乃渡由比はバトスピテスターである   作:monochrome:黒

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勝負!焔忍法帖!__壱

 

 

 

「んう…?ここは……?」

 

 

 

閉じていた瞳を開けたら見慣れない天井があった。

何処かの建物の一室で由比は寝かされている事を理解する。だがどうして自分はここに居るのだろうか?

 

頭に手を置いて唸る様に記憶を辿る。確か早雲に勝利した後彼女は「自分はまだ甘かった」だのと言って己の力不足を肯定し部下達と共に去って行った。それで由比はデッキをしまい専用マシンから降りてそこから______"朝から何も食べていない事に漸く気付いて"「グーキュルルルルル」と言う盛大な腹の虫の鳴き声と共に視界がブラックアウトしたのだ。

 

つまり、空腹でバトスピテスター乃渡由比は気絶した訳である。

 

記憶を辿ってみたが余りにも情け無い事で気絶して由比は恥ずかしくなった。「穴があったら入りたい」とは正にこの事である。

 

 

 

「目が覚めたでごじゃるか?」

 

 

「環奈さん……?どうして…じゃあ此処は…。」

 

 

「左様、以前話した拙者と幸村が佐助から借りている部屋でごじゃる。」

 

 

 

ムクリと上半身を起こし周りを見てみると、それなりに整った部屋が目に入った。それでも急拵えで用意した様な物もちらほら目立つ。このベッドやかけられている布団も新品と古い物でごちゃごちゃだ。それがこの部屋には幾つもある。

 

テーブルでお茶を啜る環奈の姿を見て由比は疑問を問い掛けた。

 

 

 

「他の皆さんは?」

 

 

「お主が目が覚めたら腹が減るだろうと思って食料を買いに行ったでごじゃる。まさか腹が減って気絶するとは…由比らしいでごじゃるな。」

 

 

「あはははは……すみません朝から何も食べずにあの場所に行ったもので…。じゃあ私を運んでくれたのは幸村君ですか?」

 

 

 

自慢する程でも無いが由比はそこそこ背が高い分類に入る。身長なら幸村と同じかそれより少し上だ。もしも彼がおぶって此処まで運んでくれたとなると相当大変だっただろう。何せ自分とほぼ同じ身長の人間をおぶるなんて重くて仕方が無かった筈だ。

 

しかし、環奈はその問いに否定の意味での首を横に振った。答える為に開いた唇は由比ですら予想も付かない人物の名前だった。

 

 

 

「由比を此処まで背負って来たのは"炎利家"でごじゃる。」

 

 

「えっ…利家さんが……?」

 

 

 

意外な人物にさしもののの由比も目を見開く。

環奈曰く、幸村は自分をおぶろうとしたもののやはりほぼ同じ身長の由比では運ぼうにも運べ無かったようだ。そこにバトルを観戦した利家が現れ、「貸せ」と言って由比よりも身長が勝る利家がおぶって此処まで運んでくれたのだと言う。

 

確かに利家とは一度バトルして言葉を交わしたがそこまでしてくれる義理とは一体……。1人勝手に困惑する自分を見て環奈は微笑しながら

 

 

 

「由比は幸村同様利家に気に入られたようでごじゃるな。」

 

 

「そのようですね…ご迷惑をかけた分今度会った時にお礼を言っておきます。」

 

 

「おーい、食料買って来たぜ!」

 

 

「由比目が覚めたのかよ!」

 

 

「良かった〜いきなり倒れるから僕達吃驚しちゃったよ。」

 

 

「まさか腹の虫が鳴くとは思わなかったけどな。」

 

 

「本当だぜ。」

 

 

「皆さん。ああえと……お邪魔してます。それとご迷惑おかけしてすみません。」

 

 

 

大きな紙袋を幾つも持って幸村達一行は階段を上がって来た。部屋にある時計を見てみると時計の針は12時過ぎを指していた、幸村達も丁度お昼の時間にするのだろう。世界チェーン店で有名なジャンクフードのトレードマークが付いた袋からハンバーガーやポテト、ナゲット、ドリンクをテーブルに出し、幸村は幾つもあるハンバーガーの中の1つを取って由比に差し出した。

 

 

 

「はいこれ、由比の分だ。確か由比は沢山食べるよな?他にも買って来たから迷惑なんて気にせずお腹いっぱいになるまで食ってくれ。」

 

 

「幸村君……ッッ!はい!いただきます!」

 

 

 

差し出されたハンバーガーを手に取り、ベッドから出るとその場に座って袋を開けパクリと頬張った。チーズとハーバーグのサンドとピクルスの奏でるハーモニーがとても美味だ。自然と顔が花のように綻び幸せいっぱいな気持ちになる。

 

そんな由比を見ていた佐助がポテトを食べながら拓馬達に対してこう呟いた。

 

 

 

「オイラ思うんだけどさ……由比ってバトルしている時と飯食っている時キャラ違うよな。」

 

 

「うん、全くの別人みたいだよね…。」

 

 

「早雲とのバトルで早雲のデッキ破壊を封じてたもんな。」

 

 

「しかもライフ1つも減らさずに勝っちまって、バトル中のあの笑顔は流石の俺でもビビった。」

 

 

「佐助君、拓馬君、太一君、有弥君、そこ聞こえてますよ。」

 

 

 

口に含んだハンバーガーを呑み込んで指摘すると4人は肩をビクッと振るわせて苦笑した。キャラが違うのは当たり前だろう、四六時中あんな風に気を張ってバトルモードでいたら疲れてしまう。こう言うのはON OFFの切り替えが大事なのだ。バトルする時はバトルに集中してバトルしない時は肩の荷を下ろしてゆったりとしている。

 

まぁ……少年達をこう思わせてしまうのは仕方ないだろう。それも全て____

 

 

 

「私まで二大勢力の勘定に入れなれなければ佐助君達がこう言う事も無かったんですけどね……。」

 

 

「あはは…まぁそれもそうだな。」

 

 

「じゃが、早雲とのバトルはお見事の一言に尽きるものでごじゃった。ネクサス封じ、コア除去、トラッシュからのスピリット召喚、新たな効果も含めて紫属性の特徴を有意義に使いこなしていたでごじゃる。」

 

 

「ふふ、環奈さんに褒められると少し照れますね。」

 

 

 

利家を倒した事で二大勢力から目を付けられてしまったが彼女からバトルを褒められるのは不思議と悪い気がしなかった。それどころかバトルをして良かったとすら思えてしまう。

 

早雲とのバトルはデッキの相性が良かったと言っても過言では無い。破棄されてもデッキに戻るようなマジックを入れたり、トラッシュからのスピリット召喚に特化したデッキだったからだ。ラショウがいればネクサス封じも可能であるし通常のコア除去で『青海童子』を消滅させる事も出来た。お陰様でデッキ破壊されても由比は海に呑み込まれる事は無かったのである。

 

 

 

(今のところ残る相手は宝緑院兼続だけかぁ……あの場所で連続でバトルにならなかったと言う事は近くあっちからコンタクトがあるかもしれないって事だなぁ…。)

 

 

 

4つ目のハンバーガーを黙々と食べながらそんな事を考える。相手は緑使い。デッキ系統は本番に確認するとして……緑属性と言うならばコアブーストや疲労させる効果、神速などもあり得る。ソウルコアによる効果も使ってくるかもしれない。早雲同様気を抜けない相手になるのは確かだ。

 

食べながら考え事をしている為か段々と眉を潜め険しくなっていくそんな由比に、横にいた幸村が思い付くようにしてこう言った。

 

 

 

「なぁ由比、俺とバトルしようぜ!」

 

 

「ムグゥ⁉︎ゲホッゲホッ!ングッ!ハー……バトルですか…?良いですけど急になんですか幸村君。」

 

 

「早雲の次は必ず兼続が相手になる、その為にもお互いバトルして腕を上げるのも良いと思うんだ。」

 

 

「はぁ…確かに合理的ではありますが……なら私から条件があります。」

 

 

「条件?」

 

 

「そのバトルはストリートバトルにしましょう。私が今拠点にしているマンションの屋上を借りれば問題なく出来る筈ですから。」

 

 

 

突然の幸村の提案に食べていたハンバーガーが喉に詰まりかけ、急いでドリンクを飲んで落ち着かせた由比はそう条件を出す。折角お互いがS級同士なのだ。テーブルでやるバトルよりもバーチャルバトルでやった方が良いに決まっている。それに彼とは昨日バトルする約束のようなものもしていた、早かれ遅かれそうなるのだとしたら今からでも充分だろう。

 

因みに由比としてはこれでお互いの拠点を知れる機会になると思っていた。そしたら連絡だって取りやすいし会いやすくもなるに違いない。

 

 

 

「おう、良いぜ!由比とはバトルしてみたかったんだ!俺達の知らないカードを使ってバトルする「バトスピテスター」の力…今度は何を見せてくれるか楽しみだぜ!」

 

 

「此方こそどうぞお手柔らかに。」

 

 

 

 

完全にやる気になった彼に由比は苦笑しながら答える。

 

こうして「烈火の炎」烈火幸村と「バトスピテスター」乃渡由比のバトルが決まったのだった。

 

 

 

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