鉄の森の事件から数日後。魔法評議会”ERA”では今回の騒動が話題に上がっていた。
「鉄の森を壊滅させただけでは、根本的な問題は何も解決しないのだよ」
「確かに。闇ギルドの数は星の数程ある」
「ならば、今こそ掃討作戦をするべきです!」
「だがどうやって?魔導士ギルドや王国の人員全てを回せる訳じゃあるまいし」
「だが、またこうやってゼレフの魔法を使われでもしたらかなわんぞ」
「そもそも、このような強大な魔法が何故こうも簡単に持ち出されたのか」
「責任問題は管理側にも追求されるじゃろ」
評議会の評議員たちは闇ギルドに対してどうして行くべきか、またララバイの封印を管理していた者に対する処遇をどうするかを話し合っていた。
「それにしてもあれだけ煙たがっていたフェアリーテイルに今回ばかりは助けられたな」
「たった5、6人でギルドを壊滅させちゃうんだもの。凄いわね」
「もし、ギルドマスターたちが殺されていたら、事は確実に大きくなっていた。最悪、ここに居る俺たちの何人かの首は飛んでいただろうな」
「馬鹿な。責任問題をここまで引き上げるつもりか」
「話にならん!とは、言えないのだよなぁこれが」
ここでルクスの話題が出てきた。
「ルクス・クロスヴィア。彼のおかげで、またしても物的被害が最終的に少なくて済んだ」
「彼にはこれまで別ギルドが時折起こしてしまった破壊も我々の依頼として修繕を行ってもらっているからな」
「ここに居る全員が頭上がらない可能性すらあるね」
「それだけ彼には我々も助けられている。が、対外的には形式だけでもしなければ我々がなめられる」
「では、誰を呼ぶか」
「目撃者は赤髪の女を見かけたという声が多かったらしい」
「ではエルザ・スカーレットを呼び出す。それでよいな?」
議会はそれを結論として終わった。
〇☆〇☆〇☆
朝。あれから数日経ったが、お互いの予定などを擦り合わせた結果ナツと約束した勝負の日が今日となった。
俺はあれから一日で終わるような簡単な仕事を一、二回ほど受けてそれ以外は報酬の整理をしていた。何かと家を空けることが多く、取り敢えずで積まれているものが殆どだったしな。
「えっと、皆にあげる物はっと」
「この辺じゃなかった〜?」
「それだな。ありがとうルビー」
「それにしても結構な量だね〜」
「お金や使う生活用品以外はほとんどいらないからな」
大体が依頼人たちからの好意や、依頼中に更なる儲けが出るようなことが起こったりして、貰ったものだが殆どは死蔵しかねない。特に、消費しきれないであろう食料や絶対に吸わないタバコなどは毎回ギルドの皆にあげたりしている。そもそもの話、国王が持たせすぎなのだ。
「あれ〜、それ今日の決闘で使うの〜?」
ルビーは俺が腰に差している刀を見てそんな事を言った。
「あぁ。ナツに全力で相手しろって言われたし、エルザも相手だからな。それにゼレフ書の悪魔が出てきたってことは、今後かなりやばくなってくるだろうから今のうちに周知の事実にして持ち歩くつもりだ」
「そっか〜。でも、それを持ち出したら二対一になりかねないかもね〜」
「かもな。ま、その時はその時だ。これを皆に渡すから少し早いがもう行くか」
「お〜」
まだ、ナツたちと約束した時間には早いが、皆にあげたりしていればすぐに時間が経つだろうと思い、家を出た。
〇☆〇☆〇☆
一方、ナツはまだ眠りから目覚めていなかった。
「おーい、ナツ〜。起きてー」
「‥‥zzz。おうハッピー、その魚俺にもちょっとくれよ‥‥むにゃむにゃ」
「ダメだこりゃ。今日が楽しみすぎて昨日一晩中騒いでたツケが回ってきたね」
「うるせー、俺はエルザとルクスに勝つんだー‥‥zzz」
「このままだと時間にも遅れちゃうかもしれないし、どうしよう」
ハッピーはナツをどう起こしたものかと悩んでいるのだった。
〇☆〇☆〇☆
俺たちがギルドにたどり着くと、中には殆どのギルドメンバーが集まっていた。
「おう!ルクス。今日は頑張れよ‥‥ってその荷物はなんだ?」
最初に声をかけてきたのはワカバだった。
「ん?これか?これはいつものだ」
「いつものってぇとあれか。施しのやつか」
「おいちょっと待て。なんだその名称は」
施しって、なんでそんな仰々しい名前の行為になってんだよ。
「そりゃおめぇ、食費の無いナツとかに食料あげたり、俺たちが欲しかったりしてたもんを一定のスパンで渡してんだからよ」
「そうそう。一時、お前は施しの神とか、皆のお父さんとか色々言われてたぜルクス」
会話に入ってきたマカオから謎の名称を伝えられる。
「ったく。変な渾名付けんなよ」
「そりゃ無理だ。フェアリーテイルだからな」
「騒がしい連中しかいないここでその要求は通らないからな」
確かに、騒がしい連中ばっかだから今更か。
「で、今回は何を持ってきたんだよ」
「色々とだ。えっと‥‥ほいワカバ。少し前に貰った葉巻。俺は吸わないからな」
「おう、ありが‥‥と‥‥ってお前!こりゃあ高級品で市場にだって中々出回らないヤツじゃねぇか!どこで貰ってくんだよこんなもん」
「少し前にしてた依頼の追加報酬。俺は気絶してたから知らないがルビーが報酬と一緒に貰ってたんだよ」
年齢が上がる事に貰うものが多種多様になっていき、最近ではお酒やらタバコやらを貰ったりしている。
「で、俺にはなにか無いのか?」
「マカオは‥‥はいこれ。お酒」
「悪いな、なんかたかってるみたいで」
「別に気にするな」
「そういえばルビーは?」
「ルビーならあっちでジュース飲んでる。俺はまだ渡す相手いるからまた後で」
「おう!ナツたちとの勝負頑張れよ」
ワカバたちと別れると、辺りを見回しまずはカナの所へ向かった。
「お、ルクスじゃん。どうかしたか〜?」
「コレを渡しにな」
「お、良さげな酒じゃん。てことはいつものお渡しかい」
「そういう事だ」
「んじゃ、コイツはありがたく飲ませてもらうよ」
約束の決闘の事もあり、荷物もちょっと多いし早めに数を減らすため、カナにお酒を渡すと次に渡せそうな相手の元へと行く。そうして、今回持ってきた物が残りあと二つになった。
「お〜、この短時間で随分と減ったね〜」
「ルビー。もう飲んだりしてなくていいのか?」
「うん。ボクは出ないけど、ルクスの対決は見るつもりだから〜。頑張ってね〜」
「おう。で、後渡す相手は‥‥居た」
いつものようにカウンター近くにいるかなと思ったらやっぱりいた。
「ん?どうしたルクス」
「よっ、リーダス。ちょっと渡したい物があってな」
「珍しいな。こういう時、俺の所には来ないのに」
「今回はたまたまだけど、スケッチブックと絵の具、その他諸々一セット分貰ってな」
「うぃ。こりゃまたすげぇな。貰っていいのか?」
「あぁ。俺じゃ使わずに死蔵しそうだからな。道具も使ってくれる人が持っていてくれた方がいいだろ?」
「‥‥有難く使わせてもらうよ」
「渡す相手あと一人居るから、そっちに行くわ」
「うぃ。ありがとな」
リーダスから感謝の言葉を受けて、最後の一つを渡す相手を探す。
「ん〜?誰を探してるの〜?」
「コレを渡す相手を探してる」
ルビーに手に持っているメガネと本を見せる。
「お〜、てことはレビィだね〜。うんと〜‥‥あ、あそこに居たよ〜」
ルビーが指さす方向にいつもの三人組、シャドウギアが居た。
「あれ?ルクスじゃん。どうしたの?」
「レビィに渡すものがあってな」
「私に?」
持っていた本とメガネをレビィに渡す。
「これは‥‥風読みの眼鏡に、古代文字の辞典!しかも私がまだ持ってないやつ!これ、貴重な物なのにいいの?」
「あぁ。どっちも最近欲しがってたろ?たまたま手に入った様なものだし、あげようと思ってたんだ」
「ありがとう!絶対大事にするね!」
レビィが喜んでくれてよかった。他のみんなもそうだけど、流石に微妙な顔されたりするのはちょっとしたショックと申し訳なさを凄く感じるからな。
「おっしゃー!ルクス!エルザ!勝負するぞー!」
丁度渡し終えた頃にナツが騒ぎながら入ってきた。そういえば、エルザをまだ見てないな。
「そう騒ぐな。私たちは別に逃げたりせん」
と、ナツの後ろからエルザが現れた。どうやらあの二人は一緒のタイミングで到着したみたいだな。
「ルクス、始めるぞ」
エルザの呼び掛けで一緒に外へ向かう。外では既に野次馬だらけであった。
「ちょっと、本気なの三人とも!」
「本気も本気。本気でやらねば漢ではない!」
「あら、エルザは女の子よ?」
「ありゃ女は女でもバケモノのメスだよ」
「大体、何をそんなに心配してるんだよ」
「だって、最強チームの三人が激突したら‥‥」
「最強チーム?なんだそりゃ」
「アンタとナツとエルザ、それにルクスの四人の事じゃない」
「はぁ?下らねぇ、誰がそんなことを言ったんだよ」
外野では何やらグレイたちが騒がしくしていた。
「うぅ‥‥」
「ああ‥‥ミラちゃんだったんだ‥‥」
「たしかにナツとグレイの男気は認めるが、最強と言われちゃ黙っておけねぇな」
「ん?”ナツとグレイは”?」
「最強の女はエルザで間違いないと思うんだけどね」
「最強の男となるとミストガン、ラクサス、ルクスの三人が飛び抜けてるし、あの人もいるしな」
「えっ!そりゃあナツと同じ滅竜魔導士って事はミラさんから聞いてたけど、ルクスってそんなに強かったの!?」
「なんだ、知らなかったのか?」
「知るわけないでしょ!ソーサラーにだってそんなこと載って無かったし」
「まぁ、ルクスの強さって意外と関わり合いがあるヤツしか知らねぇよな」
「大体はあなた達が破壊した後の後始末ばかりしてる所しか見ないからね〜」
「ね、姉ちゃん怒ってる?」
「そりゃ怒りもするわよ!一体どれだけルクスのおかげで始末書やら何やらが減ってると思ってるの!それに、それでも無くならないのよ!」
「「「すみませんでした」」」
会話はこちらまで聞こえており、野次馬どころかナツとエルザまで俺とミラに謝ってきた。
「と、とにかく勝負を始めるとするか」
「そうだな。それにしてもルクスのその刀はなんだ?」
「これか?これは俺が本気で全力を出す際に使う武器だ。いい加減携帯してもいいかなと思ってたしな」
「ルクスが刀?」
「どういう事だ?」
俺の言葉に周りの殆どがざわつき、エルザとミラは驚いていた。
「不味いな‥‥ナツ!少し勝負方法を変える。ルクスがあの刀を使うなら二対一にするぞ。ルクスもそれで構わないか?」
「あぁ。俺はそれでもいいぞ」
「は?何言ってんだエルザ。ルクスが刀を使うとやべぇのかよ?」
「ルクスの刀使いもかなりの物だが、それ以上にあの刀の能力がヤバい」
「ヤバいってどうヤバいんだよ」
「あの刀は斬撃を設置するんだ」
「???意味わからねぇぞ?」
だろうな。正直この刀の能力は実際に見た方が早い
「そうだな。実演すれば早いか」
俺は話しながら自分の目の前を刀で切る。
「何やってんだ?」
「この刀は元々時穿剣って名前の大剣だった。何時からあるのかは知らないがかなり昔からあったらしい。俺自身貰い物だから詳しくは知らない」
この刀はそもそも国王から譲り受けた物だ。
「どうにも時の魔法を扱う者の魔力でなければ反応しないらしい剣でな。その能力はやはり時に関するものだった。ナツ、俺に向かって咆哮を撃ってくれ」
「あ?まぁ、別にいいけどよ。火竜の咆哮!」
時穿剣に魔力を込めて俺は先程の斬った斬撃を呼び出した。すると火竜の咆哮はその斬撃に当たり真っ二つに割れて消えていく。
「んな!」
「これがこの刀、時穿剣の力の一つ未来を斬る力だ。本当はもう1つあるが、アッチは少し魔力消費量が多くてな。今回はこっちしか使わないから安心していい」
「ちょ、ちょっと、何よあれ!」
「お、俺たちだって今のは知らねぇ」
「お、俺もだ‥‥」
周りのみんなは口をあんぐりと開けていた。
「ねぇねぇ、ハッピー。やっぱりルクスにかけない〜?」
「そうだね。エルザとルクスで迷ってたけどここはルビーの意見を参考にするよ」
「なんて愛のないネコなの!」
ハッピーはルビーの言葉で賭け先を決めていた。
「大剣を刀にしたのは単純に俺が最も扱える武器だったから。まぁ、形を変えたのは一種の賭けだったが」
俺も詳しい事は知らないが、魔法剣は無理に形などを弄ると壊れるらしい。
「へっ!未来を斬るからなんだ!燃えてきたぞ」
「では、私も本気で行かせてもらう!換装、炎帝の鎧!」
「なるほど、ナツとの連携のためにその鎧を選択したか。だがっ!」
俺は時穿剣に魔力を込めて一気に辺りを切り裂く。
「っ!」
「うおっ!危ねぇ!」
「避けても防いでもいいが、身動きが取れなくなるのはそっちだぞ。時竜の咆哮!」
「ナツ!」
「おうよ!火竜の咆哮!」
ナツの咆哮と俺の咆哮がぶつかり爆発が起こる。
「ルクスは以前、あの能力は一つの斬撃に対して1回しか使えないと言っていた。ならば!換装、天輪の鎧。
エルザの声と同時にいくつもの剣がこちらに向かってくる。たが、俺自身の魔法を忘れているな!
「多少魔力を使うが、この程度なら問題ない。
横方面のみ時穿剣の力で斬撃を呼び出し、正面は時間を止め、翼撃で全てを叩き落とす。
「やはり、そう簡単に斬撃を消費はしないか」
「横を使ったなら、そこから攻める!火竜の剣角!」
「それを素直に食らうかってんだ!」
俺はナツの攻撃を飛んでよけると、飛んだ先にエルザが居た。
「ナイスだナツ。はぁ!」
「なんの!」
エルザの剣を刀で防ぎ、お互いに距離を取って着地する。
「な、いい勝負してるだろ」
「どこが。しかし、ルクスのやつがあそこまでとはな」
そして、俺たち三人同時に前へ飛び込んで互いに攻撃をしようとすると、そこを手を叩く音で止められた。
「そこまでだ。全員そこを動くな。私は評議員の使者である」
「評議員!?」
「使者だって!?」
「あのビジュアルについてはスルーなのね」
「先日のアイゼンヴァルトの一件において、器物損壊罪ほか11件の罪によりエルザ・スカーレットを逮捕する。そして、ルクス・クロスヴィア。そなたは評議会より呼び出しがかかっている」
「なんだとーーー!」
「ルクスの呼び出しも気になるが、エルザが逮捕!?」
「どうなってんだ」
俺たちは評議員の使者と名乗るカエルに連れていかれることになった。
元々時穿剣とかに影響されてたから、時穿剣を出したかったので出しました。自分で書いてて思いましたが、時穿剣ってやっぱチート並に強くね?