Fate/grand order 仮面ライダーW 体験クエスト 作:通りすがり
仮面ライダーのある程度の知識を得た藤丸立香
藤丸立香「これって…仮面ライダーWのガイアメモリ?」
『Chain』
目元から下を全て鎖で縛られた状態で身動きが取れない状態でありながら立香は冷静だった。
複数の特異点を修復する際に空中に投げ出されたりするのはザラにあったが、流石に全身を縛られるというのは無かった。
幸いに視界は確保されているので目だけを動かし見渡す。
「(多分ここは『仮面ライダー』の世界。さっき触れたアイテムからW、なのかな? とにかくここから動くための努力をしないと)」
そうやって何度か身じろぎをするが、複雑に絡まっているのか解ける気配はない。
そうしてる間に鎖を大量に引きずる足音と共に異形の怪物が現れた。
『おお〜目が覚めたのか、まぁもう少し待ってな。迎えはもうすぐだからよぅ.あ、迎えつってもあの世じゃねぇ。こりゃ余計だったか?』
全身を右目部分以外大小多彩な鎖に覆われた
『しっかしアンタも災難だなァ、五体満足とはいえ確実に捕らえてここに連れて来いだなんて。このメモリを買った手前、断りはしないがな。 何したんだ? ま、答えられんか』
「(こっちが聞きたい、しかもやけにフランクだしこの人。……というかこの人も
寂しいのかチェインドーパントは饒舌に語る。
その間、立香は聞くしかできないので大人しく聞くしかなかった。
その後もただ話したいのか、向こうの話題も益体もないことばかりになっていく
だがそれもエンジンの音にかき消され、突然終わりを迎えた。
『お、迎えが来たようだな。じゃあな短い付き合いだったが、じゃあな』
ピザの宅配が届いたくらいの気軽さでチェインドーパントは相手を出迎える。
相手の表情は立香からは黒いソフト帽に遮られていて見えない。
けど、最近まで仮面ライダーを見ていた立香には確信があった。
彼は味方だと。
「(あれは……記憶の通りなら……)」
『おーおー、待ってたぜ。注文通り見た目の傷無く縛ってあるぜ、確認し……いや待て。テメェ、何モンだ』
チェインドーパントは最初は変わらず軽い口調だったが相手が姿を見せた途端、何かに気づいたように警戒を露わにする。
ソフト帽の男はその問いをフッと鼻で笑い飛ばしながら答える。
「俺か? 俺は左翔太郎……ハァ〜ドボイルドな、探偵さ」
『探偵だぁ? ここには迷子のペットはいねぇが』
「いやペット探しじゃねぇよ!? ……ッウン、それはまぁいい。観念しなドーパント、いや『鎖原 俊造』って呼んだほうがいいか?」
『っ! ……何もかもバレてるのか……聞いたことがあるぜ、この街にはガイアメモリ専門の探偵がいるって話。まさかこんなに手が早いとは予想外だ』
気が抜けるやり取りをしたあと、二人の間に一瞬で緊張が張り詰める。
「一応宣言しておくぜ、メモリを捨てて投降する……つもりは、なさそうだな」
『当たり前だろ! なんならこっちには人質だっている……アレ、なんで解けてるの?』
ふとチェインドーパントが立香に視線を落とすとそこに彼がいた筈の場所には鎖を解いてすっかり逃げる気満々の立香がいた。
「あっ、やばっ! 『待てこんにゃろ逃がすか……『STAG』『BAT』……グワッ!?』」
解けて逃げようとした立香を追おうとしたチェインは小さなクワガタとコウモリ型のガジェットに阻まれた。
その隙に立香は翔太郎の近くに避難していた。
「よう、初めましてだな坊主。俺は左翔太郎、依頼を受けてアンタを助けに来た。下がってな、後は俺たちがやる」
「あ、ありがとうございます!」
最近映像で見た人と現実に出会った緊張とさっきまで縛られてた反動でぎこちなくお礼を言いながら下がる立香。
その様子に翔太郎は一瞬で訝しげな視線を見せるが、気にせずチェインドーパントに向き合う。
「さて、準備はいいか鎖野郎?」
言いながら翔太郎はスロットが2つある赤いバックルを懐から取り出し、腰に装着する。
すると、バックルは腰に巻き付きベルトになる。
「いくぜフィリップ」『JOKER!』
──────鳴海探偵事務所ガレージにて
「守護英霊召喚システムフェイト……人間や英雄を瞳型のデバイスに組み込む眼魂システム……実に興味深い」
ガレージでは髪をクリップで雑に止め、何も書かれていない本を片手に呟く魔少年────フィリップの姿があった。
英雄に関する技術を調べていたようだがこの検索も終わりを迎える。
彼の腰にダブルドライバーが現れたのだ。
「今いいところなんだ、後にしてくれないかい翔太郎?」
『良い訳ねぇだろ! 今依頼人の探し人を保護して敵の前なんだぞ!?』
間髪を入れずに小気味良いツッコミがフィリップの頭に響く。
「もしかして、『藤丸立香』を保護しているのかい!? なら急いで連れてきてくれ!」
『お、おお……? ヤケに食いつくな、こっちとしてはありがたいが……』
「彼を検索していたら何故か英霊に関する本が増えたからね、是非とも直接会いたい」
『了〜解っと、じゃあ半分力貸してくれ。相棒』
「勿論さ」『CYCLONE!』
気兼ねの無いやり取りの後、二人が並んだら腕がWの字になるようにメモリを構える。
──────廃工場跡地
『JOKER!』
「『変身!』」
翔太郎がジョーカーメモリを起動させた後、ライトスロットにどこからともなく
それを押し込み、
両スロットを広げ、バックルをWの形にする。
『CYCLONE』『JOKER』
軽快な変身音と共に強烈な風が吹き荒ぶ。
これには立香もチェインドーパントも僅かに怯む。
そこに立っていたのは────緑と黒の二色の戦士だった。
戦士──仮面ライダーWはチェインドーパントを指差し
何時もの言葉を投げ掛ける。
「『さぁ、お前の罪を────数えろ!』」
それを上から見る影があった。
「うん、予定通りお客さんが来てくれたね。存分に体験してくれ、この風都をな」
次回、仮面ライダーW 体験クエストは!
「どんどん行くぜ」
「僕を探して欲しいって依頼があった?」
「センパイ、無事だったんですね!」
これで決まりだ!