ここは西東京のあるスーパー。そこには買い物袋を抱え、ウキウキと歩く青年の姿があった。
「いやー、今日はスーパーのポイントが5倍だったから得した気分だよ。さて、そろそろ帰ろうかな。」
スーパーを出る青年。その青年の髪は全体的に茶髪なのだが、緑色のメッシュが入っていた。
(ん?おい、デネブ!)
青年は突然立ち止まる。
「どうしたんだい、侑斗?今日は椎茸は買ってないぞ?」
(そういう意味じゃねぇよ。イマジンだ。この近くにいるぞ。)
「ほ、本当かい、侑斗?じゃあ、分離しなきゃ…」
だが、青年がそう言い終わらないうちにその青年の身体から黒装束のような衣装を纏い、金色の鳥のような仮面をつけた怪物が出てきた。
「俺はイマジンを尾行してみる。デネブは先に帰っていてくれ。ほら、これ持て!」
デネブと呼ばれた怪物に買い物袋を手渡す青年。そう、彼は『桜井 侑斗』。電王に続くもう1人の仮面ライダー『仮面ライダーゼロノス』に変身する青年である。
「侑斗。夕飯までには帰ってきてね。」
「どれくらいかかるか、わからないけどな。」
そう言うと侑斗はデネブを置いて歩き出した。デネブも買い物袋を持って侑斗とは反対側に早歩きで進む。
一方、ここはあるケーキ屋。そこにから赤いショートヘアの少女が箱を片手に出てきた。
「ん?何かいる…?」
赤い髪の女子は一瞬何かを背後に感じて後ろを向く。しかし、何もいなかった。すると、今度は前方に怪しい動きをしている何かを見つける。それは…
「ああ、大丈夫かな、侑斗。一応、ゼロライナーに荷物は置いてきたけど、やっぱり侑斗が心配だ。」
その怪しい何かとはサングラスにタオルでほっかむりしたデネブだった。赤い髪の少女は気になって話しかける。
「何してるの?」
「うわっ!?お、おどかさないでよ、お嬢ちゃん。それにしても、よく俺を見つけられたね。」
「うん?普通に見えるけど…」
デネブはなるべく気配を消して外を出歩いているのだが、普段は見つけられることは少ない。だから、この少女に見つかったときに驚いたのだ。
「あ、そうだ。お嬢ちゃんにデネブキャンディーをあげるね。」
デネブは赤い髪の少女に飴玉を手渡す。
「もらっていいの?」
「ああ。その代わりに侑斗に会ったら友達なってあげてね?」
「うん。わかった。あなたは何て名前なの?」
「俺はデネブ。よろしくね。」
「私は…『宮永 照』。よろしく。」
照と名乗った少女はキャンディーを受け取るとデネブに向かって微笑む。照はキャンディーを口に入れる。
「美味しい。そうだ、この飴みんなにも食べさせてあげたいから、うちの学校に来てくれる?」
「俺がかい?そうだね。行けば侑斗の友達が増えるかもしれないし…よし。行くよ。」
デネブは照に手を引かれて『白糸台高校』の麻雀部に訪問することになったのだった。
一方、侑斗は何の偶然か白糸台高校の近くに来ていた。
「確かこの辺りにイマジンがいるはず…どこだ?」
侑斗は辺りを見回す。そのとき、侑斗の目に信じがたい光景が飛び込む。それは、デネブと照が白糸台高校に2人で入っていく光景だった。
(デネブ!?あいつ何してるんだ?てか、隣にいた女子高生は誰なんだ。)
侑斗は頭を掻きながらデネブと照の後に続いて白糸台高校の中に入っていった。
侑斗は白糸台高校の校舎を徘徊する。幸い、今は放課後なので校舎内に人はほとんどいない。
「一体、デネブはどこに連れていかれたんだ?」
そのとき、侑斗の耳にこんな会話が聞こえた。
「ねえ、早く出してよ〜。」
「まあまあ、そんなに慌てないで…ほーら、これでどうだい?」
「えっ、股から出すの?」
「ごめんね。これくらいしかなくて…でも、好きなだけ舐めていいからね。」
侑斗の耳に入るある女子高生とデネブの会話。あろうことか、いかがわしい方に解釈してしまった侑斗はデネブがいる部屋の扉をこじ開ける。
「女子高生と何いやらしいことしてんだ、デネブ!」
しかし、侑斗は勇んで飛び込んだが、中にいた3人の女子高生とデネブがキョトンとしていた。
「あっ!侑斗が来た。侑斗、実はこの子達にキャンディをせがまれてね。渡してたところさ。みんな、紹介するよ。『桜井 侑斗』。ちょっと気難しいけどいい子だから、みんな仲良してあげてね?」
しかし、侑斗はデネブを見つけると容赦無くプロレス技をかける。
「デネブー!紛らわしい会話してんじゃねぇ!」
「わー!?ごめん、侑斗!」
すると、デネブを締め上げる侑斗の服の裾を照がくいくいと引っ張る。
「デネブをいじめちゃだめ。」
「何だよ…。たくっ、わかったわかった。」
侑斗はしぶしぶデネブを解放する。
「あなたは一体…というかこの弁慶みたいな化け物はなんだ?」
青い髪の長身の少女が侑斗に問いかける。
「ああ、デネブはイマジン…って言ってもわからないだろうな。」
そのとき、侑斗の脇をぬって金髪の少女がデネブに歩み寄る。
「キャンディありがとう。」
「喜んでもらえて何よりさ。」
「私、『大星 淡』って言うの。よろしくね。」
「俺はデネブ。こっちは侑斗。淡さん、侑斗と仲良くしてあげてね?」
「うん!よろしく侑斗。」
「勝手に決めんなよ…」
侑斗はため息を吐く。
「君は何て名前だい?」
デネブは隣に来た青い髪の少女に話しかける。
「え?ああ、私は『弘世 菫』。よろしく頼む。」
菫はデネブに戸惑いながらも返事をする。
「ねえねえ、侑斗は麻雀できるの?」
唐突に淡が侑斗に話しかける。
「あ?まあ、できないこともないけど。でも、今はこんなところで油売ってる場合じゃない。」
侑斗は冷淡に立ち上がって麻雀部の部室から出ようとする。しかし、淡は侑斗の性格を見抜いたのか、にやりと笑ってこう続けた。
「あれあれ〜?本当は侑斗、麻雀知らないんじゃないの?だから、ここから逃げようとしてるんじゃない?」
その言葉にカチンときたのか侑斗はバッと振り返って淡を見据える。
「何だと?よし、なら対局してやる。俺がどれだけ勝負強いか見せてやるよ!」
「わかりやすい男だな…」
そのやりとりを見ていた菫がつぶやいた。
そして、照、淡、菫、侑斗の4人が卓につく。
しばらく場は静かに進行するが、ここで侑斗が動く。
「ああ、侑斗。それを切ったらだめじゃないか。」
「うるせえな。俺はもっと高い役を狙ってんだよ!」
しかし、デネブの忠告を聞かずに侑斗が牌を捨てた瞬間だった。
「ロン!立直、一気通貫、ドラ9。倍満24000点だねー。」
淡が侑斗の捨てた牌でアガる。腰が抜けるような大失点である。
「嘘だろ…?」
「あーあ…。」
侑斗もデネブもこれには驚いた。そして、しばらく対局が続くが、早くも東三局で終了した。
「ツモ、面前、チャンタ、4000点。」
照がツモあがりする。そして、侑斗はというと…
「ちくしょう!-100点かよ。」
侑斗は照達の圧倒的な強さにボコボコにされたようだ。まあ、素人が全国レベルに勝てるわけがないといえばそれまでなのだが。
「侑斗、元気出して。」
デネブが雀卓に項垂れる侑斗の背中をポンポンと叩く。
「あはは、やっぱり駄目じゃん。」
淡が項垂れる侑斗を笑う。
「くっ、もう一回、もう一回だ!」
侑斗はイマジンを追跡していたことも忘れ、再び照達と対局する。そして、2時間が経過した。
「ちくしょう…今度はー400点か…」
また自分の酷い成績に肩を落とす侑斗であった。
「侑斗の手は読みやすい。」
照が何食わぬ顔で侑斗の欠点を述べる。
「もっと河を見るとか、周りに気をつけるべきじゃないか?」
菫も侑斗のダメだしに参加する。
「まあ、侑斗はちょっと単純なところもあるからね。」
「デネブ!お前はどっちの味方だ?」
デネブの言葉に侑斗は卓から立ち上がる。すると、いきり立つ侑斗の服の裾をくいくいと淡が引っ張る。
「ねえねえ、侑斗が次に私に負けたら買い物に付き合ってよ。照達は都合悪くて一緒に来てくれないの。」
「はあ?何で俺が?面倒くせえよ。」
すると淡はニヤリと笑ってこう言う。
「じゃあ、ハンデで私は12500点からでいいよ。どうする?」
淡の態度にイラっときたのか、侑斗は負けじと言い放つ。
「本当にそれでいいんだな?後悔させてやるぜ!」
かくして、淡が12500点からスタートの対局が始まった。
1時間後、淡が牌を引く。そして…
「ツモ!6000-3000。」
「何ぃ!?またお前のあがりか?」
結果、また淡は侑斗を寄せ付けない強さを見せた。どうやらハンデがあってもお構いなしのようである。
「じゃあ、約束通り付き合ってね。」
「侑斗、約束したなら守ってあげようよ。ね?」
「わかった…少しだけだぞ…」
侑斗はしぶしぶ淡の買い物に付き合うことになった。
「私はそろそろ帰るね。」
「私もおいとましようか。照、淡、また明日な。それと…桜井さん、デネブ。来てくれてありがとう。楽しかったぞ。」
照と菫が淡と別れる。そして、侑斗は淡に引っ張られるようにして東京の繁華街に連れて行かれたのであった。