乃渡由比はバトスピテスターである 作:monochrome:黒
「自分のターンに……!?戯言も大概にしておけ!これから貴様を大海に落とす。覚悟しろ!」
憤りに似た感情と共に早雲は声を張り上げる。散々に弄ばれたと思っているのか、怒りは最早鬼と言っても過言ではなかった。
由比のターンは終わった。
早雲は己のターンを告げ、スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップと重ねて行く。まずは此方のラショウの効果で無意味となった『千間観音堂』のコアをリザーブに戻し___
「『青海童子』をLv1で召喚。これで貴様は腰まで海に浸かる事となる!___潮は満ちた。今こそ出でよ大海の王! 聖なる蒼き
瞬間、早雲の背後から大きな波が押し寄せそこから背に黄金の歯車の様なものを身につけた青き明王像が顕現する。
『蒼海明王』___「浜の鬼姫」の異名を持つ群青早雲のキースピリットだ。蒼き明王はその手にある剣を雄々しく構えると、それに応える様に早雲がアタックステップに入った。
「『蒼海明王』でアタック!アタック時効果発揮、相手のデッキ上から7枚破棄する!」
(来たなデッキ破壊!)
同時にフィールドに自分のデッキが現れ、上からオープンされ宝石を砕くかの如く破棄される。破棄されたのは『デットリィバランス(RV)』『紫煙獅子』『ガスミミズク』『魔界竜鬼ダークヴルム』『龍面鬼ビランバ』『シキツル』『デッドリィアッシュ』だ。
だがしかし『蒼海明王』の効果はそれだけでは無い。あの明王はLv2の効果でソウルコアが置かれている時更に効果を発揮する!
「『蒼海明王』Lv2の効果発揮!このスピリットのソウルコアをトラッシュに置く事で更にデッキ上から7枚破棄!」
「っ!」
『蒼海明王』が閉じていたもう2本の腕を解放する。再びフィールドに時分のデッキが現れ、上からオープンされ宝石を砕くかの如く破棄された。破棄されたのは『スモッグハンド』『魔界元帥ブルグハーツ』『ガスミミズク』『魔界霧竜ミストヴルム』『幽騎士ナイトライダー(RV)』『ダークマター』『滅神星龍ダークヴルム・ノヴァ(RV)』だ。
これで計14枚。
『千間観音堂』がラショウの効果を受けていなければ更に15枚も持っていかれていたと思うとさしものの由比でも内心ヒヤリとした。
4本の腕で剣を雄々しく振り回し此方に攻めてくる『蒼海明王』に対して由比は手札のとあるカード1枚を指に絡ませつつ____
「『クリスタニードル』でブロック!このスピリットの破壊時、相手のネクサス1つを破壊する!」
「何だと!?」
まだだ。それだけでは終わらない。
由比は指を絡めていたカードを引き抜き、こう叫んだ。
「フラッシュタイミング!『魔界皇龍ダークヴルム・レガリア』をラショウに"【煌臨】"ッッ!!」
「"【煌臨】"……だと……!?」
ラショウに"カードを上から重ねた"瞬間、ラショウの上から紫の輝きを放つ龍が勢いよく覆い尽くす様に舞い降りた。
黄金の冠を被り、幾つもの顔がある黄金色の王笏を持ち、もう片方の手に赤と金で形作られた球体の様な物を掴んだ四翼の黒きドラゴン____『魔界皇龍ダークヴルム・レガリア』。それはまるで魔界の王のような姿で佇んでいた。
「スピリットが…変わった…!?」
「いいえ、これは【煌臨】と言うフラッシュのタイミングで条件の揃ったスピリットの上にスピリットを重ねられる新たなカードの1つです。」
【煌臨】___それはバトスピの新たなギミックの1つである特殊なカードだ。ある一定条件が揃ったスピリット、もしくはブレイヴがあればソウルコアをトラッシュに置きそして重ね、姿形を変える。ある意味スピリットが変身する様なものである。
ソウルコアをトラッシュに置かなければ【煌臨】は出来ない。が、このカードだけは例外なのだ。
「本来ならばソウルコアをトラッシュに置く事で成立しますが、ダークヴルム・レガリアの場合【煌臨】元となるスピリットがコスト3又は4の場合ソウルコアをトラッシュに置かずに【煌臨】出来ます。そして____」
『青海童子』に指を差し、由比は無慈悲にもこう告げる。
「ダークヴルム・レガリアの煌臨時、コアが1つの相手のスピリット全てを破壊し破壊した分だけ自分はデッキから1枚ドローします。」
「何っ!?」
【煌臨】したダークヴルム・レガリアが王笏を『青海童子』に向けるとそこから紫の炎が立ち上り、爆発の花が咲いた。
だがまだバトルは終わってない。
これはまだフラッシュタイミング。本命のバトルはまだ続いている。
フィールドに視線を向ければ、『クリスタニードル』が健気ながらもその小さな躯体で『蒼海明王』に挑んでいる姿だった。しかしネクサスの効果でBPが上がっている『蒼海明王』は容赦なくその4つの剣で切り刻み爆発の花を咲かせた。
だが『クリスタニードル』はそれでは終わらない。爆発の花から怨念の様に現れた『クリスタニードル』は「最期に一矢報いてやろう」とでも言うように早雲のネクサス1つを破壊して消え去った。
「「相手による自分のスピリット破壊」によりバースト発動!『ダークマター』!自分のトラッシュにある紫のカード6枚までをデッキの上か下かに戻し自分はデッキから1枚ドローする!」
「!!」
その効果に早雲は瞠目した。
目の前で破棄した約半分のカードが再びデッキに戻るなんて屈辱にも程がある。
『クリスタニードル』が破壊される事を見越してデッキ破棄を台無しにでもする様なカードを由比は伏せておいたのだ。『デッドリィバランス(RV)』『デッドリィアッシュ』『魔界霧竜ミストヴルム』『幽騎士ナイトライダー(RV)』『滅神星龍ダークヴルム・ノヴァ(RV)』『ダークマター』の順でデッキの下に戻し、上から1枚デッキからドローする。フラッシュの効果は使っても意味がないので使わずにトラッシュに置いておいた。
早雲としては自分のターンの筈が後半全てを由比に取られたに他ならない。一体このターンは誰のターンだったのか曖昧になってしまった。ブロッカーとなる筈だった『青海童子』も破壊され、キースピリットはデッキ破壊こそ出来たものの疲労状態。ネクサスも充分に効力を発揮出来ず______由比の宣言通り「やりたい事を尽く封じられてしまった。」のだ。
「……自分の、ターンエンドだ。」
まるで絶望を目の前にしたかの様に力無く己のターンエンドを告げる早雲。無理もない、ここまで圧倒的なプレイングを見せ付けられて萎れてしまった花の様にならないバトラーは居るまい。
対して由比は気にせず己のターンを宣言し、淡々とステップを重ねて行く。スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、そしてメインステップ。1枚手札からカードを取ると得意げな笑みでそのカードを表向きにしてフィールドに叩き付けた。
「ここでフラッシュ、『ジャッガス』の"「アクセル」"を使用!」
「アクセル…?」
「「アクセル」と言うのはスピリットの効果とは別の効果です。アクセルにはアクセルのコストと軽減があり効果を使用した後そのカードは手元に置かれます。私が今使った『ジャッガス』のアクセルはコスト4、軽減2。その効果は相手のスピリットのコア1つをリザーブに置き、更に1コスト支払う事でコアをもう2つリザーブに置きます。よって『蒼海明王』は消滅!『ジャッガス』は手元へ!」
「『蒼海明王』⁉︎」
維持するコアが全てリザーブに置かれた『蒼海明王』は後方に倒れ込むように消滅した。本来なら疲労状態になっている故にわざわざこんな事をしなくてもいいのだが、念には念を_____と言いたいところだが実際のところ「アクセル」をギャラリー達に見せて知って貰いたかっただけである。
そろそろ決着を着けよう。
メインステップはアクセルのみを使いこのままアタックステップへと入った。
「アタックステップ、ダークヴルム・レガリアでアタック!そしてソウルコアをトラッシュに送り_______遍く亡霊を喚び戻せ、死をも超越するドラゴンの
「くっ……!また【煌臨】か!」
ダークヴルム・レガリアの頭上に雲にも似た渦が現れ、黒い大きな影がダークヴルム・レガリアを呑み込んだ。影は形を成し、幾つもの仮面を宙に漂わせ、頭と背に悪魔の様な翼の生えた白と紫をベースにした体躯…そして黄金色の杖を手に携えたドラゴン___『魔界幻龍ジークフリード・ネクロ』が【煌臨】した。
ジークフリード・ネクロとなったその煌臨時効果、見せてやろうではないか。由比はニヤリと怪しく笑みを見せ、その効果を告げる。
「『魔界幻龍ジークフリード・ネクロ』の煌臨時効果【煌霊術】を発揮!自分のトラッシュにあるコスト0/1/3/6/9のスピリットカード1枚ずつをコストを支払わずに召喚出来る!」
「ノーコスト召喚だと⁉︎ハッ、まさか貴様___‼︎」
「その通り。私の紫デッキは破棄されても何度でも蘇って来る、紫属性の要素の1つ「トラッシュからの召喚」!元より貴女は私を海へと沈められなかったんだ!私はトラッシュからコスト1の『ソウルホース』とコスト3の『魔界兵カースソーズマン』を其々Lv1で召喚!コスト確保の為ジークフリード・ネクロはLv1にダウン!」
「ライフで受ける!」
ジークフリード・ネクロが杖を振り翳し早雲のライフを砕く。残りライフ1、早雲のライフを守るスピリットは誰も居ない。ただこれまで真価を発揮出来ずにいたネクサス『千間観音堂』だけが侘しく揺らめいていた。
勝負の結末など誰が見ても明白だ。
由比は『魔界兵カースソーズマン』に手を翳し、笑みを保ったままラストアタックを宣言する。
「『魔界兵カースソーズマン』でラストアタック!群青早雲、御覚悟‼︎」
「そんなまさか自分が……くっ…ライフで受ける!うあああああああああああああああっ‼︎‼︎」
群青早雲のライフ:0
勝者:乃渡由比