仮面ライダーW ANOTHER STORY 仮面ライダーウィング   作:雪見柚餅子

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Chapter 2

 街中を猛スピードで駆け抜ける一台の黒塗りの車。それを追いかけるのは、黒と緑の二色が特徴的なバイク。

 

「追いかけて来たか。お前達、やれ!」

 

 指示を受け、車の窓から一人のマスカレイド・ドーパントが身を乗り出すと、手にした銃をバイク目掛けて乱射する。

 

「うおっ!?」

 

 放たれる弾丸を紙一重で躱し続ける翔太郎。だが、一発でも当たれば危険だ。それ故に翔太郎は懐から片手で器用に自分用のロストドライバーを取り出して腰に装着する。

 普段であれば自分の真価を発揮できるダブルドライバーを用いるが、そのためには相棒のフィリップの協力が必要だ。そのフィリップは今、回収したもう一つのロストドライバーの解析に集中しているため、ロストドライバーを使うしか無い。

 

〈JOKER〉

 

「変身っ!!」

 

 起動させたガイアメモリをロストドライバーに挿入する。その瞬間に翔太郎の体は漆黒の外装に覆われる。その名は仮面ライダージョーカー。相棒が不在の一年間、この風都を守り続けた戦士である。

 ジョーカーはバイクの速度を上げると、銃を乱射するマスカレイドへと近づく。強化された外装は並みの銃弾では傷一つつかない。

 

「おらあっ!!」

 

 ジョーカーの右拳によるパンチが顔面を捉え、マスカレイドを怯ませる。その隙を狙ってジョーカーは車を抜き去ると、ロストドライバーからジョーカーメモリを抜き、代わりに所持していた携帯電話にメモリを挿す。

 

〈JOKER MAXIMUM DRIVE〉

 

 電子音声と共に、携帯電話はクワガタのような形状に変化すると、猛スピードで車に向かって突進する。そしてすれ違いざまに二本の角で車のタイヤを切り裂く。

 

 

―キキーッ―

 

 甲高い音を立てながら、車はスリップして停止する。

 

「……やってくれたな」

 

 車の中から長身の男が出てきて、苛立ったように口を開く。

 

「全く、目障りな存在だ。ここで排除させてもらう!」

 

 男はそう言うと、ポケットから卵のような形状をした小さな物体を取り出すと、その頂点に有るスイッチを押す。途端に男の周囲に黒いエネルギーが立ち込め、その中から幾つかの光が発せられる。そのエネルギーと光が男と融合するように纏わりつくと、その姿はまるで青いハンミョウのような怪人へと変化した。

 

「これは、ドーパント……なのか?」

 

 未知の姿の怪人に思わず動きが止まるジョーカー。

 男が変身した怪人の名は「ゾディアーツ」。風都から離れた場所にある私立天ノ川学園高等学校。そこで作られた特殊なスイッチを押すことによって変身する、星座の力を宿した怪人である。だが、翔太郎がそれを知る由も無い。

 

 さらに数人のマスカレイド・ドーパント達も車内から姿を現す。

 

「行けぃ!」

 

 ゾディアーツの指示の下、マスカレイド達がジョーカーに向かって走り出す。

 

「くっ」

 

 ジョーカーも気を持ち直し、立ち向かう。

 数でいうなら、明らかにマスカレイドの方が優勢だろう。だが、高々マスカレイド数体に対して、ジョーカーが押される訳がない。

 マスカレイドは元々大量生産品のメモリで変身するドーパントだ。扱いは簡単で有り、低コストで生み出せる戦闘員としては十分な存在だろう。だが、他のガイアメモリと比べると出力は大きく劣り、固有の能力も持ち合わせない。

 対するジョーカーもまた、翔太郎が通常時に変身するダブルと比べると、能力は大きく劣る。しかしジョーカーメモリ自体が翔太郎との相性が良く、その能力を十二分に発揮できるジョーカーは、翔太郎自身の戦闘経験も相まって、データ以上の実力が有る。

 

 群がるマスカレイド達に、ジョーカーは的確な攻撃で打ち倒していく。その光景はまさに圧倒的と言わざるを得ない。

 

「ちっ。俺が相手だ!」

 

 マスカレイド達だけでは相手にならないと判断したゾディアーツがジョーカーに向かって両腕の刃を振るう。

 

「おっと!」

 

 ジョーカーもそれに気づき、軽い身のこなしで躱した。

 

「色々聞きたいことが有るからな。さっさと倒させて貰うぜ」

 

 ジョーカーは振りかぶった拳を放つ。だがゾディアーツは腕の刃で受け止めて見せる。

 

「この程度か?」

 

 ジョーカーの腕を振り払うと、ゾディアーツの刃がジョーカーの胸を切り裂いた。

 

「ぐあっ!?」

 

 さらに連続で振られる刃がジョーカーの体にぶつかり、火花が散る。

 

「はははっ。所詮仮面ライダーなんてこの程度か!」

 

 笑い声を上げて、ゾディアーツは腕を大きく振りかぶった。だがその隙をジョーカーは狙っていた。

 

「はっ!!」

 

 無防備となった胸を目掛けて回し蹴りを放つことで距離を取る。

 

「そう簡単にやられるかよ!」

 

 ロストドライバーから再びガイアメモリを引き抜き、それを腰のスロットに入れる。

 

〈JOKER MAXIMUM DRIVE〉

 

「ライダーキック!」

 

 ジョーカーはゾディアーツに向かって跳躍すると、エネルギーを溜め込んだ右足で蹴りを放つ。

 ゾディアーツも先程のパンチ同様に腕で防ごうとする。だが、

 

―パキリッ―

 

「何っ!?」

 

 ジョーカーの必殺の蹴りを受けた刃に罅が入る。その一撃はゾディアーツの予想を遥かに超えるものだ。

 徐々にゾディアーツの体が後退していく。

 

「ぐっ……こんな奴にっ!?」

 

―バキンッ!!―

 

 そしてゾディアーツの刃が完全に折れ、ライダーキックがその胸を貫くと同時にゾディアーツは爆散した。

 

「よし……」

 

 ジョーカーは息を整えると、背後に視線を向ける。そこに居るのは、変身が解け倒れ伏す男。

 

「それじゃあ、お前には色々話を……」

 

 翔太郎は変身を解いて、男にゆっくりと近づく。だがすぐにその表情が驚愕に染まる。

 男の体が砂のような茶色に変色している。

 

「く……あっ」

 

 声を出すことすら出来ないようで、男は倒れたまま翔太郎に向かって右手を伸ばす。だがそれが何かを捕らえることは無く、力を失い地に落ちると、その全身は粒子状になり崩れる。

 

「……一体、何なんだ?」

 

 翔太郎の呟きと共に吹いた風により、男の体だった砂が巻き上げられ散っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……ん」

 

 少女が目を覚ますと、そこはどこかクラシカルな雰囲気を感じさせる部屋の中だった。少しの頭痛を感じながら、自分がどうしてこのような場所に居るのかを思い出す。

 

「確か……」

 

 気が付いたとき、自分は真っ白な部屋のベッドにいた。その部屋は風都にある病院の病室で有ったのだが、彼女はそれを知らず、その部屋の構成から自分が『あいつら』に捕まってしまったと判断した。

 ここに居ては危険。そう考えた少女はいち早くここから逃げ出すために、部屋の窓を拳で叩き割り、そのまま窓から身を投げた。普通の人間なら大怪我するだろうが、彼女はまるで猫のように身軽に着地してみせると、そのまま走り出した。

 そして逃げる中で自分が居る場所が街中で有ることは分かったが、どこの街なのかが全く分からない。ただ、あいつらに捕まるのだけは嫌だった。ただひたすら、あても無く逃げ続けた。だが結局あいつらに見つかり、車の中に引き込まれ……。

 

 それを思い出した瞬間、彼女はまたあいつらに捕まったのかと身構える。

 そして逃げ出そうとした時、部屋の扉が開いた。

 

「おっ、やっと目が覚めたか」

 

 入ってきた青年が少女を見ながら安心した様子を見せる。

 

「先に行っておくが、ここの窓まで壊すなよ」

 

 そう言う青年の顔に少女は見覚えが有る。自分が気絶させられる前に、あいつらの前に表れた男では無かっただろうか。

 

「とりあえず、ちょっとお前に聞きたい話が有るんだ。こっちに来てもらえるか?」

 

 記憶が確かならこの青年はあいつらと敵対していたような言葉を発していた。

 少女は警戒しながらも、青年―翔太郎に促されるまま彼の後を付いて行った。




【怪人紹介】
ピクシス・ゾディアーツ
●仮面ライダーフォーゼの11、12話に登場した怪人。羅針盤座のゾディアーツで、望む対象を探す能力を持つ。本作で少女を見つけたのも、実はこの能力によるもの。
●フォーゼ内では、物体の軌道を捻じ曲げたり、人間を無理やり移動させるなどの能力を持っていたが、本作は持っていない。代わりに戦闘能力が大きく上昇している。これはスイッチャー(変身者)の性質の違いによるもの。
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