俺と天狐の異世界四方山見聞録   作:黒い翠鳥

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今回は短め。


File No.07-2 太陽神 プロミネディスの記憶

マヨイガなる異界と異世界の神の眷属達の調査を終え、僕たちは帰路についていた。

 

ルミナは異世界の菓子をもらって満足気だ。

マヨイガで出された食事をよほど気に入ったのだろう。

時折菓子の入った箱を見てはよだれを我慢しているのが見える。

 

「ぷいや。ぷうおぷ?(なんですの? わたくしの顔に何かついてまして?)」

 

おっと、じっと見ていたのに気づかれたようだ。

 

「いやいや。あの柏餅というお菓子は美味しかったからお土産の方も期待しちゃうねと思っただけさ」

 

「ぷ、ぷいああう。ぷえぷおあぅ(こ、これはわたくしに献上された貢物ですのよ。どうしてもと言うのであれば分けて差し上げてもいいですけど)」

 

「ふふ、ありがとう。ところで、君は異世界の住人たちをどう思った?」

 

ルミナの抗議を軽く流し、今回の調査対象について聞く。

 

「ぷぅ。ぷおぷい、ぷいあぅぷおぁ。ぷいあ(そうですわね。眷属の力の大きさには驚かされましたが、真っ当な神の(しもべ)のようでしたし、異邦人である事も自覚して動いているようです。特に気にする必要もないのでは?)」

 

眷属の力の大きさもだけど、神の強さも相当だ。

残された神気や眷属からの情報を考えるに、下手をすると僕らをも上回る可能性がある。

それでいて最高神では無いというんだから、いやはや、異世界は魔境だね。

正直、宇迦之御魂なる神がこちらに来ていなくて良かったと思える。

 

「そうだね。眷属の方は放置でいいだろう。余計なちょっかいをかけて()()()()が出てこられても困る。善性の強い今のままでいてくれた方がいい。多少、善の在り方が僕達とは違っていてもね」

 

あの性格なら多少はこちらに干渉するだろうが、基本的にこちらの利になる干渉だ。

既にフェルドナという神と縁を持っているようだし、無理に止めさせるより我が子(守護下の人間)達に益になる付き合いをした方がいい。

 

フェルドナは気付いていないようだけど、使いかた次第では信仰の図版をひっくり返すほどの恩恵を既に受けている。

後はフェルドナがそれに気付くかどうかだ。

 

直接僕が言ってしまってはコン君の機嫌を損ねる恐れがある。

それはあくまでフェルドナに贈られたものだからだ。

ある意味、神の試練のようなものだ。

それを神の眷属が別の神に対して()()()というのが凄いのだけど。

 

とはいえ、さりげなくヒントを出すくらいならいいだろう。

その恩恵は我が子(守護下の人間)達にとっても太陽神たる僕にとっても有益だ。

他の神達にとっては知らないけどね。

 

「眷属の方はいいとして、異世界の人間についてはどう思った?」

 

「ぷいあぅ。ぷおぷお(別に普通の人間でしてよ。多少気使いは出来るようでしたけれども)」

 

普通の人間──神の眷属が憑いている事を除けば、肉体的・霊的には普通の人間と変わらない。

僕だって彼の過去を読み解かなければそう思っただろう。

 

「あの人間はある意味において『神の天敵』だ。なるべくなら関わりたくないな」

 

既に認識されてしまった以上、多少の影響は覚悟しないといけないだろうけど。

 

「ぷいあ(どういう事ですの?)」

 

「彼の在り方は神を変質させる。下手をすれば原型を保てないほどにね」

 

フェルドナという神と出会った時、彼はその存在を受け入れた。

違う神話体系の神と言う異物を、歓迎するでもなく、拒絶するでもなく、受け入れる。

それも自身の信仰に矛盾しないように溶け込ませる。

 

既にフェルドナは彼の信仰に取り込まれたと見ていいだろう。

無論、フェルドナがこちら側の神である事は変わらない。

ラルク村の守護神としては今までと変わらないだろう。

 

彼がただこの世界に迷い込んだだけの異邦人であれば問題は無かった。

フェルドナを信仰する人間の一人として大勢の中に埋もれ、大した影響はもたらさなかっただろう。

 

だが、彼はマヨイガという異界と共に来てしまった。

あの場所は独立した世界そのもの。

その世界で唯一の人間たる彼から信仰を受ける。

それは逆説的に世界の全ての人間から信仰を受けることを意味している。

 

結果、フェルドナは変質した信仰をもろに受けることになる。

僕やルミナのような広く信仰されている神であればある程度は問題ないが、小さな村の土地神でしかないフェルドナにとっては致命的だ。

 

とは言え、悪い事ばかりではない。

上手くいけばより強大な方向に変質する事もある。

どうやら彼のフェルドナに対する評価は高いみたいだし、悪い結果にはならないだろう。

 

そして問題はそれを本人(信仰された神)が認識できない点だ。

なんせ気づかぬ内に変質しているのだ。

外側から認識されてようやく理解できる。

 

そして気付いたところで(あらが)(すべ)はない。

何故ならその変質は悪意ではなく願いによるものだからだ。

不快感よりも心地よさが(まさ)ってしまう。

 

何故そんな事になるのか。

これは彼の信仰形態に原因がある。

彼の国ではあらゆる物に神が宿っているという。

彼にとって神様とはありふれた存在なのだ。

 

だからこそ、違う世界の神すらも()()()()()()()()()()()()()()()()

 

信仰もするだろう。畏怖も感じるだろう。敬意も持つだろう。

決して神を軽んじることは無い。

 

だが、そのうえで遠慮も容赦もしないのだ。

遠慮が無いから何だろうと祀り上げる。

容赦がないから思ったままに信仰する。

 

恐ろしい事にこれは彼が異常なのではなく、彼の国ではありふれた信仰形態だという事だ。

なんなのだそれは。

下手に信仰される(見つかる)と世界を滅ぼす邪神ですら変質させられそうだ。

気づいたら別物になって(美少女化して)そうな気さえする。

 

それをかみ砕いてルミナに伝える。

 

「ぷぅ(では……)」

 

少なくともマヨイガに訪れるのは控えておいた方がいいだろう。

こちらの世界で会う分には問題は無いが──

 

「ぷいあうぷあいあ、ぷお(彼にわたくしが本来は背が高くて胸が大きくていい感じの肉付きをしている美しい女神だと吹き込めば、そうなれるって事ですわよね)」

 

──彼は外出は……え゛!?

 

いや、まぁ、理論上は確かにそうだけども。

 

「ぷあいい。ぷおぷぅ。ぷい。ぷいう?(これは定期的に会いに行かないといけませんわね。少しでもいい印象を与えるためにお土産も用意して。名目はどうしましょう。定期監査だと印象悪いかしら?)」

 

あー、うん。

君がいいんならいいかな、うん。

僕は行かないから、行くなら一人で行ってね。

 

空を旅する二柱(太陽と月)の片割れだ。幼い姿でも旅する事に問題は無い。

 

「ぷい、ぷぅ。ぷいやぷお(待っていなさい、未来の私。目指せスーパーロイヤルわがままボディですわ)」

 

一人で輝かしい未来を夢見ている相方にため息をつきながら、マヨイガから続く道を歩く。

 

この出会いが良い未来に繋がるように。

そして我が相方に迷惑をかけられるだろう彼に届かない謝罪をしながら。

できればちょっとだけ容赦してあげて欲しいなと願望を込めて。

 

僕たちは旅をする。

 

「ぷぃ、ぷぃ、ぷあーう!(えい、えい、おーですわ!)」

 




実は既に変質が始まっているルミナ神。

初めてアンケートを取ってみました。
本編に反映できるかは確約できませんが、参考にさせていただきます。

ルミナ神の明日はどっちだ?

  • 願望通りのわがままボディ
  • むしろ幼女化が進む
  • 食いしん坊になる
  • 髪がドリルになる
  • チョロくなる
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