ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
まだ春の気配を感じ取れない頃、儂は突然神の声を聴いた。
『おーい、ゲロよ。久しぶりだな、ワシだ、界王だ』
「これは界王様。ご無沙汰しております」
『うむ。ところで、この前地獄で耳に挟んだのだが、サイヤ人の宰相をしているというのは本当か?』
「いや、別に役職としてやっている訳ではありませんが、成り行き上否定しがたいのは事実ですな」
宰相云々はベジータ王が勝手に言っているだけだが、それを信じているサイヤ人達に宰相ではないと否定していないし、結果的にサイヤ人の復興を手助けしているのも事実。そして、それを止める理由も予定も今のところない。
これで「いえ、違います」と言っても説得力がないじゃろう。
『そうか。では、お前がこっそり呼び寄せたわけでは無いのだな?』
「……なんの話ですかな?」
『いや、地球にフリーザ軍の、それもあのベジータ王の息子を含めたサイヤ人の生き残り三人が向かっている。この分では後四か月と少々でそちらに着くだろう』
「なんと!」
儂が地球の周りに配置した人工衛星では感知していないが、界王様が言うのなら本当だろう。そもそも、儂の開発した人工衛星の感知範囲は宇宙全体から見ると極僅かじゃからな。はっきり分かるのは隣の銀河の端までで、それより離れた場所を見る時はただの天体望遠鏡になってしまう。
(原作と同じ時期まで平穏無事にやれるとは思っていなかったが……十年以上早まるとは。確かに、ウィローと戦った『この世で一番強いヤツ』も起きるのが十年以上早まったが、あの時とは事態の深刻さが段違いだ)
ベジータ達が襲来して来る事自体は構わない。何故三人一緒なのかは疑問だが、母親のギネがいるからラディッツは説得できるじゃろうし、ぶっちゃけると戦闘になってもどうにかなる。
ベジータ達の戦闘力がどうなっているか次第だが……大猿化したとしてもネイルや8号の助けを借りればどうにかなると思う。
歴史改変者がキリで強化してくるかもしれないが、その時はこちらもタイムパトロールに助けを乞うだけだ。
問題なのはベジータ達をどうにかしても、フリーザ軍に地球の戦力や未知のサイヤ人の生き残りの存在、何よりドラゴンボールの情報が知られるかもしれない事だ。
その場合、情報が伝わってから一年以内にナメック星か地球にフリーザが襲来する可能性が高い。まだ悟空は満十三歳、今年でやっと十四歳だというのに。
そのフリーザと戦う事になっても、運が良ければどうにかなる。彼は最初、戦闘力53万ぐらいの第一形態をとっているからだ。ネイルと8号に不意打ちで一気に倒してもらえば倒せる。何なら、ナメック星のドラゴンボールでベジータ王を生き返らせてさらに戦力を高めてもいいだろう。
しかし、歴史改変者が邪魔に来る可能性が高いので、「運が良ければ」なんて事は期待できない。
そして、フリーザを倒すと一族の名誉を守るために兄のクウラが襲来してくる可能性が高い。
普段からフリーザの最終形態と同じ姿を維持しているクウラには、不意打ちが通用しない。しかも、もう一度変身する事が可能。
原作には登場しない劇場版の登場人物がこの世界に存在するとは限らないが……ターレスやウィロー、ルシフェルは存在する。新ブロリーもビーツの証言があり、スラッグ一味は幹部が地獄にいたから存在するのは確実じゃろう。
これでクウラだけ存在しないとは思えない。
何も備えていないわけではないが……いざとなったら科学者としてのプライドを投げ捨ててズノー様に質問し、原作通りのスペックで人造人間16号を開発するか、ネイルクローン作戦を実行するしかないな。……前者はズノー様に質問できる順番が回ってくる時期を考えると、開発する時間が無いだろうからやはりネイルクローン作戦か。
『おーい、ゲロよ。何か危険な事を考えてはおらんか? ともかく、事態の深刻さが分かっているようじゃから、構わんが』
「いや、申し訳ありません。つい考え込んでしまいました。ところで、サイヤ人達が出発したのは最近ですかな?」
『ん? ああ、フリーザ軍の基地の一つからついさっき地球に向かって、あの小さな宇宙船で飛び立ったぞ』
「なるほど」
どうやら、ベジータ達は原作とは異なる場所から地球へ向かっているらしい。……多分、これでアニメオリジナルの惑星のアーリア星はひとまず滅亡せずに済むだろう。他のフリーザ軍に襲われないとは限らないので、今後は分からんが。
『では、くれぐれも気をつけるんじゃぞ~』
「はい、ありがとうございました」
幸い、界王様が警告してくれたおかげで色々と考え、対処する時間が出来た。監視衛星だけだと、ベジータ達の襲来に気が付いたのは地球に来る一週間前ぐらいだっただろう。
儂はさっそく関係各員と信頼できる者達に連絡を取り、情報共有と今後の方針のために会議を開いた。
「まさか、宇宙軍を組織してから一年も経たずに宇宙人が襲来するとは思わなかった」
「まあまあ、落ち着きなされ国王。会長よ、今回来るのはギネの息子と、ベジータ王の王子、そしてその家臣なのじゃろ?」
額を抑える国王を眺める鶴仙人の言葉通り、彼等から見るとベジータ達が襲い掛かってくるとは考えにくいのだろう。
「いや、そんな事はないと思う。ラディッツが地球に来るのは弟のカカロット……悟空を迎えるためだろうけど、ラディッツの中では地球人は悟空に滅ぼされているはずだからね。
地球人が全滅してないって知ったら、悟空を連れていくついでに皆殺しにして、地球をフリーザ軍に売って金にしようと考えると思う」
サイヤ人であるギネの説明に、会議室に衝撃が広がった。
「惑星規模の地上げか……今更だが震えが抑えられん。これまで会長から何度も話を聞いていたというのに」
「儂もじゃよ、副社長殿。姉ちゃんの所の交流試合やその後の宴席で、セリパちゃん達から星を侵略した時の話は何度も聞いていた。しかし宴会で酒を飲みながら聞くのと、自分達がその脅威に晒された時に感じるのとでは――」
「いったいどれほどの規模のビジネスなのか、興味が尽きない」
「ゲロよ、お主の所の副社長、お主よりヤバい奴なんじゃないかの?」
「まあ、ビジネスマンとしては超一流じゃから。もし我が社が惑星売買のビジネスに参入するとしても、侵略ではなくテラフォーミングした惑星を商品にする予定じゃ」
「おいゲロ、もしかしてワシの要望を許可して火星のテラフォーミングを行うのは、そのための実験なんじゃないだろうな?」
「ピラフ大王、半分はその通りじゃ」
ピラフ大王が無人の惑星をテラフォーミングし、己が君臨する国を建国したいと言い出した時は、「それは面白そうだ」と賛成した。そして、場所はとりあえず地球の近くが良いと言う事なので火星を計画している。
「まさか火星が居住可能になったら、売るつもりじゃないだろうな!?」
「そんなつもりは毛頭ない。ただ、惑星をテラフォーミングするノウハウと経験は欲しいが」
居住不可能な惑星の環境を改造して居住可能にするテラフォーミングは、これから先我が地球にとって重大なビジネスになり得る重要事業だ。
この世界には宇宙服を着なくても暮らせるような地球人が呼吸可能な空気、そして飲食可能な水や動植物が存在する惑星がある。そんななか、火星という重力以外の環境が地球とは大きく異なる惑星のテラフォーミングに成功すれば、その技術は他の惑星にも応用できるだろう。
「他の惑星を侵略するフリーザ軍のような商売とは違い、誰に咎められるわけでもないクリーンな惑星売買が可能になる」
「フリーザ軍が主な顧客にしているという金持ち以外にも、そのフリーザ軍や宇宙海賊による襲撃や宇宙規模の災害や環境破壊で新しい故郷を探す難民は存在する。また、売れなければその星で様々な食料を生産してその売り上げから代金を少しずつ払ってもらえればいい」
「儂等が惑星売買のビジネスに参入する事で、フリーザを倒した後第二第三のフリーザの出現を防止する事も夢ではない。さらに、ビジネスが軌道に乗れば地球は宇宙人達の間で大きな存在感を持つことができる。
銀河パトロールもミサイルやウィルスで地球に手出しは出来なくなるはずじゃ」
「それだけではない! 会長の永久エネルギー炉に寿命を延ばす長生薬、ブリーフ博士のホイポイカプセルは、異星人達にも大きな需要があるはずだ!
我がGCコーポレーションのビジネスはこの宇宙中に広がり、手に入る情報が増える事で地球と他の星に人々の安心安全に繋がるのだ!」
「難点はテラフォーミングにかかる時間じゃが、それも技術と経験の蓄積が進めばフリーザ軍の兵士が他星を侵略し終わるより早く終わらせられるようにしてみせよう!」
「「フハハハハハハハ!」」
「あー、僕も笑っておいた方が良い? アハ、アハハ」
話している間に盛り上がって高笑いを上げる会長の儂と副社長に、社長の自分が黙っているのは変かなと思ったのか、ブリーフも控えめに笑いだす。
「ワ、ワシはとんでもない悪事の片棒を担いでしまったのか……?」
「落ち着けよ、悪巧みをしているように見えるだけで言っているのはそうでもねぇぜ」
「本当にね。パパ、お爺ちゃん達に合わせなくていいわよ」
「そ、そうか、悪事じゃないんだな? ほっ」
「……世界征服の野望がちっぽけに思えて来るな、ブラック」
「ええ、まさかゲロが結果的に宇宙の帝王にとって代わるつもりだとは思いませんでした」
「ところでギネちゃんや、星を侵略するのにかかる時間ってのはどれくらいのもんなんじゃ?」
「うーん、あたしはすぐチームから抜けたから確かなことは言えないけど、並みの兵士が並みの星を侵略するのは一週間もかからないと思うよ。
でも、行き帰りの時間を合わせてだいたい一か月以上、長ければ一年以上かかる事もあるからね」
科学力がそれほど高くなく、最も強い者の戦闘力が1千程度の惑星なら、フリーザ軍の兵士が数人も派遣されれば一週間ぐらいで皆殺しにされるだろう。
戦闘力が千数百もあれば街を更地にするのにそれほど時間はかからんし、気の感知が出来なくてもスカウターがあれば原住民がどんなに逃げ隠れしようともすぐ発見できる。
フリーザ軍の兵士が使うアタックボールは、スペースシャトル等よりもずっと早く宇宙を行き来する事が出来る。しかし、宇宙は広大なため目標の星まで片道だけで約一年かかる場合もある。
原作ではベジータ達が地球へ向かう時に、「久しぶりにドーンと睡眠をとるとするか」と言っていたから、片道に約一年かかる距離の星を目標にする事は、あまりない事のようだが。
「往復の時間を入れると、数カ月ぐらいで星の環境を変えられるようになる予定なのか。そんな事が可能なのかの?」
「まあ、将来的には出来るようになるでしょう」
スラッグ一味は、地球を数日で惑星クルーザーに改造できるそうじゃし、三か月もあれば無人の惑星を宇宙人が生活できる環境に改造するぐらい可能な気がする。
土壌改良には、ブリーフが品種改良した強化アジッサが既にある。後は大気と気候の改良、地軸を安定させる地球の月に相当する衛星を用意できればどうにかなる。
「それはともかく……問題のベジータ王子達はどうするのだ?」
「ああ、彼ら自体はどうにでもなる。歴史改変者が首を突っ込んでくるかもしれんから油断は出来んが。それより問題なのは、彼等を通してフリーザ軍に地球の情報が渡る事じゃ」
ドラゴンボールの情報がフリーザ軍に渡らなければ、しばらくは時間を稼げるはずだ。ベジータ達が地球の事を知った経緯や、地球の事を他の者に話しているか、情報を残してきたかに因るが。
ドラゴンボールの情報が伝わらなくても、ベジータはフリーザ軍の兵士の中でも上位に位置しているはず。彼が消息を絶った……何者かに負けたと知れば、フリーザが面子を守るために報復を考える可能性は高いはずだ。
だが、その場合でもいきなりフリーザ本人が乗り込んで来ることは無いだろう。ベジータが油断してやられたとみてドドリアかザーボン、もしくは念のためにアボとカド、ギニュー特戦隊を差し向けて来るのではないだろうか?
「じゃあ、スカウターを壊せばいいんじゃないか? それだけで連絡できなくなるはずだよ」
「うむ。しかし、破壊に失敗する場合も考えられるので、ベジータ王子達が飛来する場所を特定の地域に定め、そこに前もって通信妨害を仕掛けておこう」
これで戦闘力5の農夫やナッパに挨拶された町も助ける事が出来る。
「通信妨害と言えば、地球の周りを周回している人工衛星は使えないのか?」
「レッド総帥、そのベジータ王子達が地球に宇宙船でやってくるときに衛星に気が付くのでは?」
「なるほど、二人の言う事ももっともじゃ。監視衛星に光学迷彩装置と通信妨害装置を搭載しよう」
ベジータ達のスカウターを破壊すること自体は、ギネ達はもちろん儂でも難しくはないだろう。しかし、念には念を入れておきたい。
「それで、問題はベジータ王子達が襲来した後の事だ」
「予定より早く宇宙の悪の帝王と事を構える事になる、と言う事じゃな」
「いや、フリーザを倒してもその父親と兄が仇討ちに来る可能性が高くてな。特に、兄の方はフリーザより強いようなんじゃよ」
「……いっそ、ドラゴンボールで地球ごと別の銀河にでも逃げるか?」
「その王子さん達を味方にしたら、地球を侵略した事にしてフリーザ軍を誤魔化す事ってできないの?」
「おい、ドクター。魔神城で手に入れた眠り姫は使えないのかよ? 太陽を破壊できるんだ、フリーザって野郎もその兄貴もどうにかなるんじゃねぇか?」
亀仙人が思わず弱気な事を言い、ランファンやランチがそれぞれアイディアを出す。
「それぞれ準備を進めておこう。眠り姫の方は……直撃させられればどうにかなるだろう。直撃させられればだが」
眠り姫に貯蔵されているマイナスエネルギーと呼ぶべき力は絶大で、当てられればクウラでも倒す事が出来るだろう。
問題は、当てられるかだ。いくら儂でも、数年であの太陽破壊砲を携帯可能な拳銃サイズにはできない。
それに、眠り姫を使えるのは一度限りじゃからな。
「儂が何を言いたいのかというと……事態が良い方に転がればフリーザとの対決までにまた数年以上の猶予が出来る。しかし、最悪の場合ベジータ王子の後、数か月から一年程の時間を挟んでフリーザ、クウラ、コルドとあの一族を相手にしなければならなくなる。
この事態を解決する妙案はない。なので……地道に努力して強くなるしかない」
「地道な努力ねぇ……精神と時の部屋と超神水の出番じゃねぇのか?」
「ターレス、その通りだが結局最後に物を言うのはトレーニングと組手だ」
こうして地球防衛のためのブートキャンプが始まった。
「試練に挑む者が数日で代わる代わるやってくるとは、忙しい事じゃわい」
「まさか本当にしゃべる猫が武術の神様だなんて、信じ難いわね」
「失礼なオカマじゃのう」
「なんですって!?」
「ちょっとブルー将軍さんも落ち着いてっ、あんた教えてもらう立場でしょ!」
「今は大佐よ!」
まず、レッドリボン軍の主な戦士達の中でカリン塔でカリン様の試練を受けていない者は、試験を受けてもらう。
ブルー大佐達、レッドリボン軍のメンバーは、約半年のトレーニング過程でカリン塔と同程度に大気が薄い環境を再現した部屋での組手も経験している。なので、カリン様の試練は修行というよりこの後の過程に彼等が進めるか否かを判別するテストだ。
ブルー大佐、ボンゴ大尉、パスタ大尉、以上の三名はそれぞれ一時間以内に試験を終えた。シルバー大佐とバイオレット大佐も、初日で。オレンジ大佐、ムラサキ曹長、イエロー大佐はそれぞれ三日ほどかかった。
そして試験を突破した者から順に、地球の神様の神殿に行き修行を始める。
「こんなに賑わう事、異例。本当なら、お前達絶対来られない」
「自覚はある。だが、地球が侵略されたら困るのは俺達も同じだ」
ミスター・ポポの言葉に自分が悪人である事を自覚しているボンゴは、そう答えた。
「だけど……ボランティアでこんなところまで来る事になるなんて思わなかった」
「しかも、春に来るサイヤ人はともかく、その次のフリーザ軍との戦いに参戦か。大人しく牢屋に入っていた方が良かったかもな」
そのまま自分達が置かれている状況が激動している事を思い出し、愚痴を吐露する。実際、刑務所の囚人は命がけで戦う事はない。
「お前ら、気持ちはわかるが神様の付き人の前で愚痴るなよ」
元々神殿で修行中だったヤムチャがそう苦言を呈すが、二人は胡乱気な視線を彼に向けた。
「人生が充実している奴には、分からない事もあるだろうよ」
「マロンとお幸せに」
「あのなぁ、俺だってもうすぐここでの修行を終えて、地上に戻れるところだったのに修行続行なんだぞ!?」
マロンと付き合うようになり、初めてのデートの次の日には修行に戻り、それから遠距離恋愛状態のヤムチャも、ボンゴ達とは異なるが辛い状況のようだ。
「そんなにいうなら、お前ら同士で付き合えばいいだろ!?」
「いや、別に嫉妬している訳じゃない」
「余計なお世話だよ」
「ヤムチャ、会えない時間が長いほど、再会した時の喜びは大きい。悪いとは思うが、協力してくれ」
「あ、いえ、取り乱してすみませんでした」
儂が言うと説得力があったのか、落ち着いてくれた。
「二人も、あまり若人をからかわんようにな。
では神様、ミスター・ポポ、そしてツーノ長老、よろしくお願いします」
「ああ、儂も出来るだけの事をしよう。……と言っても出来る事は多くないが」
「儂も出来るのは最長老様と同じように、眠っている力を起こす事だけ。後は本人の努力次第じゃ」
そしてまず、最長老様と同様に潜在能力を覚醒させる事が出来るツーノ長老に、潜在能力を起こしてもらう。
突然力が上がり盛り上がる者達を、地球の神様とポポが指導し……最低限神殿の環境に耐えられるようになったら、事前に決めた組み合わせ通りに精神と時の部屋に入ってもらう。
「生活施設以外何もない場所で一年過ごすのか。まるで修行僧だな」
「シルバー大佐、これでもかなり居住性は向上しているので頑張ってくれ」
神様の改装によって、居住空間の大気の薄さは神殿と同じ程度に抑えられ、外の重力も二倍から三百倍まで調整可能になっている。
また、一度に四人まで使用可能になっており、その分生活施設も拡充されている。ホイポイカプセルを採用する事で従来の粉と水だけの食事から、缶詰やインスタント、レトルト食品や冷凍食品を楽しむことができる。
それに、修行がおろそかにならない程度の娯楽……トランプやチェス、将棋、オセロ、それに過去の天下一武道会の試合や悟空達の戦いの映像資料を見られるようにしてある。
なお、精神と時の部屋を使う組み合わせは出来るだけ実力が近い者達同士である事、そして何より同性同士の組み合わせである事を重視した。……部屋の中で間違いが起こるかもしれんからな。
「部屋の中では一年がたっている間に、部屋の外では一日しかたっていない……なんだか、部屋の中に居たら凄い速さで歳を取りそうね」
「ドラゴンボールの力で、部屋の中では歳はとらなくなっている。年月による成長もしない。それに、お前達はゲロが作った寿命を延ばす薬を飲んだり、不死鳥に触れたりしているのだろう?」
「まあね。とりあえず薬の方にしておいたよ。寿命が何百年も伸びるって言われると、ちょっと簡単には手を出せないからね」
パスタ達が飲んだのは、正確には老化を通常より遅らせる薬だ。亀仙人の所にいる不死鳥から提供してもらったサンプルを解析するなどして開発した薬で、以前は老化を一割遅らせる程度だった。しかし、人造人間研究を進める傍ら、他の寿命が長い異星人……ナメック星人やフリーザ一族、ルシフェル達魔凶星人等から採取したサンプルを培養し、解析を進めた結果、効果を倍の二割に高める事が出来た。
改良したこの不老長生薬を服用すれば、三十歳で二十四歳、四十歳で三十二歳の若さを保つことができる。八十歳まで若さを保てるサイヤ人が服用した場合は、なんと百歳まで若々しい姿のままだ。
最初にこの説明を最初にした我が社の副社長からは、「老化を通常の二割遅らせるのではなく、寿命を二倍にする薬じゃないだろうね?」と散々疑われた。……どうにも彼は儂を過大評価していると思う。
「そうか。意外だな。お前達のような人間は最終的には不老不死を求めるものだと思ったが」
本来の寿命より長く生きる事は、良い事ばかりではない。しかし、深く考えず手を伸ばす者は多い。パスタもその一人だろうと思っていたツーノ長老は彼女をやや見直した様子だった。
「一生遊んで暮らせるだけの金はもう稼いだと思ってたのに、その一生が何倍も長くなったら計算が狂うからね。
何百年後に金が尽きて働かなきゃならなくなるなんて御免だし」
「……ううむ、金というのはそこまで重要な物なのか?」
「ツーノ長老、彼女は地球人の中でも特別金銭欲が強い性格をしているので、あまり真に受けない方が良いですぞ」
ちなみに、潜在能力覚醒を受け、精神と時の部屋で鍛えるのはレッドリボン軍のメンバーだけではない。悟空達や人造人間、そして儂も例外ではない。
潜在能力覚醒や超神水を既に飲んだ者や、条件が満たされていない者以外は、全員受けてもらう。
「ま、まさか私もですか!?」
「いや、マイ君の場合は耐えられない可能性が高いのでとりあえず免除する」
「ほっ……良かった」
戦闘力30未満のマイは除く。
フリーザやクウラのように億単位の戦闘力を持つ強敵に、戦闘力千未満のレッドリボン軍メンバーやサタンやジャガー、クリリンを鍛える必要があるのか? という疑問を持つ者もいるだろう。
たしかに、彼らがどんなに鍛えても、フリーザやクウラとの戦いで勝利に貢献する事は無いかもしれない。しかし、儂らに迫る脅威がフリーザやクウラだけとは限らない。
歴史改変者が暗躍しており、ピッコロ大魔王が動き出すより先にベジータ達サイヤ人が襲来するような状況だ。フリーザがナメック星を襲うのと同時に、スラッグ一味がヤードラット星を襲い、地球ではピッコロ大魔王が動き出すという、三面作戦を強いられる事態が発生する可能性も考えられる。
そうした時、フリーザとの戦いで戦力になるほどではなくても、戦闘力が数千から数万のそれなりに戦えるメンバーが多ければ助かるはずだ。
だから、儂等は主力以外のメンバーも鍛える。十年以上あると思っていた猶予が大幅に短くなりかねない事態だが、幸いまだ年単位の時間があるのだから、活用しない手はない。
精神と時の部屋の中で修行に明け暮れるブルー大佐は、自身の実力がメキメキと上がっている事を自覚し、充実感を覚えていた。覚えていたが……。
「なんで私はあんた達小娘と同じ組み合わせなのよ」
「またその話? 良いじゃない、超能力者同士仲良くしましょうよ」
「はっきり言うけど、あんたは男と一緒にする方が危ないって思われてるからだよ」
自分以外全員女、それもガキである事はブルー大佐にとって不満の種だった。
精神と時の部屋に入る組み合わせはゲロによって厳密に決められ、出来るだけ男女混合にはならないようにされていた。しかし、ブルー大佐だけは女性側と一緒にされたのだ。
そのため、精神と時の部屋には彼以外にブルマとラズリ、そしてチチが同時に入っている。
「ブルーさん、女嫌いを少し直した方がいいと思うべ」
「これでもまだマシになったのよ!」
「あと、もうちっと大人としての余裕を持つべ。さっきっから大人気ねぇだぞ」
チチの助言に一度は大声を出したブルー大佐だが、二度目の助言には短く呻いて黙り込んだ。
自分が今年二十九歳になるいい大人で、彼女達が自分の約半分の年齢の子供である事を思い出したのだろう。
「……これでもマシになったってのは本当よ。あんた達の事も、マロンより話しやすいと思うし、色々助けられているのは否定はしないわ」
人造人間10号マロンでついた耐性のお陰か、ブルー大佐の女嫌いはだいぶ抑えられていた。以前の彼なら、少女三人と精神と時の部屋で修行するなんて、一週間と耐えられなかっただろう。
「あんた達に教えてもらったお陰で光線や飛行……気の制御と舞空術は身についたし、感知の方もこの部屋を出る前には習得できそうだわ。ブルマには超能力の使い方も相談できるし、チチがアレンジしてくれるお陰でただのインスタントやレトルト食品が美味しく食べられるしね。ラズリは……まあ、ゲロの愚痴を聞いてくれるのは助かるわ」
「……なに? 急に素直になって。あんた、近い内に死ぬの?」
「シンプルに怖ぇだよ」
「なんですって!? 人が素直に胸の内を吐露したのに、何て言い草なの!?」
「あんた、もっと友達作ったら? それか、ペットでも飼ったらいいんじゃないか?」
「余計なお世話よ!」
心の性別というより、アラサーと十代半ばの少女達では打ち解けるのは中々厳しかったようだ。
しかし、ブルー大佐の女嫌いは治らなかったがよりマシな状態になり、更に強くなることに成功した。
そして同じように強くなったブルマ達と外に出た彼をゲロが出迎える。
「久しぶり、と言うべきじゃな。一年間よく頑張った、見違えたぞ」
「パパ、歳はとらないんだから見た目は服以外変わってないはずだろ」
「そうじゃな。しかし、隙や無駄な動きが削ぎ落とされて雰囲気がだいぶ変わっておる。大きく成長したのは間違いない。ブルマとチチも、そしてブルー大佐もじゃ」
「まあね」
嫌いな相手だが、素直に称賛されると悪い気はしない。それに、ブルー大佐にとっては一年ぶりの再会だ。懐かしさもあって、この時は素直な態度を表した。
「では、ブルー大佐は別室で超神水か儂が作った効果はいまいちだが死ぬ可能性はない超神水改かの、どちらかを飲んでもらおう」
「……修行を終えて早々に毒を飲めって、最初に説明された時も思ったけど、あんたって地獄の鬼も真っ青の鬼畜ね」
「じゃろうな。彼等は基本的に善良じゃし。
それと、超神水改を選んだ場合は、精神と時の部屋での二日目の修行の後でオリジナルの超神水を飲んでもらう事になる」
「お爺ちゃん、あたし達は?」
「ブルマとチチは十五歳未満じゃから、まだダメじゃ。来年には飲んで良いぞ」
「パパ、あたしは今年十六だけど?」
「ラズリは心臓の病気が、超神水をきっかけに発病する可能性があるから人造人間になるまでお預けじゃ」
こうしてブルー大佐は一人オリジナルの超神水を飲み、一晩苦しんだが見事乗り越えた。
「あたしは絶大なパワーを手に入れたのよ! ホーッホッホッホ!」
そして、そう高笑いを上げたという。そして一日の休養を挟んでブルマ達と二日目の精神と時の部屋の修行を行ったのだった。
〇ラディッツが悟空をどうやって連れ帰るつもりだったのか。
感想でご意見を頂きましたが、確かに悟空が乗って来たアタックボールがありましたね(汗 すっかり忘れていました。
〇テラフォーミング
コーチンが短期間で森を砂漠にしたり、スラッグ一味の科学者が数日で地球を惑星クルーザーに改造可能と(脅されて)言ったり、ドラゴンボール世界の天才科学者が協力し合えば、意外と短期間で可能なのではないかと思いました。
フリーザ軍がテラフォーミングをしようとしないのは、そのための技術開発をする時間とコストを払うより、原住民を皆殺しにする方が簡単で速いから。そもそもフリーザに「殺生を厭う」という考えがないからだと思われます。
〇宇宙規模のビジネス
フリーザ軍以外にも宇宙には宇宙海賊が存在し、銀河パトロールも頼りない……どころか場合によっては地球人を絶滅させていたかもしれないと知っていれば、そうならないための方策としてビジネスを展開しようとするだろうと思い、この展開となりました。
作中ではゲロと副社長が悪巧みを企んでいるように話していますが、二人の目的は「地球に対する他の星の認識を、辺境にある未開の惑星から、科学文明が進み強力な戦士がいる種族の惑星へと変える」、「第二第三のフリーザ軍が台頭しないように、地上げビジネスの商売敵になる」事になります。
前者の目的はともかく、後者のせいでフリーザに目の敵にされる恐れはありますが……元々「打倒、フリーザ!」を掲げて行動しているので今更だろうとゲロ達は考えています。
名無しの過負荷様、ハゲネ様、excite様、佐藤東沙様、鳥揚 和様、大自在天様、Mr.ランターン様、たきょ様、ヴァイト様、KJA様、神城陣代様、ヨシユキ様、たかたかたかたか様、太陽のガリ茶様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。