乃渡由比はバトスピテスターである 作:monochrome:黒
幸村が兼続に無事勝利した後、当然ながら由比とのバトルになった。兼続は最後のライフを持っていかれたせいか少々手負いな状態ではあり、「一旦手当ての必要があるのでは?」と由比は言ったが当人が「問題ない。」と頑なに拒否したのでこのままバトル続行の形となった。
正直、既に色んな意味で満身創痍の相手にバトスピをするのは良心が痛む。だが相手がバトルを望むのであれば仕方が無い。やるしかないのだ。懐からデッキケースを取り出し、由比はソレを掲げ叫んだ。
「降りしましませ、「尊星王」!」
叫んだ瞬間、轟ッッッ‼︎と言う音を立てて現れる由比の専用マシン「尊星王」。夜を体現した機体が自らの機体とは正反対と言う太陽が照らす中でも神々しく顕在する。
「尊星王」に乗り込んでデッキをセットすると手札を4枚引いて双方、互いにバトルを始めるいつものお決まりの言葉を叫んだ。
「「ゲートオープン!界放!」」
決まり文句に反応したと同時、河川敷に長方形の光が走りバーチャルバトルフィールドが展開された。ある意味においてこれはバトルの始まりであり、絶対に退く事が許されぬ相対戦だ。バトスピは単なるカードゲームだが…たかがゲーム、されどゲーム。
特に兼続には先のバトルで「愛」の為に戦う熱く何処までも真っ直ぐな信念がある故に、由比は決して兼続に対して油断も甘くも見ない。これは「決闘」。一対一の真剣勝負だ。S級同士気が済むまで戦ってやろうではないか。
先攻は由比。
スタートステップ、コアステップを飛ばし、ドローステップ、メインステップ。手札は見たところ良好だ。それに___________初手から"このカード"を出せると言うのは幸先が良い。手札の1枚を五指で絡め引き抜くと由比は一切の躊躇いもなく"配置した"!
「___司るは灼熱の太陽,その弓矢を以て災いと共に救済を齎す「遠矢の神」よ,今こそこの地にに顕現せり!"
配置したが瞬間、フィールドに光り輝く2つの花弁の様に丸びをおびた中に六角形のシンボルが入った陣が現れ、天にミニチュアサイズの太陽が顕現すると陣の中から太陽と呼応する様に燃える様な髪を靡かせ、空と見紛う青い瞳、頭にはかの神の神話にも登場した…黄金色の月桂冠の被り、ギリシャ特有の布の面積が大きいつつも所々に鎧を纏い胸から臍の部分までを開かせた、胸中央にクリスタルの様なものに光浮かぶ模様を持った屈強な美男子___ギリシャ神話の太陽神にして音楽や医学など多様に司る「遠矢の神」……アポローンが現れた。
マシン横に座する神は此方を見ると軽くハートが出る様なウィンクするが、由比はにこりと笑顔でそのハートをペシンっと弾き返した。何せこの神アポローンは男にも女にもモテる美男子。神話の中でとある川神の娘を追っ掛け回して月桂樹に変えさせてしまっただのそう言った話を持つ程の「ク」に「ソ」の字の神である。しかも気に食わない者には周りを疑心にさせる呪いだの何だのとする様な奴だ。ウィンクされても全然嬉しくない。
「
「"
「御名答です宝緑院兼続さん。これは「
〈封印〉、【煌臨】から続いて現れた新ギミック、「
通常のネクサス破壊効果を受ける事が一切ないのも特徴ではあるが、スピリット又はアルティメット召喚でコアを置き真の力を発揮すると言う特徴も持つ。凄いの一言では表せない程この神のネクサスは強大な力を持つ。そう、例えば
「同名のネクサスがない事により"
フィールドにデッキが現れ3枚のカードがオープンされる。オープンされたのは『アポローンの龍星神殿』『イグア・ドラゴン』『ドラド・ドラゴン』。後者2枚はアポローンの神託対象カード故、ボイドからコア2つがアポローンの上に乗る事になる。
「対象カードは『イグア・ドラゴン』と『ドラド・ドラゴン』、よってアポローンにボイドから2つ
「何⁉︎白のネクサスだと⁉︎」
配置したと同時に先程のアポローンと同じ陣が光り輝来ながら現れ、天にミニチュアサイズの月が顕現すると闇夜に映える様な蒼銀の髪を三つ編みを流したポニーテールのそれはそれは容姿端麗な女性_____布面積多めながらも所々に鎧を身に付けた主に狩猟をメインに作られたであろう装いに、胸元は大きく開き、白色のクリスタルにまるで魔法円の様な光浮かぶ模様を持ち、己の象徴と言わんばかりに大弓を持った女神______アポローンの双子の妹にして月と狩猟、そして貞潔を司る「矢を射かける者」ギリシャ神アルテミスが現れた。
兄のアポローンとは反対の方に座する女神は此方を見ると軽く手を振り微笑む。由比は先のアポローンとは正反対に笑顔で手を振り返して「宜しくね、アルテミス。」と言うと向こうにいたアポローンが何か訴えたそうにジーと此方を見つめていたが自分はガン無視を決め込んだ。この女神は女神で父___最高神ゼウスの女遊びっぷりに辟易して一生その身を純潔のままにしようと決め込み、他の女
赤のネクサスが出た時点で今回の由比が赤使いだと思っていた兼続は白のネクサスに驚きの声を上げた。そんな相手に由比は喉でクツクツと笑い、手札で口元を隠しながらこう言う。
「誰が赤1色だと言いました?今の私は赤白使い、攻撃と防御を兼ね備えたデッキを使っています。……同名のネクサスがない事によりアルテミスの
フィールドにデッキが現れ、上から3枚オープンされる。オープンされたのは『機械戦隊マンモガイザー』『照準機兵ミューゼス』『天王神獣スレイ・ウラノス(RV)』。ミューゼス以外は系統【機獣】を持つコスト3以上のスピリットなのでアルテミスの対象、つまりアルテミスにボイドから2つコアが置かれる事になる。アポローン同様まあまあ順調な滑り出しだ。悪くは無い。
「対象カードは『機械戦隊マンモガイザー』『天王神獣スレイ・ウラノス(RV)』、よってアルテミスにボイドからコア2つを
初手としては上々の采配だろう。
後はここから兼続がどう動くかだ。幸村のバトルで見せてきたあの『蜂王フォン・ニード』……2体目まで出して来たと言う事は"つまりそう言う事なのだろう"。一応フォン・ニードの回復効果に注意しつつ此方も攻撃と防御をしていくしか無い。
「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。『カッチュウムシ』、『シノビコガネ』をLv1で召喚。」
(『カッチュウムシ』に『シノビコガネ』…新たに見る宝緑院兼続のカードだ。確か『シノビコガネ』の召喚時効果は……。)
「『シノビコガネ』の召喚時効果発揮!ボイドからコア1つをこのスピリットに置く、更に召喚コストにソウルコアを使用した時ボイドからコア1つを『カッチュウムシ』に置く。『カッチュウムシ』のコアを移動して『シノビコガネ』をLv2にパワーアップ!」
先のフォン・ニードでも見せた緑属性特有のコアブースト。特に『シノビコガネ』は召喚コストにソウルコアを使用していたらコアをもう1つブースト出来る。『カッチュウムシ』に置いたのは効果が「このスピリット以外のスピリット」だったからだ。2体共、Lv2になるにはコアが3つ必要になる。故に兼続は『シノビコガネ』にコアを集中させLv2、BP3000にパワーアップさせたのだろう。
緑色の甲冑を被った甲虫と,緑に赤のラインが入り鋭利な鋸の様な足を持つ大きなコガネムシ。軽量スピリットとコアブーストを使う緑属性のバトルスタイルはやはり彼の中でもあるようだ。
「アタックステップ、行け『カッチュウムシ』!『シノビコガネ』!」
「何方もライフで受ける!ライフ減少後によりバースト発動、『巨砲母艦マザー・パイア』をノーコスト召喚!系統【機獣】が召喚された事によりアルテミスに
デッキ上から3枚オープンされ、出て来たのは『ダーク・ガドファント(RV)』『フォボス・ドラグーン(RV)』______『月天神獣ファナティック・エルク』。3枚目のカードが出て来た瞬間、隣にいたアルテミスはその容姿端麗で「美人」と評価せずにはいられないその顔を此方に向けて頷いた。ここまで期待されたのであれば答えぬ訳にはいくまい。無論由比が召喚するのは……
「___世界を覆い尽くす宵闇の帳を照らす夜の太陽とは白堊の月光に他ならず。月の化身は純潔の狂気を求め,契りを破りし乙女に天罰を射抜く!出でよアルテミスの
由比が祝詞の様に奏上すれば宙が突如にして光が差す。透き通る様なまるで宝石の如きエメラルド色の角を持ち、ヘラジカをイメージしたであろうスラリとした機械的フォルムの胸元にはアルテミスの眷属たる象徴を示す月の紋章が浮かび、周囲に大弓を携えた『月天神獣ファナティック・エルク』が宙を駆けて現れた。
モチーフはアルテミスの聖獣とされる鹿だろう。彼女は狩猟の女神だ、彼女を象った像には常に鹿が共をしている。自身の
「召喚コスト確保の為マザー・パイアは消滅、系統【機獣】【化神】が召喚された事によってアルテミス並びにアポローンに
「『シノビコガネ』『カッチュウムシ』!」
ファナティック・エルクから放たれる目も眩む様な光を浴びた2体は無慈悲にもデッキの上へと戻されてしまった。文字通りの「更地」だ。これぞ白属性の特徴「ボトム送り」。特にデッキの「下」ではなく「上」を選んだ場合、相手の次のドローステップで"また同じカードをドローする事になる"非常に質の悪い効果である。
ただでさえ緑属性はドロー要素が低い特徴があるので兼続にとっては大きな痛手だろう。先程までスピリットの数が有利だった筈の己のフィールドを見て彼は低く呻いた。
「【界放】……それもまたテスターが使う効果か……!」
「【界放】とは
「……ターンエンドだ。」
由比の無意識の煽り文句に神経を逆撫でされたのか兼続は少々怒気を孕んだ声でターンエンドを告げた。その声に側で見守る兼続の下っ端達が怯える様に青ざめた顔でその姿を見ていた。恐らくここまで「怒り」の感情を露わにした事が無かったのだろう。「悲哀」の感情を見せても、ただただ頭に血が昇り理性を外した「怒り」を見せる事は決して無かったのだ。
それだけ由比の天然煽りを真に受けている。
幸村に負けた尾がまだ心の中で引き摺り焦っている証明だ。
(己の信念を貫いたまま負けた人間にはよくある事………だけどそんな怒らなくてもいいのになぁ。)
ただでさえ此所武蔵に来て初っ端から理不尽に怒られまくった身の上だ。"いくら昔から周りに罵詈雑言を浴びせられて来た"としてもこう静かに怒りを露わにされるのは苦手だ。こう言う時は「近寄らない。関わらない。」が1番なのだ。誰だっていつ爆発するかもしれない爆弾の目の前になんか居たくは無いものである。
「私のターン、『ライト・ブレイドラ』を召喚。ネクサス『アポローンの龍星神殿』を配置。更に『イグア・ドラゴン』をLv2で召喚,系統【星竜】3コスト以上な為アポローンに
メインステップはここまでにして、由比は兼続のフィールドを眺めた。ものの見事なまでにガラ空きのフィールド…無論そうをしたのは由比自身だが「少しやりすぎたかなぁ?」と内心で呟いた。「決闘」を申し込まれたが故(正直勘定に入っているのは自分としては不服だが。)に手を抜けないバトルをせずにはいられない状態を作らせたのは彼方の落ち度、文句など言えまい。
「アタックステップ、『ライト・ブレイドラ』でアタック。」
「ライフで受ける。」
「ネクサス『アポローンの龍星神殿』Lv1の効果発揮、自分のアタックステップで相手のライフが減った時デッキから1枚ドローする。続けて『イグア・ドラゴン』でアタック、アタック時デッキから1枚ドロー。」
「ライフだ。」
『イグア・ドラゴン』がその四足で兼続のフィールド向かって走り出し,ジャンプして背にある鋭い刃を使いグルン!と前回転してライフを削った。これで互いにライフは3、彼方はコアを増やし此方は手札を増やすと言う属性を上手く使いこなした戦い方だ。
由比はファナティック・エルクをブロッカー要員として回復状態で残したまま「ターンエンド。」と告げる。ここまで減らしたのであればそろそろ大型スピリットが来てもおかしくない状況だ。さぁ次はどう出るか、と思案しつつターンの回った兼続の行動に目を光らせる。
「『カッチュウムシ』を再召喚。更にもう2体『カッチュウムシ』を召喚________『蜂王フォン・ニード』を召喚‼︎召喚時効果発揮!ボイドからコア3個をこのスピリットに置く!『蜂王フォン・ニード』をLv2にパワーアップ!」
「出て来ましたね『蜂王フォン・ニード』。こう見るに"ここで決着"を……と言う考えですかね?」
現れ出た黄金色の蜂の王に由比は先の幸村のバトルを思い出してそう告げる。兼続のフィールドにはスピリットが4体、その内の1体はライフを削れば回復する効果持ちだ。対する此方は回復状態のファナティック・エルクの1体のみ。
視線を滑らせれば下でバトルを見守る幸村達が険しい面持ちで此方を眺めていた。特に佐助達は汗をだらだらと溢しながら世界が終末を迎える様な顔をしている。「このままじゃ由比が兼続に負ける。」と本気でそう思い込んでしまっているのだろう。……まぁ実際問題、由比自身もややこの状態には考えあぐねているところだがそれを決して表情には出さない。
幸村と同じ。
相手に不利だと思わせられない様にハッタリでもブラフでも良い。常に強気の姿勢を努めろ。敵に弱みを見せるな。
手札で口元を隠しながらそう考えていると________ふいに兼続が問いかけて来た。
「乃渡由比、お前に聞きたい事がある。」
「あら?自分が有利になったと思って情け心に遺言でも聞いてやろうと思っての質問ですか?正直そう言うの迷惑なんですが。」
「違う。この武蔵、強いてはこの日の本の全バトラーにとって大事な事だ。______乃渡由比、お前はこの国で何をしたい?天下を取る気も無ければ俺や利家、早雲との啀み合いの勘定に入れられている事を不服に思っている。…正にお前は雲だ。何をしたいのか、その意図を掴む事が出来ん。」
相変わらず14歳と言う歳で鍛えられたとは思えない程屈強な腕を堂々と組みながら、兼続は深い紫色の瞳で自分を探る様に見据えて来る。……確かに幸村や利家、早雲や兼続、全国にいるバトラーの殆どが乃渡由比と言う「バトスピテスター」に対して得体の知れない未知数なものを感じているに違いない。
まだ誰も知らないカードを使いバトルする。
それがバトラー達にとっては警戒の心を生み出せずにはいられない事なのだろう。だから兼続は危惧している。
(炎組は唯一利家さんだけは楽しんでいた、群青組の早雲さんは目の仇にした。でもこの人は違う……幸村君のバトルでも思ったけれど宝緑院兼続は私と言う存在を…「バトスピテスター」と言う存在に対して真摯に考えている…。)
「……つまり私がこの国のバトラー達にとって脅威になるか否か、と言う事でしょうか?」
「あぁ。もし脅威になるのであればお前も所詮はかつての無法者達と同じだ、その時は俺のバトスピ愛を以ってその根性諸共捻じ伏せる。」
「随分と心外ですね。問われ答える馬鹿が居るとお思いですか?……と言いたいところですが無法者扱いも困りますし、良いでしょう。私がこの日本に来て成すべき事を少しだけ教えてあげます。」
由比は手札を持っていない手を上げ1本、人差し指をツイと挙げた。
「1つ、「バトスピテスター」として日本でのデータ収集を上から任ぜられたので、貴方方の様なカードバトラーと戦いデータを集める事。2つ、これは単なる私情ですが_________」
中指を挙げて、由比は少しだけ"嬉しさを含んだ声音で"こう告げたのだった。
「_________私の"大切な親友"がこの日の本の国に居るので、探して会いに行こうかと。」
テスターの務めよりそれが本来の目的だと言わんばかりに由比は屈託のない笑顔でニコリと笑った。