久しぶりの外は残念ながらもう真っ暗。時刻は20時35分。場所は操車場。とにかく遠い遠い。起きたばかりだし銃弾で撃ち抜かれた腕は痛いしで体はフラフラだが不思議と気持ちはしっかりとしていた。自分のやるべきことが決まっていて守るべきものがあることが幸せだと思える。あまり能力は使いたくなくてとにかく全力疾走していたらボロボロの上条当麻がいた。
『どうしたんですかそんな恰好でこんなとこで…』
言い終わる前に肩を掴まれた。
上「頼む!第十七学区の操車場まで連れってってくれないか?緊急事態なんだ、夜凪なら能力で…」
『奇遇ですね。私もいまからそこへ向かいます。右腕にしっかりつかまってくださいね」
理由は知らないが彼の右腕はきっと役に立つ。ここで置いていく手はないだろう。彼の腕をとり目指すは彼がいるところ。ふっと意識を集中してそれが切れた時にはもうすでに操作場の中だった。
上「お前の能力は便利なんだな…。ていうかずっときになってたんだけど腕どうしたんだ?血だらけだぞ?てか夜凪は何をしにきたんだ?」
質問に答えている暇はない。一方通行やシスターズの姿は見えない。おそらくもう実験は始まっているはず。手遅れになる前に見つけなければ。
『大切な人を止めに来ました。当麻にお願いがあります。シスターズをみつけたら彼女を連れてすぐにここからでてください。なるべく人通りの多いところへ。
その間一方通行は私が止めます。大方実験を止めに来たのでしょう?事情は知りませんが私に任せてくれませんか。』
上「それじゃダメなんだ。俺がLEVEL0がLEVEL5を止めることに…」
彼はそこまで言いかけて思い出したようだ
『私はLEVEL0です。』
とはいえここで私が一方通行を倒すのは少々面倒なのだ。だから
『でも美琴のためにここにきたんでしょう?それなら当麻が片を付けるべきなのかなって思うのでちゃちゃっとやってくれてもいいですよ。
とにかく最優先はシスターズの保護。それが完了するまでは私がサポートします。』
ドーォン!!
大きな爆発音が響き渡った。私たちの目の前で。
一「この場合、実験てのはどォなっちまうんだァ?こンなとこに部外者連れ込んでんじゃねェぞ」
『もうこの実験を知ってしまった以上部外者ではないですよ。くだらないことをしないでください一方通行。私が来てしまっては勝ち目もないんですし引き下がってください。』
当麻に目で合図を送りシスターズのもとへと向かわせる。
『心配しなくてもきちんと私が処理します。私だってあなたと戦いたいわけじゃ…』
一「テメェは何をぶつくさいってやがるんだ?お前なんか勘違いしてねェか?」
彼の能力の発動とともに大量のコンテナが飛んでくるすべてを速度変換しても一つずつの大きさが大きさなので落ちた時の衝撃はなかなかのものだった。
きっと
『一生これじゃ埒が明かないんですよ。すぐに終わりますからじっとしててください。』
『っ…!?がぁぁ!』
頭が割れてしまいそうなほどの痛みと熱さが突然私を襲った。やっぱり副作用はあるんじゃないか。まともに使えないじゃないか。
一「あァ?故障か?研究者にいじくられすぎて動作不良ですかァ?
そのまま彼に蹴られコンテナに体を打ち付けた。右腕の傷が開いているのを感じる。痛いのに。辛いのに。
溢れ出す血液と荒い呼吸だけがちゃんと私が生きていることを示してくれているようでなんだか感情が不安定になってきて。ほんの少しの守りたいものすら大切にできない自分がもどかしくて。
彼はゆっくりと近づき私の頭を軽くつかみ耳元に顔を寄せた。
一「月乃はこっち側じゃないだろうが。もう戻れ。」
私は怖いんだ。いつか大好きな人たちから拒絶されることが。守れなくなって失ってしまうことが。それならば強くなるしかない。痛みも悲しみも辛さも全て。私が背負えるようになればいい。
まずはこの力を使いこなすことから。
『ねえ一方通行。私が守るからこのまま眠ってください。大丈夫です。もう私に任せてください』
体の中から強い力が湧き上がってくるのを感じた。手をかざさなくても目を合わせるだけで時間が止まり彼の脳内演算が止まる。
その隙に常備している催眠薬を彼に打ち込む。能力を使っても歪みも痛みも感じなかった。もう何も感じなかった。あとはもう当麻と美琴に任せてしまおう。
私のすることはここにはない。きっと私はこれから多くの人々に狙われる。学園都市内の邪魔者として、珍しい実験体として。
どれにどんな風に対抗しても言いなりになってももう今までのようなきれいな生活も幸せも戻ってこないだろう。
それでも守りたいのだ。自分がどこに向かって歩いているのかすらわからなくてだんだんと意識が朦朧としてきた。
案外出血が多かったのか、能力の使い過ぎなのかただの精神が不安定な状態なのか。理由なんてわからなかった。
遠のく意識の中でふと目元にあたたかいものを感じた。それは私にはとても似合わない透明で綺麗なものだった。
遠くで誰かの声が聞こえたのを最後に私は意識を失った。