乃渡由比はバトスピテスターである   作:monochrome:黒

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その名は「バトスピテスター」、乃渡由比__参

赤井とのバトルは由比の圧勝で終わった。

その光景に観客席に居るバトラー達は「スゲー!」「ライフ1つも取られずに勝っちまった!」「何者なんだ⁉︎」と思い思いに言葉を口にしては騒いでいる。いつのまにか閑散としていた客席もバトルを何処かで聞いたのか、先程よりも人が集まっており観客席を埋め尽くす程で差物の由比も目を見開いてしまった。

 

「騒ぎを大きくし過ぎたかなぁ」と少し反省しながらデッキをしまって専用マシンを飛び降りる

 

………………と、炎組の人間達が怖い顔でズラリと並んでいた。どう考えてもガンを飛ばされている。少なくとも怒っている理由は先程のバトルだろう。不良(ツッパリ)はこれだから扱いが難しい。彼等の親御さんに深く同情してしまう由比である。

 

 

 

「それでは勝負に勝ったので炎利家を出して貰えますか?」

 

 

「巫山戯んじゃねぇ!あんな勝負で利さんを出せる訳ねぇだろ!」

 

 

「得体も知れねぇS級に利さんを会わせられるか!」

 

 

「そうだそうだ!」

 

 

 

……と言えば非難の大嵐。

「あんな勝負」と言われて仕舞いには「得体の知れない」呼ばわりとは仮にも女の子相手にその暴言はこれ如何に。いやこれ普通に名誉毀損なのでは?と思う自分であった。

 

流石の由比もここまで言われて許せられる程心が広い訳では無いし、御人好しでは無い。なのでここは敢えて怒らず、気持ちの悪い程の笑みたっぷりとした笑みでこう押し通す。

 

 

 

「"約束"って______そう最初に言いましたよね?」

 

 

「つっ⁉︎そ、そんなのあんなバトルで約束を守れる訳ねぇだろうが!」

 

 

「破るつもりですか?東武蔵を占める炎組がたった1人の小娘に臆するなんて笑い草ですね?」

 

 

「んだとテメェ!」

 

 

「!」

 

 

 

由比の無意識の煽りに単純なまでに怒りを表した赤井が拳を振り上げたその時_________それを遮り、由比と赤井の間に割って入る男が1人。紅の鶏冠頭に赤黒い髪を後ろで束ね、へそ出しの深緑のタンクトップに白とズボン。ファー付きの黄色をベースとした黒と赤の上着を着込み黒ブーツを履き、腰には虎が象られたデッキケースが上着の隙間からチラついた。

 

高楊枝を咥え目元に戦化粧を施したその男___炎組の上に立ちこの東武蔵を占めている張本人たる赤属性のS級バトラー、炎利家は目の前の光景に不愉快そうに眉を潜めると赤井達にこう問うた。

 

 

「……テメェ等女相手に何やってんだ。」

 

 

「利さん⁉︎い、いやその、この女が得体の知れないカードを使って来るんでもんで…」

 

 

「そんな奴に利さんに会わせる事は出来ねぇって俺達…」

 

 

 

さっきの威勢の良さは何処へ行ったのやら。利家が出て来た瞬間炎組の人間達は萎縮する様に口籠る。そりゃそうだ、何処の社会でも上司にタメ口で威勢よく口ごたえ出来る人間なんて居ない。しかも目の前の人間が怒っていると誰から見ても解る状態なら尚更だ。

 

部下達の言い訳に「チッ!」と舌打ちすると利家は赤井の拳を下ろさせ、不愉快そうな口調のまま

 

 

 

「女に手を出すってのは趣味じゃねぇ。赤井(コイツ)とバトルして勝ったら俺とバトルする約束してたんならすりゃあいいだろ。」

 

 

「で、でも利さん、」

 

 

「うるせーうるせー。お前等、この炎利家がんなモンでビビって逃げ出す男だと思ってんのか?」

 

 

「それは……」

 

 

「得体の知れないカード?面白れぇじゃねぇか。俺達も知らねぇS級バトラーが使うそのカードを見せて貰おうじゃねぇの。」

 

 

 

不愉快そうな口調から一転。

血走った紅の瞳を好戦的に煌めかせ、口角を上げて利家は部下達にそう告げる。その口調はまるで面白い玩具でも見付けた様だ。

 

完全にノリ気なリーダーに下っ端の誰もが反論出来ずに押し下がった。火種を入れたら勢いよく燃え上がる炎をどう止められようか。下っ端達とは裏腹に、利家の言葉で更に熱が上がるスタジアムは由比と利家のバトルを決して逃れられないものにしている。

 

下っ端達が完全に下がると利家は一度"ある方向に視線を向けてから"此方視線を向けると薄く笑って

 

 

 

「つー訳だ。何処の馬の骨だか知らねぇが次はこの炎利家と遊んでくれや!」

 

 

「望むところです。貴方とのバトルならこのデッキを最大限にまで活かせそうですよ。」

 

 

「いいねぇ!そうやって強気な奴ぁ嫌いじゃないぜ!_______来やがれ!「炎獣王」ッ‼︎」

 

 

 

腰のデッキケースを取り出して掲げ、己の専用マシンの名を叫ぶ利家。途端轟ッッッ‼︎と言う耳朶を叩く様な音を立てて彼の背後に虎を模した専用マシンが降り立った。

 

 

 

(虎を模した専用マシン…なら炎利家のデッキ系統は______)

 

 

 

専用マシンからデッキ系統を推測しつつ由比は「尊星王」に乗り込んでデッキをセットした。

 

相手は関東一の赤属性使いと謳われた炎の猛虎。

バトルのデータ収集の為故、冷静に観察しなければならないのに相手が相手なだけであってこれから始まるバトルがどんな展開になるか楽しみで胸が熱くなってしまう。ふっと気を緩めれば笑みが溢れてしまいそうだ。

 

未だ表に出ていないカードを使いバトルし、そのデータを収集していつか人々の手に下りて来させるのが目的の「バトスピテスター」と言えども根元は同じ一介のカードバトラーである。強い相手を前にして平然となんかしていられない。

 

デッキ上から4枚ドローした由比は対峙する利家を見据えながらこう告げる

 

 

 

「私は「バトスピテスター」乃渡由比!炎利家、いざ尋常に勝負して頂きます!」

 

 

「威勢がいいじゃねぇか、テメェの力出し惜しみ無く見せて貰うぜ!」

 

 

「「ゲートオープン、界放‼︎」」

 

 

 

「バトスピテスター」乃渡由比vs「炎の猛虎」炎利家。

 

お決まりの掛け声と共にS級バトラー同士のバトルが切って落とされた。

 

 

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