ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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92話 レッドリボンの躍進

 世界がレッドリボン軍の新たな総帥を名乗るブラックが行った宣戦布告に対して騒然となっている頃、ギョーサン・マネーは含み笑いを浮かべていた。

「レッドリボン軍が世界征服に成功した暁には、私はさらなる金儲けが可能になる。クフフフフ……」

 だが、その背後に音もなく現れた人物がいた。

 

「もう十分だ。解放してやろう」

 それはなんと、ドミグラだった。彼はゲロの前から消えた後、自身の隠れ家ではなくギョーサン・マネーの背後に現れたのだ。

 

 ドミグラは杖をギョーサン・マネーの頭にかざした。すると、その途端ギョーサン・マネーは凍り付いたように動かなくなる。

「邪魔をしたな。後は、好きなだけ金を稼ぐがいい」

 そして、動かなくなったギョーサン・マネーを放置し、今度こそこの歴史から姿を消した。

 

「……はっ!? わ、私はいったいっ!? 何故、私はレッドリボン軍のスポンサーになっていたんだ!?」

 ドミグラが完全に去った数秒後、ギョーサン・マネーは我に返って動き出した。そう、彼は今までドミグラに思考を誘導されていたのだ。

 

 ギョーサン・マネーは個人として地球一の金持ちだ。しかし、本来は悪人ではない。「金さえあれば何でもできる」という危険な考えを持つ彼だが、その金で悪事……世界征服を企んだり、幼馴染に復讐するため科学者を雇ってバイオ戦士を作らせたり、そうした事をしてはいない。

 

 そんな彼をレッドリボン軍のスポンサーになって資金援助をするよう、ドミグラは魔術で思考を操作していた。何故なら、そうでもしないとレッドリボン軍が原作開始の時期までに資金難で崩壊してしまう可能性が高かったからだ。

 

 歴史改変を起こしてキリを稼ぐことが目的のドミグラだが、この歴史が原作から乖離しすぎて全く別の歴史に進んでしまうのも困る。また、ある程度原作通りに進んだ方が歴史改変の方針や行動する時期を決めやすい。

 そう考えたドミグラに目をつけられたのが彼だったのだ。魔術で思考を誘導したと言っても、トワの洗脳のように自由意志を完全に奪っている訳ではなく、「自分で考えてレッドリボン軍のスポンサーになった」と思いこまされていただけだったので、少し話した程度では細工されている事に気が付けない。

 

 また、この歴史ではゲロが原作にない動きをしている影響で小さな歴史改変がそこかしこで起きている。そのため、時の界王神もドミグラの工作に気が付かなかった。

 もっとも、そのドミグラもゲロが架空の人物を作り出してまでレッドリボン軍に潜入するとは思わなかったが。

 

「私はなんて事……を? あれ、そんなに悪い事はしていないな。いや、でも世界征服は困るな。ブラック補佐、いやブラック総帥、スポンサーの私が言ったら世界征服を止めてくれないかな?」

 そう悩んでいる彼の下に、いい知らせが届いた。何と、レッドリボン軍の基地が桃白白達の活躍によって鎮圧されたというのだ。

 

「素晴らしい! これで戦争は起こらないぞ! しかし、レッドリボン軍のスポンサーの私も社会的な責任が問われるな。

 よしっ、慈善事業を展開するぞ! 金さえあれば出来ない事は無いのだ!」

 

 

 

 

 

 

「つまりブラック、お前は今まで儂がやった表沙汰に出来ない所業の泥を自分が被ろうとして、こんな事を起こしたという事か」

 

「誠に申し訳ありませんでした! オレンジやイエローには私が命令しました。全ては私の命令です」

「いや、ブラック補佐、そりゃあないでしょう」

「まったくだ」

 

 歴史改変者が他の歴史から連れて来たブラック補佐が消えた後、基地内の会議室で説明が行われていた。

 そこでブラック補佐、オレンジ将軍、イエロー大佐の三人はクーデターを起こした事情を白状したのだった。

 

「いかがしますか、レッド総帥? 演説をテレビ放送までしたのです。内々に済ます事が出来る状況ではないと思いますが」

「確かに」

 ブルー将軍が言う通り、ブラック補佐の演説はテレビで全国放送されている。多くの地球人が見ただろうし、テレビ局には録画した映像が残っているだろう。

 

 地球国政府に宣戦布告までしているので、「冗談でした」では済まない。

 なお、その地球国政府にはこの儂、ドクター・ゲロが事態は収束しましたと既に連絡している。

 

「我が軍では、裏切り者の末路は決まっている」

「覚悟はできております」

 重々しい口調で発せられたレッド総帥の言葉に、ブラック補佐は潔く目を閉じた。

 

「だが、儂を撃ったのは悪の宇宙人が用意したブラックの偽者だったようだ」

「……は? レッド総帥?」

「不可思議な力で我がレッドリボン軍を乗っ取り、地球国政府に宣戦布告までしたようだが、無事に倒す事が出来て何よりだった。監禁されていた本物のブラックも、ブルー将軍が無事に救出してくれた」

 

 なんとレッド総帥は、ブラック補佐が起こしたクーデター騒ぎも悪の宇宙人(歴史改変者)の仕業と言う事にして事を納めるつもりらしい。

 

「何とかなったが、悪の宇宙人というのは本当に厄介なものだな。何か問題はあるか?」

「いえ、特に問題は無いかと。偽者が存在した証拠も『見つかる』でしょうし」

「それに、本物のブラック補佐があんな中身のない演説をするはずが無い」

 

 話の流れが決まっていく事にブラック補佐は何度か口を挟もうとしたが、結局できずに「ありがとうございます」と言って涙を拭った。

 

「じゃあ、我が軍が誇る科学者の意見も聞いてみましょうか。ねえ、ドクター・フラッペ? それともゲロと呼んだ方が良いかしら?」

 ブラック補佐に対しては込められていなかった明確な怒りを感じさせる口調と目つきで、ブルー将軍が儂に話の矛先を向ける。

 

 ブラック補佐達の後ろで床に正座している儂は、背筋を伸ばしたまま答えた。

「それは構わんが、そろそろ足を崩していいかね?」

「あんた本当に反省してるの!?」

「悪い事をしたとは思っているが、儂なりに必要性があると判断したうえでの行動じゃ。なので、次に同じような機会があったとしたら、やはり同じ行動に出るじゃろう」

 

 目を剥いて怒鳴るブルー将軍に、儂は落ち着いて答えた。もっとも、同じような機会があるとは思えないが。まさかスラッグ一味やフリーザ軍に潜入する事にはならんじゃろう。

 

「まあ、落ちつけブルー。フラッペ、ではなくゲロだな。話は聞いたが……我が軍の中枢にGCコーポレーションの会長本人が潜り込んでいるとは思わなかった。

 我々の情報が筒抜けだったうえに、我々の資金で人造人間の研究を進めていたとは、正直恨み言の一つも言いたくなってくるな」

 

 レッド総帥はブルー将軍より落ち着いていたが、正座を解く事は許してくれなかった。まあ、当然か。

 

「どうせ陰で私達の事を笑っていたんでしょう!?」

「いや、笑ってなどおらんよ。むしろ感心していた。ブルー将軍、君達がここまで強くなるとは想定していなかった。今や、レッドリボン軍は儂の発明した兵器を使わなくても、軍隊としては地球最強だ」

 

 しかし、別に儂はレッドリボン軍の事を嘲笑ってはいない。原作そのままだったらともかく、儂がフラッペと名乗って潜入した当時から、既に原作とは違う組織になっていたのだから。

 

「特に、レッド総帥の願いを叶える為ではなく、交渉のカードとしてドラゴンボールを使うという発想には感心させられた。儂では一生かかっても思いつかなかっただろう」

 儂がそう言い終わった時には、レッドリボン軍の面々の怒りはやや和らいでいた。儂が本気で言っている事が伝わったのだろうか。

 

「まあ、いいだろう。そもそも、我々では貴様に罰を与えようがないのだ。しかし、事後処理には協力してもらうぞ」

「それはもちろん、『証拠』を用意して上手くやってみせるとも。ギョーサン・マネーへの説明も、なんとかやってみよう」

 

 ブラック補佐のクーデター、そして何より地球国政府への宣戦布告を悪の宇宙人が用意した偽者がやった事にする件について協力するのに異論はない。

 悪の宇宙人(歴史改変者)の映像もスカウターで撮影してあるので、問題ない。フラッペの正体も悪の宇宙人と言う事にしておこう。

 

 元々似たような事をする予定だったが……フラッペの正体がただの黒幕から、悪の宇宙人の一員に変わる事になってしまった。それを退治した事になる桃白白にかかる世間からの期待も大きくなりそうだが、頑張ってもらおう。

 

 唯一の気がかりは、素顔で一度も会っていないギョーサン・マネーだ。正確に言えば、素顔でも会ってはいる。ただ、同じパーティーや政府の式典に出席していたとか、お互いのスピーチを聞いていたとか、その程度。端的に言えば、顔と名前を知っていて肉眼で見た事があるだけの人物だ。

 

 しかし、副社長が何度か会った事があるようだから、仲介を頼むとしよう。

 ……もっとも、後でその必要はなくなったらしい事が判明するので、結局儂が副社長に頼み込むことはなかった。

 

「そうか。なら、ここからは確認だが……ゲロ、貴様が我が軍に潜入するきっかけになった未来予知、我が軍が歴史に大きな影響を与える事件や出来事はもう終わったのか?」

「ああ、終わった。少なくとも、儂が見た範囲ではだが」

 

 原作でのレッドリボン軍編で起きる出来事はだいたい終わった。これからこの歴史でレッドリボン軍がどうなるのかは、儂も予想しかできない。

 

「そうか。お前が見た未来については敢えて聞かないが、一安心だ」

 レッド総帥はそう言うが、ある程度は察しがついているだろう。他の面々も同様のようだ。歴史改変者に他の歴史から連れて来られたブラック補佐の言葉は、皆聞いていただろうし。

 

「ところで、その今後のレッドリボン軍についてだが、我が社や地球国政府と協力関係を構築するつもりがまだあるなら、表舞台に立つつもりはないかね?

 具体的には、王立国防軍に加わり、陸軍、海軍、空軍に続く第四の軍、宇宙軍のレッドリボン旅団として加わって欲しい」

 

「なにぃっ!?」

「わ、我々が王立国防軍に!?」

「まあ、宇宙軍と言っても本格的に組織を作るのはこれからじゃし、レッドリボン軍以外の人員は一人もおらんが」

 

「こちらが草案を記載した書類と、我々が知っている宇宙人とこれまでドクターが悪の宇宙人と呼んでいた歴史改変者についての資料になります」

 4号が鞄から出した書類をレッド総帥達に配っていく。

 

 そして驚いた顔つきのまま資料に視線を落とし、読み込む一同。途中、「げっ!?」、「フリーザ軍!? スラッグ一味!?」、「原住民を皆殺しにして星を異星人に売る? 価値無しと見なした場合は破壊……」と、さらに驚いて思わず声を上げている。

 

「星規模の侵略と地上げとは、我々の想像力を越えたビジネスだが。悪の帝王フリーザ……確かに、地球を巡って争っている場合ではないな」

「しかし、この提案はドラゴンボールを交渉材料に使わないこと以外は、我々のクーデター作戦と同じ流れでは? フラ……ゲロ、我々がクーデターを起こさないと思っているのか?」

 

 レッド総帥の副官として尋ねるブラック補佐に、儂は頷いた。

「思っている。それに、宇宙軍としての実績を積んだら、大統領へ立候補すればいいのだから、クーデターを起こす必要はないじゃろう」

「大統領? 地球が統一される前の各国家のトップの呼称だったはずだが……まさか、大統領制を復活させるつもりなのか!? 国王はどうする!?」

 

「地球国の国王が選挙で選ばれた大統領を承認する形を検討中じゃ」

 これからの地球は滅亡の危機を何度も潜り抜けなければ生き残れない。今のレッド総帥なら、上手く軍を纏めて民衆を出来るだけ守ってくれるだろう。

 

 悟空達の強さや人造人間の有用さを知っている為政者がいてくれると、儂もやりやすい。なにより……レッド総帥が大統領に成れば、儂を次期国王にという話も無くなるじゃろうし。

 

「まさか、国家体制の方を変えようとするとは。ただ、その方がクーデターよりも現実的かもしれんな。

 しかし、オレンジ将軍やボンゴ大尉、パスタ大尉はどうするつもりだ? オレンジにグルメスへの潜入を命じた儂を見逃し、オレンジ達の責任だけを問うのなら、儂はこの話に頷く事は出来ん」

 

(いや、俺はレッド総帥が大統領になって恩赦してくれるまでの間臭い飯を食うぐらいなら構いませんけどね)

 レッド総帥が自分達の名前を出した時、オレンジ将軍本人はそう考えていたそうだ。レッドリボン軍のために命を失う危険のある茶番劇を演じようとしていた彼にとって、捕まるのも許容範囲内だったようだ。

 

「……!」

 逆に、まさか自分達まで庇われるとは思っていなかったボンゴとパスタは驚いた様子でレッド総帥を見ていた。

 

「そうね。優秀な部下を失うのは痛いわ。ゲロ、あんたどうにかしなさいよ」

「ああ、彼らを捕まえた時に課す罰は、グルメス公国の皆がもう決めてある。二年間のボランティア活動だ。そのボランティアを行う場所をレッドリボン軍に変更する事ぐらいなら納得してくれるだろう」

 

「ぼ、ボランティアだと!?」

「それだけでいいのか? 言っちゃあなんだけど、あの国を食い物にした主犯だよ、あたし達は」

「グルメス公国の国民はそれでいいそうじゃよ。それに君達の罪を重くすると、色々と都合が悪い」

 

 当時国王だったグルメス公爵は、刑罰としての罰は受けていない。他の元グルメス王国軍兵も、復興事業に従事しているだけで済んでいる。

 この状況でボンゴとパスタ、そしてオレガノと名乗っていたオレンジにだけ重罰を科すのは法律的な問題が出る。

 

 ボンゴとパスタは当時王国だったグルメスを荒廃させた主犯だが、その地位は軍の上級兵。将軍ですらない。オレンジに至っては、二人の直属の部下で、ボンゴ四天王のペンネ達と地位的には同様だ。

 また、当時王だったグルメス公爵を傀儡にする際も、薬物を使う等して洗脳したのではなく、王に贅沢を覚えさせただけだ。

 

 別にボンゴとパスタ、そしてオレンジがした事が「悪くない」と言っている訳ではない。訳ではないが、客観的に見れば極悪と評するほどではない。

 この辺りは儂の感覚がおかしいのかもしれないし、直接被害を受けた者達の懲罰感情も考慮するべきだろう。

 

 しかし、その直接被害を受け得た者達であるグルメスの人々の二人に対する懲罰感情が出した結論が、「二年間のボランティア」なのだ。

 

「グルメス公国の人々は、君達が去年の魔神城の一件で魔族から地球人類を守るために戦った事を、大きく評価しているようでな。再就職先では真面目に頑張っているようだし、一度謝ってくれればそれ以上の罰は求めないそうじゃ」

 その懲罰感情が緩んだきっかけが、去年の『魔神城の眠り姫』事件で彼等が悟空達に協力してルシフェルと戦った事だ。

 

 協力したのはルシフェルと戦った時だけだったし、上司であるブルー将軍の命令だった事や、太陽が破壊されたら自分達も生きていないからという事情があっての行動だっただろう。しかし、それでもグルメスの人々は二人を評価したようだ。

 

「……あいつら、お人好しが過ぎるぜ」

「あの~、旦那達はそれでいいとして、俺は何で減刑されたんですかね?」

「オレンジ将軍、君はグルメス公国の人々からそれほど恨まれていなかっただけじゃよ。ボンゴ四天王と同じような扱いじゃな」

 

 オレンジ将軍は『魔神城の眠り姫』事件に関わっていないが、グルメス公国の人々にとって彼は、最初から「兵士A」程度の認識だった。手配されていたのも、単に逃げて捕まっていないから、という理由だ。

「そりゃまた……なんか複雑」

 

「良かったけど、意外ね。あんたの事だから、二人を無罪放免にする代わりに人造人間に改造させろって言いだすかと思っていたのに」

「もちろん、人造人間になりたいのなら喜んで改造しよう」

 

「いや、別になりたくは……考えておく」

「……同じく保留させてもらうよ」

 ブルー将軍の軽口に乗る形で冗談を言ってみたら、意外な事にボンゴとパスタは完全に拒否はしなかった。どういう心境の変化かこの時は分からなかったが、後でランファンが教えてくれた。

 

 それまではレッドリボン軍にそこまで深入りするつもりはなかったし、脳改造なんてとんでもないとサイボーグ化は考えていなかった二人だったが、悪の帝王フリーザの事を知って考え方が変わったのだそうだ。

 どんなに上手く逃げ延びても、強大な宇宙人に地球が侵略されたり、破壊されたら意味は無い。そして、フリーザ軍では下級の兵士でも今のヤムチャや悟空より強いという。

 

 そこで二人は生き延びるためには、儂等に近い位置にいる事が必須だと考えたそうだ。自分達が強くなってフリーザを倒す、とまでは思っていないが、もしもの時に地球から脱出できなければならないと考えたのだそうだ。

 そのため、本当に人造人間になるかはともかく検討している素振りぐらいは見せておいた方が良いと思ったのだろう。

 

「そう言えば、俺とバイオレットを改造する予定に変わりはないよな?」

「なんと。シルバー大佐、君はまだ儂の改造手術を受けるつもりなのか? こうなった以上、撤回するだろうと思っていたのだが」

 

 そして、意外な事にシルバー大佐とバイオレット大佐は、儂の正体を知ってもサイボーグ……いや、人造人間になる意思を変えなかった。

「撤回? それどころか、逆に覚悟が決まったぜ。歴史改変者やフリーザ軍に対抗するために、強い戦士はもっと必要になる」

「それに、レッドリボン軍が宇宙軍のレッドリボン旅団になるなら、宇宙人と戦える兵士が必要になるはず。改造手術を受ける覚悟は既に決めていたのだから、ドクターにはそれを受け取ってもらいたい」

 

 どうやら、歴史改変者が連れて来た別の歴史のブラック補佐と人造人間達の戦いを目にした事で、シルバー大佐とバイオレット大佐の意思は揺るぎないものになったようだ。

 

「……ちょっとゲロ、人造人間への改造手術の資料があるなら私にも見せなさい」

 そして最も意外な事に、なんとブルー将軍までそう言いだした。

「ちょっと、勘違いしないでよ。検討するだけよ!」

「しかし、ブルー将軍、どういう心境の変化かね。君は儂の事を殊更嫌っていると思ったが?」

 

「大正解よ。そんなあんたに頭の中まで弄られるなんて、出来れば避けたいわ。でも、人造人間にでもならないとこれから大統領になるレッド総帥のために戦う戦士にはなれないと思ったからよ。シルバー達と同じようにね」

 嫌いな相手に脳を弄られたくないというのは、理解できる。特に、儂はフラッペを演じている時にブルー将軍達に脳改造をする事で、自分に従うよう洗脳する事や記憶を改竄する事が出来ると説明した覚えがある。

 

 しかし、ブルー将軍も海賊のアジトでの戦いに続いてレッドリボン軍基地での戦いを見て、自分が今の何百……いや、何万倍も強くなる必要があると痛感したのだろう。

 

 それにしても、シルバー大佐といいレッドリボン軍の将校は思い切りが良いな。いや、これが武道家と軍人の価値観の違いかもしれん。

 武道家は武の道を進む者。技を極めるために自ら修行し、研鑽を積み上げる。超神水や特殊能力で自身の潜在能力を引き出す事はよしとするが、それは手に入るのはあくまでも自分自身の力だからだ。特殊能力や超神水はきっかけに過ぎない。

 

 だから人造人間への改造を、武道家は歓迎しない。

 

 しかし、軍人はトレーニングを積んで自らのスキルを磨くが、武器を使うのに躊躇いはない。彼らはまず任務を成功させなければならないので、武道家のように強くなる手段に拘りが無い。納得できれば改造手術も受ける……者は少数派かもしれないが、選択肢の一つになり得るのだろう。

 だからシルバー大佐達は人造人間になる事に前向きなのかもしれない。

 

「分かった。しかし……脳改造で洗脳や記憶の改造が出来ると言ったのは、嘘だからそう心配せんでいいぞ」

「なんですって!?」

「いや、すまん。色々忙しかったので言い忘れていた。それに、脳改造しないわけでは無いので、慎重になって正解じゃと思う」

 

 実際異星人の細胞を移植したり、尻尾など新たに生えた部位を操るために神経を弄ったりする程度で、洗脳や記憶の改竄は出来ない。やろうと思えば可能かもしれないが、ブルー将軍達が思う程の事は難しいだろう。

 ただ、ランファンやランチをサイボーグシリーズとして誤魔化すためには、そのように説明した方が便利だったのだ。

 

「それはともかく、これが人造人間への改造手術を受ける際の資料じゃから、目を通しておいてくれ。もっとも、実際に改造するのはまだ年単位の時間がかかるが。

 今、11号と12号の改造中でな」

 

「……私達が人造人間になる前に、悪の宇宙人とやらも倒せるようになったりしてね」

 ブルー将軍は苦笑いを浮かべながらそう言い、何人かが彼の言葉に頷いた。

「いやいや、悪の宇宙人……歴史改変者の魔神達はフリーザの何万倍以上強いので、それは無いじゃろう」

 

「なんでそんな連中に目をつけられてるんだ、この星は? 地球は、宇宙でも辺境にある星なんだろう?」

「それはまあ……この宇宙に星は数あれど、地球程歴史を改変しがいのある星はそうなかったという事じゃろうな」

 

 

 

 

 

 

 レッドリボン軍の新総帥を名乗るブラックが行った地球国に対する宣戦布告。その直後に桃白白や武天老師、そしてドクター・ゲロ率いる鶴亀仙流と人造人間達によって鎮圧されたという報せが広がり、人々は安堵した。

 そして翌日行われた政府主催の記者会見で、更に驚きの事実を知る事になったのだ。

 

「なんとっ、あのドクター・フラッペを退治したとは本当ですか!?」

「ああ、間違いない。奴との因縁は、私の手で晴らしました」

 なんと、記者会見に同席していた桃白白がフラッペの討伐を発表したのだ。

 

「映画ではともかく、本物の方はここ数年動きを見せていなかったフラッペがレッドリボン軍基地に……いったいどういうことなのでしょうか?」

 もしや、レッドリボン軍は凶悪犯であるフラッペと組んでいたのか? そう記者達は思ったが桃白白が告げた『真実』は小説よりも奇妙なものだった。

 

「実は、フラッペは悪の宇宙人が作りだしたロボットだったのだ」

 なんと、数々の危険なロボットを作ってきたフラッペ自身もまたロボットだった。しかも、その製作者は地球人ではなく、悪の宇宙人だという。

 

「悪の宇宙人と言うと、国王とゲロがグルメス公国で存在を明らかにした、あの悪の宇宙人ですか!?」

「残骸は回収されたんですか!?」

「悪の宇宙人が何の目的で地球にフラッペを送り込み、犯罪行為をさせていたか分かっているんですか!?」

 

 驚き、一斉に質問を投げかける記者達。しかし、彼らもフラッペの正体がロボットだった事に対しては内心納得していた。

 これまで、彼らもスクープを手にするためフラッペについて調査を続けていた。それはフラッペが起こした、もしくは実行に移る前に防がれた犯罪だけではなく、彼自身の来歴についてもだ。

 

 出身地はどこか? 両親は誰か? そして何処の誰から科学を学び、いったい何故その頭脳を使って犯罪を起こすに至ったのか、記者達は必死に調べまわった。

 しかし、何人もの記者が調べたのにフラッペの来歴は不明のままだった。しかし、ロボットだったのなら人としての過去が無くて当然だ。

 

 ……実際は、ゲロが作りだした架空の人物なので来歴が無いだけなのだが。

 

「ご静粛に。皆さん、フラッペがレッドリボン軍基地に居たいきさつについては、彼が説明します。入りたまえ」

 国王がそう言うと、記者会見が行われる会場に二人の人物が入ってきた。そのうち一人に、記者達は見覚えがあった。

「ブラック新総帥!?」

「な、なんであいつがここに!? 退治されたんじゃなかったのか!?」

「しかも、あれはレッドリボン軍のレッド総帥だ! 無事だったとしても、何故一緒に!?」

 

 驚く記者達に、レッド総帥は緊張した面持ちのブラック補佐を背後に控えさせたまま話し出した。

「記者の皆さん、ご紹介に与ったレッドです。儂から昨日の事件に至った経緯をお話ししましょう。

 フラッペが何故我がレッドリボン軍基地に居たのか。それは、悪の宇宙人が作り上げたロボットだったフラッペに、私が操られていたからです」

 

 すらりとした長身で渋く整った顔立ちのレッド総帥から発せられた言葉に、記者達は驚いた。しかし、次に発せられる彼の言葉を聞き逃すまいと騒がずに注目した。……額に冷や汗を浮かべているブラック補佐は、自然と彼らの視線とカメラのレンズから外れた。

 

「本来なら、指名手配されているフラッペを基地に匿い、しかも研究所まで与えるなど考えられない事です。しかし、操られていた儂はフラッペに関してのみ正常な判断力を失っていました。

 また、部下達も総帥である儂の命令に逆らう事が出来ず、フラッペを受け入れるしかなかったのです」

 

「な、なるほど。それで基地にドクター・フラッペがいたと。では、昨日のブラック補佐の演説と宣戦布告はいったい?」

「それも、悪の宇宙人とフラッペが起こした事でした。儂が操られている事に気が付いたこのブラックが、儂を正気に戻すために電気銃で儂を気絶させたのです。悪の宇宙人による洗脳は、外部から強い力を受けると解ける事が分かっていたので。だが、それを悪の宇宙人に察知されてしまった。

 悪の宇宙人はブラックを捕らえ、フラッペが用意したロボットと入れ替える事に成功しました。しかし、我々を利用するのは潮時だと思ったでしょう」

 

「つまり、最後に地球国政府に宣戦布告してレッドリボン軍と鶴亀仙流やGCGとぶつけ、戦力や対応力を測ろうとしたという事でしょうか? 利用できなくなるなら、最後まで使い潰そうとして」

「その通りです。しかし、証拠を見なければ皆さんも納得できないでしょう」

 

「では、此方をご覧ください」

 ブラック補佐がリモコンを操作すると、会場の壁が動いて大型モニターが現れ、そこに映像が映し出される。

「右は私の偽者が搭乗しているバトルジャケット……我が軍の兵器です。そして左は我が軍の将軍、ブルーに救出された私の映像です。

 とはいっても、私の偽者はバトルジャケットの操縦席に居るので姿は見えませんが、外部スピーカーから流れた声を分析すると……」

 

 モニターの右に分析結果が表示される。それによると、合成音声である事がはっきり書かれていた。

 つまり、同じ時間に二人のブラック補佐が存在しており、片方は本物そっくりの合成音声で話している。……偽者である。

 

 ……本当は、右の映像の他の歴史から歴史改変者に連れて来られたブラック補佐の声は、ゲロが作った人工音声にすり替えてある。人工音声を解析したのだから、人工音声であるという結論が出るのは当然だ。

 なお、昨日本物の方のブラック補佐が行った演説の方を使わなかったのは、演説はテレビ局を通じて全国に放送したため、世界中で録画録音されているからだ。

 

 そのため、演説と宣戦布告は本物のブラック補佐が脅されてやったと言う事にした。本物のブラック補佐を悪の宇宙人が操らなかった理由は、悪の宇宙人が人を操るメカニズムが不明のため分からないとした。

 

 それに、異なる歴史から連れて来られたブラック補佐はバトルジャケットの操縦室から出てこなかったので、細工するのは音声だけで済む。

 

 なお、「本物のブラック補佐をブルー将軍が救出した」映像も加工しており、本当はブラック補佐をブルー将軍が拘束した時の映像だ。

 

「では、昨日の演説も?」

「いえ、あれは偽者ではなく、儂の後ろにいる本物が行いました。儂を人質に取られて脅されたために行った事ですが、お詫び申し上げます」

「そうでしたか。それで、偽者の残骸は回収されたのですか?」

 

「損傷がひどいので完全ではありませんが、回収に成功したと聞いています。今、GCコーポレーションでの解析作業を行っているはずです。

 そして、今回確認された新たな悪の宇宙人の姿がこれです」

 

 モニターに映し出されたのは、なんと魔神サルサの姿である。フードを被った少年のように小柄な彼の姿に、記者達がどよめく。

 なお、本来なら映っていたドミグラの姿はゲロによって消されている。悪の宇宙人同士で対峙している光景を記者に見せると、予期せぬ解釈をされるかもしれないと考えたからだ。……助けてもらったのに濡れ衣を着せるのは気が引けた、という理由もある。

 

 そして、記者達がサルサの画像を撮影するのに一段落ついた頃、国王が席を立ちあがって宣言した。

「このように、悪の宇宙人はまだまだ存在する可能性がある事が分かりました。これを受け、我が地球国政府は宇宙に存在する脅威に対抗し、良き隣人であるナメック星、ヤードラット星、そして我が地球を守るため、持てる力を結集する必要があると確信いたしました。

 王立国防軍に陸軍、海軍、空軍に続く第四の軍、宇宙軍を創設し、レッドリボン軍に加わっていただきたい」

 

「喜んでお受けします。これからは桃白白氏や鶴亀仙流の方々、そしてGCGに並ぶ戦力として地球を、そして隣人たちを守る盾、そして矛となる事を誓いましょう」

 カメラの前でがっしりと握手する国王とレッド総帥。こうして、レッドリボン軍は灰色の傭兵団から表舞台で活躍する公的な軍隊へと転身したのだった。

 

(もしかして、儂、気が付いたらサイヤ人の復興を進めていたのと同じパターンに嵌っておらんか?)

 気が付いたら、レッドリボン軍の躍進を助けている自分に今更ながら気が付いたゲロだが、「まあ、気にする事は無いか」と直ぐに考え直した。

 

 歴史を変える事を目的に動いていたわけでは無い。単に、自分の出来る範囲で、自分自身にとってより良い未来になるよう動いただけだ。

 

 しかし……ドミグラが彼を助けたのは、歴史改変者にとって正解だったようだ。

 




〇悪の宇宙人

 トワとミラに続いて、魔神サルサが加わった。
 なお、魔神トワにしなかったのは、トワと似ているから「新たな悪の宇宙人」にしにくいと思ったから。
 魔神ダーブラは、バビディが何かの拍子に映像を見て何か感づいたり、思いもよらぬ行動を取ったりするのを避けたかったため。



〇ギョーサン・マネー

 実はドミグラに思考を誘導されていた人。解放されてからは慈善事業も展開するようになる。



〇レッドリボン軍

 宇宙軍のレッドリボン旅団に転身。とはいえ、宇宙軍には他に人員がいないので、宇宙軍=レッド旅団と言える。

 また、未来については……次のドラゴンボールの劇場版で、レッドリボン軍が登場するらしい事は知らなかったので、今のところ不明。




 PY様、佐藤東沙様、gsころりん様、tahu様、みえる様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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