乃渡由比はバトスピテスターである 作:monochrome:黒
お決まりの掛け声を叫ぶとスタジアムの床が長方形に光が走り、バトルフィールドが展開される。
先攻は赤井の時同様、由比だ。
手札に来たカードは悪くない。赤井の時は「異魔神ブレイヴ」を出すだけで終わってしまったが…さて、炎利家は何処までやらせてくれる力を持っているのだろうか?
「先攻は私です。スタートステップ、ドローステップ、メインステップ…コスト4の『光り輝く大銀河』をLv1で配置!」
途端、背後に黒よりも深い闇色に散りばめられた星々と象徴と言わんばかりに大銀河が形成される。そのカードが配置された瞬間、スタジアムの観客が一気にどよめいた。当たり前だ、先程まで黄白混合のデッキを使っていたバトラーが突然"赤属性のネクサス"を配置したのだ。
その雰囲気を察したのか利家は訝しげに眉を潜めた。問い掛けようとして口を開き掛けたソレを自分は言葉で遮る。
「赤属性のネクサスを配置しただけで驚かないで下さい。これはただの下準備、私の今のデッキは白と黄色の混色デッキです。……これで私はターンエンド。さぁ次どうぞ?」
「俺のターン。スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ!コスト0の『オードラン』とコスト2の『ヤイバード』を其々Lv1、Lv2で召喚!」
(やっぱり系統「皇獣」を使う赤バトラーだった。)
『ヤイバード』はコスト2と言っても『オードラン』で軽減され実質コスト1での召喚だ。しかもしっかりと『ヤイバード』にソウルコアがのせられていた。
「バトスピテスター」と名乗るからにはそれなりにカードの情報も知識として頭に存在している。それもまたテスターになる資格たる要素であるからだ。だからこそ『ヤイバード』には充分に警戒しなければならない。あれにソウルコアが乗っている時の効果は確か……
(赤属性が得意とする要素の1つ「BP破壊」。破壊された時に6000以下のスピリットを道連れにする効果!)
まるで【呪撃】にも似た効果。
油断をすれば此方が逆に喰われてしまう。赤属性と言うのはそう言う要素があるからこそ自分は警戒の心を忘れない。
「先陣はテメェが切れ!『オードラン』でアタック!」
「ライフで受ける!」
『オードラン』が吹き出す炎が由比のライフを1つ砕いた。これで自分のライフは残り4つ、『ヤイバード』でもう一点狙ってくるかとマシンの手摺りを握り締める___________が、
「ターンエンドだ。」
「ターンエンド…?『ヤイバード』でアタックして来ないのですか?」
「焦るなよ、バトルはまだまだ始まったばかりだ。もっと楽しもうぜ。」
由比の問い掛けに口角を上げて答える利家。
確かにバトルはまだ始まったばかりではあるが…ガンガン攻めて来ないとは然しものの由比も拍子抜けしてしまうと言うか……何と言うか赤属性ならば攻める時は攻めると思っていたので調子が狂ってしまう。
だが冷静になって考えれば彼方にはブロッカーが1体居る状況だ。
その気になればいくらだってブロックに走るだろう。ブロックして、破壊されて、此方のスピリットが道連れ。『ヤイバード』を残してターンエンドしたのは少なからずともそう言う意図があるからだ。ならば精々喰われぬ獲物になれるよう努めるか。
「私のターン。コスト3の『セイルフィッシュ(RV)』をLv2で召喚。ターンエンド。」
「俺のターン。もう1体『ヤイバード』をLv1で召喚。アタックステップ、Lv2の『ヤイバード』でアタックだ!さぁどう出る⁉︎ライフか?それともバトルか?」
利家がアタックを仕掛けたのは無論ソウルコアの乗ったBP3000の『ヤイバード』。BPが5000の『セイルフィッシュ』でも十二分にブロック出来る状況だ。しかし相手には道連れする効果を持ち合わせている。安易にブロックなど出来ない…………と、思うだろう。
しかし由比はフッと薄く笑い"カードに手を翳した"。
それはつまり、
「『セイルフィッシュ』で"ブロック"!」
「かかったな!『ヤイバード』のLv 1,2,3の効果発揮!コイツにソウルコアが置かれている時破壊されたらBP6000以下のスピリットを1体破壊する!テメェも道連れだ『セイルフィッシュ』!」
所々に鎧を纏い剣を持つ鷲の様な鳥が青き飛び魚と上空で相克する。『ヤイバード』が食らいつこうとしては『セイルフィッシュ』が回避し、自らの翅で斬り刻んとす一進一退の攻防を繰り広げていた。
利家の言う通り、『セイルフィッシュ』のBPは5000。『ヤイバード』の破壊判定内に入っている。しかし、…もしも『セイルフィッシュ』にソレを覆せるだけの力があるとしたら?
ガッ!と『ヤイバード』の爪が『セイルフィッシュ』を捕らえる。己諸共破壊する為に剣を持った鳥は必死に羽交い締めにしようとするがそこで由比は『セイルフィッシュ』に力を与える様にこう叫んだ。
「『セイルフィッシュ』Lv2の効果発揮!このスピリットは相手のスピリット又はアルティメットの効果を受けない!『セイルフィッシュ』、そのまま討ち取れ!」
「何だと⁉︎『ヤイバード』‼︎」
由比の言葉に呼応して『セイルフィッシュ』が『ヤイバード』の爪から抜け出し、そのまま一気に翅で斜めにザンッ‼︎と言う効果音が付きそうな程一閃を浴びせ相手の『ヤイバード』は爆発の花を咲かせた。
思わぬ結果に相手は微かに目を見開かせたが、すぐに面白そうに強気の笑みを見せた。
「ハッ、成程な。わざとブロックしたのは隠し球があるからってな訳か。」
「お気に召したのなら結構です。まだまだありますがアタックしますか?」
「いいや、このままターンエンドだ。もっと見せてくれんだろ?その「隠し球」ってヤツを。」
「はい、見せますとも。「バトスピテスター」としてもっともっと見せてあげましょう。ここからがもっと面白くなるんですから。」
ここからだ。ここから漸くこのデッキの真骨頂を見せられる。
赤井では「異魔神ブレイヴ」しか見せられなかったが……目の前の男ならそれ以上の事をさせてくれるだろうと由比は半ば確信を得て自分のターンを宣言した。さあまずは……下拵えその2と行こうか。