個性「魔轟神」 作:グリムロ
結局私は孤児院に引き取られる運びとなった。そこでは幼児から高校生まで幅広い年齢の子供がいて、高校生などの高学年は個室、それ以下は数人で一部屋を使うそうだ。
さて。孤児院で暮らし始めてわかった事であるが、高学年の面倒見が非常に良い。まさに兄、姉のように接してくる。それはありがたい事ではあるが、一人の時間が作れないというのはなかなかに問題であった。
そこで私は深夜に相部屋の子たちが寝たのを確認して、こっそりと部屋の窓から抜け出し、アシェンヴェイルに運んでもらいとある海岸まで来ていた。この海岸、海流の関係で漂着物が多く重ねて不法投棄も横行しなかなかのゴミ山を築き上げている。
「さて」
月の光のもと、私は冷蔵庫をぽんと叩いた。
「オールマイトは、弱体化しても冷蔵庫を余裕で潰せる。パンチで上昇気流を起こして天候を変えることもできる。私は原作をはっきりと覚えてないけど」
「……流石に天気を変えるのは無理だ」
「いや、そこまで求めてないから、大丈夫。とりあえず、そこの冷蔵庫殴ってみて」
アシェンヴェイルは無言で拳を振り抜いた。バゴン!という音と共に冷蔵庫がひしゃげる。ううむ、
「力が強いのはわかったけど……どのレベルかわからないね。アシェンヴェイルって攻撃力1600じゃない?」
「そうだ。位階……レベルという表現が正しいか、とにかくお前の個性で呼べるのはレベル4以下。その中では俺は高い方だ」
「そっか」
仮に原作の弱体化オールマイトをアーミタイルと仮定しよう。攻撃力は1万、だいたいアシェンヴェイルの6倍くらいか。妥当な気がしてきた。
「で、上げる方法は」
「教えないと言っている筈だ」
「せめて手札が何かだけでも教えてよ」
「碌なことにならん」
強情である。
「にしてもアシェンヴェイルの相対的な強さがわからないなぁ。その辺のヴィランでも相手にしてみる?」
「やめとけ」
ここのところアシェンヴェイルには断られてばっかりだ。
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小学校、割愛。私の個性は「召喚」と偽っているが、見た目が恐怖感と威圧感満載なので人前で召喚しないようにしている。なので傍目に見ればただの悪魔っ子。十分個性的な見た目なので無個性と言われることもなかった。
強いて言うならば低学年の時は精神年齢の違いがキツかった。少年名探偵はあの頭脳でよく一年生の中に混じって授業受けられているなと思う。授業足し算引き算レベルなのに……。
中学校、大問題。同級生に緑谷出久がいた。
そもそもの話、私は彼と同じ年齢だとは思っていなかった。何故って……同じ確率の方が低いだろう。転生しました、で主人公と同じ年齢な方が難しいと思っていたが、やはり世界は私に厳しいらしい。なるべく関わらんとこ。
……そんな思いむなしく三年生で同じクラスになったのだが。この時にはもう諦めて普通に、むしろ手助けする方向で行くことにした。主人公の強化はそのまま物語の難易度低下につながるんじゃないかと思ったのだ。別に私は№1ヒーローを狙っているわけではないので、強敵は彼に頑張ってもらう方向でいこう。
「三年ということで、お前らも進路を考える時期だ。と言っても大体ヒーロー科志望だろうけどね!」
いまは進路志望調査の時間である。先生の声に沸き立つ周りに合わせて手を挙げてみる。と、先生が私の方を見て、
「ああ、そういや爆豪と
と言った。真陣は私の孤児院の名前だ。
「国立の!?」
「倍率もやばいんだろ!?」
「来栖ちゃんって個性なんだっけ?」
「うるせえええええ!黙れモブ共!」
そして最も騒がしい彼──爆豪君は私に指さして言った。
「お前にはぜってー負けねぇ!!!」
「……頑張って、ね」
「あああああああああああ!」
模試の成績上彼はいつも私に対してあんな感じである。そのあと緑谷君が雄英志望だと知ってさらにキレた。
授業が終わって、緑谷君がまた絡まれることを知っていたので私は先回りして降ってきた彼のノートをキャッチ。ついでにぱらぱらとめくってみる。ええ、これ十三冊目なの?この密度で?
「……すご」
「あ」
うっかり読み入ってしまったらしい、目の前には緑谷君がいた。
「……ごめん。落ちてきたので読んでしまった」
「あ、えと」
「はい」
緑谷君はぺこぺこと礼を言いながらノートを受け取り、すごい勢いで帰っていった。確かあの後オールマイトとの邂逅イベントがあるはずだし、これ以上引き止めないほうが良かっただろう。私も帰ることにした。
懐からカードを取り出す。
「あれが未来のスーパーヒーローだよ」
(信じられねぇな……お前がそういうならそうなんだろうが)
「あれで数か月すれば200㎏は運べるくらいの筋肉をつけるらしい」
(……待て。この世界の人間は体の構造がおかしいのか?)
「アシェンヴェイルもそのうち抜かされるかもね。一緒に鍛えてもらえば?」
(……攻撃力は固定だ、鍛えたところでどうもならん)
「てことは……ニセ筋?」
(お前年々遠慮を忘れていくな)
「長い付き合いだし。あ、ちょっとスーパー寄るよ。牛乳とか買わなきゃ」
(もう成長期は終わったと思うが)
「……遠慮なくなったのはアシェンヴェイルも同じだよね」
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「お願い……します」
緑谷出久は未だ滲む視界を強引に拭って、オールマイトの問いに答えた。その決意は早い。
だって、これはずっと思い続けてきた夢だから。
オールマイト(トゥルーフォーム)はニヤッと笑い、
「そうくると『あ』………ん?」
ここは別に秘密の部屋とかそういうのではなく、ただの路地である。故に、人が来る可能性は十分あることだった。曲がり角から現れて声を上げたのは、
「まままま真陣さん!?」
買い物袋を手に下げた出久と同じクラスの少女であった。
ようやっと原作に追いついた。正直たどり着くまでが一番きつかった。次回からもうちょっと原作キャラとの絡みが増えるはずです。
因みに五巻まで単行本買いました。なので少しだけ情報が増えました。
どうでもいい話ですが、皆さんは学校にテロリストが来て自分が敵をボコボコにする妄想をしたことありませんか?作者はしたことあります。
では、ボコボコにしたそのあとの話、事後処理や後日譚を考えたことあります?
私はないです。結局のところ、導入だけの妄想ばかりしているといざ小説を書いたとき設定だけできて着地点を見失いがちなんですよね……。オチを作る能力が鍛えられてない。
私はしょっちゅうこれなので見切り発車が多いんですよね。もう少しストーリー性のある妄想しとけばなぁ……!
弁明は以上です。
こんな作品に100以上のお気に入りや評価ありがとうございます。低評価は……よく見る顔なので気にしない方向で行きます。