仮面ライダーW ANOTHER STORY 仮面ライダーウィング   作:雪見柚餅子

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Chapter 9

 広い倉庫の中で仮面ライダーとミュータミットの激戦は続く。

 

「ハッ!!」

 

 ウィングが両腕を勢いよく振りぬき、前腕に生えた刃で切りつける。その一撃は、拳や蹴りでは通用しなかったサドンダスの頑強な皮膚を僅かであるが傷つけた。

 

「貴様ぁっ!!」

 

 怒りで興奮するサドンダスは、その傷に怯むことなく、鋭い爪で攻撃を仕掛ける。だが感情に任せたその攻撃は単純で、戦闘経験の少ないウィングでも容易く躱すことが出来る。

 

『おらよっ!』

 

 さらに追撃するように、ダブルがショルダーセイバーをサドンダスに向かって投擲する。

 

「邪魔をするなっ!」

 

 だがそれは、サドンダスが広げた翼の一振りで弾かれる。

 

「貴様の相手は私だっ!」

 

 主の戦いに水を差させまいと、ジャガーバンが槍状の右腕でダブルを貫こうとしたが、ダブルは右腕のアームセイバーでその攻撃を弾く。

 

「ここは邪魔が多い……」

 

 いくら広い場所でも、合わせて六人もの超人が争うにはいささか窮屈である。そう判断したサドンダスは翼を大きく広げると、再び空へと飛び立つ。

 

〈WING UP〉

 

 ウィングも後を追いかけるように飛翔した。

 その姿を上空から見下すサドンダス。しかし僅かながら落ち着きを取り戻したのか、その目には理性が戻っていた。そして思考する。認めたくはないが、現段階での飛行能力はウィングの方が上。いくら火力が勝っていても、当たらなくては意味がない。

 

「仕方ない。貴様はここで処分する!」

 

 もはや生かしていても、再び反逆するだろう。重要な実験体ではあるが、逆に我々の計画の障害となるのなら、ここで確実に潰しておかなくてはならない。

 そう判断したサドンダスは全身の力を解放する。それが齎すのは、さらなる変貌。全身の細胞が増殖し、その姿をより人間離れした異形の姿に変えていく。

 

「これが私の真の姿だっ!!」

 

 二回りほど大きくなったその姿。それはまさに御伽噺に出てくる竜、あるいは悪魔に似た姿だ。角は捻じれ、手足の指先からは鋭利な鉤爪が伸びる。さらに翼も倍の二対となり、全身の鱗は逆立ち、目は真紅に染まってギラギラと輝く。

 

「グオオオオッ!!」

 

 咆哮と共に、サドンダスはウィングに向かって突進する。体は鈍重そうに見えるが、巨大となった二対の翼が齎す推進力は、ウィングの予測を遥かに超えていた。一瞬で目の前まで接近し、その鋭い牙で噛みつこうとする。

 

「くっ!」

 

 反射的にウィングは右足でサドンダスの顎を蹴り上げることで、その攻撃を回避する。だがサドンダスは怯むことなく、上がったウィングの足首を左腕で掴むと、力のままに投げ飛ばす。

 

「うっ!」

 

 体勢を整える間も無く、サドンダスが続けて口から火炎を吹き出す。先程受けたものより高温となったその炎がウィングの全身を包んだ。

 どんなものでもあっという間に焦がす炎。サドンダスは火達磨となったウィングを見て、にやりと口を歪める。

 しかしその炎が膨らんだかと思うと、突風と共に炎が掻き消え、中から巨大な翼を広げたウィングが姿を見せる。ところどころ外装が焦げ付いているが、大きなダメージにはなっていない。火炎を受ける寸前に翼で全身を覆うようにガードしたことで、ダメージを最小限に抑えたのだ。

 

「私が……お前を倒すっ!!」

 

 ウィングは叫ぶと同時に、サドンダスに向かって突進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!」

 

 ダブルの回し蹴りがジャガーバンの腹部を捉え、壁へと叩きつける。

 

「何故だ! 所詮は人間なのに、何故進化した我々がこのようなっ!」

 

 スペックだけなら間違いなく自分達が上のはず。それなのに追いつめられているという状況が理解出来ず叫ぶ。

 

『知りたいか?』

 

 そんな彼に翔太郎が口を開く。

 

『俺達には守るべきものがある。それだけだ』

「何が守るべきものだっ! ちっぽけな虫けらの分際でっ!!」

 

 焦りと苛立ちの感情を表出させながら、ジャガーバンがダブルに飛び掛かる。しかしダブルは焦ることなく、自らに迫ってくる槍を顔を僅かに傾けることで躱すと、無防備となった左脇腹に向かって渾身のパンチを放つ。自らの勢いも加わったその一撃を受け、ジャガーバンは大きく後方へと吹き飛ばされた。

 

「これで終わりだ!」

 

〈FANG MAXIMUM DRIVE〉

 

 この隙を逃すまいとダブルがファングメモリの突起を三回たたくと、メモリから鳴り響く電子音と共に、右足に鋭利な刃が伸びる。

 

「「ファングストライザー」」

 

 息の合った台詞と共にダブルは跳躍すると、まるで風車のように回転しながらジャガーバンへ向かって蹴りを放った。

 

「ぐっ!?」

 

 白いオーラを纏ったその蹴りは、槍や盾をいとも容易く引き千切り、ジャガーバンの脇腹へと吸い込まれる。

 ミュータミットといえど、ファングジョーカーの渾身の一撃を耐えきることは出来ず、膝を付く。

 

「天は……我を見放した……」

 

 力無い言葉と共に、ジャガーバンはその場へと崩れ落ちる。それと同時に体内の膨大なエネルギーを抑えることが出来ずに、その身を包み込むように爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈TRIAL〉

 

「振り切るぜ!」

 

 アルマジーグと戦うアクセルは、青いガイアメモリを取り出すと、それをドライバーに装填した。するとアクセルの体が赤から黄、そして青色へと変化する。

 

「色が変わったところで、俺には傷を付けられん!」

 

 アルマジーグは余裕の表情で嘲笑するが、アクセルは無言でアルマジーグに向かって走り出す。だがそのスピードは先程とは打って変わり、目にも止まらぬスピードで翻弄する。

 トライアルメモリはアクセルに超加速能力を与えるメモリ。その速度は他の仮面ライダーのそれを遥かに超える。その速度から放たれる斬撃が何度もアルマジーグに放たれる。

 

「ふん、その程度の攻撃が何になるっ!!」

 

 しかしその攻撃はアルマジーグにはダメージを与えられない。アクセルトライアルは通常時と比べパワーが格段に落ちている。それを補うための連続攻撃だが、アルマジーグの甲殻には傷を付けるに至らない。

 

「おらあっ!」

 

 そしてそれはアルマジーグも同様。鈍重な動きでは超加速したアクセルを捉えることは不可能だ。

 互いに決め手がない状態。しかしアクセルは何の理由も無くメモリを変えたわけでは無い。

 

「もう一度、潰してやるよ!」

 

 アルマジーグは再び全身を丸め球体状に変化すると、高速回転しながらアクセルに向かって突進する。だがそのスピードでもアクセルには及ばない。いとも容易く躱すと、壁にぶつかった反動で止まったアルマジーグをエンジンブレードで切りつける。そんな光景が繰り返され、その度にアルマジーグの甲殻から火花が散る。

 

「くっ、鬱陶しい!!」

 

 攻撃を躱され続け苛立ったアルマジーグは変形を解き、怒りを露にする。

 そんなアルマジーグの前に立ったアクセルは剣をゆっくりと構え、口を開いた。

 

「安心しろ、これで終わる」

 

〈ENGINE MAXIMUM DRIVE〉

 

 エンジンメモリを剣に挿入すると、刀身に膨大なエネルギーが溜まっていく。

 

「良いじゃねえか、そういう真っ向勝負が好きなんだよ!」

 

 その姿を見たアルマジーグは先程の怒りはどこへやら、楽しそうな表情を浮かべ、両腕を盾のように構える。

 

「はあっ!!」

 

 そこに向かって放たれるエンジンブレードによる突き。トライアルのスピードも相まって、その威力は最大限まで高まっている。その一撃がアルマジーグの甲殻とぶつかり合った。

 

―ガキィンッ!!―

 

 倉庫そのものを震撼させるほどの金属音が鳴り響く。アクセルの一撃とアルマジーグの防御。それがぶつかり合った先に有ったのは、エンジンブレードを受け止めたアルマジーグの姿だった。

 

「ふ、ふははっ! やはり俺は不死身だっ!」

 

 勝ち誇ったように自らの堅牢さを不死身と表現するアルマジーグ、それをアクセルは黙ってみている。それを諦めと考えたアルマジーグは右腕を高く上げる。

 

「それじゃあな」

 

 そのままアクセルに止めを刺そうとした瞬間、どこからか乾いた音が鳴る。それはまるで、何かがひび割れるような……

 

「なっ!?」

 

 その音の発生源を見たアルマジーグは驚愕の声を挙げる。彼の視界に入ったもの。それはひび割れて砕けた両腕の装甲だった。

 

「馬鹿め。俺がそこだけを狙っていたことにも気づかないとはな……」

「貴様、まさかっ!」

 

 アクセルはトライアルのスピードを活かして、アルマジーグの両腕の装甲だけを狙って攻撃し続けていたのだ。アルマジーグの装甲は頑強だが、一点に集中して力を加え続ければ、どんなものでもいずれ砕ける。一回で駄目ならば十回。それでも駄目ならば百回。何度も攻撃を行うことで、その守りを打ち破ることに成功した。

 

「所詮、お前の力はただの紛い物。本当の力の意味を知らない」

「何だとっ!?」

 

 アクセルはドライバーからトライアルメモリを引き抜くと、スイッチを起動させ頭上へと投げた。それと同時にアクセルのスピードがさらに上昇に、残像を残すまでの速さへと到達する。

 

「なっ!?」

 

 アルマジーグが驚いている暇も無く、その体にアクセルの蹴りが何十発と連続で叩きこまれる。狙いは装甲を失ったが故に無防備となった腹部。一撃、また一撃とヒットするたびに、アルマジーグは呻き声を上げた。

 そして落下するトライアルメモリをアクセルがキャッチし、再度スイッチを押す。

 

〈TRIAL MAXIMUM DRIVE〉

 

「9.4秒。それがお前の絶望までのタイムだ」

 

 背を見せながら言い放つアクセル。その言葉と共にアルマジーグの全身が青いエネルギーで包まれる。

 

「俺は……不死身だーっ!!」

 

 その断末魔と共にアルマジーグは大きな火柱を上げながら爆散するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だあああっ!!」

「グアアアッ!!」

 

 空中でぶつかり合うウィングとサドンダス。強化されたサドンダスのパワーとスピードは変化前の比ではない。他のミュータミットですら足元にも及ばないだろう。

 しかし、それでもなおウィングは食らいついていた。爪の攻撃には腕に生やした刃で対抗し、尻尾による薙ぎ払いには急上昇や急降下によって回避し、火球には翼を盾とすることで防ぐ。

 いつまで経っても仕留められないことに、サドンダスは業を煮やす。

 

「さっさと落ちろぉっ!!」

 

 その叫びと共にサドンダスはダブルを仕留めた雷撃を放った。不規則な軌道を描きながら、ウィングを撃ち落とさんと迫る。

 

「くうっ!!」

 

 ウィングは火球に対してと同じように翼でガードしようとするが、その威力は火球を遥かに超えている。全身に走る痛みに、思わず意識を失いかける。

 翼に込められたエネルギーが消え、その体が重力に従ってゆっくりと落ちようとする。このまま落ちてしまえば、大怪我は免れない。それでも指一本として動かすことが出来なかった。

 

(私は……負けるの?)

 

 薄れゆく意識の中、青い空を見上げる。どこまでも透き通った色。彼女にとっての自由の証。しかし届くことは無く、その身は落ちていく。

 

(私は……)

 

「ソラちゃん!!」

 

 その時、耳に入ったのは誰かの声。この声には聞き覚えがある。そう、それは彼女を助けようとした探偵事務所の所長である、鳴海亜樹子のものだ。

 

(そうだ、私は……)

 

 最初はただ自由になりたかった。ただあても無く、恐怖から逃れたかっただけだった。しかし、今は違う。自分の身が危険になっても、誰かのために困難に立ち向かう強さを持った人達が居た。見知らぬ自分にも優しく接する温かさを持った人達が居た。まるで青空に輝く太陽のような、あの姿。その姿に強く惹きつけられ、憧れた。自分も逃げるのではく、あのような強さと優しさを持ちたいと……。

 

〈WING UP〉

 

 マフラーに再びエネルギーが巡り、巨大な翼を形成する。そして急上昇しながら、サドンダス目掛けて突進を放った。

 

「ぐっ!?」

 

 今度こそ仕留めたと油断していたサドンダスはその突進をもろに受け、体勢を崩す。だがウィングはさらに上昇していく。それはまるで太陽に憧れるかのように。

 

「何故だ! 何故そうまでして抗う!」

 

 空へと昇るウィングを見上げながらサドンダスは叫ぶ。だがウィングは答えない。どうせ言ったところで理解せず、ただ否定するだけだろうから。

 そして太陽を背に、ウィングはサドンダスを見つめながら、ウィングメモリの突起を三回弾いた。

 

〈WING MAXIMUM DRIVE〉

 

 そしてサドンダスに向かって急降下する。翼から放出されるエネルギーが齎す推進力に加え、重力による加速も加えられたそのスピードは、音すら置き去りにする。

 

「堕ちろっ!!」

 

 そして放たれる蹴りはまるでウィングそのものが槍となったかのように鋭く、サドンダスの体を突きさす。

 

「グオオオオオオッ!?」

 

 その勢いの前に、サドンダスは身動きを取ることが出来ず、ウィングと共に地に堕ちていった。

 

―ドゴオォンッ!!―

 

 二対のミュータミットを倒した仮面ライダー達が外へ出ると、目の前で轟音が鳴り響き、土煙が舞い上がる。

 その煙の中から飛び上がる一つの影。それはダブルとアクセルを見つけると、そこに舞い降りる。

 

「奴は、倒したようだね」

『大丈夫か?』

 

 翔太郎の言葉に静かに頷くウィング。

 

「ふ、ふははっ!」

 

 だがそこに響く不気味な笑い声、仮面ライダー達が警戒すると、ウィングのキックによって生まれたクレーターの中心部に、ボロボロの姿をしたサワが立っていた。だが戦う力は残っていないようで、既に左腕は千切れ、右腕も指先から風化している様子が見える。

 

「所詮、貴様らなどあの方に比べれば矮小な存在……貴様らもそれまでよ……」

 

 負け惜しみのような言葉を発すると同時に、その全身がひび割れ、砂のように朽ち果てていった。

 

「あの方……か」

 

 フィリップが呟く。財団Xは一体何を企んでいるのか……。

 

「皆、大丈夫!?」

 

 そこに亜樹子が走ってくる。翔太郎の体はリボルギャリーに置いてきたようで、今は一人だ。

 

『おう、お前も無事だったようだな』

「うん、ソラちゃんが助けてくれて!」

 

 亜樹子は変身を解いたソラを抱きしめる。その抱擁に彼女は、気恥ずかしさと温かさを感じるのだった。

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