ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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97話 ベジータチームVS仮面の魔族&サイヤ人被害者の会

「暇だな~、アボ」

「そうだな。ところで暇だな、カド」

「ボス、さっきから暇だとしか言ってないぜ。なあ、カカオ」

「ンダ」

 

 サボテンに似た植物がまばらに生える砂と岩だけの場所で、奇妙な一団が適当な岩を椅子代わりにして腰を下ろしていた。

 アボと呼ばれたのは、青い肌に大きく丸いつるりとした肉まんのような頭に、やはり丸々とした体つきの宇宙人で、双子の兄弟のカドも肌の色が赤である事以外はよく似ている。

 

 そんな二人に話しかけたのは、一見すると地球人に見える宇宙人で耳飾りやネックレスで洒落た雰囲気の伊達男、ダイーズ。彼に頷いたのは、サイボーグのカカオだ。

「だって仕方ねぇだろう。獲物を捕りに行ったアモンドが……おっ、戻って来たな」

「どこまで行ってたんだ、あいつ」

 

 ピピピッ、と言う電子音がスカウターからしたと思うと、地平線の彼方から何かが猛スピードで近づいて来た。

「でっーーーせいっ!」

 それは食料の調達に出ていた五人目の仲間、アモンドだった。彼はこのほぼ砂漠だけの惑星で、やっと獲物を捕まえて戻ってきたのだ。

 

「ふうっ、ただいま帰りましたぜ、アボ様、カド様」

「おうっ、ご苦労」

「じゃあ、さっそく食うか」

「ちょっ、ちょっと待ってくれ! もしかしてそのデカいミミズを食料にするつもりか!?」

 

 食事の準備を始めようとするアボ達に、ダイーズが慌てて異を唱えた。何故なら、アモンドが背負っていたのは彼が言った通りの生き物だったからだ。

「そう言われても、仕方ねぇでっせい。この星で食えそうな大きな生き物は、この巨大ミミズだけまっせい」

「贅沢言うな、ダイーズ。それともサボテンでも齧るか?」

「へへ、恨むならガセネタを掴んだ情報部を恨むんだな」

 

 しかし、誰もダイーズの意見を取り合わず、アモンドは得意の高速回転で巨大ミミズを輪切りにすると、アボとカドが威力を調整したエネルギー波で肉を一切れずつ焼いていく。

「ンダ」

「くっ、分かったよ。情報部の連中め、帰ったら文句を言ってやる」

 

 砂漠の惑星でのんびりとアウトドアを満喫しているように見える彼らは、フリーザ軍でもギニュー特戦隊の次に名の知られたチーム、クラッシャー軍団。……本来の歴史である『原作』では、ターレスが率いていた宇宙の壊し屋集団だ。

 

 この世界の歴史では、リーダーはフリーザ軍の中でもギニュー特戦隊に匹敵する強さを持つと言われる双子の戦士、アボとカドが勤めている。

 結成のきっかけは、直属の部下を率いず二人だけで動いていたアボとカドがフリーザからの命令でナッツ星の侵略に向かった事だ。

 

 そしてナッツ星にあった宇宙警察機構の刑務所に収監されていたアモンドが、侵略されるどさくさに紛れて脱獄。そのままアボとカドに手下にしてくれと頼みこみ、配下に納まった。

 そのしばらく後、フリーザ軍に上納金を納めなかった密輸商人を叩き潰した時に、イコンダ星系で起きた戦争の際改造されたサイボーグ、カカオを偶然拾った。機能停止状態で飾られていたらしいのだが、商人の隠れ家を襲撃した際に何かの拍子に再起動したらしい。

 

 徐々に手下を増やすアボとカドを、フリーザは上機嫌で褒めボーナスを支給した。二人がただの兵士ではなく、優秀な人材を発掘し、チームを率いる手腕の持ち主だと評価したからだ。

 そしてアボとカドはクラッシャー軍団のチーム名を名乗り、次の仕事……カボーチャ星の侵略に着手する。しかし、カボーチャ星人の王子は強いうえに勇猛果敢で、軍を率いて彼らに抵抗した。

 

 その勇猛さを見込んだアボとカボは、彼を五人目のチームメンバーに加えるべく勧誘を行った。そしてカボーチャ星人を滅ぼさず、星の名を惑星フリーザに改め支配下に入る事を認める事を交換条件に、王子のダイーズを配下とする事に成功した。

 

 こうしてクラッシャー軍団は現在の五名となり、アボとカドはこのチームをいずれはギニュー特戦隊を超えるフリーザ軍のナンバーワンチームにしてやろうと意気込んでいた。

 しかし……ここ最近は彼らの意気込みとは裏腹に停滞気味だった。

 

「これもベジータ達サイヤ人のせいだ。歯ごたえのある仕事はあいつらが持って行っちまう」

「フリーザ様の覚えもめでたいし。おかげで俺達はこんなゴミみたいな星で、のんびりバーベキューだ」

 二人はその原因をベジータ達のせいだと考えていた。やりがいのある、つまり難しくて成し遂げれば評価される仕事をベジータ達が独占しているから、自分達は伸び悩んでいるのだと。

 

 彼らがこの星に居るのも、情報部がこの惑星に邪魔な宇宙海賊のアジトがあるという情報を掴んだからだ。しかしアタックボールに乗り込んで来てみれば、アジトは何十年も放棄されていて廃墟と化していた。

 つまり、ガセネタである。

 

「せっかく来たからついでにこの星の資源調査もしろって、勝手な事言いやがって」

「まあまあ、資源が見つからなかったら星をぶっ壊せば気分も晴れますよ」

「ンダ」

 

「アボ様もカド様も、腹が膨れれば気分も変わりますぜ。でっせいっ!」

 愚痴を零す上司をダイーズが宥め、カカオが頷く。そしてアモンドが追加の肉を焼くために巨大ミミズをさらに切り分ける。

 

「ん? なんだ、こりゃ? ミミズの食い残しか?」

 その時、ミミズの体内から壺が転がり落ちて来た。ふたが開かないように鎖で封印されている。

 

「壺? 中に何がお宝でも入ってるかもしれない」

「よし、開けてみるか」

 壺を拾い上げたカドは、鎖を引きちぎって蓋を開ける。しかし、壺の中には何かの種が一つあるだけだった。

 

「なんだ、ゴミか」

 興味を失ったカドは、壺を放り捨てた。その拍子に、壺の中から零れた種が、大ミミズの体液で湿った砂の上に落ちる。

 

 その次の瞬間、種……神精樹の種は猛スピードで根を伸ばし始めた。

「ンダ!?」

「な、なんだ!?」

 驚いて反射的に神精樹から飛びのくクラッシャー軍団の面々。しかし、そうこうしている間にも神精樹は成長し続けている。

 

 そしてあっという間に山よりも巨大な樹木へと成長した神精樹は、実をつけ始めた。

「おい、アボ。何か分かったか?」

「壺の表面に描かれていた文字をスカウターで解析した。これは神精樹って言うらしいぜ。実は神しか口にする事を許されないんだとか」

 

「神しか口に出来ない実か。……いっぱいあるし、食ってみるか」

「そうだな、食後のデザートには丁度いい」

「ミミズの肉よりはマシか」

 

 クラッシャー軍団の面々はそれぞれ神精樹の実に手を伸ばした。彼等がそうしている間もこの星は神精樹に栄養を吸い取られて枯死しつつあるが、元々クズ星だと思っていた星がどうなろうが知った事ではない。

「っ! おおっ、すげぇっ、力が漲る!」

「気怠さが吹っ飛んだぜ!」

「アボ様、カド様っ、戦闘力が上がってるでっせい!?」

 

「なにぃっ、本当か!? 本当だっ! アボ、お前のスカウターでも測ってみろ!」

「本当だ! まさか、この神精樹の実は食うだけで強くなれるのか!?」

 互いの戦闘力を測りながら大騒ぎしているクラッシャー軍団の面々。その間に背負った籠に必要な神精樹の実を収穫し終えたロベルはフッと微笑んだ。

 

「さすが私。彼らが神精樹の実を手にするよう工作し、同時に我々に必要な神精樹の実の収穫もそつなくこなすとは。実にエレガント」

 そう言い終えると、彼女は急に無表情になった。

 

「私は何をしているのでしょう……? 神精樹の実が必要だとしても、何故歴史の改変をただすような真似をしなければならないのか」

 クラッシャー軍団が使って宇宙を荒らしまわるはずの神精樹の種を、ロベルは態々手の込んだ工作までして与えた。それは彼女の主であるドミグラの作戦に神精樹の実が必要だったからでもあるが、歴史の修正を行うためでもあった。

 

 クラッシャー軍団が神精樹の実を利用していないと、歴史が改変されてしまうのだ。

 実際、『原作』ではいるはずのレズンとラカセイがまだ存在せず、彼らは巨大宇宙船ではなくアタックボールに乗っている。

 

 何故ならレズンとラカセイは、現代では滅んでいる古代ビーンズ星人。『原作』では、ターレスが神精樹のエキスを化石にかけた事で復活しクラッシャー軍団に加わった。アモンドやダイーズ達と違い、神精樹の実が無くては存在しないメンバーなのだ。

 そして、『原作』でクラッシャー軍団が乗っていた宇宙船は、レズンとラカセイの手によって作られたので、彼らがいなければやはり存在しない。

 

 そのため、ロベルが今行ったのは歴史を正しい方向へ修正する行為だ。結果、これからいくつもの星が神精樹によって枯死する事になるが。

「それもこれも、タイムパトロールと時の界王神がこうした事をしないからですが……歴史改変者の私が文句をつけるのはエレガントではありませんから、耐えましょう」

 

 時の界王神達が汚れ仕事をしない……のではなく、彼らは他の歴史からの干渉を排除しかしない事が原因だ。

 病気の治療に例えると、体に入った病原菌を退治はしても、病原菌にかかった結果出来た跡を治すケアはしない。例えば、『原作』でトランクスが渡した薬によって悟空が助かって歴史が変わったのに、悟空を殺さない。

 

 タイムパトロールを率いる時の界王神は、歴史改変者がキリで強化している等直接干渉している場合を除いて、その歴史本来の住人には手を出さない方針なのだ。

 

 しかし、ロベル達もその時の界王神の方針を利用している。クラッシャー軍団に神精樹をロベルが渡した事が時の界王神に知られても、タイムパトロールを差し向けてクラッシャー軍団を蹴散らし、神精樹の種を回収しようとはしない。そう分かっているからこその作戦である。

 

「この神精樹の実を使えば、俺達クラッシャー軍団がギニュー特戦隊を超えるのも容易いんじゃないか!?」

「それだけじゃねぇっ! あのクウラ機甲戦隊だって超えられる! それどころか、俺達が宇宙の支配者になる事も……」

 

「っ!? まさか、フリーザ様を……!?」

「滅多なことを言うな! 冗談だ、冗談!」

 スカウターを装着したままだった事を思い出して、カドが慌ててアモンドを黙らせる。

 

「じゃあ、この星の報告はどうします?」

「……価値のある資源は発見出来なかったから、帰る時に破壊したと報告しておけ。おい、神精樹の種を回収したら引き上げるぞ!」

 

 そしてロベルが複雑な自分の事情に折り合いをつけている間に、クラッシャー軍団は引き上げの準備を始めていた。彼女は自分もアジトに戻ろうと空間を繋げる門を開こうとして、ある事に気が付いた。

「これはまた、エレガントではないですね」

 顔を僅かに顰めた後、門を開いて砂漠の惑星から立ち去った。

 

 その後、クラッシャー軍団は実を収穫し終えた神精樹ごとこの惑星を破壊して証拠を隠滅した。そして、さっそく次の仕事に向かったのだった。だが、彼らの目的は手柄を上げる事ではなく、フリーザ軍にばれないよう神精樹を栽培するのに都合のいい星を見つける事に変わっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 惑星リデブでは、ベジータとラディッツ、そしてナッパが種族の異なる宇宙人の一団と対峙していた。

「ナッパ、奴らの戦闘力はどうだ?」

「魚っぽい奴等は結構強いな。戦闘力2から3千ってところだ。ヘルメット頭は数百で、デカい蟲っぽい奴等は百とか2百、バカでかい奴だけ千だ。一番前の仮面野郎は……戦闘力たったの30! はは、なんだ、ゴミじゃねぇか!」

 

「フン、物足りんが遊び相手にはなるか」

「サイバイマンの種は使うか?」

「やめておけ。こんな星の土じゃろくなサイバイマンにならん」

「それもそうだな」

 

「ベジータ、ナッパ、奴らの内幾つかの正体が分かったぞ。魚に似た奴らはカナッサ星人、ヘルメット頭はミート星人、どちらも十年以上前に俺達サイヤ人に滅ぼされた宇宙人だ」

 スカウターでデータベースに照合していたラディッツの言葉に、二人はニヤリと笑みを深くした。

 

「なるほど。連中の目的は俺達サイヤ人への復讐か」

「へへ、だったら俺達も挨拶の一つもしてやらねぇと、なあっ!」

 クンっと人差し指と中指を立てるナッパ。その途端、猛烈な衝撃波が一団の足元から吹き上がって地面が砕けて爆発した。

 

 

 街一つ程度なら跡形もなく吹き飛ばす威力の不意打ちに、仮面の男と宇宙人の一団は避ける様子も見せず飲み込まれる。

「おい、ナッパ。俺の分も残しておけ。直接俺の手で殺さなければ気が済まん!」

「へっ、そうイラつくなよ。ふるいにかけてやっただけだ。この程度の攻撃で死ぬ奴らをいくら殺しても――」

 

 ナッパの声が途切れると、彼がいた場所に仮面の男が現れた。

「なにっ!?」

 仮面の男が目にも止まらぬスピードで間合いを詰め、ナッパを殴り飛ばしたのだと理解する前に、仮面の男の攻撃が今度はラディッツとベジータに向かって振るわれる。

 

「ぐおっ!?」

 とっさに両腕を構えて防御に成功したラディッツだったが、仮面の男の攻撃の威力を完全に殺す事は出来ず後ろに吹っ飛ばされた。

 

「チィッ!」

 だが、ベジータは流石と言うべきか仮面の男の攻撃を回避すると、その場に留まって反撃を開始する。素早く仮面の男の死角に回り込んで背中に蹴りを放った。

 

『フッ』

 しかし、仮面の男は鼻で笑いながらベジータの蹴りを回避。それどころか彼の足首を掴むと、空に向かって放り投げてエネルギー弾を放った。

 

「ベジータっ!?」

 声を上げるラディッツだったが、ベジータは即座に体勢を立て直し、自らに迫るエネルギー弾を蹴り飛ばし、その反動でラディッツ達の方へ戻った。

 

「狼狽えるな! ナッパ、挨拶だからと言って力を抜き過ぎたんじゃあるまいな?」

「そ、そんなはずはねぇ。スカウターの故障か?」

 仮面の男に殴り飛ばされ、後にあった岩にめり込んでいたナッパが戻って来て再びスカウターを操作する。

 

 仮面の男はそんな彼らを追撃する様子もなく佇んでいるが、その背後では砂煙の中から宇宙人の一団が誰も欠ける事無く姿を現した。

 ふるいにかけるどころか、全くの無傷だ。

 

「いや、俺のスカウターでも仮面の男の戦闘力は30のままだ。どうなっていやがる?」

「俺達は悪夢でも見てるのか?」

「狼狽えるなと言っただろう! スカウターの故障ではないと言う事は、奴らは戦闘力以外の力を持っているというだけの事だ!」

 

 動揺を隠せないナッパとラディッツを、ベジータは再度叱責した。この広い宇宙には、スカウターで戦闘力を計測する事は出来ないが強力な力を持つ存在がいくつも存在する事を、彼らは知っていた。

 

 妙な超能力や種族特有の特殊能力の使い手に、魔術師、そして魔法染みたテクノロジーの産物だ。

「なるほど、あいつら何らかの方法で戦闘力を誤魔化すか何かしてやがるのか。そうと分かればもう油断はしねぇ」

「なら、スカウターではなく自分の目で強さを判断するしかないな」

 

 冷静さを取り戻したナッパとラディッツはそれぞれ身構える。

『っ!』

 それを待っていたかのように、仮面の男と宇宙人達は一斉に走り出した。

 

「仮面野郎は俺がやる! お前達は他を片付けろ!」

「「おうっ!」」

 ベジータは二人の返事を待たずに、仮面の男に殴りかかった。拳と拳がぶつかり合い、激しい衝撃波が発生する。そのまま二人はリデブ星の空を高速で移動しながら攻防を続け、大気を震わせ続ける。

 

(やはり、ラディッツやナッパではこいつの相手は荷が重い。この俺に相応しい獲物だ!)

 拳と蹴りの激しい応酬を繰り広げながら、ベジータは仮面の男が期待通りの強敵である事に気分が高揚するのを抑えられないでいた。

 

 少しのミスで相手の拳に頬を抉られ、蹴りが腹にめり込みかねないスリル。逆に相手の防御を掻い潜り、攻撃を当てようとする闘争本能の脈動。

 フリーザに強敵と戦える仕事を回してもらいながらも、本当の意味での強敵とは久しく戦う機会に恵まれなかったベジータは、心から仮面の男との戦闘を楽しんでいた。

 

『私の邪魔をしないでもらおうか!』

 しかし、仮面の男にとってベジータは好敵手ではなく、邪魔者でしかなかったようだ。口調には荒々しさは無いが、苛立ちが込められている。

 

「なんだと? 貴様等の目的は俺達サイヤ人への復讐ではないのか?」

『他の奴等の事など知らん! 私が本当に復讐したいのは孫悟空共だ! 我ら魔族の悲願を叩き潰し、『眠り姫』を奪った憎い仇!』

 

 仮面の男の正体は、なんと魔族ルシフェルだった。魔神城の崩壊とともに死んだと思われていた彼は、実はトワによって回収されていた。そして治療を受けた彼は、復讐と『眠り姫』奪還のためトワに忠誠を誓いキリによる強化を受けたのだ。

 

 手勢としてトワが他の歴史から連れて来たサイヤ人に母星を滅ぼされて滅亡した宇宙人達と共に、ベジータ達を襲撃しているのも、トワの命令だからに過ぎない。ルシフェルにとってベジータは、復讐の本番前の練習台に過ぎない。……ベジータ達がサイヤ人と言う種族で、共通する特徴がある孫悟空と同族であるらしいことは、周囲の宇宙人が漏らす恨み言から察したが。

 

『私は早く復讐を果たしたいのだ! だから、さっさと私に始末されろ!』

「どこの誰にやられたのかは知らんが、このベジータ様を前座扱いか! ふざけるのも大概にしやがれ!」

 仮面の魔族と化したルシフェルとベジータは怒りの籠った拳をお互いに受けると、衝撃を利用して間合いを取りエネルギー弾の撃ち合いへと移った。

 

 

 

 

 

 

『死ねっ、サイヤ人め!』

「貴様等こそ地獄に叩き落としてやる!」

「さあてっ、まずはどいつから遊んでやろうか!」

 

 一方、トワが他の歴史から連れて来た宇宙人達とラディッツとナッパの戦いも始まっていた。

『くらえっ、サイヤ人!』

 蠅を人型にしたような姿のアーリア星人が口からエネルギー弾を放ち、ヘルメットにマスクを被ったような姿のミート星人が果敢に肉弾戦を挑む。

 

 それぞれ『原作』ではサイヤ人に一矢報いる事も出来ずに滅ぼされたが、彼らはトワにキリで戦闘力1万相当分強化されている。

 だから、キリを計測する機能のないフリーザ軍製スカウターでは彼等本来の戦闘力しか計測出来なかったが、今の彼らの強さは1万数百。差は僅かだが、戦闘力1万のナッパより格上ばかりだ。

 

「温いぜ!」

 しかし、ナッパは歴戦の戦士だ。ベジータ程ではないが戦闘のセンスにも優れ、高いテクニックを持つ。彼はアーリア星人のエネルギー弾を掻い潜り、エネルギーを纏わせた手刀でミート星人を袈裟切りに切り裂いた。

 

『ギャアアアア!?』

 悲鳴をあげるミート星人だが、その胴体は切断されていなかった。しかも、倒れた途端幻のように消えてしまう。

 

「なんだこいつ? 消えちまったぞ」

 戸惑うナッパの背後にカナッサ星人が素早く回り込み、攻撃しようとするが――。

「後ろだ、ナッパ!」

 駆けつけたラディッツがその拳を弾き、逆に殴り飛ばす。

 

「すまねぇ、ラディッツ!」

「こいつらは数が多い、背中は任せるぞ!」

「おうよ!」

 

 背中合わせになるラディッツとナッパに、宇宙人達は一斉に襲い掛かる。

「「うおおおおおおっ!」」

 それを二人は互いの背後を守りながら拳で捌き、蹴りで弾き、エネルギー弾を放って反撃さえして見せた。

 

『俺達の攻撃が効いていないのか!?』

『馬鹿なっ、我々の方が数は何倍も多いんだぞ!?』

 背中合わせに円舞を踊っているように回転しながら戦う二人に、彼らを囲むミート星人が殴り飛ばされ、アーリア星人が蹴り落とされ、カナッサ星人がエネルギー弾の爆発に飲み込まれる。

 

 それでもサイヤ人に対する憎しみを戦意に変えて挑みかかり、攻勢を緩めない宇宙人達。しかし、二人の勢いに怯え始めた。

「ガハハ! どうした、俺達に復讐するんじゃなかったのか!?」

「今更怖気づいても遅いぞ!」

 

 二人も無傷ではない。特にナッパは拳や蹴りをその身で何度も受けているが、全く効いている様子がない。彼は自分の倍の戦闘力の相手の攻撃を何度も受けても粘る事が出来る、驚異的なタフネスの持ち主だ。そんな彼が自分よりわずかに上回るだけの相手の攻撃を数発受けたぐらいで、戦闘に支障をきたすわけがなかった。

 

 そして宇宙人達の攻勢が怯えから緩んだのを二人は見逃さなかった。

「ダブルサンデー!」

「くらいやがれ!」

 ラディッツが左右で広げた両手からエネルギー波を放射する必殺技を放ち、ナッパも地面に当たれば底が見えない程深く大地を抉り取るエネルギー波を放つ。

 

『『『ギヤァァァ!!』』』

 二人のエネルギー波を受けた宇宙人達は、次々に閃光に飲み込まれ消えていった。彼らを強化していたキリを失い元の歴史に戻っていったのだ。

 

『許さんぞっ! サイヤ人! 貴様等には呪われた未来以外ないのだ!』

『ウオオオオオ!』

 しかし、まだ全滅してはいない。カナッサ星人の中で最も強い男と、通常のアーリア星人の倍以上の体躯を持つ巨人が二人を急襲したのだ。

 

「ぐおっ!?」

 カナッサ星人……トオロはナッパに肘を叩き込み、更に蹴りで後ろに下がらせる。そしてそのままラディッツに襲い掛かった。

『ガアアア!』

 そして吹っ飛んだナッパに向かってアーリア星人の巨人、イエディが止めを刺そうと襲い掛かる。

 

「きやがれ、デカブツ! ラディッツ、その魚野郎は任せるぞ!」

 しかし、ナッパは空中で体勢を立て直すとイエディを迎え撃った。

「こいつ、見た目の割に素早いじゃねぇか!」

 だが、イエディは巨体に似合わぬスピードでナッパを翻弄し、口から放つ光線で何度も彼を狙う。

 

 その光線が、ついに彼の背中を捕らえた!

「ぐおおおおおおっ!!」

 絶叫を上げながら仰け反るナッパ。光線で体に風穴があく事はなかったものの、戦闘服の背部は砕け血が滲んでいる。

 

『グッフッフフ!』

 ナッパに大ダメージを与えたと思い、勝利を確信したイエディはナッパをその怪力で嬲り、最後は食い殺すために彼に掴みかかった。

 

 このまま骨を握り砕いてやろうとしたとき、ナッパは口を歪めてニヤリと笑った。

「へへ、かかったな」

 そしてカパッと大きく口を開けた。次の瞬間、強烈なエネルギー波がナッパの口から放たれ、イエディを直撃した。

 

『……っ!?』

 収束したエネルギー波を放つナッパの奥の手を至近距離で受けたイエディは、断末魔の叫びを発する間もなくキリを使い切り、彼が本来いるべき時代に戻っていった。

 

「へへ、ベジータは下品な技だって言うが、やっぱりこいつは強力だぜ。さてと、ラディッツは……」

 口元を拭って勝ち誇るナッパが視線を向けると、ラディッツはトオロと激しい肉弾戦を演じていた。

 

「呪われた未来しかない、か。否定は出来んが、先に死ぬのは貴様だ!」

『残虐非道なサイヤ人よ! 呪われた未来しかないと知りつつ、何故戦う!』

「フンッ、俺達は戦闘民族だ! 地獄に落ちるまで……いや、地獄に落ちても戦い続けるのが、俺達サイヤ人だ!」

 

 互角の戦いを繰り広げ、お互いに勝機を伺う二人。力と速さ、そしてテクニックでもラディッツがトオロを二段は上回っている。それでもトオロが圧倒されずに粘り続けていられるのは、彼が一瞬先の未来を見る事が出来るからだった。

 

(何故この男を倒せない! 未来を見る事が出来る私の方が有利なはずだというのに!)

 しかし、内心で焦っているのはトオロの方だった。未来を見て動いている自分の攻撃がラディッツに防御され、逆にラディッツの攻撃を回避しきれず腕で防御しなければならない。

 

 傍から見れば互角の戦いだが、未来を見る事が出来るというアドバンテージを潰されているトオロの方がギリギリの戦いを強いられている。

『貴様もいずれ無残な最期を迎えるのだ! 我々カナッサ星人を滅ぼしたサイヤ人、バーダックと言う男と同じように!』

 その叫びはトオロにとって、内心の焦りを怒りと戦意に変えるために必要だったのかもしれない。

 

「なにっ? お前達の星を滅ぼしたのは親父だったのか!?」

 カナッサ星人を滅ぼしたのが父親だと知り、動きが止まるラディッツ。トオロは、トワにこの歴史に連れてこられ、キリで負の感情を増幅させられて操られているだけなので、彼がバーダックの息子だとは知らなかった。

 

(今だ!)

 だが、この隙を利用しない手はない。必殺の拳をラディッツの頭部に叩き込み、一気に勝負を決めようとした。

『ぐあっ!?』

 だが、拳を叩き込まれたのはトオロの方だった。

 

「カナッサ星を滅ぼしたのが親父なら、俺は是が非でも貴様に勝たねばならん!」

 ラディッツにあるのはカナッサ星人に対する罪悪感や、トオロに対する同情ではなかった。戦意と喜びだけだ。

 

「うおおおおっ!」

 拳の直撃を受けて動きが鈍ったトオロに、拳のラッシュを見舞う。

(み、未来を、未来を見ても追いつけん!)

 互角の戦況を崩されたトオロは、ラディッツの隙のない攻勢に為す術もなかった。そして強烈な蹴りを受け、空に舞い上げられた。

 

 そしてラディッツはトオロに向かって両手を組んで腰だめに構える。

「地獄で親父に伝えるがいい! 貴様の息子は誇り高きサイヤ人だとな! ギャリック砲ーっ!」

 組手を繰り返す内に習得したベジータの得意技を放つラディッツ。それは、空中で身動きが取れないトオロを捕らえた。

 

『き、貴様らには呪われた未来しかないはず。なのに、なぜ……』

 閃光に飲み込まれ、トオロは元の歴史に帰って行った。

「フッ、親父、あんたのやり残した仕事は片付けてやったぜ。カカロットに良い土産話が出来たな」

 歴史改変者の事を知らないラディッツは色々と誤解したままだった。




〇クラッシャー軍団

 原作ではターレスが率いていたが、この作品ではアボとカドがリーダーになっています。また、この話で初めて神精樹の実を手に入れたので、まだレズンとラカセイがチームに加わっていません。
 ……神精樹の実でも死者を復活させる力は無いと思うので、おそらくレズンとラカセイは本当に化石だったのではなく、仮死状態だったのではないかと思います。

 フリーザ軍ではギニュー特戦隊に次ぐ精鋭チームとして知られている。



〇宇宙警察機構

 犯罪者だったアモンドを逮捕した組織。名前からして銀河パトロールと同じような組織だと思われる。しかし、アモンドの設定以外で私はこの組織を確認できていないので、おそらく『ドラゴンボールZ』開始前にはフリーザ軍に壊滅させられていると推測します。

 銀河パトロールは悟空が地球に飛ばされる前から銀河パトロールとして存在してきたことが、「ドラゴンボールマイナス」や「銀河パトロール ジャコ」で明らかになっているため、宇宙警察機構がパトロールの前身になったと言う事も今のところなさそう。



〇トワが他の歴史から連れて来た宇宙人達

 アニメオリジナルの宇宙人で、素の状態の戦闘力が(この作品では)高い順にカナッサ星人、ミート星人、アーリア星人。

 カナッサ星人は『たった一人の反逆者』に登場。バーダックチームが大猿化して滅ぼした事、戦士のトオロが元に戻った状態のバーダックに背後からの不意打ちとは言えダメージを与えている事から、戦闘力数千はあっただろうと想定。カナッサ星人全体も平均的な宇宙人の強さよりも上だったのではないかと考えました。

 ミート星人も同じく『たった一人の反逆者』に登場。バーダックがいない状態のバーダックチームによって、一日もかからずに滅ぼされてしまった。カナッサ星人と違い、見せ場どころか生きている時の姿も描かれず、登場したのは死体だけという悲惨な宇宙人である。

 そのため、それほど強い宇宙人ではなかったと思われる。だが、サイヤ人の中では精鋭だったはずのバーダックチームが派遣されているので、平均より若干強い宇宙人なのだろうかと推測しました。

 アーリア星人はアニメで登場した当時、ベジータはもちろん戦闘力4千のナッパに手も足も出ず一掃されたためあまり強くなさそうだが、地球人より大きな体を持ち口からエネルギー弾を吐く事が出来る事から、平均的な強さの宇宙人だと推測しました。

 また、独裁者モアイの切り札で、闘技場の地下で飼われていて負けた剣闘士を餌として与えられていたイエディは、平均的な種族の最強の戦士の戦闘力である1千相当と考えました。

 それにトワがキリで戦闘力1万分強化しています。最終的な強さは――

・カナッサ星人:1万2千から1万3千
 トオロ:1万5千
・ミート星人:1万5百から1万1千
・アーリア星人:1万100
 イエディ:1万1千

 以上のように設定しています。



 佐藤浩様、ステルス兄貴様、佐藤東沙様、ヴァイト様、リースティア様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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