乃渡由比はバトスピテスターである   作:monochrome:黒

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烈火の少年少女達__壱

 

炎利家とのバトルが終わり、由比はその後武蔵スタジアムを後にした。利家を倒した事で自分の名が全国に轟くであろう事など露知らず…ただテスターとしての仕事を1つ達成した感覚を覚えながら歩いている。

 

あれだけバトルしたと言うのに日はまだ西に傾いておらず、スマホを見れば時刻は午後13時。ちょっと遅めの昼であった。

 

 

(そう言えば…バトルに集中してたせいかお腹空いたな…。何処かでお昼食べて行こう。)

 

 

今更得た空腹感にお腹を摩り、近くに飲食店が無いか検索エンジンに頼ろうとした時_____背後から声を掛けられた。

 

 

 

「待ってくれ!」

 

 

「そこの者待つでごじゃる!」

 

 

「ゼーハーゼーハー!ちょっと止まってくれよ〜!」

 

 

「?___「待って」と言うのは私の事ですかね?」

 

 

 

いや、実際問題この道を歩いているのは由比しかいないのでガッツリ該当者なのではあるが…呼ばれた事に対して胡乱げな顔をしつつ後ろを振り返った。

 

声の主は6人組の少年少女であった。

1人は13歳程の少年で赤い髪に六銭紋のバンダナで髪を固め、青シャツに陣羽織、やや大きい灰色のカーゴパンツを身につけ更には腰に竜を象ったデッキケースを身に付けている。

 

その少年の傍にいる幼い少女は内巻きのピンク色の短髪で濃紺色のパーカーを頭まで被り可愛らしいリュックを背負ったなんと言うか幼いのに大人っぽい雰囲気がある。

 

そしてその後ろに居る小学生と思われる少年達だ。1人は赤マフラーに茶髪のまるで忍び装束を現代風にアレンジした少年。1人は眼鏡をかけた落ち着いた雰囲気の少年。1人は黒髪にふくよかな体型をした少年。後もう1人は黄土色の髪を結い上げた少年だ。

 

6人組は自分が歩みを止めるのと同時に息を切らしつつ、陣羽織の少年がまず声をかけてきた。

 

 

 

「あんたのバトル俺達も見てたぜ。見た事ないカードを使いこなすあのバトルは初めて見た。凄い強いんだな!」

 

 

「貴方は…?」

 

 

「俺の名前は烈火幸村。バトスピで天下を取る男だ!」

 

 

「そしてお主同じく炎利家を倒したカードバトラーでごじゃる。」

 

 

(ああ…成程、あの時利家さんが視線を向けた相手は彼だったんだ。)

 

 

 

つまるところライバルがスタジアムに居る事に気付いて、利家は幸村に視線を向けたのか。「このバトルを見ていろ」とそう言葉でなく行動で示した様に。

 

と考えて由比はふと、目の前に居る少年の名に気付いた。「烈火幸村」……確か彼もまた__

 

 

 

「貴方もしかすると暫くバトスピ界隈から消息を絶っていたS級バトラーの幸村君ですか?」

 

 

「っ!?なんで俺の事を___」

 

 

「私はバトスピテスターですから。日本のS級バトラー達の情報はある程度把握しているんです。」

 

 

 

これもまたテスターの仕事の1つである。

無論、自分が調べた訳ではなく"自分より上の人間達"が調べた情報を貰い受けた訳ではあるが。

 

深緑色の瞳を見開かせる幸村に由比はサラリと答えると、フードを被った少女が怪訝な面持ちでこう問い掛ける。

 

 

 

「「バトスピテスター」とやらの事、先のバトルで使っていた誰も知らぬカードや効果の事、一体何者なのか…お主には色々と聞きたい事があるでごじゃる。」

 

 

 

的確な問い掛けに由比は内心少女に感嘆した。

少女の問いはきっとあのバトルを見ていた者達全てが思っていた事だろう。だがしかしそれは大まかなものだ。態々"事細かく詳細に聞こうとする者はそうは居ない"

 

身の丈合わぬ程何に対しても疑問を持つ思考能力を持つ少女の視線に合わす様に自分はしゃがむと逆にこう問い掛けた。

 

 

 

「……貴女、お名前は?」

 

 

「拙者は黒田環奈。周りの者達からは「かんべー」と呼ばれているでごじゃる。」

 

 

「では環奈さん。教える代わりに条件があります。」

 

 

「条件でごじゃるか?」

 

 

「この近辺で美味しいご飯のお店に案内して下さい。実はバトル終わってから気付いたんですがお腹ペコペコで……。」

 

 

 

その言葉に鳩が豆鉄砲を喰らった様にキョトンとしてしまった少年少女達と同時、由比の腹の虫が大きく「グゥ〜〜…」と鳴り響いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん〜っ!やっぱり空腹だと何もかもが美味しいですね〜!美味!!美味しい蕎麦のお店に案内してくれて有難うございます!皆さん!」

 

 

 

少年少女達一行に案内されたのは武蔵某所にある蕎麦屋だった。何処にでもありそうな、しかし古きよき和を兼ね備えた様な店内は時間もさる事ながらお客は少ない。それこそ主だった客は由比達くらいだろうと思われる。

 

麺大盛りの鴨南蛮蕎麦を美味しそうに啜る由比を見ていた赤マフラーに茶髪のまるで忍び装束を現代風にアレンジした少年___暁佐助はその姿を不思議そうに見ながらぼやいた。

 

 

 

「そんなに腹減っててよくあの利家に勝てたよなぁ。」

 

 

「バトルをしていると頭のアドレナリンが放出されて他の感覚が鈍くなっちゃうんです。物事に集中して他に注意が行かないのと一緒ですね。」

 

 

「俺だったら絶対腹減ってバトスピ処じゃ無くなっちまうぜ…。」

 

 

「「腹は減っては戦は出来ぬ」と言うけれど由比は反対だね。」

 

 

「逆にそんな状態でバトルに勝つなんて凄いよな。」

 

 

 

佐助の言葉に便乗するように黒髪にふくよかな体型をした少年__太一と、眼鏡をかけた落ち着いた雰囲気の少年__拓馬、黄土色の髪を結い上げた少年__有弥が思い思いに口にする。それが褒めているのか若干貶しているかはさておいて、蕎麦をペロリと平らげた由比は店員に「すみませーん、頼んだみたらし団子お願いしまーす!」と案外気にしていない様子で注文していた。

 

客が少ないのもあってすぐに出て来たみたらし団子の柄を掴みつつ「さてと、」と1つ言葉を置いて、

 

 

 

「お腹も充分に満たされた事ですし本題に入りましょうか。貴方方の問い掛けについて。」

 

 

「宜しく頼むでごじゃる。」

 

 

 

自分の言葉に真摯に頷く環奈。

幸村達も身を構える様にゴクリと喉を鳴らした。6人の光景にふふと微笑しながら答える為に口を開く。

 

 

 

「「バトスピテスター」とは先のバトルでも見ての通り未だに表の世に出ていない___解り易く言えば広く売られる前の新しいカード達を使ってバトルしデータを取り、最終的には人の世に出る事を目的とした特別な資格を持つバトラーの事です。」

 

 

「つまりバトスピテスターが使っているカードはその内俺達にも手に渡って来るって事か?」

 

 

「当たらずとも遠からず、ですかね幸村君。カードが人々の手に渡るか最終的判断は"上の人達"に委ねられますから。」

 

 

「上の人間…?「IBSA」の事でごじゃる?」

 

 

 

International Battle Spirits Association___略して「IBSA」。ここ日の本の国のバトスピ運営機関の事だ。日本のバーチャルバトルシステム普及とそのスタジアムの設置は彼等が行なった事であるし、この国のS級バトラー達はIBSAより専用バトルマシンが付与される。「日本と言えばIBSA」とすら連想される程ベターな存在であった。

 

しかし由比はその問い掛けに否定の意味での横に振った。手に持つみたらし団子を下から順になぞる様に1番上の部分に指を指し、見せびらかせる様にこう答える。

 

 

 

「Battle Spirits League of Nations___略して「BSLON」。IBSAよりも上、Battle Spirits League of Nations(バトルスピリッツ国際連盟)と言う"国際組織"が認めない限り貴方方一般人へのカード販売は出来ません。」

 

 

 

 

「IBSAよりももっと偉い機関がある。」そう提言して。

 

 

 

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