仮面ライダーW ANOTHER STORY 仮面ライダーウィング   作:雪見柚餅子

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Chapter 5

「ぐあっ!?」

 

 宙を自在に舞うサドンダスが放った攻撃を受け、ダブルは全身から火花を散らせる。

 

『翔太郎、ルナトリガーで行こう!』

「オーケー」

 

〈LUNA〉

〈TRIGGER〉

 

 右半身が黄色、左半身が青の形態に変化すると、右手で構えた銃―トリガーマグナムから光弾を連射する。

 

「そんなものっ!!」

 

 サドンダスは空高く飛び、ジャガーバンは持ち前のスピードを駆使して避ける。

 

「逃がさねえよっ!!」

 

 しかし放たれた光弾は分裂しながら、まるでミサイルのようにサドンダスとジャガーバンを追尾する。

 

「何だと!?」

 

 不規則な軌道を描きながら光弾は見事に二体のミュータミットに着弾した。トリガーは他のメモリと比べ、高いパワーを有する。故に大きなダメージが入ったと考えたが、その予想は裏切られた。

 

「ほほう、この程度か……」

「効いてない!?」

 

 サドンダスはその巨大な翼で、ジャガーバンは左腕の盾で光弾からその身を守り、ダメージを最小限に抑え込んでいた。

 

「ミュージアムを壊滅させたと聞いていたが、所詮はただの人間。我々ミュータミットの敵では無いな」

 

 余裕を見せるサドンダスはさらに口から火炎を吐き出し、ダブルを攻撃する。その攻撃をダブルは躱すが、今度は接近したジャガーバンの刺突を受ける。

 

「くっ!」

『まずいよ翔太郎!』

 

 ダブルは六つのメモリを用い、九種類の形態へ自在に変化することが可能。それぞれ様々な状況に対し万能に対応することが出来るが、苦手な相手が存在しないわけでは無い。ダブルの持つ全てのメモリは基本的に地上での戦闘が前提となっている。それ故に、空中戦や水中戦ではドーパントに一歩劣る部分があるのだ。

 そして今、対峙しているサドンダスは空中戦を得意とするミュータミット。現状対抗出来るのはトリガーメモリだけだが、トリガーは他のメモリと比べ機動力が大きく劣るという弱点が存在する。高いスピードを持つジャガーバンにも対抗するには、同じくスピードタイプのサイクロンメモリか、変幻自在のルナメモリしかない。しかし今、ルナトリガーの攻撃を防がれてしまった。サイクロントリガーはルナトリガーよりもパワーが劣るため、変身したとしてもダメージを与えることは難しいことが予測出来る。

 つまり、今変身出来る形態では、目の前のミュータミット達に有効な攻撃方法が無い。切り札である『究極のダブル』も未知の存在相手に通用するか不明であり、そもそも変身する隙が無い。

 

「さて、そろそろ終わらせようか!」

 

 サドンダスはそう言うと、腹部にあるもう一つの口から強力なエネルギーを放出する。まるで雷のように地上へと落ちたエネルギーは、周囲を巻き込みながらダブルを襲う。

 

「ぐああああっ!!!!」

 

 全身が痺れるかのような激痛が走り、地面に倒れこむダブル。そこにジャガーバンが近づくと、腰のダブルドライバーを掴み取り、強引に引き剥がした。

 

「これで邪魔は出来ないね」

 

 ドライバーが外されたことによって変身が解除され、傷ついた翔太郎はただ地面に這いつくばるしか出来ない。

 

「さあ、あれを回収してこい」

「はっ!」

 

 ミュータミットとしての姿から人間の姿に戻ったサワから下された命令に、配下の者たちは忠実に従う。

 古びた建物の二階の部屋。そこにある探偵事務所の前に行くと、鍵の掛かった扉を強引に破り中へ侵入する。

 だが室内には人の姿は見えない。手当たり次第に探すが、あるのは翔太郎の帽子やハードボイルド小説、お菓子の袋など取り留めのないものばかり。

 だが、すぐに男達はあることに気付く。いくつもの帽子が掛けられた壁にドアノブが付いている。その先に有るのは、フィリップが普段生活の場としているガレージだ。男達は一度互いの顔を確認すると、静かに頷いてドアノブを回し、中に入った。

 

「……何?」

 

 しかしそこには何も無かった。普段であれば、ダブルのサポートメカである装甲車リボルギャリーが格納されているが、今は完全にもぬけの殻だ。

 

 

 

 

 

「居ないだと? どういうことだっ!!」

 

 部下からの報告に怒号を浴びせるサワ。それを倒れながら見ていた翔太郎は不敵な笑みを浮かべる。

 

「まさか、貴様……」

「ああ、俺は囮だ。俺達が戦っている間に、他の奴は全員逃がした」

 

 ダブルがミュータミット達と戦っている隙に、リボルギャリーの自動運転機能を利用して、ソラと亜樹子、そしてフィリップの体を別の場所へと移動させていたのだ。自分が戦っている間に事務所が襲撃される可能性や、今のように敗北する可能性を考えれば、これが最もベストな方法であると思い至った。

 

「ざまあねえな……」

 

 ボロボロの体でありながら、サワに対して皮肉を言って見せる。それを腹立たしいと思いながらも、ここで翔太郎の命を奪うのは愚策であるため、怒りを抑え込む。

 ここで仮に翔太郎の命を奪えば、ソラの手がかりが完全に失われることとなる。そうなれば捜索により多くの時間が掛かるだろう。計画に大きな歪みが生じてしまう。それだけは何としても避けなくてはならない。

 

「こいつの荷物を漁れ。連絡用の機器くらいは持っているはずだ」

 

 サワの指示に従い、部下が翔太郎を強引に立たせる。

 

「ついでにこれも持っていくことにしよう。ミュージアムが制作したものを発展させた次世代型ドライバー。我々の計画にも役立つはずだ」

 

 そしてサワが奪い取ったダブルドライバーを持って車に乗り込む姿を、全身を走る激痛に耐えながら視線で追った翔太郎は、無事に逃げた三人が脳裏に過る。

 

(フィリップ、後は任せたぜ……)

 

 誰よりも信頼する相棒なら、きっと彼女のことも守ってくれるはずだ。そう考えながら翔太郎は財団Xの構成員達に引き摺られていく。

 そして誰も居なくなった探偵事務所。その窓から何かが入り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―ギィンッ!!―

 

「くっ!」

「こんなものでは傷一つつかんぞっ!!」

 

 エンジンブレードの一撃を以てしても傷一つつかないアルマジーグの頑強な装甲に、アクセルは苦戦を強いられていた。

 

「それならこれだ!」

 

〈ELECTRIC〉

 

 エンジンブレードにメモリを装填すると、刀身から強力な電撃を放出させる。

 

「ぐおっ!?」

 

 アルマジーグは両腕の装甲で防御するが、不規則な軌道を描く電撃を完全に防ぐことは出来ず、幾らかのダメージを受ける。それが癇に障ったのか、怒りを露にする。

 

「ちっ、面倒な奴だな。それならこちらも本気を見せてやるっ!!」

 

 アルマジーグはそう叫ぶと、全身を丸め巨大な球体へと変化した。

 

「食らえいっ!!」

 

 そのまままるでボウリングの球のように回転し襲い掛かる。アクセルは持ち前のパワーを活かしてその突進を抑え込もうとするが、アルマジーグ自身のパワーと回転が加わったその攻撃の前には形無しである。まるで大型トラックに跳ねられた人形のごとく、アクセルは大きく吹き飛ばされた。

 

「ぐあっ!?」

 

 警察署の壁に減り込むほどの勢いで叩きつけられたアクセルは一瞬意識を失いかける。

 並みのドーパントとは比べ程にならないパワー。アクセルを追い込んだアルマジーグは高笑いをする。

 

「さてそろそろ……ん?」

 

 アクセルに近づこうとしていた歩みを止め、突如として変身を解除する。そしてポケットから携帯電話を取り出すと、興味を失ったかのようにアクセルに対して背を向ける。

 

「残念だがお前の足止めは不要になったようだ。次に会うときはもっと楽しませてくれよ?」

「待てっ!!」

 

 アクセルはすぐに立ち上がって引き留めようとする。だがアルマジーグは背中の装甲の隙間からトゲをミサイルのようにアクセルに向かって放つ。狙いは甘く簡単に躱すことが出来るが、アルマジーグの目的はアクセルを倒すことではない。トゲが着弾すると同時に煙が巻き上がり、アクセルの視界を閉ざす。その隙にアルマジーグは煙に紛れて姿を消した。

 

「……くっ!」

 

 アクセルは逃走したアルマジーグをを探すべきか迷うが、敵が去り際に残した言葉を思い返し考えを改める。

 

「所長たちは無事なのか……?」

 

 足止めが必要なくなったということは、翔太郎達に何かあったということに違いない。すぐに探偵事務所へと戻ろうとしたアクセルだが、そこに着信音が響く。

 それは鳴海亜樹子からのメールを告げる音。すぐに確認したアクセルはその文面に驚愕する。

 

「何だと……?」

 

 そこには簡潔な一文のみが記されていた。

 

『翔太郎君が攫われた』

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