俺と天狐の異世界四方山見聞録   作:黒い翠鳥

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Folder-1 波瀾万丈
File No.01-1 『袖振り合うも多生の縁』


異世界に来た初日。

 

マヨイガの外がどうなっているかも気がかりだが、まず必要なのは生活基盤の確保である。

すなわち 衣・食・住 だ。

 

これが漫画とか小説ならまず異世界の人と出会って──とか村や町を見つけて──となるのだろうが、俺の場合は幸運にも場所が良かった。

 

なんせマヨイガである。

目の前にでっかい日本家屋が建っているのだ。

 

庭には色鮮やかな花が咲き並び、裏の畑には様々な野菜が植えられている。

家を囲む木々には木の実や果物がこれでもかと実っているし、立派な鶏が何羽も放し飼いにされている。

 

中に入れば少々古めかしくはあるが塵一つおちていないし、生活するために必要な家具や道具は大体揃っている。

道具の型は古く、江戸時代辺りに使われていそうなイメージのものばかりだが、それ自体はまるで新品のようなものばかりだ。

 

倉には米俵が山と積まれ、仕込み桶には出来たばかりの味噌や醤油が詰まっている。

さらに囲炉裏には赤々と炭が燃えており、吊るされた鉄瓶の中では湯が沸いている。

 

 

それでも人の気配は全くしないがな。

 

 

それもそのはず、ここは人が住むような場所じゃないのだ。

 

マヨイガとは一つの完結した世界であり、マヨイガという一つの(あやかし)であり、無数の妖の集合体でもある。

即ちここ、妖怪屋敷なのである。

 

周囲の木々から食器から家そのものまでそこらじゅう妖怪だらけ。

さすがに付喪神のように自ら動き出すようなのは────割といるが、積極的に人に危害を加えるようなのはいない。

敬意と礼さえ持っていれば、中で寛いだり台所や風呂を借りるくらいは問題ない。

 

ただ、住むとなるとまた話が違ってくる。

妖の領域に人間が居座るわけだからな。

その為、何とかマヨイガに住まわせてもらえるようコンにマヨイガの意思(マヨイガを構成している無数の妖の集合意識……らしい)と交渉してもらっている。

現世に帰るためにはマヨイガが引き戻される時にその場に居ないといけないからここを拠点にする他無いんだよな。

 

そして交渉自体は割とすんなり決まり、俺は条件付きでマヨイガに住むことを許された。

その条件も『現世と繋がったら逢魔時(おうまがとき)までには退居する』『マヨイガから道具(妖怪)を持ち出した場合、必ずマヨイガに持ち帰ること』の二つだけだ。

正直破格と言ってもいい。

 

さすがコン、頼りになる。そしてマヨイガ、懐が広い。

 

ちなみにだが、持ち帰り必須は妖怪だけなので、それに付随するものは持ち帰る必要はないとのこと。

例えば仕込み桶を持ち出した場合、桶は妖怪なので持ち帰る必要があるが、中の味噌などは妖怪ではないので外で振舞ってきても大丈夫なのだそうだ。

 

とりあえず居住許可をゲット!

食事についても、食材はマヨイガにあるものを使って良いそうなので一安心だ。

ここの鶏は妖なので駄目だが卵は問題ないし、木々に生っている木の実や果物は取っても良い。

畑の野菜も妖怪では無いので食べられる。

倉の中の米や調味料についても、桶などの入れ物は妖怪だが中身は本物なので食べても大丈夫。

しかも妖怪のおかげで、取っても取っても中身が減らないのだそうだ。

 

妖怪って凄いな。物理法則超越してるぜ。

そうコンに言ってみたら、『何を今更』と言われた。

確かに今更だったわ。

 

ついでに居住中はマヨイガの中の道具を自由に借りてよいことになったので、衣・食・住が一発で揃う事となった。

 

本当にコンが居てくれて助かったよ。

今日の夕食はコンの好物を……と思ったが、肉類は無かった。

油揚げもまず豆腐から作らないといけないうえに、大豆はあるようだがにがりが無い。

なので残念ながら無理そうだ。

 

とりあえずコンが生活基盤を確保してくれたので、さっそくだが着替える事にする。

現世に戻る時はこの服で戻る必要があるからなるべく痛めたくないのだ。

 

下着は……あ、(ふんどし)しか無いんだ。

 

袴と……着物……え? 小袖?

 

着付けが分かんないんだが、どうすればいいの? これ。

 

へぇ、こうやって着るんだ。

 

うお!? 袖口から何か俺のじゃない手が伸びて来たんだが!

 

え? 小袖の手? 小袖の手って怨霊系じゃなかったっけ?

 

この小袖の手は良い妖怪?

 

そうなんだ。まぁ、マヨイガの妖怪だもんな。

 

これからよろしく。

 

────などとハプニングもあったが、コンの協力を得て何とか見れるのではないかという感じにはなったと思う。

 

「どうだ? 似合うか?」

 

鏡の前でポーズを決めてみる。

鏡の中の俺が違うポーズを取っているが、そういう鏡の妖怪らしいので気にしない。

むしろ着付けの仕方を鏡に映して教えてくれるあたり親切な妖怪である。

 

『可もなく不可もなくじゃな』

 

あっそう……。

 

「そういえばコン、今マヨイガから出たら異世界に出るのか?」

 

『そうじゃな。『境界(きょうかい)』を通っていく必要はあるが、この辺は現世に戻る時と同じじゃ』

 

『境界』というのは異なる世界を分ける場所であり、異なる世界が交わる場所の事だ。

 

そう聞くとなんだか凄い場所のように聞こえるが、実際は意外と身近に存在する。

代表的なのが道と道の交わる交差点『(つじ)』、山道の登りと下りを分ける『(とうげ)』、川の手前と奥を繋ぐ『橋』あたりだろうか。

家の外と中を分ける『門』、部屋を分ける『障子(しょうじ)』、井戸やトイレなんかも実は『境界』だったりする。

 

ちなみに俺がマヨイガへ来るために使っていた境界は家から五分ほどのところにある川にかかっている古い石橋だった。

家の門とか使えれば楽なんだが、ある程度の『(かく)』を持つ境界で無いとマヨイガには至れない。

出る時はかなり『格』の低い境界でもなんとかなるんだけどな。

 

基本的に時を重ねるほどに『格』が増すらしく、その石橋は築150年ほどだとコンが言っていた。

 

『まぁ、外がどのような場所かは分らん以上、先に儂の千里眼で見ておいた方が良いじゃろう』

 

そりゃそうだ。

 

どの境界を通るか選ぶことは出来るが、知らない場所だとランダムになっちゃうからな。

下手すると瘴気の溜まっている危険地帯に出ることもある。

 

特にここは異世界だ。

どんな危険があるか分かったもんじゃない。

 

そもそも好奇心で聞いてみただけで外に出る気は無いのだ。

とは言え、興味はある訳で……

 

「俺も見たいから憑いてくれ」

 

『承知じゃ』

 

するとコンは俺の中に入り込むように消える。

俺の肉体にコンと言う霊体が入り込んだ形だ。

『稲荷下げ』と言うやつだな。

 

この状態だと俺の思考がコンに駄々洩れになる上に、コンがその気になれば肉体のコントロールを乗っ取る事も出来る。

もっとも、コンはそんな事しないと信頼しているし(緊急避難的にすることはあるし、貸してくれと頼まれる事もあるが)、思考についてもコンは読心出来るので今更だ。

 

そんな事よりもこの状態だとコンの神通力や妖術を俺も使えるようになるというすごい恩恵があるのだ。

 

あんまり強い力を使うと体や俺の魂に負担がかかるので、使える力の大きさは制限されているが、念力や狐火くらいは問題なく使える。

千里眼や未来視は負担が大きいので不可。

ただし『稲荷下げ』状態でもコンだけが見る場合は問題ないので、コンが見たものを幻覚で俺にも見せることで疑似的な千里眼や未来視をする事は出来る。

 

ちなみにだが、実はこれ思考が駄々洩れになる事を利用して俺が使いたい時に使いたい場所にコンが神通力や妖術を発動しているのだ。

なので正確には『神通力や妖術が使えるようになった気分になれる』だけなのだが。

 

 

話を戻そう。

 

千里眼を(コンが)発動してその景色を目の前にモニターのように映し出す。

俺用の疑似千里眼だ。

 

そこに映った光景は……

見渡す限り木・木・木・木・木・木・木・木・木・木・木・木・木・木・木。

 

 

「木、ばっかだな」

 

一体どこの境界に出たのやら。

 

『洞穴じゃな。こっちにあるぞ』

 

コンがそういうと千里眼モニターの映像がぐるりと回り、少し下を向く。

なるほど、地下に続いている穴がぽっかり開いている。

地下と地上を繋ぐ境界だった訳だ。

 

ちなみにこの先はどうなってんだ?

 

『少し進むと地下水が涌いておる。多少広い地底湖のようになってはいるが、それだけじゃな。そこで行き止まりじゃ』

 

あっそう。

 

しかし森に出たか。

見た感じ結構深い森の雰囲気がする。

地面の傾斜があまり無いから山ではなさそうだ。

 

「まぁ、上から見れば早いか」

 

森の中を闇雲に進んでも意味がなさそうなので、視点を上空へもって来て航空写真のようにする。

何かの集落でも見えれば御の字なんだが……

 

しばらく高度を上げていくと、かなり大きめの川が流れているのが見える。

軽く水源を辿ってみると、画面上の方が大規模な山脈になっていて、そこから流れる複数の川が一つに集まってこの大きな川を形作っているようだ。

川があるなら近くに村や集落がある可能性がぐっと高まる。

この世界に人間がいるかは分からないが、もしいるのなら水の確保が容易な川の近くに生活拠点を置いている可能性が高いからだ。

 

俺は疑似千里眼の高度を上げるのを止め、視点を川の流れに沿って動かす。

あまり高度を上げすぎると地表が見えづらくなるからな。

 

暫くすると木々がまばらになり、森を抜けた。

それからすぐに、家屋と思われる人工物を発見する。

それも複数。

どうやら何者かの居住地(この規模からいって村だろうか)を発見出来たらしい。

 

遠目には木造建築の小屋のような家らしきものがそれなりの距離をおいていくつも並び、それをぐるっと柵らしきもので囲っている。

畑の様なものも見えることだし、うっすらと道のようなものも見える。

これはほぼ間違いなく村と断定していいだろう。

 

流石に遠目からでは様子がよく分からないので疑似千里眼を近づけ……

 

『待て、タケルよ』

 

……ようとしてコンに止められた。

どうした? コン、何かまずかったか?

 

『かの村に神気が見える。おそらく『神』に連なる者が祀られた社があるのじゃろう。気づかれては印象が悪い』

 

おっと、そりゃまずいな。

 

望遠鏡で覗いているようなもんだもんな、これ。

視線を感じてそちらを見たら望遠鏡で誰かがこちらを覗いていました──みたいな状況になると。

どんな相手かは分からないが、まず良い印象は抱けないわな。

 

俺たちが生活基盤のない流れ者ならば多少のリスクを覚悟してでも情報を得るべきなんだろうが、幸いにして俺たちにはマヨイガがある。

最悪現世に戻るまで引きこもっていることも可能なのだ。

 

外から何か来る可能性が無きにしもあらずなので外を無視する訳にはいかないが、最初はなるべくリスクの少ない方が望ましい。

 

「了解。村には近づけないようにするよ」

 

とりあえず千里眼を森の方へ戻す。

今後接触する事があったとしても慎重に行くべきだな。

 

『少し森の中も見ておいた方が良かろう。なんぞ居るかもしれんからの』

 

なんぞってなんぞ?

 

そういえばマヨイガには肉類が無いのだった。

大豆や鶏卵はあるのでたんぱく質は何とかなるが、さすがに寂しいものがある。

鹿や猪でも生息していればありがたい。

 

狩猟に解体?

コンが出来るから大丈夫。

 

しばらく視線をうろうろさせてみるが、小動物しか見当たらない。

小動物は地球の動物にそっくりなものもから、図鑑ですら見た事が無いようなものまで多種多様にいるんだが。

 

そしてそれなりに時間が経過し、そろそろ一旦切り上げようかと思っていた時……

 

『タケルよ。人間が居ったぞ』

 

なに! 何処だ!?

 

どうやら別の千里眼(最大四つまで同時に使えるらしい)で違う所を見ていたコンが人を発見したらしい。

疑似千里眼の視界が高速で移動する。

結構森の奥に入り込んでるな。

 

視界が止まると、そこには生茂った草木の影に身を縮めて隠れている人間がいた。

見た目で判断するなら成人しているか否かといった年頃の女性だった。

顔付きは日本人とそんなに変わらない。

髪の色が青だったが。

しかし、何かを恐れているように震え、服はボロボロであり、体中に無数の擦り傷や切り傷が見える。

特に左腕の傷は大きく、流れる血が止まっていない。

 

何かあったのが一目瞭然だ。

一体何があったんだ!?

 

『これのせいの様じゃの』

 

コンがそう言うと別の疑似千里眼が開く。

そこに映っていたのは……

 

「熊……か?」

 

『熊じゃな』

 

目算3メートルサイズの熊だった。

額に角があって体毛が濃い緑色なのはこの際気にしないでおく。

その熊は顔をきょろきょろと動かし、鼻をひくつかせている。

何かを探しているのだろう。

もしかして、探しているのはさっきの女性か?

 

『その様じゃな。(未来)を見てみたのじゃが、あの人間、あと四半刻(30分)もせんうちに見つかり、食い殺されるぞ』

 

ちょぉっ!

 

いきなり恐ろしいこと言わんでくれ。

え? マジなの!?

 

『マジじゃ。して、どうする?』

 

コンが尋ねてくる。

何を? とは聞かない。

あの人間を助けに行くか、無視するかと言う事だ。

 

正直あの女性と俺たちの接点など何もなく、ここで千里眼を解いてしまえば、ニュースでどこぞの誰々が事故死したと聞いたくらいの感じで済むだろう。

外と関わる必要の無い世界にいるのだ。

外から干渉が無い限り、こちらからは関わらない方がベターだろう。

 

 

しかし……正直、無視するには気分が悪い。

本来なら無関係なこの女性と俺たちは、コンが見つけた事で縁を得た。

 

『袖振り合うも多生の縁』

 

縁があるなら、前世で関わりのある相手かもしれない。

そう思うと多少の情も湧く。

外と関わる必要が無くても、外と関わってはいけない理由は無い。

 

決めた。

あの人を助けるぞ…………コンがな!

 

ここで俺が助けるとか言えたら格好いいんだろうが、コンが助けるかどうか聞いてきたという事はそういう事だ。

コンは基本的に俺が出来る事には手を貸さない。

俺ではどうにもならない部分だけ助けてくれたり天の時を引き寄せてくれたりするのだ。

 

要するに今回は「あの人間を助けたいならタケルだけでは厳しいから儂が手を貸すぞ」と言ってくれているのだ。

コンには(俺の意向以外で)助ける理由が無いのでその気がなければそもそも聞かないからな。

 

『承知じゃ。任せよ』

 

俺の思考を読み取ったコンがそういうと「こ~~~ん」と甲高く鳴いた。

すると家の方から何か飛んでくる。

コンが憑依する事で強化された視力で見てみると、どうやら狐のお面の様だ。

具体的には「白狐」ではなく「天狐」の方な。

 

大して勢いがあった訳でもないので難なくキャッチする。

 

『念のためそれを憑けておれ』

 

ほーい。

ん? なんか「つける」のニュアンスが違わなかったか? まぁいいか。

 

とりあえず面をつけてみる。

凄いなこれ。

紐とか無いのにまるで吸い付くようにぴったりとくっついて落ちない。

そして付けているのを忘れそうなくらい軽くて、口元まで覆っているのに全く息苦しくない。

 

「それでは行くかの。そうそう念のため本名は名乗らんようにな」

 

ん? それは何でまた……あぁ、呪詛対策か。

異世界で何があるか分からないからな。

もっとも『尊(たける)』は忌み名じゃないから大丈夫だとは思うが用心に越したことは無いという事だろう。

 

じゃあ、なんて名乗ればいいかな。

 

「そうじゃのう。『禰宜(ねぎ)』とでも名乗っておけばよかろう」

 

禰宜とは神社において宮司を補佐する人の事だ。

俺自身は神職の資格持ってないんだが、神使であるコンの推薦を持ってこの役目に就いているので禰宜を名乗っても嘘にはならない。

 

なお、これはマヨイガ稲荷神社が立地及び立場的に特殊な神社である故の特例処置であることを一応記しておく。

ちなみに宮司はコンが兼任。

 

「さて、では行くかのぅ。今から行けば状況的に丁度良かろう。タケルよ、準備は良いな」

 

応。と言っても面をつけただけだが。

なお、俺が行っても何の役にも立てないのだが、コンは俺に憑いている関係上、あんまり俺から離れられない。

なので俺が行かないという選択肢はそもそも無い。

 

「せいっ!」

 

気合の入った掛け声と共にマヨイガの外へ飛び出す。

瞬時にトップスピードまで加速し、周りの景色が凄いスピードでぶっ飛んでいく。

 

そのまま一気に地面を蹴り、五百メートルくらいの高さまで大ジャンプ。

その落下の浮遊感を感じている間に空中で体勢を整えて猫のようにしなやかに着地。

着地の衝撃も体さばきと神通力で殺し、極自然体で立ち上がり前を見据える。

 

ほとんどコンがやってくれているとはいえ外から見たら武術の達人のごとき所業である。

これぞ神通力が一つ『神足通』。

まぁ、本来の『神足通』だと俺の魂にかかる負担が半端ないので大幅劣化バージョンだ。

コンだけが使うなら瞬間移動や高速飛行すらできる神通力なんだけどな。

 

それでも普段まずやる事のない体験に俺カッコイィ! 的な興奮を覚えているんだが、着地地点が熊もどきの目の前なので抑える事にする。

三メートル近い身長を持つ熊のような生物は非常に迫力があり、俺がまともに対峙すれば足が竦んで成すすべなく殺されてしまうだろう。

とはいえ『稲荷下げ』状態だと別段怖くも何ともないのだが。

 

そんな感じで割と余裕があるので隠れている女性の気配を探ってみる。

 

千里眼で見ていたからというのもあるが、野生生物以上に鋭敏なコンの感覚が女性の隠れている場所を容易に発見する。

 

少し離れた藪の中。

小さく蹲って息を殺しているのが分かる。

俺達にはまだ気づいてないようだ。

 

『タケルよ、この熊を喰いたいか?』

 

コンがそんな事を聞いてくる。

 

熊は全身食用に出来る上に旨味が強い。

半面、狩猟後に適切な処理をしないと臭みが強くなり、肉質まで変わってしまうそうだ。

ちなみに俺は喰った事が無い。

無論これは現世の熊の話であってこの熊もどきに当てはまるとは限らない訳だが。

 

これはあれか。

この熊もどきを狩るのと追い払うのとどっちがいい? と聞いてるわけか。

喰うなら狩る。 喰わないのなら狩らない。

危険排除などを理由に喰わずとも狩る事はあるが、今のコンの選択肢としてはこの二つだろう。

 

うーん……別に喰いたくはないかな。

 

『承知した。ならば、こうするかの』

 

そういうとコンは自身の『霊威』を解放する。

 

「ギャウン!!」

 

すると変な声を上げて目の前の熊もどきが気絶した。

コンの霊威を真っ向から受けて恐怖が許容量をオーバーしたのだろう。

 

正直俺も結構霊威に当てられているのだが、俺がコンに感じるのは恐怖では無く畏怖。

コンが味方である以上、むしろ精神が高揚するほどだ。

あと多少は慣れもある。

 

『さて、これで熊もしばらくは目を覚まさんじゃろう。今の内にそこの人間を助けるとするかの』

 

そういってコンは霊威を解放するのを止めた。

 

とりあえず女性が隠れている藪に近づくが、どうするべきだろうか。

ぶっちゃけ初対面な上に客観的に見ると俺の姿は動物の仮面をかぶった怪しげな男である。

服装も女性の来ている物とは様式が違う。

こんなのに来られても感じるのは安堵では無く恐怖じゃない?

天狐の面って割と怖いしさ。

 

「そこのお嬢さん。大丈夫ですか?」

 

声をかけてみたが返事は無い。

というか、そもそも普通に考えれば言葉が通じないんじゃないか?

 

とは言えほっとく訳にもいかない。

千里眼で見た時点で大きな怪我をしていたのだ。

下手をしなくても失血死しかねない。

 

反応も無いんじゃ止むを得ん。

無理やりにでも最低限止血くらいはしておかないと。

そう思って藪をかき分けたのだが……

 

「……おい、コン」

 

そこには千里眼で見た女性が気絶して倒れていた。

 

先ほどのコンの霊威に当てられたっぽい。

距離がそれなりに離れていたとはいえ弱った状態で霊威の余波を受けたのだ。

そりゃこうもなるだろ。

 

『タケルよ、この人間をマヨイガに運ぶぞ。ここでは十分な治療はできんし、気絶しておるから抵抗されることもないしの』

 

女性を気絶させてお持ち帰りとか……いや、流石にこの場合は緊急避難か。

なるべく女性に負担がかからないように抱えあげる。

もろに血が服に付くが仕方なし。

 

俺はあまり力の強い方ではないが、『稲荷下げ』状態なら素の筋力だけで片手で人ひとり持ち上げられる。

神通力を併用すれば大岩だって持ち上げれれるので意識が無いとはいえ女性一人抱えるくらい全く問題ない。

 

てか、この女性マヨイガに入れられるの?

マヨイガってマヨイガに認められた人しか入れなかった気がするんだが。

 

『稲荷神社の客人扱いでなら大丈夫じゃ』

 

大丈夫ならいいか。

 

そこからは早かった。

一応神通力で止血はしたが、あまり時間をかけては女性の体力が持たない可能性がある。

ちまちま森の中を走っては時間がかかるので来た時以上の速度で飛び上がり、ピンポイントで境界に着地。

そして一気にマヨイガに突入し、家の前で急停止。

普通ならもの凄い風圧や慣性が俺たちを襲うのだろうが、コンの神通力に守られているおかげで何ともない。

 

コンだけはその勢いのまま俺から飛び出し、人の姿へと変化して家の中へ入っていった。

コンはいろんな姿の人間に変化できるが、今回は小柄な童女形態だ。

体のサイズ的な意味で化けやすく、消費する陽の気も少ないそうなので普段化ける時はこの形態が多い。

 

ちなみに変化している時は肉体があり、物理的に触れることが出来る。

おそらく狐形態よりも人間形態の方がマヨイガの妖怪道具を使いやすいが故の変化だろう。

 

すぐにコンが敷物と壺とでっかい刷毛(はけ)を持ってきたので、敷物を縁側に敷いてもらい女性をその上にやさしく寝かせる。

コンが俺の中から出ていったにも関わらず『稲荷下げ』状態が解除されないのだが、もしやこの『天狐の面』の効果だろうか。

 

するとコンは壺の中身(多分薬だろう)を刷毛にこれでもかとつけ、女性の全身に塗りたく……ろうとして衣服が邪魔なことに気づき剥ぎ取り始めたので俺は後ろを向いておく。

『稲荷下げ』状態の鋭敏な感覚が、背後で裸にひん剥かれた女性にコンが薬を塗りたくっている様を捉えているが無視だ。

 

「これで応急処置は完了じゃな。すまぬが何か適当に食事を作ってはくれぬか? 血を増やさねばならんからの」

 

分かった、何か用意しよう。

 

マヨイガで手に入る食材で増血となると、ほうれん草と卵かな。

なら一品は卵スープにするか。

あとは御飯に……マヨイガにある物だけで俺が作れる料理ってあんまり無いぞ。

俺の料理スキルは基本的に一人暮らしの学生の域を出ていない。

まぁ、コンの好物である油揚げやら天ぷらやらは散々作らされたので相応の腕はあると思うが。

……野菜の天ぷらと焼きおにぎりにするか。

 

「天ぷらにするならみょうがも頼むぞ。マヨイガの畑に生えておるであろう」

 

みょうがの天ぷらか。美味いよな。

それは構わないが、コンってみょうが好きだっけ?

 

「好きか嫌いかで言えば好きじゃが、今回は別の理由じゃよ」

 

別の……ねぇ。まぁ、了解した。

 

とりあえず庭に出て妖怪鶏の巣から卵を拝借。

この妖怪鶏は『毎日卵を産む』という妖怪であり、普通の鶏の卵の他にも金銀宝石でできた卵や、何かしらが入った卵を産むことが出来る。

もっとも、今回欲しいのは普通の鶏の卵(無精卵)なので妖怪鶏に頼んで産んでもらった。

 

次に野菜を手に入れる為に畑を訪れる。

ここは畑自体が妖怪であり、種を蒔いておけばどんな作物も一晩で育つ。

流石に今からでは間に合わないので既に育っている作物の中から天ぷらに適したものを頂戴する。

 

畑の側にある原木から椎茸も確保。

卵スープ用にほうれん草とコンご希望のみょうがも忘れずに。

小袖の手が手伝ってくれたので早く終わって助かった。

 

そのまま蔵に寄って米と調味料と食用油の妖怪油壷を確保。

持ちきれなくなった分は妖怪竹籠に入れてやれば、竹籠からにゅっと足が生えてついてくる。

妖怪油壷の方は足は生えないが、ぴょんぴょんと跳ねながらついてくるので中の油がこぼれないか心配である。

 

台所につくと妖怪釜が既にスタンバっていた。

実は何度かマヨイガの台所を借りた事があるので使い方は分かっている。

妖怪釜に米を入れ、妖怪水瓶から妖怪柄杓を使ってすくった水で米を研ぐ。

本来であればその後に三十分ほど水を吸わせる工程があるのだが、妖怪釜の能力で一瞬である。

 

一度蓋をして開けてみればあら不思議。

あっという間にお米が炊くのに適した状態になっている。

 

蓋を戻して妖怪釜を妖怪(かまど)に乗せると、こんこんと妖怪火打石が自己アピールしてきたので火打石で火をつける。

流石は妖怪火打石。一発で薪が赤々と燃えあがり始めた。

ちなみに薪は妖怪ではないが、薪小屋が妖怪なのでマヨイガの薪が尽きることは無い。

 

「はじめちょろちょろ中ぱっぱ、じゅうじゅう吹いたら火を引いて、ひと握りのわら燃やし、赤子泣いてもふた取るな」

 

妖怪竈に(まじな)いを唱えると妖怪釜から蒸気が吹き上がり、あっという間に炊き上がる。

竈から火が消えると蒸らしまでもが終わっているという超簡単仕様。

流石はマヨイガの台所である。

 

さて、まずは醤油とゴマの焼きおにぎりから作りますか。

 

 

 

と、まぁ。

そんな感じで30分程度で食事は完成した。

途中で服に血の跡がべったりついている事を思い出したのだが、妖怪手拭いでさっと拭くとしみ込んで固まっていた血が嘘のように拭えたので良しとする。

 

今日のメニューはほうれん草入りの卵スープと各種野菜の天ぷら盛り合わせに焼きおにぎりだ。

ちなみにおにぎりは焼きのりと大小三つの三角形を組み合わせて狐の顔の形にしている。

 

それらを膳に乗せて広間の方へ持っていく。

実はつい先ほどコンから精神感応(所謂テレパシーの事)で女性が目を覚ましたとの報告があったのだ。

お腹を空かせているらしいので早く持って行ってあげねば。

 

とりあえず襖の前までは着いたのだが、客人がいるんだよな。

普段なら俺とコンしかいないのでそのまま入るところだが……ちゃんと作法に則って入るか。

 

とりあえず膳を下ろし、襖の少し前で正座する。

 

「失礼します」

 

そう一声かけてこちらの存在を中の者たちに伝える。

コンから「どうぞ」と返事があったので、引き手(襖の手をかけるところ)に手を掛け、少しだけ襖を開ける。

掛けた手を引き手から親骨(襖の枠のところ)にそって下ろし、自然に手が届く位置で中央まで開ける。

 

この時点ではまだ室内にいる者と視線を合わせてはいけない。

一呼吸置いた後に手を変えて残りを開けるが、完全に開けることはせずに少しだけ閉める時用の手がかりを残す。

 

会釈をし、膳を持って敷居を踏まないように中に入る。

 

……で、合ってるよな?

以前調べた限りでは問題ないと思うが、場所によって作法が異なったりする場合があるからなぁ。

コンも"人の作法"についてはあんまり詳しくないし。

 

まぁ、異世界で気にするような事でもないか。

それっぽく見えれば大丈夫だろう。

 

件の女性は入ってきた俺の方を見ると恐怖の表情を見せて小さく悲鳴を上げた。

何故に!? と思ったが俺は今、天狐の面をつけっぱなしである。

うん、この面普通に怖いよね。

 

「安心せよ。この者も儂同様宇迦之御魂(うかのみたま)様に仕えし者。誓ってお主に危害を加えるような事はない」

 

これは不味いと思ったのかコンのフォローが入る。

 

俺も面を取ろうとしたが、コンから待ったの声がかかった。

面は外すなとのこと。

コンのいうことだから何かあるのだろう。

 

とりあえず女性の前に膳を置いて会釈をする。

 

(しもうた。この者は箸で食事をとる文化が無いから戸惑っておるようじゃ。匙と突き匙、あと肉刀を持ってきてくれ)

 

精神感応でそんな事を言われた。

しまったな。どう見ても日本人ではないし想定すべきことだった。

 

すぐに取りに行こうと部屋を出ると、厨房の方からテトテトと歩いてきた小さな竹籠を発見する。

それはぴょんと跳ねて俺の手の中に納まると足が煙のように消えた。

中には赤い布が敷かれ、その上に(スプーン)突き匙(フォーク)肉刀(ナイフ)などが乗せられている。

どうやら気を利かせて持ってきてくれたらしい。

 

「ありがとう」と一言告げて軽く一撫でする。

「どういたしまして」と言われた気がした。

 

部屋に入り、膳の隣に食器の入った竹籠を置く。

その中を見た女性が少し驚いた顔をした。なんで?

 

(ああ、銀食器は高価じゃから驚いておるだけじゃよ)

 

あ、これ銀なんだ。

ステンレスかと思ってた。

 

「腹も空いておるじゃろう。遠慮せずに食べなされ」

 

コンがそう言うと女性は少し躊躇った様子を見せたが、すぐにフォークを手に取り食事を食べ始めた。

ってか、日本語通じるの?

 

(いや、全く別の言語じゃった。じゃから言葉に意味を伝える(まじな)いを乗せておる。所謂自動翻訳能力というやつじゃな)

 

なにその便利な能力!?

 

(さて、この者が食べ終わるまでに分かったことを伝えておこう)

 

もう何か分かったのか?

ついさっき目を覚ましたって精神観応があったばかりの筈だが。

 

(まずこの者は先ほど千里眼で見た村に住んでおるそうじゃ。森に来とった理由は身内の者が病に倒れた故、その病に効くと言われておる薬草を取りに来たようじゃ。最初は森の浅い部分を探しておったが見つからず、探す内に森の奥に迷い込んだ、と言ったところじゃよ)

 

へぇ、病気の家族のためにね。

それにしてもこんな短期間で良く聞き出せたな。

信用を得るどころか状況説明すら時間がかかっただろうに。

 

(聞き出しとらんよ。『宿命通』を使って覗いただけじゃ)

 

……まぁ、確かに合理的ではある。

宿命通とは神通力の一つであり、簡単に言えば過去を見る能力の事だ。

見える範囲には個人差があるが、コンの場合は過去世すら見通すことができる。

なお天狐にプライバシーという言葉は存在しない。

 

ちなみに俺たちの事はどこまで伝えた?

 

(ここが異界であり、儂らは宇迦之御魂(うかのみたま)様の使いというところまでじゃな。他の事については何も言っておらぬ。どうやらここを死者の国の入り口と勘違いしておるようじゃが)

 

え? じゃぁ、この人からすれば目覚めたら死者の国で、そこで誰とも知らない相手から差し出された料理を食べているってこと?

俺が言うのも何だが、ちょっと不用心じゃない?

死者の国の食べ物を食べたら現世に帰れなくなる話とかいろんな神話で聞くんだが。

 

(少なくとも覗いた限りではこの娘は聞いたことが無いようじゃの)

 

無いんだ……異世界ではそんなこと無いのかな。

 

(さて、単に聞いたことのないだけという事もありそうじゃがの。まぁ、ただの勘違いじゃ。問題なかろうて。食事も口に合ったようじゃしの)

 

それは朗報。

マヨイガの食材は非常に美味しいのだが、体質や食生活によって体が受け付けない味というものもある。

自分たちにとっては美味なご馳走でも、地域や国が変わればとても食べられたものではないという事は珍しくないのだ。

 

(む、式神が戻ってきたようじゃの)

 

女性がそろそろ食べ終えるかなといった頃、コンがそんな事を言った。

はて、コンに式神などいただろうか?

 

(こちらに来て人手が足りなくなる事もあると思っての。マヨイガに頼んで式となれる付喪神を紹介してもらっておったのじゃよ。具体的にはお主がその格好に着替えている間にの)

 

式神って紙で人型を作ってそれを変化させるもんだと思ってたんだが。

 

(そういうのもある。一口に式神といっても色々種類があるんじゃよ)

 

へぇ、ちなみに何の付喪神?

 

(狐の面じゃ。八匹ほど雇用した。お主が憑けている面もその一匹じゃ。儂と繋がりがあるから儂が離れても憑依状態のままになっておるじゃろ)

 

あぁ、それで狐憑き状態のままなのね。

 

コンの言葉に納得していると、一匹の狐が縁側から入ってきた。

その狐は顔に白狐の面をしており、二足歩行でてくてくと歩いてきた事からコンの式神で間違いないだろ。

手には何かの植物がいっぱいに入った籠を持っている。

 

「ご苦労じゃ」

 

そう言ってコンが籠を受け取ると、式神は床に手をついて四足歩行に戻る。

そのタイミングで女性がコンの方を向いたので狐が二足歩行していた事は見ていなかっただろうが、見ていたらどんな反応をしていただろうか。

案外異世界では珍しくなかったりしてな。

 

「ほれ、これが必要なのじゃろ」

 

コンは受け取った籠をそのまま女性の前へ置くと言葉を続ける。

 

「帰りはこやつに案内させよう。それを持って早く帰りなされ」

 

女性は驚いたような顔をすると両手を胸に当てて頭を下げる。

そして聞いたことのない言葉でコンに何かを言っていた。

何してんだ?

 

(礼を言っておるのじゃよ。この者にとって最も礼を尽くす作法での)

 

あぁ、って事はその籠の中身は女性が探していた薬草か。

頭を下げるのは異世界でも同じなんだな。

 

(少なくともこの者の国では両手を胸に当てるのが感謝を表す仕草で、頭を下げる角度でその度合いを表すそうじゃよ。ちなみに頭の後ろで両手を組むのが謝罪で、片手を胸に当てるのが挨拶じゃ)

 

へぇ……ってそんな所まで覗いたのかよ。

 

(よく使うものくらいは異世界の作法を知っておかねば面倒ごとになりかねんからの)

 

確かに同じ動作でも国によって意味が違うなんて話はいくらでもあるもんな。

異世界ならなおのことか。

 

それから俺たちはマヨイガの境界で女性を見送った。

境界の先は森の出口──森の内と外を分ける境界──に繋いでいるので迷うことはないだろう。

コンの式神が先導しているしな。

 

ところでコン、あの時の『みょうが』は何だったんだ?

天ぷらにして女性が食べたのは確認したが。

 

「あぁ、あれか。なに、あの者にはマヨイガでの事を忘れてもらおうと思っての」

 

え? みょうがで?

 

「みょうがでじゃ。お主、『みょうがを食べると物忘れする』という迷信は知っておるか?」

 

そう言えば小さい頃に聞いたことがある気がする。

 

「実際にみょうがにそんな効果は無いが、そのような言い伝えが存在するという事が重要じゃ。みょうがを食べるという行為を儀式に見立てることで忘却の(まじな)いを掛けやすくしたのじゃよ。儂らの間ではこれを『伝承効果』と呼んでおる」

 

忘却の呪いなんていつの間に……

 

「ここを出る前にマヨイガを介して掛けておいたのじゃよ。変にマヨイガの話が出回ると面倒なことが起きかねんからの。儂らにとってもあの者にとってもな」

 

……なんとなく分かる気がする。

まぁ、これで一件落着って事でいいのかな。

 

「良かろうて。そろそろ日も暮れてこよう。何かあるとしても早くて明日以降じゃな」

 

微妙に不安の残る言い回しなんだが……

 

「もしかするともしかするやもと思うことが無いでは無いが、そうであったとして何ら問題はない。その辺は夕餉を食べながら話すとしよう」

 

そういえば腹減ってきたな。

しっかりと食べて英気を養うとするか。

 

「人助けした後の食事は格別じゃよ」

 

俺は何にもしてない気がするがな。

 

そんなこんなで異世界一日目は過ぎていくのだった。

 

 

 

 

 

それからしばらくして────マヨイガに新たな訪問者が現れる事になる。

 

 




補足・コンのセリフのうち、
「」は化けていて肉体がある為、全員に聞こえるセリフです。
『』は霊体で話している為、ある程度霊感がある者にしか聞こえません。
()は精神感応で言ったセリフなので尊にしか聞こえていません。


『袖振り合うも多生の縁』
道で袖が触れ合うようなささいな事でも、前世からの因縁によるものだという意味。
この場合の前世とは一つ前の生だけでなく、過去に輪廻転生した全ての生の事。

さて、前世で二人の間に何があったんでしょうかね。
前世を覗いたコンだけは知っているようですが、特に話す気は無さそうです。
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