランチが周囲を見回すが、8号の姿は無い。その時、倒れていたバトルジャケットが再起動して起き上がった。

 

『くっ、このブラック総帥をいいように……! 許さん。許さんぞ、小娘共ー! 役立たずの兵士諸共吹き飛ばしてやる!』

 そして振り返って胸部の発射口から光線を放とうと、エネルギーを収束し始める。

 

『ブラックっ!』

『っ!?』

 その前に、新たなバトルジャケットが格納庫から姿を現した。

 

『まさかお前まで悪の宇宙人に操られていたとは……今正気に戻してやるぞ!』

 しかも、操縦しているのはレッド総帥だった。兵士達によって安全な場所に運ばれている途中で気絶から目覚めた彼は、断片的な情報から状況を推測し、事態を自らの手で収束するためにバトルジャケットに乗って出撃したのだ。

 

 だが、当然だがレッド総帥が操縦するバトルジャケットはキリで強化されていないため、他の歴史から連れて来られたブラック補佐のそれよりも圧倒的に弱い。軽く小突かれただけで、スクラップにされてしまうだろう。

『ば、馬鹿な!? レッド総帥、あなたは私が殺したはずだ!』

 だが、他の歴史から連れて来られたブラック補佐にとって、レッド総帥は自らが殺したはずの人物。それが現れた事による衝撃は、彼を硬直させるのに十分だった。

 

『いくぞっ!』

 その隙にレッド総帥は光線を放つが、やはりブラック補佐のバトルジャケットに傷一つ付ける事が出来ない。

『お、驚かせやがって。良いだろう、今度こそ地獄へ送ってやる! 総帥はこのブラック様だ!』

 そして改めてレッド総帥が乗る機体に発射口を向けてエネルギーを収束させる。

 

「ヘルズフラッシュ!」

 だが、その前に8号が立ちはだかった。

『っ!? この出来損ないが! また私の邪魔をするか! 今度はネジの一本も残さず消し飛ばしてくれる!』

 そして、ヘルズフラッシュにやや遅れてバトルジャケットから光線が放たれた。8号の力は、戦闘力に換算して30万。キリで強化されたバトルジャケットと互角だ。そのため、お互いの攻撃はぶつかり合って拮抗する。

 

『ぐぐぐっ、ば、馬鹿なぁぁぁ!?』

 だが、永久エネルギー炉を搭載している8号と違い、バトルジャケットを強化しているキリは有限だ。光線の勢いは弱まり、ヘルズフラッシュに押し切られて逆に吹っ飛ばされ、背中で地面を削る事になった。

 

「皆をイジメるの、許さない!」

 そう言いながら腕を装着する8号は、やさしさと守るために戦う事が出来る強さを兼ね揃えた存在に成長していた。

 

「よし、このまま押し切ろうっ!」

「おーっ!」

 そして仰向けに倒れたままのバトルジャケットに、ギネ達が容赦なく襲い掛かった。

 

「スピリットブーストっ! はっ!」

 気を倍にして、さらに巨大化した4号がバトルジャケットを押さえつけて起き上がるのを妨害する。

「魔口弾っ、チュッ!」

「かめはめ波ーっ!」

「ライオットジャベリン!」

 

 そして側面からランファン達が必殺技で怒涛の攻勢を仕掛ける。ハート形の気弾や、強力な気功波にバトルジャケットの装甲は耐えられず、爆発を始めた。

『そ、そんな馬鹿な!? お、俺は、俺はブラックリボン軍のブラック総帥だぞー!?』

 異なる歴史のブラック補佐は、最後まで正気に返ることなく爆発に飲み込まれ、彼がいるべき本来の歴史に戻っていった。

 

 こうして、レッドリボン軍基地での戦いは一段落したのだった。

 

『ぶ、ブラックーっ!?』

「レッド総帥! 私はここです!」

『おお、ブラック! 脱出していたのか! どうだ、正気に返ったか?』

「いえ、あれは私の偽者だったようで……」

 

『そうだったのか。おのれ、偽者め。よりによってブラックに化けてこの儂を撃つとは!』

「いや、あれは私がやったのですが……」

 事情を知らず、やや興奮状態のレッド総帥を落ち着かせて事情を説明するのは、これからだ。




〇戦闘力推移

・ランファン:18万2600 ナメック星編でギニュー隊長にチェンジされる前の悟空の最大戦闘力を若干超えたぐらいの強さ。
・マロン:23万9500 人造人間として起動してから一年経っていないが、こっそり桃白白と亀仙人の指導を受けた事で、短期間で戦闘力を伸ばした。人間ベースの人造人間では戦闘力はトップだが、戦闘経験が浅いため奇襲奇策に弱く、ギネと戦った場合はまず勝てない。

・ランチ:20万 金髪青髪問わず。ナメック星人達との修行と亀仙人の指導を受けている。また、天津飯達との修行で習得した四身の拳を使う事で、金髪と青髪、両方の人格が同時に活動する事が可能になった。
・4号:5万8600→8万1千 弟妹達に張り合うのがきつくなってきた。スピリットブーストを使用した後巨大化すれば、力だけは張り合える。

・サン:11万 10万台の大台に乗った前回天下一武道会優勝者。
・ギネ:23万7千 最新の人造人間であるマロンとの差は僅か2千。戦闘経験の差から、戦えば油断しない限りまず勝てる。

・ブラック補佐:5 一応トレーニングはしているが、戦闘力が6になる程強くはない。
・レッド総帥:5 身長が伸びた後、トレーニングと評してボディビルに嵌っている。



〇バトルジャケットダーク(ブラック補佐)

 劇場版『最強への道』の歴史から魔神トワが連れて来て、キリで強化したブラック補佐。タイムパトロールをおびき寄せる餌として用意したので、本気で歴史改変を行うつもりはない。サルサがゲロを魔封波で捕まえて拉致するまでの間、動いていればいいという程度。

 その力は戦闘力に換算して30万程で、8号と同じくらい。



〇魔神トワ、ダーブラ、ミラ

 暗黒魔王メチカブラ一味のトワ、ダーブラ、ミラ。トワとダーブラはメチカブラの力で魔神化しており、姿も変わり、戦闘力も魔神化する前より高くなっていると思われる。ミラはトワが作った人造人間である点は同じなので、魔神化してはいない。



〇魔神サルサ

 暗黒魔王メチカブラ配下の魔神。才能に恵まれているらしく、天才と呼ばれている。姿は小柄で、フードを被った少年のように見えるが、メチカブラに対する忠誠心は確か。
 コミック版『ドラゴンボールヒーローズ 暗黒魔界ミッション』当初は魔神化してから時間が立っていなかったのか、自分の力を活かせていない描写がされていた。

 また、空間を移動するための門を開くのが苦手らしい。コミック版『ビックバンミッション』では行動を共にしていた魔神プティンに門を開くよう言っていても、自分ではやろうとしなかった。
 もっとも、同じコミックで空間を繋ぐ門を開くのは高等技術で魔神にとっても簡単ではない事を、プティンが説明している。そのため、天才魔神でも苦手、もしくは未収得な技なのかもしれない。



 PY様、名無しの過負荷様、鱸の丸焼き様、佐藤東沙様、たかたかたかたか様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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