個性「魔轟神」   作:グリムロ

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喜びの投稿


手札を一枚墓地へ送って

 私は踵を返し、離脱を試みた。

 

「お取込み中でしたか、失礼しました」

「STAYだ悪魔少女!」

「……ちっ」

「思ったより口悪いね君!」

 

 

 

 やせ細った金髪の男性、つまりはオールマイト(トゥルーフォーム)は血を噴きながら私の肩をつかんで止めた。

 

「……何用、ですか」

「いやね? ……ぶっちゃけ、聞いてた?」

「何のことか、わかりかねます」

 

 

 ごまかす方向で行く。オールマイトの正体を知っているのは緑谷君一人ということにしておこう。何が楽しくて渦中に巻き込まれなくてはならんのだ。

 

 

「あ、あの!真陣さんはどうしてここに?」

「……緑谷君は、私の個性知ってるんだっけ」

「え?ええと……召喚、って聞いたけど」

 

 

 オールマイトが少し驚いたような顔をした。

 

「その見た目は個性じゃないのかい?」

「一部です。 ……実演したほうが、早いですか」

 

 

 

 私は懐から褐色のカードを取り出して、宣言する。

 

 

「召喚『魔轟神アシェンヴェイル』」

 

 

 

 赤黒い魔方陣がカードを取り囲むように現れ、そこから濃密な闇が吹きでる。あくまで演出だが、雰囲気があっていいと思う。

 闇が晴れると、そこには悪魔が立っていた。

 

 

「……!?」

 

 緑谷君が何やら驚いている。

 

「なんて威圧感だ、あんなのが自由に出せるのか!?いや真陣さんは名前を言っていた、ほかにも出せるとみていいかもしれない……なんて汎用性だ!あの羽が飾りじゃないならきっと飛べるんだろうし、パワーもおそらく体つきからして高い。けど何より気になるのは仮面の形、腕の羽、ベルト──どことなく、」

 

 

「オールマイトに、似てる?」

「……だって。その辺どうなの?」

 

 

「……知るか」

 

 その言葉に今度こそオールマイトは驚きを露わにした。

 

「自由意志があるのかい!? ……悪魔少女、君は、その個性を御しきれているのか?」

「それは──」

 

「それは、大丈夫だと思います」

 

 

 代わりに応えたのは緑谷君だった。

 

 

「今日だって、その、僕のノート拾ってくれたりして、その、優しい人、だと思うんです。それに雄英志望ですし」

「……そうなのかい?」

 

 

 

 

「……はい。お金、欲しいので」

「素直!!!!」

「じゃあ、失礼します。またね」

 

 

 

 

 さっさと逃げようね。わざわざ召喚したのはこのためである。普段なら目立たないように歩くなりなんなりしている、着陸場所選ぶのも大変だしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 自身の個性に背負われて、少女は飛んで行った。

 

 

 

「少年……君は悪魔少女の動機を知っているのかい?」

「あ、はい。真陣さんはええと、その、孤児院の出身なんです。うちの学校では見た目も相まってそれなりの有名人というか」

「なるほど……」

 

 

 目的のないヒーローなど存在しない。そしてその目的に懸ける思いが強いほど人は強くなるものである。だから、

 

 

「……彼女は強いぞ」

「わかってます。それでも、僕はやっと見えた夢をあきらめたくない」

「その意気だ!じゃ二日後の朝六時、この海浜公園集合ね」

「展開が早い!!」

 

 

 

 

(──だが、やはり気になる。話を聞いていなかった確証も無し、少し様子をみようか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 孤児院の近く、人通りのない路地に着地。アシェンヴェイルはカードに戻して、そのまま孤児院へ向かう道中に、見慣れない車があった。まあ、新しい子が来るならばそういうこともあるだろう。何も聞かされてはいないが、一先ずその脇を通り過ぎようとして──

 

 

 車のドアが開いた。そこから男の腕が伸び、私を強引に車に引っ張り上げる。その中には、

 

 

「野垂れ死んでなかったとは思わなかったわ」

 

 

 ──憎たらしいあのクソ女(母親)の姿があった。咄嗟に、

 

 

「アシェンヴェイルッ!」

「抑えときなさい」

 

 

 私の言葉に応じ召喚されたアシェンヴェイルは、即座に私の腕をつかんでいた大男を思い切り殴りつけた。しかし、

 

 

「そいつの個性は肉体増強。残念だけど貴方では無理」

「チッ……!」

 

 

 

 アシェンヴェイルの拳は受け止められていた。大男は私をクソ女に渡してから車外に降り立ち、アシェンヴェイルを分断する。つかみ合う二人の姿が見えた。

 

「さて。お前がまだ生きていると知ったときは焦ったけれど……よく考えたらそれはそれで利用価値があるものね」

 

 クソ女は座席に私を抑えつけるように私の首を片手で締めつつ、もう片方の手で私の瞼を抑えつけた。その眼が妖しく光る。

 

 

「お前はあたしほどじゃなくても見た目がいいから……捨てるよりは()()()方が得だったわ、どうして気が付かなかったのかしら。どうせまだ処女でしょ?付加価値も十分ね──はい、30秒」

「あ、あ」

 

 

 脳内に忘れたはずの親愛が渦を巻く。私の復讐心とそれがぶつかり合って、訳が分からなくなった。クソ、ああ、()()()()、いや、復讐を、それは、信じられる、

 

 

 

「あシェ、ん、ヴェイ、る、の、効果、を発動」

 

 外から、何かを悔しがるような声がする。

 

「──あああああ、クソがああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 ごっそりと何かが抜け落ちる感覚を覚えた。心が急激にその温度を下げ、目の前の女に憎しみしか覚えない。その横顔を見慣れた拳が撃ちぬいていく。アシェンヴェイルの体は赤黒く発光していて、その足元には血まみれの大男が倒れているのが見える。急に首を絞める手が離されたことで、私はえずいた。

 

「げっほ、ぐう、うえ」

「殺す」

 

「……だめ、私の、願いは」

「……………ああ」

 

 

 

 

 アシェンヴェイルはゆっくりと私を車から引っ張り出した。同時、クソ女を乗せた車が猛スピードで走り去る。運転手が見えなかったのは何かの個性かもしれないが……そんなことより、だ。

 

 彼の口元は憎々しげに歪められている。

 

 

 

「……何を捨てた」

「きっと、親愛。そっか、そういう効果だったんだね。手札っていうのは」

 

 

「……お前を構成する要素だ。つまりは、俺の能力は、一部だとしても『クルス』を捨てる行為に他ならない」

 

 

 アシェンヴェイルの傍に赤黒い魔方陣が生まれた。

 

 

「あくまで一部だから、個性は十全に発揮されない。直前に捨てたものを召喚するくらいが関の山だろう」

 

 

 

 魔方陣からは闇が噴出して、徐々に人の形をとる。それはアシェンヴェイルより細身な姿。

 

 

 

 

「捨てたのは親愛。それも特に母に対するもの。であれば、それを色濃く反映したやつが召喚される」

 

 

 

 闇が晴れて、姿を現したのは──

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして、になるわね。魔轟神が一柱、グリムロよ」

 

 

 

 

 現れた女性はその烏のような羽を広げ、私を抱きしめて囁いた。

 

 

 

 

 

「──貴女が捨てた愛情の分、私が貴女を愛してあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






因みに捨てたものは効果を使わない限り墓地から回収することは不可能です。




グリムロさんは多少のヤンデレ属性が付与される予定です。世話焼きお姉さんLv10にさらに「レベルアップ!」を使用した感じ。
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