咲-Saki (仮面ライダー)電王戦!   作:ツヨインジャー

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『須賀京太郎』。彼は清澄高校麻雀部に所属する男子生徒である。彼はいつも雑用を任されてばかりあり、部内ではあまり良い扱いを受けていない。さらには『咲-Saki』読者からは「背景」だの「空気」だの揶揄されることもある。これはそんな不遇な彼が体験したある不思議な出来事の記録である。



第1話 清澄に俺、参上! (前編)

ここは時の列車『デンライナー』。これは時間を移動する正体不明の列車であり、運行目的や終点などは謎に包まれている。その列車の食堂車には6人、いや正確に言えば2人と4匹の影が見える。つまり半数は人間ではない。まず、食堂車のはじっこで読書にふける中年男性とカウンターのような場所でコーヒーを淹れる準備をしている奇抜な服装の女性の姿が確認できた。そして、食堂車の中心では明らかに仮面ライダーの怪人にしか見えない4人組(?)がテーブルを囲んで何かをしていた。よく見るとその4人が持っているのは『麻雀牌』である。

 

「ツモ。立直、タンヤオ、平和、ドラ3、12000点だね。」

 

青い怪人が手牌を倒した。

 

「また亀公のあがりか…これで俺達は…ゲッ!もうみんな点数が3ケタじゃねぇか!」

 

赤い怪人が戦況に驚いている中、となりで黄色い怪人が爆睡していた。

 

「zzz…」

 

「ねーえ、僕もう麻雀飽きた!難しいし、カメちゃんばっかり勝っちゃうもん。」

 

背伸びをしながら紫色の怪人が愚痴をこぼす。

 

「やれやれ。デンライナーの奥から見つけてきたけど、やっぱりこんな頭使う遊びは僕以外向いてないみたいだね。」

 

この怪人達は決して正義の味方の敵ではない。かつて、『仮面ライダー電王』となり、未来を改変しようと目論む怪物『イマジン』と戦った者たちなのである。最も彼らも厳密に言えばイマジンなのだが。

 

「ナオミちゃ〜ん。コーヒー。」

 

カウンターに向かってコーヒーを注文した青い怪人。彼の名は『ウラタロス』。

 

「ちっ。馬鹿にしてんのかこの野郎。」

 

ふてくされて椅子に持たれかかっている赤い怪人。彼の名は『モモタロス』だ。

 

「zzz…どすこい…zzz…」

 

さっきからずっと寝ている黄色い怪人。彼は『キンタロス』。対局中に途中で眠ってしまったのだろうか?

 

「ふんふんふ〜ん。できた!」

 

鼻歌を歌いながら麻雀牌でピラミッドを作って遊んでいる紫色の怪人。彼は『リュウタロス』である。以上が、この列車の乗客達である。

 

「あれ?ナオミちゃん?」

 

コーヒーを頼んでもいつものような元気な返事が聞こえて来ない。ウラタロスはカウンターに目をやる。そこには信じられない光景があった。

 

「ナオミちゃんがいなくなった!?先輩、ナオミちゃんが…!」

 

しかし、その隣ではモモタロスがあ然としていた。

 

「オーナーが消えた…?さっきまでいたのに!?」

 

何とオーナーとナオミが2人揃ってま

るで蒸発したかのように消えてしまったのである。動揺する2人にさらなる異変が襲いかかる。突如、デンライナーが激しく揺れ出した。

 

「うおあっ!何だ地震か!?」

 

「とりあえずテーブルに捕まろう。」

 

「あー、僕の麻雀ピラミッドが壊れた!」

 

「なんや!?目が覚めたぞ!」

 

4人各々がリアクションを取るのと同時にデンライナーの揺れは収まった。だがしかし、ホッとしたのはつかの間であった。

 

「何だ…?電車がピクリともうごかねぇぞ!」

 

モモタロスはあまりの非常事態続きに叫ぶしかなかった。これが、異空間で起きた事件である。

 

 

 

 

 

そしてここはところ変わって『清澄高校』。麻雀部の部室である。

 

「はい、須賀君。今日も買い出しよろしくね。」

 

当たり前のように雑用を任せる、清澄高校麻雀部部長『竹井 久』。そして、久に買い物袋を渡されている男子生徒がのちに不思議な現象に遭遇することになる『須賀 京太郎』である。

 

「部長…たまには咲とかに頼んだらどうですか?」

 

渋々袋を受け取りながら部長に提案するが、もちろんだめもとだ。

 

「今日は咲と和はまこの喫茶店の手伝いしてるわよ。だから、須賀君にしか頼めないのよ。よろしくね。」

 

いてもいなくても頼むだろ…と心で

つぶやきながら京太郎は部室を出た。出る直前に聞こえてきた「おい、京太郎。ついでにタコス買ってきてほしいじょ!」という優希のパシリはさすがにスルーした。

 

しかし、買い出しを済ませた京太郎にこの後、思いもよらない悲劇が襲いかかるのだった。

 

 

 

 

 

 

「場面転換!デンライナー!」

 

「先輩、変な決めポーズとってないでこっちに来て。」

 

ウラタロスはモモタロス達をデンライナーの先頭車両へ呼ぶ。

 

「ここに何があるんや?」

 

「みんな。大変なことになった。今、調べたんだけどデンライナーの動力が壊されてる。」

 

「なん…だと…?」

 

「なん…やと…?」

 

「うっそーん!?」

 

面食らったのも無理はない。こんなことは前代未聞だからだ。ウラタロスはとりあえず皆を落ち着かせ、これからどうするべきかを説明する。

 

「人為的に壊されたってことは僕達を狙ってじきに敵が攻めてくるはずだ。今はオーナーもいないから僕達だけで何とかするしかない。そこで、まずは電車を動かすために動力の部品に使えそうなものを車内から探そうと思うんだ。」

 

ウラタロスの説明に頷くキンタロスであったが、一つキンタロスは気になることを聞く。

 

「そういえば、デンライナーは今はどこの時間に止まっとるんや?」

 

「それなんだけど…わからないから誰か外に出て調べるしかないね。」

 

すると、窓の外を見ていたリュウタロスが声をあげる。

 

「みんな、見て見て!窓の外は森みたいだよ。」

 

皆がリュウタロスに言われた通り、窓の外を眺めると見渡す限りの木々が鬱蒼と生い茂っている光景が広がっていた。どうやらデンライナーはどこかの森に不時着したらしい。

 

「やばいぞ。いよいよここはどこか、今はいつなのかわからなくなってきたな。」

 

皆は顔を見合わせる。

 

「さて、誰が外に出る?」

 

「ここは…」

 

「モモタロスだね!」

 

「何でだよ!?」

 

モモタロスはテーブルを叩きながら立ち上がる。

 

「でも、先輩。こんな閉鎖空間で僕達と延々と機械いじりするなんて、先輩の性には合ってないと思うけどな。」

 

「だーも!わかったよ。外に出ればいいんだろ、出れば!」

 

モモタロスはイライラしながらも扉に向かう。

 

「あと、先輩。敵がデンライナーの近くに潜んでないかの確認もお願いしまーす。」

 

「きばってこい、モモの字!」

 

「あ、見て見て!窓にちょうちょが止まってる。」

 

三者三様の見送りの言葉を背中にモモタロスは扉を開ける。そして、20xx年の長野県にモモタロスは降り立ったのだった。

 

 

 

 

『20xx年、長野県。午前11時30分』

 

「よし。とりあえず一通り買ったな。あとは…タコスか…しょうがない。買わないとあいつがうるさいから買ってってやるか。タコス代は後で請求しよう。」

 

ぼーっと空を見上げながら歩いていると、上空を鳥が横切る。

 

「ん?うわ危なっ!?」

 

京太郎の頭上から鳥のフンが降ってきた。間一髪、避けることができたが、この後鳥のフンを食らった方が良かったような展開に発展する。

 

「ふー、危なかった。うわあ!?」

 

避けた先にバイクが迫ってきた。京太郎はそのままガンという音とともに目の前が真っ暗になった。

 

「す、済まない!大丈夫か、君?今、救急車を…」

 

どうやらバイクに轢かれてしまったようだ。京太郎を跳ねたライダーは携帯を取り出し、救急車を呼ぼうとする。そのとき、その様子を何者かが陰から見ていた。

 

(おーおー、ちょうど目の前に気絶してる体があるな。今の状態だと動きにくいからちょっと借りるぜ?)

 

気絶した京太郎を陰から伺っていたのは赤い怪人、モモタロスである。ちなみに京太郎が事故に遭った山道の奥地には何の偶然かデンライナーが停止している。

モモタロスは瞬時に京太郎に駆け寄り、憑依する。京太郎を跳ねたライダーは背を向けて病院に電話していたので、あからさまに目立つモモタロスだが気づかなかった。

 

「ヒャッハー!体を手に入れたぞ!」

 

「君!?動いて大丈夫なのかい?」

 

ライダーは突然の青年の復活に驚く。こころなしか、その少年の髪型がなぜか急にオールバックになり、瞳が赤くなっているのに違和感を感じたが…。

 

「うるせえよ、おっさん。今度運転するときにゃ気をつけな。」

 

京太郎、もといモモタロスに憑依されたのでM京太郎というべきか。そしてそのまま元気に走り去っていったM京太郎をライダーのおっさんは呆然と見つめるしかなかった。

 

 

「おーい、君。買い物袋忘れてるよ。まあいいか。」

 

ライダーのおっさんは京太郎が放置していった買い物袋を脇道に寄せて置いておいた。

 

 

 

 

かくして身体を手に入れたモモタロスは清澄高校麻雀部の不憫な男子生徒、『須賀京太郎』に憑依し、『M京太郎』となって清澄の町を徘徊していた。

 

「山を下りたら町があった。んで、町の住民は日本語でしゃべってる。ホッとしたぜ。ここは日本のどこかのようだな。まったく、異国のジャングルに不時着してたりとかしたらどうしようかと思ったな。」

 

そのとき、モモタロスは何かを感じた。それはイマジンが現れたときに決まって匂うもの。

 

「何だ…。嫌な予感がプンプンするぜ。どこだ?」

 

M京太郎は辺りを見回す。どうやら匂いを感じるのは…一軒の喫茶店だった。

 

「あれか。よし、ちょっくら探りを入れるか。あそこにもしかしたらデンライナーを壊した犯人がいるかもしれないしな。」

 

M京太郎は喫茶店に足早に近づいていった。

 

 

 

一方、ここは清澄高校麻雀部2年、『染谷まこ』の家が経営する喫茶店である。昔は雀荘だったのだが、今は雀卓が設置されている喫茶店となっている。そのため、所謂麻雀のできる喫茶店というわけである。

 

「というわけで。今日も手伝いよろしくな!」

 

まこはメイド服姿の2人の少女の肩を叩く。

 

「は、はい。がんばります。」

 

「はい。しっかり接客します。」

 

薄い茶髪でショートヘアの少女とピンク色の髪のツインテールの少女がそれぞれ客の応対に向かう。ショートヘアの少女の名は『宮永 咲』。現在、モモタロスに体を借りられている京太郎の幼馴染である。彼女は清澄高校の麻雀部に所属し、団体では大将を任されている。その強さに一部から「魔王」と呼ばれているとかいないとか。ツインテールの少女の名は『原村 和』。彼女も清澄高校の麻雀部所属で、団体では副将を務める。ネット麻雀界では『伝説』とまで言われている『のどっち』とは彼女のことである。

 

「おかえりなさいませ、ご主人様。」

 

和がお辞儀をする度に彼女の豊満な胸が揺れる。その光景に男性なら誰もが釘付けになり、笑みを浮かべるのだが、その中で1人不満そうな顔でコーヒーを啜る男がいた。ニットキャップをかぶり、黄土色のコートを着た目つきの悪いその男は、苛立ちの目で咲と和を見つめる。

 

(ちくしょう。あの小娘2人に惨敗しちまった。俺は社内では一番麻雀が強いのに…なんで何回やっても勝てないんだ!)

 

どうやら咲と和に負け続けて機嫌が悪いようだ。そのとき、男はコーヒーをまた飲もうとしたとき、あることに気づく。

 

「おい、コラ!コーヒーに髪の毛入ってんじゃねぇかよ!」

 

男は急に席を立ち上がり、近くにいたまこにクレームを言いにいく。

 

「も、申し訳ありませんでした。」

 

まこは頭を下げるが、男はまこを睨みつけて続ける。

 

「何だこの店はよ。サービスってもんがなってないな。あれか?麻雀が弱い奴には出てくるコーヒーも雑な物飲まされんのか!こっちは金払ってんだぞ!」

 

めちゃくちゃな言い分である。にもかかわらずまこは必死に平身低頭する。しかし、相手ははなから許す気がないように八つ当たりまがいのことを次々とまくし立てる。

 

「あの、ご主人様。どうか抑えてください…」

 

見かねた咲が荒ぶる男を宥めに行くが逆効果であった。

 

「うるせえ、あんたには関係ないだろ!引っ込んでろ!」

 

「きゃあ!?」

 

咲は男に突き飛ばされてしまった。しかし、地面に尻餅をつくことはなかった。なんと咲が倒れる前に誰かが抱きとめてくれていた。

 

「おいおい。喫茶店で暴れてんじゃねぇよ。かっこわりぃ。」

 

咲の目には清澄高校の制服とよく見知った顔の青年が写る。

 

「京ちゃん…?」

 

しかし、本当に京太郎なのか。咲は目を疑う。京太郎に酷似してはいるものの、髪型はオールバックで、瞳もカラコンをつけているのか赤い。だが、咲が混乱している内に逆上したクレーマーの男がM京太郎にずかずかと歩み寄る。

 

「なんだと!お客様は神様だろう。どうしようと俺の勝手だろうが!」

 

クレーマーの男はM京太郎に拳を振るうが、M京太郎はその腕を掴む。そして、不意を突かれて前のめりになった男の鳩尾に膝を入れ、おまけに背中を肘で突いた。

 

「ぐわっ!くそ…覚えてやがれよ!」

 

フラフラとした足取りでクレーマーの男は喫茶店から出ていった。

 

「たくっ。歯ごたえのない野郎だぜ。」

 

ふと、M京太郎が目線を下げると目に涙を浮かべて「すごい!」と言わんばかりの眼差しで見つめる咲の姿があった。

 

「京ちゃん!私、すごく怖かった。ありがとう、助けてくれて!」

 

咲が感激したようにM京太郎に抱きつく。

 

「お、おい。お前…」

 

さすがのモモタロスも急に抱きつかれたら驚く。和も突然の京太郎の登場に目を丸くしていた。

 

「す、須賀さん?あなたは部長と優希と部室に残ったはずじゃないですか?」

 

そして、今度はまこが駆け寄ってきた。そして、M京太郎をじっと見つめ、こう言った。

 

「ははーん。さては部長に使い走らされたことの腹いせにここへ寄り道したな。どうせ目的は和のメイド姿じゃろ?」

 

 

しかし、M京太郎は全く話を聞かず、まこに向かってこう言った。

 

「あんた、この店の店員だよな?なら、何か怪しい奴を見かけなかったか?」

 

「はあ?急に何を言い出すんじゃ。わしが店員なのは京太郎はもう知っとることじゃろが。」

 

まこは明らかに困惑している。だが、M京太郎はそんなことはお構いなしに今度は咲に問いかける。

 

「何か怪しい動きをしていた奴をちらっと見かけたってだけでもいいから教えてくれよ。なあ?」

 

「今の京ちゃんが一番怪しいよ。」

 

咲は苦笑しながら突っ込む。

 

「まあ、とりあえず。今日は咲、和。今日はもう帰っていい。京太郎も連れてきな。」

 

まこの言葉に咲と和はメイド服から制服に着替え直す。

 

「では、失礼します。」

 

和がお辞儀をして、外に出ようとするが、咲がついて来ない。

 

「咲さん?何かありました?」

 

ふと、後ろを振り返ると咲とM京太郎のシュールな光景が飛び込んできた。

 

「やめて!みっともないよ、京ちゃん。」

 

「うるせえ!確かにさっきまでここが匂ったんだ。イマジンはもしかしたらどっかに隠れてるかもしれないんだよ。」

 

ゴミ箱を漁る京太郎とそんな奇行に走った幼馴染を止めようとしている咲。和はあまりの恥ずかしさに頭を抱えていた。

 

 

 

 

一方、ここはまこの喫茶店からそう遠くない公園。ここではあのクレーマーの男が、タバコをふかしてベンチに座っていた。

 

「ちっ。あの喫茶店も許せねぇが、一番許せねぇのはあの金髪オールバック野郎だな。」

 

そのとき、男の足元からこんな声が聞こえてきた。

 

(おい。お前の望みを言え。どんな望みも叶えてやろう。お前の払う代償はたった一つだ。)

 

男は足元に目線を向ける。すると、何か砂の塊のようなものが渦巻いていた。

 

「何だ…?てめえ何者だよ!?」

 

(いいから早く望みを言え。)

 

男は突然砂の塊に話しかけられたことに驚くが、話が通じるとわかったので頭を切り替える。

 

「今、どんな望みも叶えてやるって言ったよな?なら、清澄高校の制服着た金髪の男子生徒に仕返し…いや、倍返ししてやりたい!」

 

最近見たらしいドラマの影響で口走った突拍子もない望み。しかし、砂の塊は突如、頭が牛で体が人間という、神話の怪物『ミノタウロス』のような姿に変化した。そして、そのまま頷く。

 

(いいだろう。契約成立だ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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