約束をしてから二日という月日が流れて今、僕は約束の場所に向かっている。
総帥に確認もしたから教師の料理を生徒に食べさせたりするのは大丈夫らしい。だが、教師が一人の生徒だけを特別視するわけにはいかない。総帥からは「そこだけは分かっているな?」と聞かれた。
それは勿論、教師である以上は一人の生徒だけを過剰に評価する事はしない。そんな事をしてしまったらそれは教師と呼べない。
それと今は朝の5時だ。普段ならまだ毛布にくるまっている時間だ。二日前に茜ヶ久保と話し合ったがその時に時間を決めていない事に気付いた僕は次の日に急いで居場所を探し結果から言うと最終的には見つけて時間を決められた。まあ、見つけるためにかなり苦労をしたけど。
「こんな朝、早くからいるとはどうしたんですか?」
僕は急に背後から呼ぶ声が聞こえたために振り替えるとそこに居たのは……………司瑛士だった。
「君こそこんな時間にどうしたんですか?」
第1席はこんな時間に来なければならないのかと思ったけどそんな決まりは無かったはずだ。だとしたら何でほとんどの生徒が眠りについている時間にこんな場所に来ているんだろうか。
「…………少し野暮用があったもので……それこそ何で先生はこんなところにいるんですか?」
別に言って困るわけでもないし言ってもいいか。
「二日ぐらい前に茜ヶ久保から料理を食べて欲しいと言われてな。それの実行が今日でこの時間だからここにいるんだ」
なるべる教師っぽい喋り方で僕は返答をした。まだ、教師がどんな感じで生徒と話しているのか分からないから手探りだけとそれでもやってみた。
「………茜ヶ久保が先生に頼んだということですか?」
「…………まあ、茜ヶ久保から頼んできたと言うより俺からお願いしたの方が正しいのかもしれない」
記憶はうろ覚えだけど確か俺から食べさせて欲しいみたいなことを言った気がする。
「先生から興味を抱いて声を掛けたというですか?」
「いや、茜ヶ久保に極星寮まで案内してもらってたんだよ。その時に少し話して今の状況になったんだ」
「そうですか……………その場に俺が同伴しても良いですか?」
「その場とは?」
「先生と茜ヶ久保が料理を作る場所です。茜ヶ久保の料理はともかく先生の料理は数えられるぐらいしか口にした事がありませんから」
「別に良いんじゃないかな。茜ヶ久保に許可を取っているわけじゃないが見られて困るような事はないしな。それに茜ヶ久保から絶対に一人で来てくださいとは言われてないからな」
そんな感じで僕と司は第三調理室の前にいる。扉を開けてみるとそこには料理を作るのが万端であろう茜ヶ久保の姿があった。何で作るのか万端かと思ったかと言うとそれは実に簡単に言うとエプロンを着けて頭には三角巾が付けられているからだ。
茜ヶ久保は僕だけだと思っていたのか司の方を何でいるのという感じ見つめている。
「そこで司と会って話していたら来たいと言っていたから連れてきたんだか何か問題でもあるかな?」
茜ヶ久保は司の方に向けていた目をこちらに向けた。
「……………問題ない」
少し不満そうな顔をしてはいるが...そこら辺は見なかったことにしよう。
「それなら良かったよ。じゃあ、まずかはどっちから作る?」
「..私から作る。桜先生と司はそっちの方に腰を掛けて待ってて」
茜ヶ久保が指さした先には二つの椅子があった。俺はそこに腰を掛け茜ヶ久保の調理を見ていた。
僕が彼女の調理を見て素直に思った事は...きめ細やかで繊細だ。調理はその人の性格が現れたりするもので荒い感じの人がやれば料理も荒い調理法になるし逆に繊細な人がやれば料理は勿論、繊細な調理法になる。
それぐらい料理には心が現れるものだ。
そして茜ヶ久保の調理は僕が今まで見た料理人の中で最も繊細だと言っても良いと思う。それぐらいの調理を茜ヶ久保はしている。
さすが十席の第4席というべきかもしれない。
僕は茜ヶ久保の調理を見ていると...時間が過ぎるのがとても早く感じ気付いた時には調理を初めて一時間という時が流れていた。
そしてどうやら彼女も
「完成した」
僕は茜ヶ久保が僕の前に持ってきた皿の上に持っている料理を見て驚いた。その皿の上に置いたのは...ロールケーキだった。僕が驚いたのは..その料理の見た目だ。
普通のロールケーキと違って..所謂、デコレーションが凄い。こんなにも見た目で食欲をそそられるのはいつ以来だろう。これが今の第4席の力と言うことか。
「では、いただきます」
僕はフォークを持ちロールケーキを口に運び噛むと中に包んであるクリームが一気に口に広がっていく。クリームの甘さとスポンジの触感はうまくマッチしている。スイーツで見た目と味がここまで良いと思ったのは久しぶりだ。
「どうかな?」
「...うん、美味しいよ。ここまでスイーツとしての完成度が高いのはさすがとしか言いようがないよ。さすが第4席としか言いようがないね」
「...良かった....それじゃ、次は桜先生が料理を作ってください」
茜ヶ久保が急かすように僕に言って来た。急かせすぎじゃないか.....。まだ僕はロールケーキを全部食べきれていないんだけど。
「もう少しゆっくり食べさせて欲しいんですけど....」
「早く作って!ももは桜先生の料理を楽しみにしているんだから」
「僕も先生の料理を食べるために態態、来たんですから」
司も隣に座っている僕に向かって言って来た。こいつらは僕が食べているのが見えないのかと思ってしまうぐらいだ。
「はぁ....仕方ない。作るとしましょうか。僕の食べかけは残しておいてね。自分の調理が終わったら食べたいから」
さて、どんな料理を作るか。正直な事を言うと何も考えてなかった。どんな料理にするのか...いや、まずはどのジャンルの料理を作るか。
僕の得意分野は和食だが大抵の料理なら何でも作れる。だから別に和食にする必要もないが..茜ヶ久保の料理を食べてしまったからな。あの料理にも引けを取らない料理を出さなくちゃダメだから..やっぱり和食にしますか。
じゃあ、次に和食の何を作るかだ。和食って言っても天ぷらや茶わん蒸し....いや、汁物でも良いかもな。ヤバいな。考え始めるとどんな料理にするか悩んでしまう。あまり時間を掛ける訳にはいかないし調理時間の事も考えるとそろそろ取り掛からないといけないな。
「..............やはり、これにするか」
僕はどの料理にするか決めてすぐに料理に取り掛かった。
「やっぱり先生は凄いな」
「司は桜先生の料理を食べた事ある?」
「まあ...何度かね。最初、会った時は驚いたけどやっぱり...先生は日本で数店しかない..三ツ星を貰った「SAKURA」の総料理長兼創業者。俺も何度か食べに行ったことあるんだけど...よく憶えているよ。あそこまで美味しい料理を食べたのは初めてだったから」
「私は..最初、雑誌で桜先生の料理を見てこんな料理を作れる人が居るんだと思った。それからは桜先生が載っている雑誌は発売日に買ったし「SAKURA」にも行った。それから私の目標は彼に美味しいと言ってもらう事だった」
「だとしたらそれは今日、叶ったんじゃないか」
「うん。だから美味しいと言ってくれた時、この世の終わりでも良いと思えるくらい嬉しかった。だけど今はこんな近くに憧れの人がいるんだから...本物の料理をもう一度食べてみたい」
桜は集中していて気付く事は無かったが..離れたところで二人はこんな感じで会話をしていた。
「終わったよ....では召し上がれ」
僕は自分の作った皿を茜ヶ久保と司の前に一つずつ置いた。
「....茶わん蒸し」
「そうだよ。僕の得意分野の中で一番作ったと思う料理だ。君達は知らないだろうけどかなり昔に自分の店を持ったことがあってね。その店で一番の人気だったんだ。だから作ってみようと思ってね。茶わん蒸し何て何年も作ってないから味がどうか分からないけど...」
自分で自分の朝食とか夜食を作る事はあるが茶わん蒸しみたいに手間のかかる料理は店の時以外では作ろうと思わないから作らない。だって作るのに僕のは一時間近く掛かる。一時間も一品のために掛けれるほど僕も暇ではないから。
「では、いただきます」
「いただきます」
二人は茶わん蒸しをスプーンで掬い口に含むと...とても幸せそうな顔をした。それを見て久しぶりに僕は..人に料理を振舞って良かったと思った。最初は茜ヶ久保との約束も破棄にしようかも悩んだが今になって思えば破棄しないで良かった。
「美味しい!桜先生」
「やっぱり先生の料理は他と比べ物にならないくらいうまい」
「そう言ってもらえると嬉しいね。作ったかいがあったいうものだよ。こんなもんならまた言ってくれれば作ってあげても良いですよ」
毎回、茶わん蒸しを作るのは面倒だけどもっと簡単な料理なら作る事も出来るだろうしな。
「本当?」
「本当だよ。まあ、あんまり頻繁には無理だけどね」
もう人に振り舞う事何てないと思っていたがまさか、生徒に料理を振舞うなんてな。こんな事予想もしていなかった。
そんな話をしながらしていると時は進み、もう生徒が来る時間との事で解散をした。
次からは元の話に戻ります。
番外編としてその人の視点の話を一つ書こうと思っているんですがどのキャラが良いと思いますか?
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四宮小次郎
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乾日向子
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水原冬美
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司瑛士
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木久知園果
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茜ヶ久保もも
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小林竜胆
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薙切えりな
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堂島銀
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薙切アリス
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幸平創真