仮面ライダーW ANOTHER STORY 仮面ライダーウィング 作:雪見柚餅子
菓子を食べ終え、ソファに座りながら周囲を伺うソラ。その顔には翔太郎達に対する警戒心は見えないが、どこか不安のようなものが感じ取れる。
「ねえ、ちょっと聞いて良い?」
亜樹子が翔太郎に耳打ちする。
「どうした?」
「この事件が終わった後、ソラちゃんはどうなるの?」
その問いに少し思案して答える。
「まあ、普通なら警察に身柄を渡して……ってとこだが、あの子は立場がな……」
翔太郎の言葉通り、ソラの立場はかなり特殊である。財団Xの実験体だったということから、戸籍も恐らく存在しないだろう。身体の性質もかなり特殊である。
「もしかしたら、うちで保護を続けるってことも有り得るかもな」
「そうなんだ」
「だが、まずは……」
翔太郎はそう前置きすると、ソラに視線を向けた。
「あの子自身がどうしたいかだな……」
―Prrrrr―
そんなことを話していると、突然事務所内に電子音が鳴り響く。
「どうした?」
それは照井の携帯電話の着信音だったようだ。表示される電話番号は、風都警察署内の番号だ。
照井が電話に出ると、真倉の慌てた声が聞こえてきた。
「課長! 今、署に怪人が……っ!? うわあっ!!」
悲鳴が聞こえたかと思うと、そのまま通話は途切れてしまった。
「くっ。 俺は所に戻る!」
「それなら俺達も……」
「来るなっ!」
翔太郎の提案をすぐさま否定し、照井は事務所の玄関に向かう。
「襲撃してきたのは恐らく連中だろうが、そう決まったわけじゃない。それにこれは陽動の可能性も有る。それならお前達はここに残るべきだ」
「……ああ、分かった」
その説明に翔太郎は納得した様子を見せ、照井を見つめる。そのまま風都署へと向かおうとする彼の背に、亜樹子が声を掛ける。
「竜君……気をつけてね」
「……ああ」
大切な家族からの言葉に応え、照井は事務所から出ていった。
「さて、俺達も注意しないとな……」
「そうだね」
フィリップはソラに視線を向けながら返事をした。
「やれ!!」
風都警察署。街の平和を愛する警察官たちが集まるその場は、今謎の怪人によって襲撃されていた。
「怯むな、撃て!!」
何人かの警官が拳銃を発砲によってマスカレイド・ドーパント達を怯ませるが、彼らに指揮を出している坊主頭の男には全く当たらない。
「そんなものが効くか」
それどころか、普通なら見えるはずのない、弾丸を受け止めて見せている。
その圧倒的な存在感に、警察官達は恐怖を感じるが、逃げ出すなんて考えは浮かばない。ここに居る警官達は皆、己の職務に対し誇りを持っている。それゆえ、最後まで諦める気は無かった。
そしてその思いは報われる。
「ハアッ!!」
突如として現れた赤い閃光がマスカレイド達を跳ね飛ばした。
「あれは……っ!!」
真っ赤なバイクの姿をしていたそれは体を人型に変形させる。
「仮面ライダーだっ!!」
仮面ライダーアクセルの登場に、警官達の歓声が響いた。
「こいつらは俺がやる。お前達は怪我人の救出を優先しろ」
「はっ、はい!」
アクセルの有無を言わせない言葉に、警官達は反射的に敬礼をする。
だが、仮面ライダーの登場を望んでいたのは警官達だけではない。
「やっと来たか、仮面ライダー」
財団Xの男も同様にこの状況を喜んでいた。
「一人しか居ないのは残念だが、まあ良い。お前の力を見せてもらおう」
そう言うと男は全身に力を込める。するとその体は膨張し、徐々に人間とは似ても似つかない姿へと変貌していく。
「はああっ!!」
体は一回り大きくなり、茶色い鱗のような装甲で覆われた怪人へと変わった男は、その醜い顔をアクセルへと向ける。
「さあ、お前は俺を楽しませてくれるのか?」
「俺に質問するなっ!!」
怪人―アルマジーグの言葉に対し、アクセルは剣の切っ先を向けて答えた。
同時刻。鳴海探偵事務所は数十分前とは打って変わり、沈黙が場を包んでいた。
―ッ!!!!!―
だがそれも突然の爆発音によって破られる。
「ちっ、来たか!」
舌打ちを一つすると、翔太郎は窓から外の様子を覗く。そこには白いスーツを着た集団―財団Xの姿が見える。
「やっと見つけたよ。さあ出て来たまえ」
白髪頭の男が前に出る。
「よし、行くぞ」
翔太郎はフィリップと亜樹子に視線を向ける。二人は頷くとソラを連れてガレージの奥に行き、翔太郎は外へ出て財団Xと相対する。
「やあ、君が仮面ライダーかい?」
「ああ」
「そうかそうか! 私はサワ。ドクター・サワと呼ばれてる。以後よろしく」
いたって友好的な笑みを浮かべるサワ。だが、その瞳はぞっとするほど冷たい。
「君達は、私が生み出した実験体を保護しているだろう? 私はそれを回収に来ただけだ。大人しく渡してくれると有難いんだが……」
「そう言われて、誰が渡すかよ」
サワの提案を突っぱねる。
「ほう……それは何故だ?」
彼にとって一番重要なのは風都の平和を守る事。ただそれだけのためなら、守る必要は無いだろう。だがソラを最初に見つけたのは翔太郎だ。その責任は持たなくてはならない。
そして何よりも……、
「あの子は依頼人だ。依頼人を守るのが、探偵の仕事だからな」
言葉で依頼された訳ではない。だが確かに彼女は助けを求めていた。それならば助けるのが探偵の役目だ。
「なるほど。全く理解不能だ……まあ、それなら力づくで取り戻そうか」
男が軽く手を挙げると、周りに居た構成員達がメモリを取り出し、マスカレイド・ドーパントへと変貌する。
「行くぜ、フィリップ」
翔太郎も対抗するようにダブルドライバーを取り出して、腰に装着した。
〈JOKER〉
そして転送されたフィリップのサイクロンメモリと、自身のジョーカーメモリをドライバーに差し込む。
「「変身!」」
〈CYCLONE JOKER〉
翔太郎とフィリップの重なった掛け声と共に、翔太郎の体は緑と黒の二色の体を持つ仮面ライダーダブルへと変化した。
「いくぜ!」
勢いよくマスカレイド・ドーパント達へ向かう。
「はあっ!!」
その素早い身のこなしにマスカレイド達は付いて行けず、一人、また一人と倒れていく。
だがそんな状態でもサワは全く焦ることなく、ダブルの戦闘を観察していた。
「なるほど、予想以上に動きが良いが、この程度なら……よし、我々も行こうか」
サワは後ろで待機していた細身の男に指示を出す。
「了解いたしました、サワ様」
そしてサワと男は同時に全身に力を込めた。
「「があああっ!!」」
途端にその体は大きな変化が生じた。サワの体は滑らかな鱗が全身を覆い、背中からは巨大な翼が生える。それに対して、隣に立つ男の体からは長い毛が生え揃い、右腕は槍、左腕は円形の盾のような形状へと変化する。
「なんだありゃあ……」
『分からない。少なくとも、ドーパントではないようだが……』
マスカレイド達を捌きながらも、目の前の光景に絶句するダブル。
「ふふっ、驚いたか?」
そんな中、変貌を続けながらサワは不敵な笑みを浮かべる。
「これこそが人間を超えた究極の生命体、ミュータミットだ!!」
その言葉と同時に変化が完了する。サワの姿は御伽噺に出てくる竜を模したかのような姿に、男は騎士の甲冑を身に纏った獣のような姿となっていた。
「では行くぞ!」
高らかに宣言したサワ―サドンダスは背に生えた翼を広げると、悠々と空へと飛び上がる。ダブルがその姿に気を取られていると、騎士の姿をした怪人―ジャガーバンが飛び掛かってきた。
『翔太郎!』
「ああ!」
〈CYCLONE METAL〉
ダブルは左側のメモリを変え、防御に特化したサイクロンメタルへと変身すると、武器である鋼鉄棍メタルシャフトを振り回すことで、ジャガーバンの刺突を捌く。
「ハッ!」
だがそこに向かってサドンダスが急降下しながら突進を仕掛けてくる。
「くっ!」
ダブルはメタルシャフトを用いて抑え込もうとするものの、その勢いを相殺しきれず、大きく態勢を崩す。さらにそこにジャガーバンの槍が襲う。
「ぐあっ!」
高いパワーと飛行能力を兼ね備えるサドンダス。サイクロン並みのスピードを持つジャガーバン。二体のミュータミットの攻撃により、ダブルは窮地へと追い込まれた。
本作のミュータミットはいずれも元ネタが存在します。