乃渡由比はバトスピテスターである 作:monochrome:黒
1つ目は、「バトスピテスターとして日本のバトスピバトラーと戦いカードのデータを収集せよ。」とBSLONから司令を受けたから。
2つ目は、かつてテスター候補生の頃…切磋琢磨し合った大切な友人と「また会おう。」と約束をしたから。
由比にとって前者は後者にとっての都合の良い口実になるだけのものだった。バトスピテスターは休む事なく世界各地を飛び回り、その国のバトラーとバトルをしてカードのデータ収集に努めなければならない。そんな人間になってしまった自分は約束した友に会う事すらままならず月日が経ち、二十歳手前まで来てしまった。
………だから、日本への派遣司令は嬉しかった。漸く会える、約束を果たしに行ける。自分の噂がこの国に流れればきっと友は気付いてくれるだろうから。
「正直に言えば私は貴方の様に「勝たなければならない理由」なんてものはありません。私は「バトスピテスター」、勝っても負けてもカードのデータを収集出来れば何も問題はないんです。」
「……!」
「ですが、貴方達が私が親友に会う為の標を阻むと言うのなら容赦無く倒します。「今」の私は親友と会う為にここに居る。……それが「今の私」の戦う理由です。さぁ…勝てると思っているのならかかって来てください、テスターを簡単に倒せると思っているのならその伸びた鼻を見事へし折ってあげます。」
胸に手を当てて由比は真っ直ぐに兼続の瞳を射抜き、宣言する様に言葉にする。
やれるものならやってみろと、ちっぽけで小さくて取るに足らないと思われる様な信念だとしても「思い」なら決して負けやしないと、その体で表すように。
「ならば見せてみろ、乃渡由比!俺の「愛」と何方が勝っているかを!____アタックステップ、『カッチュウムシ』でアタック!」
「『月天神獣ファナティック・エルク』でブロック!」
翅を広げブゥゥゥンッッ‼︎と言う羽虫特有の音と共に此方に攻めて来た『カッチュウムシ』をファナティック・エルクが自身の周りにある弓矢を引き、高速力で放たれた矢が『カッチュウムシ』を討ち果たし爆発の花を咲かせた。BPの差は圧倒的だった。だがまだだ、兼続のアタックステップはまだ終わらない!
由比の大型スピリットを疲労状態にさせた。
と言う事はつまり__________________
「『蜂王フォン・ニード』でアタック!」
「勿論、そう来ますよね。」
自分のライフを守ってくれるスピリットは誰も居なくなった。フォン・ニードは相手のライフを削った時コア3つをトラッシュに置く事で回復し再びアタックが可能に出来る。後は『カッチュウムシ』にでもアタックさせれば残り3つの由比のライフを削り切れる戦法だ。全く以って用意周到の戦法である。敵ながら天晴と褒め称えるべきか?
バトルを見守っている佐助達が顔を青ざめて「「「「終わりだ〜‼︎」」」」と叫ぶ。幸村と環奈が険しい顔でゴクリと息を呑み、宝緑院組の下っ端達が己の大将が勝つ事を確信して歓喜に喜んでいた。
「………、」
ライフを奪わんと黄金色の蜂の王がその鋭利な獲物を構えて此方に向かって来る。それを見るアポローンが「来てるぞ!どうにかしろ!」と言いたげにアタフタとジェスチャーを送って来た。対して妹の方はやたらと冷静だった、自分が何をすべきか最早理解し「いつでもどうぞ?貴女の好きにして?」と軽く手を振り準備万端だとそれを示す。
由比はそれに応える様に頷いた。
スピリットが全部疲労状態?だからどうした?________まさか…「
ライフを破壊しようと
「『
「何ッッ⁉︎」
フォン・ニードが槍を振り下ろすが、それはライフを砕くよりも先にアルテミスの胸部に浮かぶ陣と同じものが現れ攻撃をガードする。フォン・ニードの効果は「ライフを削った事による回復」……それが無効化された今、ただの疲労スピリットになる他ない。
予想だにもしなかった由比の行動に兼続は瞳を見開かせ、戦慄いた。回復状態のスピリットはまだ2体居る。しかしそれでは由比のライフは削り切れない。『
「っ……それもまた…「
「「
褒められたと思ったのか両隣にいる2柱の兄妹が得意げな笑みを見せて胸を張った。……が、その【
さしものの由比もシリアスな空気をものの見事に破壊してくれた2柱にやれやれと頭を抱えてしまう。そこの兄妹神よ、多少は空気を読んでくれないだろうか?
「ターン…エンドだ…。」
「では私のターン。スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。そこの兄妹神方、そろそろ喧嘩やめてくれないと私も怒るよ?」
「このバトルは貴方達の力が必要なんだから。」と軽く叱責すると2柱は納得はしていないが渋々黙り込んだ。それにアポローンについてはここからが本番だ。【
メインステップは何も召喚せずコアの移動もしないまま由比はアタックステップを宣言した。…このターンで終わらせる。これがラストターンだ。
「アタックステップ、ファナティック・エルクでアタック!Lv2,3の効果発揮!相手のスピリット1体をデッキの下に戻す!『カッチュウムシ』を指定!」
「このままではやられんぞ!フラッシュタイミングマジック『風遁之術』!ソウルコアが置かれていない相手のスピリット1体を疲労させ、もう1体の『カッチュウムシ』にBP+5000する!疲労しろ『ライト・ブレイドラ』!」
(緑属性の疲労効果…!そう言えば幸村君の時は疲労対象が居なかったから前者の効果は不発だったんだ…でもこっちだって!)
緑の旋風が『ライト・ブレイドラ』を取り巻き疲労してしまう。しかし由比は諦めない、ライフを削りに行く唯一の戦法はまだ兼続に通じる筈だ!目には目を、歯には歯を、フラッシュタイミングにはフラッシュタイミングである!
手札から切ったカード、それはもう1柱の________神の化身だ。
「『イグア・ドラゴン』のソウルコアをトラッシュに置き此方もフラッシュタイミング!_____________「遠矢の神」の忠実なる化身よ,赤き太陽と共に勢い良く燃え盛れ!その矢はあらん限りの敵を撃ち抜き…約束された勝利を齎さん‼︎出でよアポローンの
瞬間、由比のフィールドにそれはそれは巨大な太陽の如き火球が『イグア・ドラゴン』を覆った。それを確認したアポローンが自身の弓矢を構えて矢を撃ち放つと、火球がドバァッ!と言う音と共に弾き割れマグマの様に流れ出した。
火球から溢れ出でると____アポローンと同じ燃えるような髪を持ち、所々に黄金色の甲冑を付け、その翼は透き通った神々しいまでの二翼。深い赤の肌に青いラインが走り胸部にはアポローンが持つ紋章と同じものが浮かび上がっており、その両側には黄金色に蒼のツートンカラーの大弓を携えたドラゴン____『
「【煌臨】した事によりアポローン並びにアルテミスに
「ぐっ……!ライフ!」
「ネクサスの効果でデッキから1枚ドロー!」
「だが俺のフィールドにはまだ『カッチュウムシ』が居る。ライフは2つ、【煌臨】したとは言え削り切れんぞ!」
「いいや、削り切る。私はここで宣言しよう、これが"ラストターン"だ!」
アポローンの
ならばどうするか、それは"アポローンと由比の持つ手札"が証明してくれる。
「『太陽神星龍アポロヴルム』でアタック!アタック時効果発揮!BPが最も高いスピリットを破壊する!『蜂王フォン・ニード』を破壊_________そしてこの時、『
「何ッッ⁉︎ライフをだと⁉︎」
アポロヴルムが疲労状態のフォン・ニード目掛けて両側にある複数の矢を持つ大弓が紅蓮の光線を放ち何も抵抗無く黄金色の蜂の王は爆散した。隣にいたアポローンは再び弓矢をギリリッ…と引き兼続のライフ目掛けで矢を放った。放たれた矢は虚しくライフ1つを破壊し、兼続はその衝撃に顔を苦く顰めた。
これぞアポローンの持つ「貫通」効果。
コアが5つ乗った『
「ネクサスが…ライフを削る…⁉︎そんな馬鹿な!」
「「
「だがまだだ!お前のフィールドにこれ以上アタック出来るスピリットは____」
「聞いてませんでした?私はこう宣言した筈です。「これがラストターンだ!」と。……其方にフラッシュが無ければ行かせて頂きましょう。フラッシュタイミング!マジック"『バーニングサン』"‼︎」
由比が手札から切ったカード、それはこの状況において起死回生のマジックだった。そしてテスター候補生時代から長い付き合いのカードでもあるこのカードはいつも自分を勝利へと導いてくれる。
マジック『バーニングサン』。その効果は、
「自分の手札にあるブレイヴカードをカード名に「アポロ」と入っているスピリットにノーコストで
「『カッチュウムシ』!………ハッ!まさか‼︎」
この後に来る事を嫌でも理解してしまった兼続は悲鳴の如く上ずった声を上げる。そんな彼に由比は手札で口許を隠して不適にニヤリと笑った。
ああ、そのまさかだ。
既に隣でアポローンが再び弓矢を構えて、視線で「こっちは準備出来ている。さぁ宣言しろ。」と矢を放ちたくてウズウズしているようだ。『
由比は手札を持っていない手を掲げ、処刑を宣告するが如く声を大きく張り上げて自身の勝利を宣言した!
「『
爆破の花によってその黒色色の煙が舞い上がる。お互い目の前の視界は黒煙で覆われた。しかしその黒煙が一瞬切れ目を見せたのを「
「宝緑院兼続、御覚悟!」
「これが「バトスピテスター」の力……ッッ!があああああああああああああああああああッッッッ!」
アポローンの矢が兼続の最後のライフを削り切る。この勝負、何を言わずとも由比の勝利である。
宝緑院兼続のライフ:0
勝者:乃渡由比