お昼過ぎに別キャラというか別語り口のお話。
晩頃に千五百字程度の短い話を投稿予定です。
よろしければそちらの方もご覧いただければ幸いです。
File No.13のあとがきに天狐の尻尾の数について追記。
これ二十年程度の比較的新しい伝承の可能性があるみたいです。
過去話で異世界の動物の名前を異世界感を出すためにカタカナ語で名付けていましたが、いまいち表現しきれていなかった為、今話の内容を理由として変更いたしいました。
具体的には、
「ホーンベア」→「オオツノクマ」
「ホワイトフォックス」→「ミシロキツネ」
となります。
タグに「伝承の独自解釈」を追加しました。
『タケルよ。今日の夕刻前にマヨイガが客を呼ぶそうじゃ』
屋敷の掃除を終え、一息ついた俺にコンがそう言った。
またキツネツキとして対応すればいいのかな。
『そうじゃな。ただ、此度は持て成す必要はないそうじゃ。屋敷に上げる必要もない』
ふむ。
ならそんなに難しくはないか。
玄関か庭辺りで話を聞き、それっぽい事を言って指定されたマヨイガ妖怪を渡せば終わりだ。
一応聞くけど、『必要ない』ってだけで『してはならない』訳じゃないよな。
相手の希望によっては検討する必要もあるから確認はしておきたい。
十中八九前者だろうけど。
『前者じゃよ。これに関しては相手が望まぬじゃろうという話じゃ』
了解。
『どうやら人を探して居る所を招くらしい。探し人の居所も見当はついておる。後は会いさえすれば縁を辿って詳細も知れよう』
ああ、なるほど。
人探し中に呼ばれたなら持て成されるよりも早く探しに戻りたいと思うわな。
だったら渡す予定のマヨイガ妖怪は、相手の居場所を知れるか相手の元へ辿り着く能力を持った妖怪かな。
正直、マヨイガ妖怪の四半分も把握していないからどんな妖怪かは分からないが。
『いや、探し人の元への案内は
コン達にとっては大した手間でも無いから、ついでに
だったらどんな妖怪が行くんだろうか。
『ある程度候補は決まっておるそうじゃが、最終的には直接会ってからじゃな。なんせ相手が相手じゃし』
相手が相手って、なんかすごい人でも来るのか?
『あ、いや。単純に珍しいというだけじゃよ。此度の客は──
…………え?
フクロウと言えば何を思い浮かべるだろうか。
夜の森でホーホーと鳴く姿か、首をぐるりと反対まで回す姿か、音もなく獲物に襲い掛かるハンターの姿か。
異世界のフクロウも、現世のフクロウとそう変わらない姿や生態を持っているらしい。
正確には、そう変わらない姿や生態を持っているから俺たちはフクロウと呼んでいると言うべきか。
件のフクロウは異世界では『セマダラフクロウ』と呼ばれているそうだ。
もちろん、実際の発音は異なる。
ここで一つ『以心伝心の呪い』の仕様について説明しておこう。
『以心伝心の呪い』は言葉にのせられた意味、つまりは認識を媒介にして言葉を翻訳する。
例えば俺が『鳥』という言葉を発した場合、その言葉に俺の『鳥とはこういうもの』というイメージが乗る。
そしてそれを聞いた相手には『こういうものを鳥という』というイメージが伝わり、相手側のそれと一致する言葉が聞こえるのだ。
分かりづらければ一緒に鳥の写真や絵が伝わると思ってもらえれば近いだろうか。
ただこの
具体的な例を上げれば、俺が『蝶』と言ったとする。
すると蝶のイメージも一緒に伝わるのだが、相手が蝶を知らずこれは蛾だと認識した場合、相手には『蛾』と翻訳されてしまうのだ。
蝶と蛾の区別はそもそも曖昧ではあるのだが、こういう事が起こりうると理解してもらえればありがたい。
そもそも相手にその概念すらない場合はそのまま音で伝わる。
俺が『電気自動車』と言った場合、そのイメージに該当する認識が無ければ相手には『でんきじどうしゃ』と音で伝わり、相手はそれが何なのか理解できない。
逆に共通する認識さえあればどんな言葉でも翻訳できる。
例えば相手が『薄く切った二枚のパンに肉や野菜などの具材を挟んだ料理』の事を言えば、それがオリジナルの名詞だろうがサンドイッチ伯爵がいなかろうが俺にはサンドイッチと聞こえる。
もちろん相手の認識や言い回しによっては卵サンドイッチやBLTサンドイッチと聞こえる場合もあるだろう。
先の『
異世界の言語で発音した場合は『ロウシキマパナパナ』だってさ。
ついでに言うとそのフクロウを俺がセマダラフクロウという名前だと認識したことで、以後他の名前で呼ばれたとしても俺にはセマダラフクロウと聞こえるだろう。
そして固有名詞になるとちょっと複雑になる。
例としてフェルドナ神の名前は白い蛇という意味だそうだが、その発音自体を名前として認識しているのでフェルドナという音が伝わる。
逆に自分の名前を『
表現の仕方によってはホワイトスネークと聞こえる場合もある。
蛇足だが、フェルドナ神の神体って『ミズキリ』って名前の蛇のアルビノらしいね。
異世界の言語での発音だと『リピチュアー』となるらしい。
話を戻して、山元五郎左衛門殿の場合はどうなのか。
俺は漢字表記で認識しているが、別に五郎左殿が漢字で名前を言っている訳ではない。
五郎左殿の国の言語は日本語と構成が近く、
その為、固有名詞が普通名詞と同じように日本語に変換出来てしまうのだ。
なので『以心伝心の呪い』を使わずに名前を聞けば、全く別の発音をしている事だろう。
例外はあれど、漢字のような
あとは、単位とかも翻訳可能だ。
特に長さや重さなどは数値も合わせて[
ただ、概念的には同じでも実際のサイズは異なっている場合があるので注意は必要だ。
分かりやすいのは[年]かな。
[年]は簡単に言えば地球が太陽の周りを一周する時間の単位な訳だが、異世界の人たちが住む星が異世界の太陽の周りを一周する時間は地球のそれより少し短い。
なので一年と言えば俺にとっては365日だが、異世界においては361日のことだったりする。
さて、大して面白くもない解説はここまでにしておこう。
時刻は飛んで、もうしばらくすれば日も沈み始める時間帯である。
今日は必要な家事は済ませたから、多少遅くなっても問題は無い。
ミコトとコンを連れて門の後ろで適当にぶらつく。
普段は開いている日本屋敷の門だが、今日は閉ざされたままだ。
まぁ、これは単なる演出である。
お客さんを屋敷に上げる訳でも無し。
門が開いたらキツネツキがお出迎えという訳だ。
異界という事もあり、出口に近いところで対応した方が相手の心理的ハードルも下がるだろうとの考えもある。
門の外(正確には境界の近く)ではなでしこさんが件の梟が来るのを待っており、見つけ次第こちらへ案内する手筈となっている。
マヨイガの中に入ればマヨイガの意思が居場所を把握できるので、予定外の場所から来ても見逃すことは無い。
ただ待ってるのも暇なので、
俺だと三つが限度だな。
するとミコトが自分もやると言うので、増えた分をミコトに放る。
お手玉の数を四つに増やし、数え歌に合わせて二人で玉をやり取りする。
この数え歌はミコトに教えてもらったものだ。
ミコトの作者である
彼女以外が歌っているのを聞いた事は無いそうなので、彼女の創作かも知れない。
一つ語りて 日も落ちて
心躍るや
一緒に遊ぼと 誰かさん
二つ語りて 笛太鼓
猫も杓子も 踊り出す
揃いの面を 身に着けりゃ
いつしか
三つ語りて──「楽しんでおるところを悪いが、来たようじゃぞ」──おっと、すまん。
妖怪御手玉を一つに戻し、懐へしまう。
身嗜みを整え、門の後ろで待機。
(
了解した。
少しだけ時間が経過すると、屋敷の門がゆっくりと開き始めた。
誰かが開けている訳ではなく、もちろんこの門も妖怪だからである。
外からくる悪いものを防ぐという役目を持ち、マヨイガ妖怪の中でも結構上位の力を持つ妖怪なのだ。
ちなみにこの門はあくまで屋敷の門なので、マヨイガ自体はもっと先まで続いている。
そして門の外にはなでしこさんと一匹のフクロウ。
……このフクロウ、全身
(ほぉ、奇麗な色の
構造色といえば色素ではなく層や微細な
顔料による着色と異なり、紫外線などで脱色しない等の利点がある。
よく知られている例だと、モルフォチョウの鮮やかな青が構造色だ。
他にもタマムシやカワセミなど多くの生物がこれを使っている。
身近なところだとシャボン玉の虹色もそうだな。
銀色だと……
「ようこそ、マヨイガへ。私はキツネツキ。こちらは妻のメグリヒモクと使いのテンコだ」
言葉を持たない動物相手には、流石の以心伝心の呪いをもってしても会話する事は出来ない。
意思疎通自体はできなくはないものの、簡単な単語のやり取りが精々だ。
しかし、こちらがどんな意思を持って話しているかを一方的に伝えるだけなら何とかなる。
相手が理解できるかは別として。
「は、はい。私はしがない
……普通にしゃべってる。
良く見ればこのフクロウ、妖怪じゃん。
多分霊威は100もない。
本当に妖怪になっただけのフクロウって感じだ。
まぁ、そっちの方がやりやすいからありがたいのだが。
随分と不安そうにしているが、状況が状況だし仕方ないだろう。
俺がどう見えているかは分からないが、コンやミコトが遥かに格上の妖怪だという事くらいは分かるだろうし。
「さて、ヒトを探していると聞いているのだけど、どんなヒトだい?」
「はい。先日、私を助けて下さった男の人です。多分、猟師で年の頃は二十程かと」
フクロウが人間の年齢を数字で答えることに違和感を感じるが、多分妖怪になった時に得た知識なのだろう。
それでコン、探し人の場所は分かりそう?
(うむ、縁を辿って住処は見つけられたぞ。というか、これはあれじゃな。フェルドナ神に鹿肉を捧げた猟師じゃな)
俺たちが半分貰った
(じゃな。村の外れに住んでおるようじゃ)
ふむ。
「その者はこのような顔の男じゃろうか?」
コンが幻影で男の姿をうつすと、フクロウは驚いたように目を見開いた(ような気がする)。
「そうです、その人です」
「ああ、フェルドナ神の所の。ラクル村の猟師だね」
いかにも知っている顔ですよという風に話す。
これも一つの演出だ。
「ところで、何でこの人間を探していたんだい?」
俺の問に、フクロウが語り出す。
曰く、ある日運悪く獣用の罠にかかってしまった
鶴の恩返しならぬ、梟の恩返しってことかな。
(タケルよ、この者の元へ行く妖怪が決まったそうじゃ。じゃからこうこうこういう風に儂に振れ)
了解。
「ふむ。
「はっ」
コンから精神感応で具体的なイメージが飛んできたので、それにそって話を振る。
するとコンの姿が溶ける様に消えた。
多分、神足通による瞬間移動だろう。
俺はとりあえずフクロウの方に向き直す。
「さて、せっかくマヨイガまで来たんだ。上がって寛いでいきなさい……と本来なら言うところだけど、君からしたら一刻も早くその者の所に行きたいだろう。メンレイキよ、この者を彼の元に案内して差し上げなさい」
「はい、畏まりました」
「え!? あっ! ありがとうございます」
その言葉に驚いたような声を出すフクロウ。
場所を教えてくれるだけならともかく、案内までしてもらえるとは思っていなかったか。
それとも……まぁ、何にせよこの状況だとこうしか言えないとは思うが。
今の状況をフクロウ視点で考えると、相手のホームグラウンドに連れ込まれて自分より遥かに格上な妖怪たちの間で話が勝手に進んでいるって感じだからな。
「お待たせ致しました」
そこにコンが羽織を一枚持って来た。
羽織ってのは和服の一種で、丈の短い外衣の事。
「恩を返すにもその姿では不便だろう。この羽織を使うといい」
コンが羽織をフクロウに掛けてやるとポンと煙が立ち上り、その姿が変化する。
二十歳くらいの大柄な女性。
ミルラト神話圏基準でいえば結構な美人さんである。
なんか所々フクロウっぽい
羽織の下はラルク村でもよく見かける意匠の服だな。
「一度羽織を脱いで再び着れば元の姿に戻る事が出来る。ただし、その姿のままで羽織を失くしてしまうと、元の姿に戻る事が出来なくなるから注意しなさい」
コンから精神感応で伝えられた羽織の説明を語る。
妖怪が人の姿に化ける為の
ただ、あんまり精度は良く無くて、耳とか尻尾とか残ってしまうらしい。
「その羽織は差し上げよう。恩返しが上手く行くことを祈っているよ」
「い、いえ、これほどのものを頂くわけには……」
まぁ、そうなるよね。
案内くらいならともかく、初対面の相手からいきなり羽織を送られても反応に困るだろう。
なので適当な理由をつけておく。
「なに、気にする事はないよ。以前、君の探していた人間がフェルドナ神に捧げた物。その
丁度いい縁があったので
「その
「ですがその……」
こういう時は妖怪は分かりやすい。
感情を揺さぶってあげれば、その心理状態が霊威に出る。
困惑、遠慮、後ろめたさ。
それが……ん? 後ろめたさ?
(あぁ。それなんじゃが、こういう風に対応して欲しいんじゃよ。おそらく、それで上手く行く筈じゃ)
了解。
「それに、だ」
精神感応で送られた通りに言葉を紡ぐ。
「これは君の望みを叶えるためにも役立つだろう」
「あっ……」
霊威に見える感情は、動揺。
隠し事がばれたときの反応だ。
化けて脅かしてくる系の妖怪が正体を看破された時とか、よくこんな反応をする。
指示通りにやっているだけだから俺自身は何も見抜けていないのだが、ハッタリも妖怪を相手にする場合は結構重要な技能だったりするのだ。
「私もその手の話は嫌いではないからね。なに、ほんの気まぐれ。運が良かったと思っておきなさい」
「っ……ありがとうございます」
観念したように承諾するフクロウ。
ちなみにここで受け取り拒否した場合、どこまで行ってもいつの間にか傍にある恐怖をあじわう事になる。
紅一文字が例外なだけで基本的に所有者と認めたマヨイガ妖怪は、持ち帰らなかったらどこまでも追いかけてくるのだ。
正直無理矢理押し付けた感はあるが、これもマヨイガ妖怪の
では後は探し人の所へ送っていくだけかなと考えていると、羽織を触っていたフクロウが突然驚きの表情を見せた。
何事かと思ったが、多分受け取りを承諾した事で羽織の所有者として認められて、使い方を理解したのだろう。
先ほどとは打って変わって、興味深そうに羽織に触れている。
何かいい能力でも持っていたのだろうか。
(この者の望みを叶えるのに最も必要じゃったものを持っておった、というだけじゃよ)
あぁ、そうなんだ。
それが何なのか気にはなるが、まずは役目を熟さなければな。
「さて、引き留めて悪かったね。さぁ、彼の元に向かうといい。メンレイキ、後を頼むよ」
「はい、お任せください」
なでしこさんが先導し、フクロウが人間の姿のままそれに続く。
その表情に最初の不安の色はなく、霊威には期待の色が見える。
フクロウは一度だけ振り返ると、
俺が鷹揚に頷くと、屋敷の門が閉まっていく。
これもまた演出の一つである。
暫くして、フクロウが境界を越えたとコン経由でマヨイガの意思から連絡があった。
けっこう強引だったが、とりあえず役目は果たせたかな。
今回は割とコンに頼っていた気はするが、それ込みでも十分及第点だったとのこと。
ぶっちゃけ、マヨイガの意思は俺に何をさせたいのかよく分からん。
最初はキツネツキの名を利用して異世界からも畏怖を集めたいのかと思ったが、どうも違うっぽい。
これだとどう考えても畏怖が集まるのは
いくつか思いつく仮説もあるにはあるが、正直無滑稽なんだよなぁ。
コンに聞いても教えてくれないし。
ただまぁ、知らないのではなく教えてくれないということは、俺にとって悪い事じゃないんだろうけども。
「あなた、お疲れ様なのだ」
ミコトが労いの言葉をかけてくれる。
今回は出番は無かったが、いてくれるだけでも意味があるのだ。
精神的にもキツネツキ的にも。
「ありがとう、ミコト。それでコン、あのフクロウは何を隠してたんだ?」
先ほど霊威に見えた後ろめたさ。
ヒトの姿になる事ではない、フクロウの望みを叶える能力。
恩返しというのは嘘ではないが、その裏に何かあるという感じだった。
「別に大した話でも無いんじゃがな。あやつが
「そうなのだ?」
ミコトが興味を示しているが、そういう事か。
実際に人間と恋仲になる妖怪は少数ながらいると聞いている。
マヨイガ妖怪にも五郎左殿に惚れていた紅一文字がいたしな。
「元々妖怪は人間に魅かれやすい。恩義を感じた場合は特にのう。もっとも、魅かれた結果どのような行動を起こすかはその妖怪の
魅かれた事でその相手を食べてしまう妖怪とかもいるらしいからな。
妖怪に憑かれるというのも、その妖怪に魅入られた事が原因の場合が多い。
その理由も様々で、波長が合ったなどの精神的な要因の場合もあれば、何かの行動に興味を持たれる事もある。
時にはただそこに居たからという人間には理解しがたい理由で魅かれたりもする。
そして一般的に悪行とされる事柄にも、魅かれる妖怪がいる。
例えば物を壊したり人を傷つけたり騙したりとかな。
妖怪は人間の意思に大きく影響を受ける。
そのような人間に魅かれ取り憑くのは当然同じような
それが直接その妖怪に向けられたものでなくても、魅かれたが故に悪意が向く。
悪人には悪い妖怪が憑くことが多いのだ。
逆に善人にはいい妖怪が憑くことが多いぞ。
おっと話が逸れたな。
「でも惚れたというのなら別に隠すような事でも無いと思うんだが」
単純に言う理由がないと思ったのなら、後ろめたさを感じる理由はない。
「その辺はもう、
……生態?
「あぁ、そうか。求愛は雄から……みたいな?」
「じゃな。恩返しというのも本当ではあるが、そこから求婚させる方向に誘導できればとか考えておったようじゃよ」
「それで隠してたのか。なんというか、抜け目ないというか」
「もっとも、生態に基づく価値観というものは妖怪になると次第に薄れていく事が多いからの。人間に惚れたのも価値観が変化した故かもしれぬし、そのうちあやつの方から求婚するかもしれん」
その辺は
そもそも自分は妖怪だと告げるつもりがあるのかどうか知らないが。
「妖怪になると自分でも価値観の変化に戸惑う事がある。儂も妖狐となってから娘たちとの価値観の違いに悩んだ時期があったからのう」
結局、夫も子供達も誰も妖狐には成らなかったんじゃよな。と続けるコン。
そういやコンって
夫がいたのは野生の狐時代の話なので、霊狐になった今だとどういう扱いになるのか分からないが。
ちなみにコンは元は『
「フクロウさん、上手くいくといいのだ」
「そうだな」
まぁ、一匹の妖怪の恋の行方を祝福してみるのも現人神的にはアリなんじゃなかろうか。
マヨイガ妖怪もついているし、そう悪い事にはならないだろう。
そんな感じで俺たちはしばらく閉じた門の方を眺めているのだった。
「ところで、フクロウの望みを叶えるのに最も必要なものって何だったんだ?」
「あぁ、人間の子供を産めるようになるんじゃよ。件の猟師との子供を欲しがっておったようじゃ」
「子供……か」
「ある程度妖怪として成熟すれば普通に出来るようになるんじゃが、成りたてじゃと難しいからのぅ」
『無題、数え歌』
作詞作曲 狩谷栄玄
ちなみに別キャラ視点はそのキャラの内情を作者が以心伝心の呪いで翻訳したという形で書いてます。
『情けは人の為ならず』
他人に親切にしたことは巡り巡って自分に返ってくるので、人には親切にしましょうという意味。
情けをかけるのは人の為だけでなく、自分の為にもなるんだよということ。
もうちょっと詳しく言うと、この場合の『情け』は同情ではなく『思いやり』の事です。
一説によれば『曽我物語』の「情けは人のためならず 巡り巡って己がため」が語源だとか。