クライン(女)の話   作:カタナ信者

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ほぼオリ主と化した壺井遼花ことクライン(女)がデスゲームで頑張る話です。

よろしくお願いします。



駆けだせ遼花ちゃん(2○才)

システムチックな、どことなく血液を彷彿させる赤の正六角形が点を埋め尽くし、鐘の音が大音量でその空に響き渡る。

 

辺りを見れば、先ほどまで輝いて見えた中世風な街並みも若干赤く染まり、その影すらもない。

 

そして突如テレポートで街に集められた人々、いやプレイヤーに大きな影を落としているのが深紅の空に浮かぶ大きな人の姿。しかし、よくみればそれは中身のない大きなローブそのもの。

 

そして、そのローブは高らかに宣言する。

 

---私の名前は茅場晶彦であること。

---ログアウトボタンは消滅し、目的を成すまでログアウトができないこと。

---その目的とは、この浮遊城アインクラッド最上階のボスを倒すこと。

---また、アバターの体力の全損これすなわち、現実世界での絶命であること。

---既に数百のプレイヤーがアインクラッド及び現実世界から永久にログアウトしていること。

 

 

 

これはゲームであって遊びではない

 

 

 

上空の赤ローブの話が進み時間がたつにつれて、いやでもこれが現実だと認識させられた人々が恐怖に顔を引きつらせる。

 

そして上空に浮かぶ影はその中身のない腕を大きく広げて告げる。

 

『以上で《ソードアートオンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る』

 

そう最後に締めくくると、赤ローブは霞のように消え、空模様もいつもの晴れやかな青を取り戻す。

 

刹那、中世の街並みの大きな広場には様々な感情の込められた叫び声が響き渡った。

 

そんな中、私。壺井遼花は今更ながら、とんでもないところに来てしまったのだと注文してそのままになっているであろう宅配ピザを心配しながら、おおよそ場違いに違いないことを考えていた。

 

 

 

 

 

精神衛生上、負の感情が飽和しているあの広場に居続けるのはまずいと判断し、ひとまず裏路地に移動する。

 

現実世界の自分に近づいた視点で街並みを歩いていくと、たしかにそこに町があるのだと感じさせた。

 

建物の窓ガラスに近づいて自分の顔をまじまじと見つめる。

 

現実世界で二十と数年ずっと一緒に付き合ってきた顔が、普通に学校に行き普通に就職し休日はオタク活動に精をだしていた体がそこにはあった。

 

ペタペタと自分の顔を触って、確かめるとともにその精巧さに驚かされる。全身に関してもほとんど違和感がない。

 

『顔面も含める頭部を丸々覆うヘッドギア。仮想現実へのフルダイブを可能としたその夢の機械、ナーヴギア。ナーヴギアに仕込まれた量子的なセンサによって、これ程の精巧さで再現されている』、らしい。

 

そんなことを、事前に読んでいったスペックカタログから引用し、すごいななんて考えながら遼花はこの後どう行動するべきかを考えていた。

 

 

右手の人差し指と中指をそろえて空中で軽く縦に振る。すると、軽快なおとともにメニュー画面が表示された。

 

「流石にないか...」

 

一応、ログアウトの画面に移行するが、そこにログアウトのボタンは存在していなかった。

 

念のため、と見た結果が空振りに終わると小さくため息をつき、別の画面を呼び出す。現状わかっている情報を整理するために、メモ機能を呼び出した。

 

 

 

・ログアウトができなくなった。

・ラスボス倒すまでログアウトできない。

・死ねば死ぬ。

 

 

いざ纏めようとしても、大した情報が書き出せない。

メモを保存して、メインウィンドウの端に表示する。

 

「何もしなきゃ何も始まんないし...」

 

そうして2○才、そこそこのホワイト企業に勤めるどこにでもいるようなオタク女が導き出した答えは

 

 

「とりあえず、死なないように強くなるか」

 

 

と、まあなんとも短絡的な考えであったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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茅場晶彦による無慈悲な言葉により、仮想を現実と思うことを余儀なくされたプレイヤーはいくつかのパターンに分けられた。引きこもり行動を起こさないもの、集団を作りお互いに補ってゆっくりとだが攻略を進めようとする者、そして最後に一人もしくは少数で攻略に乗り出す者たち、これが後に言う攻略組だ。

 

壺井遼花こと、プレイヤーネーム『クライン』はこの攻略組に当たる。

 

始まりの町で、初期に配布される通貨、コルをすべて使って回復アイテムと武器、食糧を買い込んで敵勢mobが跋扈するフィールドへと飛び出した。

 

攻略組なんて危険が伴うものにどうして彼女は進んでなったのか。安全を確保するためにも、群れで行動した方がいいはずなのに。

 

当然遼花もそう考えていた。

 

しかし、心のどこかでこの仮想世界という未知に興奮していたのも事実。今日のライトノベルのような異世界転生物よろしく、自身が違う世界の人間になれたのだと。そう錯覚することに楽しさを覚えていたのだ。

 

それと同時に、難易度の上昇に伴って将来的に安全圏が縮小だったり消滅することを考えれば、力をつけておくに越したことはないのだ。

 

とくに遼花は過去に熱中していたシミュレーションゲームで、安全だと信じていたエリアで自軍の壊滅、レアアイテムの消失など手痛い目にあった経験もあり、今回に至ってはHPの消滅=現実の死であることを考えれば自己強化は当然だと言えた。

 

とどめとして、遼かはβテストに参加していたのだ。と言っても、仕事もあるため毎日24時間ログインというわけにはいかないが、適度にプレイを楽しんでいた。よって、走り出しに関してはすでに経験があるためつまずかなくて済むというのも、前線に出ようと思った理由の一つだ。

 

 

さて、こうして最前線に出るにあたって遼花はいくつか方針をを考えていた。

 

その一つというのがアインクラッド攻略ではなく、個人のこと。

 

レベル上げと同時に武器を強化することだ。

 

 

まず、武器の強化について。

現実世界のとき、中二病をこじらせた結果剣道部に在籍し、また長期休暇中には殺陣を学んだりしていた経験がある手前、主力武器は片手直剣の派生武器であるカタナにしたい。

 

自身の命がかかっているのだ。命のやり取りはなかったとはいえ、実際の人の動きで慣れのある片手剣、なかでもカタナを選ぶことが一番無難だと考えたからだ。

 

まず、この世界において使える武器は剣や槍といった近接武器しかない。しかし、カタナは初期装備で選べる武器では存在しない。これは、カタナが片手剣からの派生スキルであるからだ。

 

メタい話をすると、剣の世界で売っているのにカタナが装備できない方がおかしい。なので、カタナのスキルを手に入れるのは難しくはない。

 

 

面倒くさいだけなのだ。

 

 

この情報はβテストの時点で判明している。片手剣の熟練度を50まで上げる。そして片手剣(曲刀)の装備を一度もスロットから外さず耐久値が20%を切るまでしつこく使い続けることだ。これが一番面倒くさい。

 

基本的に武器耐久値の欠損は自身のコルや時間をかけて育てた武器の消滅になってしまうため、ほとんどのプレイヤーは耐久値が50%を下回った時点で耐久値を回復させる。しかし、カタナを手に入れるためにはこれらを無視して耐久値を削っていかなくてはならないのだ。

 

βテストのときは、最前線で武器を使い続け、耐久値が減ってきたら安全マージンの取りやすい始まりの町付近の弱いモンスターでちまちま耐久値を稼いで20%を切るのが定石だった。

 

今回も、この方法を採用したいと思う。

 

この情報はβテストの時に運営から発表された。カタナを使いたいという要望は多かっただろうし、実際に本物のカタナを振る体験ができたのはとても興奮したものだ。

 

正式仕様となったSAOで、入手条件が変わってしまうかもしれないがひとまずはこの条件をさっさと満たして武器を手にしたいところだ。

 

同時に、早いところレベルを上げて戦闘時回復のスキルを入試しておきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 







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