ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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98話 ベジータ抹殺計画! 

『でやぁぁぁぁ!』

「クソッタレがーっ!」

 

 時間は、仮面の魔族ルシフェルとベジータがエネルギー弾の打ち合いを始めた頃に巻き戻る。

 黒いエネルギーを掌から放つルシフェル、指先から小エネルギー弾を連射するベジータ。互いの強さは、ルシフェルが3万に対して、ベジータが2万7千。そして、それぞれのエネルギー弾の威力はルシフェルの方が数倍上回っている。

 

『っ!? なんだと!?』

 だが、最初に相手のエネルギー弾が届いたのは、ベジータの方だった。何故なら、ベジータの気弾の連射速度はルシフェルを圧倒的に上回っていたからだ。

 

 ルシフェルが野球ボール大のエネルギー弾を一発放つ間に、ベジータはピンポン玉程のエネルギー弾を十発放っている。ルシフェルの黒いエネルギー弾の方が威力は上だが、ベジータのエネルギー弾を一発や二発程度なら弾き飛ばせても、それが何度も続けば逆にかき消されてしまう。

 

 そして残った僅かな小エネルギー弾がルシフェルの体を傷つけ始めたのだ。

『こっ、この程度で……!』

 頬を掠めて僅かな切り傷が刻まれたかと思えば、腕に当たって僅かな痛みを覚え、腹に当たって集中力が削がれる。

 

『この程度でぇぇぇ!』

 一発一発のダメージは小さい。指先を針でチクリと刺される程度だ。百発だろうが千発だろうが、致命傷にはなりえない。掠り傷とも言い難い程度だ。

 

 しかし、針でチクリと刺され続けて集中力を維持する事は難しく、苛立ちが募る。目にでも当たれば致命的であるためある程度防御もしなければならない。

『そのくだらない攻撃を止めろぉぉぉっ!』

 苛立ったルシフェルはキリを全身に纏って防御を固め、そのままベジータに向かって駆け出した。逆上のあまり、肉弾戦で勝負がつかなかった事を完全に忘れている。

 

 そのまま小エネルギー弾の雨を突っ切って拳を突き出したルシフェルだったが、そこにベジータの姿はなかった。

『っ!?』

「馬鹿めっ、後ろだ!」

 なんと、ベジータは突っ込んできたルシフェルにタイミングを合わせて彼を飛び越えて、彼の後ろを取って背中を蹴り飛ばしたのだ。

 

 堪らず仰け反った姿勢で吹っ飛ぶルシフェルを追い越したベジータは、その無防備な腹に拳を叩き込む。

『がはっ!?』

「そろそろ素顔を拝ませてもらおうか。くらえっ!」

「ぐぼあっ!?」

 さらに顔面へ膝蹴りを受けたルシフェルは、再び空中を舞ったが、ベジータは彼を追いかけるのが遅れた。

 

「なんて硬い仮面だ。ヒビ一つ入らんとはな」

 ルシフェルがトワから与えられた仮面は、ベジータが殴っても割れなかったのだ。おかげで体勢を立て直す時間を得たルシフェルだったが、精神的な余裕はなく焦っていた。

 

(何故私の方が追い詰められている!? キリで強化された私の方が、力でも速さでも上のはずだ! あの女もそう言っていた! なのに何故……!?)

 トワはルシフェルにベジータ達を殺せと命じる時、他の歴史から連れて来たという手勢と共に、キリで強化した。その時、実戦経験を積ませるためにベジータよりも一段上程度の強化にしたと言っていた。だというのに、何故ベジータに劣勢を強いられているのか。

 

「どうした? まさか今更怖気づいたか、腰抜けめ」

『な、舐めるなぁ!』

 図星を突かれたルシフェルはそう怒鳴るが、今度は高速で飛行しながらエネルギー弾を放って遠距離戦に持ち込もうとした。

 

 だが、自分との肉弾戦を避けようとしているのが透けて見えると、ベジータはエネルギー弾を掻い潜ってルシフェルとの間合いを詰めた。

『グオオオオオッ!?』

 そこからはベジータの優勢が続いた。ルシフェルも黙ってやられず反撃したが、彼の拳がベジータに一発当たるまでに、ベジータは彼を三発以上殴り、蹴りを叩き込んだ。

 

 ルシフェルは気が付かなかったが、ベジータは彼に力やスピードでは劣っていたが、戦闘経験……そして何よりもセンスで勝っていた。戦闘の天才であるベジータは、ルシフェルの経験不足を察して彼の隙を的確に突き、ダメージを与え続けていたのだ。

 

「止めだ! ビックバンアターック!」

 ベジータが付き出した手の前に、巨大なエネルギー弾が出現する。ベジータの身長よりも大きなそれに、ルシフェルは回避不能である事を悟った。

 

『こ、こんなところで、復讐も果たさず死んでたまるか!』

 だが必死にエネルギー波を放ってビックバンアタックと相殺させようとする。しかし、その最中に仮面からぴしりと音が響いた。

 

『しまっ――ギヤアアアア!?』

 ベジータの膝蹴りを受けた仮面は、彼も気が付かなかったが僅かなひび割れが生じており、それが今限界を迎えて一部が砕けたのだ。

 

 そして、露わになったルシエルの右目に映ったのは、太陽程ではないが眩く光るビックバンアタック。光に弱い彼が耐えられるわけはなく、目を押さえて悲鳴をあげた。

 ルシフェルにトワが与えた仮面は、彼を光から守るための物だったのだ。

 

 彼はそのままビックバンアタックに飲み込まれていった。そして爆発の衝撃でボロ雑巾のような状態になって、地面に投げ出された。

「う、ううっ」

 キリによって強化されていなかったら死んでいただろう。しかし、短く呻きながら地面に横たわり、リデブ星を照らす太陽の光に苛まれながら這いずって動く事も出来ないのでは、死んだも同然だろう。

 

「しぶとい野郎だ。おい、殺されたくなければ答えろ。カカロットが地球にいるというのは本当だろうな?」

 死んでいないなら丁度いいと、ベジータはカカロットが地球に居るという情報がルシフェル達の流した偽情報ではないかを確認しようとした。

 

 ……もちろん、ルシフェルがどう答えても結局は殺す気である。

 

「カ、カカロット……?」

 しかし、ルシフェルはなんと『カカロット』が孫悟空のサイヤ人としての名前だと知らなかった。トワは彼に限られた情報しか与えておらず、ルシフェルも復讐が果たせるならそれでいいと、彼女達から情報を聞き出そうとしなかったからだ。

 

「答えるつもりがないなら――」

「ま、待てっ! お前達と同じサイヤ人を何人か見た事がある! 地球でだ! その中の一人がカカロットと言う名なのかもしれん!」

 

 復讐を遂げる前に死ぬわけにはいかないと、ルシフェルはとっさに『カカロット』と言うのが孫悟空を含む地球に居たサイヤ人の中の一人を指している可能性に思い至った。

 

「何人かだと? ……貴様、このベジータ様を騙そうとはいい度胸だ。褒めてやるぜ」

 しかし、この場合正直になるのは悪手だった。サイヤ人がそんなに生き延びている訳がないと考えているベジータには、ルシフェルが捻りだした答えは嘘だとしか思えなかった。

 

「し、信じてくれっ、本当だ!」

「こっちも終わったようだな、ベジータ」

「随分派手にやったじゃねぇか」

 その時、それぞれ敵を倒したラディッツとナッパが戻って来た。

 

「そう言うナッパは随分苦戦したようじゃないか。戦闘服がボロボロだぞ」

「そりゃあ、あいつらが結構強かったから……あん? なんだ、こいつはやられても消えねぇのか」

「消えない? どういうことだ?」

「ああ、こいつらはやられると姿が見えなくなるんだ。こんなふうにな」

 

 ごく自然な動作でナッパがルシフェルに向かってエネルギー弾を放つ。キリによる強化が解け、戦闘力30程に戻っている彼がそれに当たれば、欠片も残さず消し飛ばされてしまうだろう。

 

『……』

 だが、前触れもなくルシフェルの前に出現した人影が無造作に腕を振り、ナッパのエネルギー弾をかき消した。

「なにっ!?」

 突然現れた人物に、ベジータ達は驚愕しながらもそれぞれ身構える。

 

「貴様、サイヤ人か?」

「テメェ、なんで俺達サイヤ人に恨みを持っている連中とつるんでやがる?」

 しかし、ベジータとナッパは困惑を隠せずにいた。現れた人物は顔こそ仮面で隠しているものの、あちこちに毛先が跳ねた黒髪に、腰にベルトのように巻いた尻尾と、サイヤ人の特徴を隠していなかったからだ。

 

 さらに、着ているのは十年以上前……惑星ベジータがまだ存在した頃に使われていた戦闘服だった。

「お、親父……?」

 そして、その姿はラディッツの父バーダックに酷似していた。……洗脳された本人なのだから、当然だが。

 

 ルシフェルが負けたのを見たトワが、彼に戦闘経験を積ませるのは終わりにして、手駒の回収とベジータを始末するためにバーダックを投入したのだ。

 

「親父って、バーダックの事か? 他人の空似じゃねぇのか?」

「かもしれん……おいっ、お前は誰だ!? 親父……バーダックなのか!?」

 息子に名を呼ばれるが、洗脳されているバーダックは当然答えない。その背後にいたはずのルシフェルの姿がいつの間にか消えているが、ラディッツ達はそれを気にしている場合ではなかった。

 

「フンッ、仮面を剥がせば正体も分かるだろう。下級戦士には似た顔が多くても、傷跡まで同じと言う事は無いだろうからな」

 ベジータはそう言って不敵に笑った。彼には、正体不明のサイヤ人相手にも勝つ自信があった。戦闘力2万7千と言う、生前のベジータ王の倍以上の戦闘力にまで至った彼は、自身こそが最強のサイヤ人だという自信があったからだ。

 

 先ほど倒した連中のように、目の前の仮面を被ったサイヤ人が妙な力で強化されていたとしても。

 

「そうするか。おい、お前、殺されたくなきゃ死ぬ前にこう――」

 だが、次の瞬間ナッパの巨体が宙を舞った。

「なっ!?」

 バーダックが近づき、尻尾でナッパを薙ぎ払った。それだけの動きだったが、ナッパにはもちろんラディッツやベジータの目にも、その動きは見えなかった。

 

「き――」

 次に、裏拳をベジータの顔面に叩き込んだ。それだけでベジータは風車のように回転しながら吹っ飛び、はるか後方にある岩をめり込み、埋まってしまった。

 

「ば、馬鹿な!? 本当に親父ではないのか!?」

 ラディッツは驚愕するが、一人残った彼にバーダックの無機質な仮面が向けられる。

「く、クソがぁ! ぐっ!」

 とっさに殴りかかろうとしたラディッツだったが、バーダックはその拳を掻い潜ると逆に彼の腹に軽い膝蹴りを入れた。

 

「ぐ、おぉぉぉ……!」

 それだけでラディッツは腹を押さえて蹲ってしまった。その頭を、バーダックが鷲掴みにして持ち上げる。

「ぐああああっ」

 スカウターが砕け、ミシミシと自身の頭蓋骨が軋む音を聞きながら、ラディッツが悲鳴をあげる。何とか逃れようとバーダックの腕を掴み、膝蹴りを胴に叩き込むが、彼の指は全く緩まない。

 

「おやじ……かか……ろ……」

 ついにラディッツが白目を剥き、口から泡を吹いて意識を失った。

「どうやら洗脳は上手く行っているようね」

 そのタイミングで、バーダックの背後にトワが現れた。彼女の今回の企てには、ルシフェルに戦闘経験を積ませる事とベジータの始末による大規模な歴史改変以外にも目的があったのだ。

 

 それが、バーダックの洗脳がどれほど強固に仕上がっているか確認するために、彼に実の息子であるラディッツを殺させるというものだった。

「もっとも、親が子を殺すのがサイヤ人らしいから気休めにしかならないけど。……逆だったかしら?

 まあ、どっちでもいいわね。ベジータのついでに始末しなさい」

 

 トワの命令に、バーダックはラディッツをベジータが埋もれている岩に向かって投げつけた。そして、掌を向けてそこから強力なエネルギー波を放つ。

 キリによって強化され、タイムパトロールとも互角に戦えるバーダックが放ったエネルギー波だ。戦闘力1万8千のラディッツや2万7千のベジータが当たれば、ひとたまりもない。

 

 しかし、倒れたまま動かないラディッツの前に人影が出現し、その人影によってエネルギー波は弾かれ、空に向かって消えていった。

 

「何者!?」

「鮮やかな救出、実にエレガント。さすが私」

 現れたのは、ドミグラ配下の魔神ロベルだった。彼女がベジータとついでにラディッツを助けたのだ。

 

「……ドミグラの手下ね。何のつもり? タイムパトロールと手でも組んだのかしら?」

 トワの作戦では、このままラディッツ達を殺し、彼らの魂をあの世で待機しているミラが改めて殺し、消滅させる予定だった。

 

「それはまだです。ですから、彼らがちゃんと仕事をしていれば、私も出てくるつもりはなかったのですけどね」

 そして、トワの作戦が成功すると、ロベルと彼女の主人であるドミグラが進めている計画が台無しになる。何故なら、ベジータを殺して消滅させるような大きな改変を行った場合、この歴史は本格的に本来の歴史と分岐してしまうからだ。

 

 そうなっても、歴史改変を起こしてキリを稼ぐ事は出来る。分岐した歴史にもあるべき未来があり、それを改変すればキリが発生するのは同じだからだ。しかし、発生する量は分岐する前よりも少なくなってしまう。

 まだ必要な量のキリを……暗黒魔王メチカブラを出し抜き、ドミグラが時の巻物を手に入れて全ての歴史を我がものとするのに必要な量のキリを集め終わっていないため、それは防がなくてはならない。

 

『……!』

「仕方ありませんから、彼らが出て来るまで私が相手をしましょう。二対一ですが、気にしなくて構いませんよ」

 身構えるバーダックとトワ相手に、ロベルはそう余裕を隠さずに挑発した。

 

「おや、来ないのですか?」

「チッ……」

 そして、逆に余裕が無いのはトワの方だった。何故なら、彼女はロベルが強い事を知っていたからだ。何より、自分達には時間がない。そろそろ――。

 

「最近歴史改変者同士で争うのが流行っているのか? どうせなら俺も交ぜてもらおうか」

 ベジータが現れた。この歴史のではなく、タイムパトロールのベジータがだ。後ろには、トランクスもいる。

「退くわよ」

 トワは作戦を諦め、即座に撤退する事を選んだ。

 

 ルシフェルや他の歴史から連れて来た宇宙人達をこの歴史のベジータ達と戦わせた事で、キリは稼げている。ルシフェルに戦闘経験を積ませる事と、バーダックの洗脳の強度の確認も終わった。そしてベジータの抹殺は、元々上手く行くとは考えていなかった。もし成功すればラッキーだとは思っていたが、これ以上欲をかいて、タイムパトロールとロベル相手に三つ巴の戦いをするのは、リスクが大きすぎる。

 

 

 あの世にいるミラを回収し、逃げるべきだ。そうトワが判断するのが一瞬でも遅れていたら、彼女達は無傷で逃げられなかっただろう。

 

「あら、彼女達を追わなくてよろしかったのですか?」

「フンッ、貴様を残してか? 冗談じゃない」

 何故なら、ベジータとトランクスがロベルを警戒するために逃げるトワ達を追わなかったからだ。

 

「私はこの場では敵ではなかったのに。あなた達が遅刻するからこうなったに過ぎません」

「それは、俺達は地球に注意を向けていたから、まさかこの歴史の父さん達が、それも地球に向かう途中で狙われるなんて……」

「トランクスっ! 余計なおしゃべりはするな、こいつも敵だと言う事を忘れるなよ」

 

「刺々しい事。ですが、すぐに私達の関係を改善する事も出来ます。あなた達がドミグラ様の提案を――」

「断る!」

 ベジータに言葉を遮られたロベルは、苦笑いを浮かべると抱えていた意識のないラディッツを彼に向かって蹴飛ばした。

 

「それは残念。次に会う時までに気が変わっている事を期待します」

 そして、ベジータがラディッツごとロベルを攻撃しようとして時の界王神に止められている内に、ロベルは背後に開いた空間の門を通っていずこかへと消えた。

 

「チッ! まさか他の歴史でもこいつに足を引っ張られるとはな」

「と、父さん、そんな乱暴に……」

「こいつも一応サイヤ人だ。この程度では死なん……はずだ」

 

 ラディッツを適当に地面に転がしたベジータは、周囲を見回しこの世界の自分とナッパの気がまだある事を確認する。

「おい、カカロットの方はどうなっている?」

『悟空なら、ついさっきまでミラと戦ってたわよ。トワが来てミラを回収していったから、決着はつかなかったけど』

 

 この場に居ない悟空は、あの世でミラと戦っていたようだ。

「あっちの方が当たりだったとはな。おい、さっさと帰るぞ」

「えっ? この歴史の父さんは放っておいていいんですか? だいぶ気が小さくなっていますけど」

「手当てしてやるわけにもいかんだろう。それに、他の歴史とは言え俺なら自分で何とかするはずだ」

 

 この歴史の住人であるベジータに、未来から現れた自分達が何かすると歴史改変になってしまう。危害を加えるだけではなく、治療を施すために仙豆を与えてもいけない。

『うーん、際どいけど何とかなりそうだから、ベジータの言う通り帰って来て、トランクス』

 

「分かりました。しかし、この人が悟空さんのお兄さん……あまり似てませんね」

『それにしても……この歴史のベジータ達が十年以上早く地球へ襲来しようとしているのって、ゲロが起こしたバタフライエフェクトじゃなかったのね。驚きだわ』

「さっさと帰るぞ! おい、早く門を開け!」

 

 怒鳴るベジータに急かされて、時の界王神は慌てて門を開いた。そして、タイムパトロールのベジータがこの歴史から立ち去ってしばらく経った後、砕けて崩れた岩からこの歴史のベジータが姿を現した。

「はぁ……はぁ……何が起こった?」

 岩を動かして地上に出て来たベジータの状態は、満身創痍だった。頭から血が流れており、今にも死にそうに見える。

 

「くっ、ラディッツとナッパは……生きているな」

 画面がひび割れているスカウターで何とか二人の反応を拾うと、ゆっくりとだが空を飛び、まず近くにいたラディッツの下に降り立つ。

 

「おい、ラディッツ。……手間を掛けさせやがって」

 声をかけても意識を失ったままのラディッツを背負って、今度はナッパの下に飛ぶ。

「ベジータ……あの仮面野郎は……?」

 すると、ナッパは意識を取り戻していた。しかし、動けないのか倒れたまま立ち上がろうともしない。

 

「知らん、気が付いたらどちらも姿を消していた。スカウターに反応もない」

「そうか。俺達を殺したと思い込んで、どっかに行っちまったようだな。へへ、詰めが甘いぜ。

それより、ラディッツは……?」

 

「安心しろ、息はある。俺がこの中では最も傷が軽いようだな」

 そう言いながらベジータはナッパ、そしてラディッツの懐を探り、リモコンを手に取るとアタックボールを遠隔操作で呼び寄せた。

 

「す、すまねぇな、ベジータ」

「ああ、気にするな。行き先は地球に最も近いフリーザ軍の基地に設定した。生命維持装置を使うのを忘れるなよ」

 そしてまずはナッパの巨体をアタックボールの中に詰め込んで発進させる。

 

 次にラディッツ。こちらは意識がないため、生命維持装置までベジータがセットしてやる。

「チッ、この借りは必ず返してやるからな」

最後に自分がアタックボールに乗り、行き先をセットする。そして生命維持装置を起動すると、目を閉じた。脳裏に、仮面を被った男の姿を思い描いて。

 

 何のつもりかは知らないが、自分達に止めを刺さなかった事を必ず後悔させてやる。

 

 

 

 

 

 

「ゲロちゃーん、言われた通り人工衛星に色々つけたよ~」

『マロン、テレパシーで話している間は、口を動かさなくてもいいんじゃぞ』

「分かってるけど、こうしている方がお話してるって感じがするじゃない?」

 

 春の足音が近くまで迫りつつも、冬がまだ居座っている頃。この儂、天才科学者のドクター・ゲロは、マロン達に手伝ってもらって人工衛星の改造を行っていた。

 普通なら宇宙に人を送るのは大変な苦労と金がかかるが、宇宙空間で活動可能な人造人間であるマロン達は宇宙に行くのに宇宙船を必要としない、空に向かって思いっきり飛べば、それで十分だ。また、地球に帰還するのもゆっくり降りてくればいい。

 

 宇宙に持って行く物品は、ホイポイカプセルにして持って行けば荷物にもならない。実に経済的だ。

 

『まあ、そうじゃな。内緒話をしている訳でもないし』

『ドクターって、結構あたし達に厳しいようで甘いわよね』

『ランファン、精神と時の部屋の食事の時は鬼だの悪魔だの言っていた気がするが?』

 

『そりゃあ、超神水がきつかったんだもん。仕方ないじゃない』

『良薬口に苦し。そこは諦めてくれ』

 そんな人造人間達に頼んで進めているのは、儂が地球の軌道上に浮かべた監視衛星に、光学迷彩装置を実装するための作業だ。

 

 これが完了すれば、一見すると地球は無防備な惑星に見えるはずだ。ベジータ達も気が付かずに降りて来てくれるだろう。

 まあ、現在進行形で地球を観察している者がいる場合は、作業している所が見えるはずじゃから無意味だが。

 

「しっかし、宇宙を生身で泳ぐってのは不思議な気分だな。無重力ってのは落ちつかねぇ」

「トーマ、さぼってないでさっさと済ませな」

 二か月ほど前に人造人間として復活したトーマとセリパも作業に加わってもらっている。

 

「おうよ。爺さん、これでいいのか?」

『うむ、筋が良いぞ』

「ところで爺さん、その恰好……やっぱりフリーザ軍の兵士みたいだな」

 

 ちなみに、儂もブリーフが開発した新型の宇宙服を着て作業に加わっている。

『ふ~む、確かにそうじゃな。ヘルメット以外はほぼ戦闘服じゃし』

 新型の宇宙服の外見は、ヘルメットにフリーザ軍が採用している戦闘服とアンダーウェア、そして手袋とブーツというものだ。

 

 原作のナメック星編で、悟飯達がナメック星に降り立った直後に現れて神様の宇宙船を破壊し、その後あっさりと悟飯とクリリンに倒されたフリーザ軍の兵士の片方がしていた格好とほぼ同じだ。

 従来の宇宙服と比べ物にならない程動きやすく、このまま戦闘が出来るほど頑強に作られているのだ。

 

 ただ、見た目がフリーザ軍の兵士なので、傍から見ると誤解されるかもしれんな。

「ところで、あたし達の次の人造人間は誰になったんだい?」

『13号はシルバー大佐の予定だ。まだ改造は始めておらんが』

 

 諸々のトレーニングを終えた結果、ブルー大佐はフリーザ軍の兵士と戦えるぐらいになったので、まだ戦闘力1千未満のシルバー大佐とバイオレット大佐を優先して人造人間にする事になった。

 そして、トーマで得た男性を人造人間へ改造する技術を地球人ベースでも試すべく、シルバー大佐に決定したのだ。

 

「ベジータ王子が来た後で改造って、時間はいいのか?」

『問題はない。どうせ今から急いでも、ベジータ王子が来る頃には間に合わんからな。一度儂とシルバー大佐が死んで生き返った後、精神と時の部屋を使えば間に合うが、部屋の中で不測の事態が起こったら事だからな』

 

 精神と時の部屋に機材や薬品を持ち込んでも、不測の事態が起きて部屋の中に無い物が緊急に必要になった場合、危険だ。部屋の外で一分経つ間、中では約六時間過ぎる計算になる。とても緊急事態には間に合わない。

 何より、ベジータ達と戦闘になったとしてもそこまでしなくても対処出来る。そして、シルバー大佐の改造を急いでも、それでフリーザやクウラを倒せるという確証もない。

 

『それに、コレンに提供してもらったサンプルやデータの解析を進めて改造に活かしたい』

 ナメック星のドラゴンボールで復活した女性サイヤ人、タロの恋人のコレンがエリート出身だったため、儂はさっそく彼女に大猿化実験を付き合ってもらった。

 

 これまでは大猿化しても理性を保てるサイヤ人のデータがベジータ王しかなかったが、コレンのデータ、そして細胞を手に入れた事で研究を大きく進める事が出来た。

 これでシルバー大佐が13号へ改造が終わった時、大猿化しても理性を保っていられるようになるかもしれん。

 

「じゃあ、俺達もベジータ王みたいになれるのか?」

「あたし達の改造は終わってるんだし、無理じゃないかしら?」

『大猿化後も理性を保てるメカニズムが判明すれば、何か手が見つかるかもしれん』

 

「出来るんだ。でも、それってもう一度脳改造しなきゃいけなかったりする?」

『それは時間がかかるから、何らかの装置を装着するか、出来れば薬剤を服用する形で仕上げたいと思っておる』

 装置は破壊される危険性があるが、薬剤は服用して体内に吸収されれば解かれる可能性はないからな。

 

 ちなみに、他の研究も進めている。

 テラフォーミングは火星の本格的な調査を無人探査機で進めている。また、火星の地軸を安定させるための人工の月と、火星の冷えて固まっているマントルを再び熱して地球のように活性化させるための装置の設計を進めている。

 

 人工の月は、重力トレーニング室で使用している重力発生装置を改造して使う予定だ。地球の数百倍もの重力を発生させられる装置なら、月の代わり位難なく果たせるはずだ。

 また、マントルを熱するのには永久エネルギー炉を使用する。惑星一つ難なく滅ぼせるエネルギーを作り出す炉なら、惑星の核を温められるだろう。

 

 後は大気と土壌だが、マントルを活発化させて地中にあるという氷を溶かし火星の海を復活させ、人工超聖水発生装置を完成させてからになるだろう。

 

 それと人工眠り姫の開発も進んでいる。今年中には指先程のサイズの眠り姫を作れそうだ。

 

 また、サイヤ人が増えた事で食料問題が頭に過るが、それも食料工場の研究開発が進んでいるので大丈夫だ。コリー博士とブルマの尽力によって、恐竜肉を含めたあらゆる家畜の肉を培養できるようになった。魚肉もまだ数種類だが、可能だ。

 もちろん野菜も工業的に栽培出来るようになっている。

 

 これによってサイヤ人がいくら増えても、工場を増やせば食料には困らない体制が出来つつあるので、問題ない。……地獄のサイヤ人全員が突然生き返りでもしない限りだが。

 

『あ、ゲロ、ちょっといい? あなたの歴史のベジータ達の事なんだけど――』

『これは時の界王神様』

 そうこうしていると時の界王神様からの通信が入り、儂は驚くべきニュースを知った。

 

『なんと! ベジータ王子達の襲来が早まったのは、儂が原因ではなかったのか!』

 てっきり儂が起こしたバタフライエフェクトによるものだと思っていたが、トワが裏で糸を引いていたようだ。

『そうだけど、なんで王子呼び?』

『ベジータ王と区別をつける為です。

 とはいえ、結局ベジータ達が地球に来る事に変わりはないと?』

 

『ええ、まさか止めるよう説得する訳にもいかないしね』

 ベジータ王子達は地球へ向かう途中でトワ達の襲撃を受け、瀕死の重傷を負ったらしい。しかし、引き返すのではなく地球に最も近い基地へ向かっているようだ。

 

『では、ベジータ王子達が地球へ来た時はタイムパトロールの協力をお願いしますぞ』

『もちろんよ。あなたも無茶をしないように……どうせ無茶をするだろうから、もういいわ』

『ははは、ご理解いただけて何よりです』

 

 ベジータ達の襲来にトワが関わっているなら、彼らが地球に着いてからも何か仕掛けてくるのは確実だろう。その時は、トーマ達がいくら強くなっていても心もとない。タイムパトロールの協力が必要だ。

 

「さっきから話しているのは、時の界王神って神様か?」

『うむ。バーダックを救出する機会が、ベジータ王子が地球に襲来してきた時にあるかもしれん』

 バーダックチーム完全復活の日も、近いかもしれん。

 

 

 

 

 

 

 その頃、銀河パトロールではジャコとその同僚が驚愕していた。

「おい、サイヤ人が三人もいるぞ!」

「それにこの女は何者だ? 地球人か?」

 

「地球人は生身のままでは宇宙空間で活動出来ない。それに、こんな尻尾が生えている地球人を私は見た事がないぞ!」

「こっちにいるのはフリーザ軍の兵士じゃないか? 奴らの戦闘服を着ているぞ」

 

 数か月前から地球を監視していた彼等は、監視衛星を改造している者達の姿をはっきりと捉えていた。

 トーマとセリパ、そしてランファンを三人のサイヤ人、マロンを謎の宇宙人、そして宇宙服を着たゲロをフリーザ軍の兵士だと一部以外は誤解して認識していた。

 

「見ろっ、衛星が消えていく……! 光学迷彩だ!」

「馬鹿な、私が行った時は地球にそんな技術はなかったぞ!」

 ジャコ達が見ている中、監視衛星が消えていく。銀河パトロールの最先端技術によって作られた映像機器を使っても、姿を捉える事は出来ない。

 

「そうか。なら、この十年程で技術を進歩させたとは考えにくい。やはり、地球はフリーザ軍に侵略されていたと見るべきだな」

「そうか、侵略されてしまっていたのか」

 

 ジャコは脳裏に世話になった地球人、大森博士やブリーフ博士の事を思い浮かべた。彼らには恩があるし、出来れば助けてやりたいとは思うが、死にたくない。監視衛星がある以上、こっそり地球に降りて救出に行くのも難しい。

 何より、銀河パトロールの方針としてフリーザ軍と正面から事を構えるのは避けなければならない。

 

「悪いが成仏してくれ」

「いや、前に見た映像を見る限り、地球人は皆殺しにされていないようだった。お前の知り合いも生きてるんじゃないか?」

「む、それもそうか」

 

 こうして銀河パトロールは、地球をフリーザ軍に侵略された星だと判断し、手出ししない事を決定したのだった。

 

「こうなると、映像に映っていたナメック星人がいるナメック星も怪しいな」

「探査機を送ってみるか」

 




 まだ地球にはつきませんでした(汗



〇仮面の魔族ルシフェル

 魔神城崩落の再、実はトワに回収されていたルシフェル。孫悟空やゲロ、そしてウーロンを含めた地球人に復讐するために仮面を被りトワの手駒となった。

 ベジータの抹殺にまずルシフェルを使ったのは、彼に戦闘経験を積ませるため。そのため、キリでの強化は3万程度に抑えられている。
 また、仮面を被っているのは陽から目を守るためで、洗脳されている訳ではない。

 その力は戦闘力に換算して3万。ベジータを上回っていたが、戦闘経験とセンスの差が大きく、一方的にやられてしまった。




 -SIN-様、名無しの過負荷様、ロイク様、佐藤東沙様、是非様、ずわい様、辻井真夏様、PY様、ヴァイト様、酒井悠人様、gsころりん様、mnsk様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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