乃渡由比はバトスピテスターである 作:monochrome:黒
時は烈火幸村が炎利家を倒し日本全国中にその噂が流れた頃
とある地方のとある場所で、薄い紺碧の瞳と透き通る様な紫苑の長髪を結流した19程度の女が居た。白の襟詰シャツに萌黄色と紅の袴にまるで白衣の様に白い羽織を着た、黒タイツにエナメル下駄を履き込んでいる。
「だから私は炎利家に用があって貴方に用は無いんです。炎利家を出して下さい。」
関東一バトスピが盛んな街、「武蔵」。
どこも彼処もバトスピ一色に染まった街の中
その中で一番目立つ武蔵スタジアムの前で女___乃渡由比はとある男と押し問答をしていた
「だーかーら‼︎お前みてぇな奴に利さん出す訳ねぇだろうが!クソッ、こんな事前にもあったような…。」
目の前にいるのは炎組親衛隊筆頭、赤井長頼。
事前に調べておいた情報では武蔵スタジアムは赤使いS級カードバトラー、炎利家率いる炎組のホームだった筈だ。
由比は利家に用があって………………否、態々炎利家ではなくても良いのだが兎に角腕の立つバトラーとバトスピがやりたいのだ。
だが目の前にいる赤井と言う男が竹刀を持って邪魔をする。成程、何か知らないが前科っぽい事はかつてあったのか。
ともあれこうして押し問答して時間を浪費するのは良くない。こっちにだって色々と予定がある。正直に言えば一分一秒が惜しい訳である。
由比は少し思考した後、赤井にこう問い掛ける。
「じゃあどうしたら炎利家を出してくれます?」
「ハッ!この俺、炎組筆頭赤井長頼様をぶっ倒す事が出来たなら利さんを出してやるよ!……やっぱりこんな事前にもあったぜ…。」
前科の事を思い出してしまったのか不愉快そうな顔をする赤井。
何があったかはどうでもいいが条件は出して貰えた。
これで勝てば晴れて由比は炎利家に勝負を挑める。
だが念には念をだ。紺碧の瞳を三日月に歪ませ口角を弧に吊り上げながらこう言う。
「"約束"ですよ?」
「っ⁉︎お、おう…。」
(何だ此奴…怖ぇ……)
■
赤井の案内の下スタジアム内に入るとそれはそれは広い3Dバトルフィールドが存在していた。
観客席にはあまり人が見受けられず何方かと言えば3Dバトルをせず観客席でバトルをしている人間が少数しかいない。居ても炎組の人間の割合が多くヤンキーの溜まり場の様にも見受けられる。
「閑散としているなぁ」と思っているとウィーン…とした音が聞こえた。
音の方に視線をやれば赤井が3D用バトルマシンを丁度出したところだった。
「さぁテメェもマシンを出してバトルしやがれ!」
威勢良く大声を張り上げる長頼。
過去の前科が余程尾を引いているのか若干苛つきの声色も含んでいる。「早くしろ」と遠回しに言われている様なものだ。
「……ハァ…」
流石の由比も溜息を吐きざる負えなかった。
こう過去を連想させられてそれを八つ当たり気味にさせられるのと言うのは気分が悪い。自分は何もしてない。お門違いも良いとこだ。
もう一つ溜息を吐きながら赤井と相対する様に距離を取り、そして_________________________懐から"星月紋を象った青いデッキケース"を手に取った。
一般の通常3D用専用マシン?そんなもの由比には必要ない。
何故なら自分は______
「降りしましませ、「
「何っ⁉︎」
(まさかコイツも……⁉︎)
声を上げて呼べば轟ッ!と言う音と共に「専用マシン」が現れる。
一言で言うならそれはまるで夜の体現。青をベースとした機体には雲の様な部品が付き、黄金色の星が散りばめられ、後方部には細い三日月に小さな円___星月紋が輝いていた。
専用マシン「尊星王」。
それが乃渡由比の専用マシンであった。
とどのつまり_____________________________
「テメェもS級バトラーかよ‼︎お前…
「私の名は乃渡由比。IBSAに重宝されし日本唯一の「バトスピテスター」です!」
その言葉に赤井は驚きつつも聞きなれないワードに眉を潜めた。観客席にいる炎組も同様、いいや他のバトラー達も誰も彼もが胡乱げな顔をした。
「「バトスピテスター」ァ?何だそりゃ?」
「聞いた事ねぇぞ」
「出鱈目言ってんじゃねぇ!」
四方八方からのブーイング。
まぁ「バトスピテスター」と聞いて一発で理解出来る人間はそう居ないだろう。元からそう言う反応は予想していた為由比は無視してデッキをセット、それから山札から4枚カードを引きニヤリと口角を上げこう言って見せる。
「「バトスピテスター」が何なのか、それはバトルすれば解る事。さぁいい加減始めましょ?"貴方に省いている時間はとても惜しい"のです。」
「っ!言いやがったな…吠え面かいても知らねーぞ!」
「「ゲートオープン!界放!」」
こうして乃渡由比vs赤井長頼とのバトルが幕を切って落とされた。