乃渡由比はバトスピテスターである 作:monochrome:黒
決まり文句を叫べばフィールドが展開され由比と赤井のバトルが始まった。
先攻は言わずもがな由比である。
スタートステップ、ドローステップを踏み、メインステップ。
「コスト3の『ノーザンベアード(RV)』をLv1で召喚。バーストをセットしてターンエンド。」
「俺のターン!『オードラン』と『レイニードル』をLv3で召喚!」
赤井が召喚したのはコスト0の『オードラン』とコスト1の『レイニードル』。いや、実質『オードラン』で軽減を満たしている為『レイニードル』はノーコスト召喚されている。
「まずは軽量スピリットで場を固める、か」と心の中で思っていると赤井が動いた。
「あん時は守ってばっかだったが今度はそうはいかねぇ!アタックステップ!Lv3の『レイニードル』でアタックだ!」
(『レイニードル』のBPはLv1の『ノーザンベアード』と同じ4000…相討ち覚悟、もしくはそれを危惧して私がライフで受けると踏んだと考えるべきかなぁ。)
「あの時」と言うのはその時やりあったS級バトラー相手には後手で痛い目にあったのだろうか?
残念ながら由比はその時やりあったS級バトラーではない。だからこそ_________________________ガンガン攻め手とは限らないのだ。相手の『レイニードル』のアタックは…
「"『ノーザンベアード』でブロック"。『ノーザンベアード』のブロック時効果を発揮、ボイドからコア1つをこのスピリットに置いてターンに一回回復する。コアの追加でLv2にパワーアップ、BP8000!」
「び、BP8000だと⁉︎」
襲いかかってきた『レイニードル』が『ノーザンベアード』と相克する。竜は炎を口から噴き出すがそれを空かさず避け退けた『ノーザンベアード』が相手の尾をガッシリと掴み床へと容赦なく叩きつけ爆発の花を咲かせた。圧倒的に攻撃力で上回る白熊は「来るなら来い!」と言わんばかりに威嚇行為すらしている始末だ。
結果は相討ちでもなく赤井のスピリットが破壊され、オマケにコアブーストをさせてしまったと言う見るにも耐えない有様である。
相手はやりようのない怒りと悔しさを何とか押し殺し「ターンエンドだ…」と己のターンエンドを告げた。
「では私のターン。『麒麟星獣リーン(RV)』をLv1で召喚ターンエンド。」
「黄色のスピリットだと?」
「「今の私」は差し詰黄色と白の混色使いです。さぁ貴方のターンをどうぞ?」
「っ、その余裕面ムカつく野郎だぜ。俺のターン!『オードラン』をもう一体召喚!更に『モルゲザウルス』をLv3で召喚!」
不測コスト確保の為『オードラン』一体を犠牲にした『モルゲザウルス』のBPは6000。少なくとも今の『ノーザンベアード』とは2000の差がある。だが確かあのカードにはそれ相応の効果があった筈だ。
「アタックステップ!『モルゲザウルス』行って来い!」
「…『ノーザンベアード』でブロック。ブロック時コアブースト!」
「ハッ!『モルゲザウルス』のアタック時効果!アタック時コイツにBP +2000する!『レイニードル』の仇だ!共倒れだぜ!」
『モルゲザウルス』の鉄球の様な尾を『ノーザンベアード』は受け止めるが相手も自分も同じBP8000。双方ジリジリと鬩ぎ合い、最終的に轟音を響きさせながら2つの爆発の花を咲かせた。
だが、あっちが執念深く『ノーザンベアード』を倒す事に必死になっていた様に……こっちにもこっちでまだまだ終わらせる訳には行かない。その為にこのバーストを伏せておいたのだから。
「「相手によるスピリット破壊」によりバースト発動!マジック『ランパートウォール』!このバースト発動時に消滅又は破壊された自分のトラッシュにあるスピリットカードを1枚手札に戻す事が出来る。お帰りなさい『ノーザンベアード』。」
「なんだと⁉︎」
「そして戻した時自分の手札にあるブレイヴカードか系統「武装」を持つスピリットカードをノーコストで召喚出来る!…舞えよ舞え、怪しき也し姫。「異魔神ブレイヴ」____『魔神姫』をノーコストで召喚!」
途端、フィールドに蜘蛛の糸の様な六角形の紋様が浮かび上がりその中から『魔神姫』が持っている扇を舞わしながら顕現した。
名前も聞いた事もなければ、「異魔神ブレイヴ」と言うワードすら知らないバトラー達はそれに驚きを隠せないでいた。「異魔神ブレイヴ」と言うのもそうだが何より____コアが置かれていなくともフィールドに存在しているブレイヴなど普通なら有り得ない。
けれどもそれがしっかりと成されている。
一切の不備も不正も無く証明として『魔神姫』は存在しているのだ。
「ブレイヴがコア無しでフィールドに存在してる…?」
「異魔神ブレイヴってそんなカード聞いた事ねぇぞ」
「一体全体どうなってんだ…?」
誰も彼もが目の前の状況を呑み込めず動揺が広がる。
由比はそんな彼等の反応に内心笑いを溢しながら、変わりのない口調でこう答えた。
「____「バトスピテスター」とは未だ面の世に出て来ていないカードを使い、バトルしながらデータを集めて研究するカードバトラーの事を指します。つまり私達「バトスピテスター」は貴方達の知らないカード使ってバトルする。……言ったでしょう?バトルすれば解るって。」
「つまり誰も手に入らねぇカード使って戦う狡っつー事じゃねぇか!」
「ズル?言いましたよね?研究の為のデータ集めだと。そうしていつか貴方達バトラーの手に下りて来る……循環器の様に私達はテスター者としてこうしてバトルしているだけです。因みに「異魔神ブレイヴ」は維持するコアを必要とせず、疲労せず、スピリット状態である時アタックもブロックも出来ない効果を持つカードです。」
そう言って『ランパートウォール』のフラッシュの効果を使い相手のアタックステップを強制終了させる。
……「狡い」と言われて由比は否定しない。
誰も持たないカードを使って戦う。フェアのカケラなんて一つもない不平等。知らないカードの効果を使って相手を上回るのは「卑怯」と言わずに何とする。
そんな己を嘲笑しながらも、由比は自分のターンを進める。スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ…
「…私達は誰も持たないカードで何処まで相手がどれだけ対応出来るのかもデータ採取項目に入ってます。」
「?」
「そこまで言うのであれば対応してみせて下さい。私達テスター者のバトスピの真意はそこにある。_____戦いを見守りし豊穣の女神!この争いを打つ為に聖なる羽を広げ現れよ!乙女座の12宮スピリット『戦神乙女ヴィエルジェ(RV)』をLv1で召喚!!」
瞬間、フィールドに乙女座の星座が現れ薔薇の花が咲く。真っ白な羽が微かに舞い花弁が一つ一つ捲れ、その中から出る様に『戦神乙女ヴィエルジェ』は現れた。
これぞ数多に入れているカードの中で唯一のキーカード、『戦神乙女ヴィエルジェ』。ふんわりと膨らませた花の杖を掲げ、6枚翼を広げる戦の乙女。黄金色の髪と薔薇達の組み合わせが愛らしさと美しさを目立たせる。
「『戦神乙女ヴィエルジェ』の召喚時効果発揮。自分のライフが5以下の時ボイドからコア1つをライフに置き、相手のスピリット一体を手札に戻す。」
無論その対象は『オードラン』。
この効果で赤井のフィールドはガラ空きになった。一気に勝負を決めるのなら"今しかない"。
「『戦神乙女ヴィエルジェ』と『麒麟星獣リーン』を『魔神姫』に其々左右に
「2体同時
「アタックステップ、左
「ライフで受ける!っ、だが俺のライフは残り3つあるんだぜ?全部は削り切れねぇ筈だ!」
確かに赤井のライフは残り3つ。例え此方に
由比はニヤリと笑いこう告げる。
「いいや赤井長頼、貴方に次のターンは無い。右
「何だと⁉︎チッ!ライフで受ける!」
青いバリアが展開されリーンのアタックで赤井のライフがまた2つ削れる。残りはたった1つ。ブロッカーは0。一方で由比のフィールドにはマジック『イエローリカバー』で回復したヴィエルジェ基
最早誰が見ても結末が目に見えていた。
そうして由比はヴィエルジェのカードに手を翳し、ラストアタックを宣言する。
「
「っ、くそおおおおおおおおおおおおおおっっ‼︎‼︎」
赤井長頼のライフ:0
勝者:乃渡由比